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映画感想か行
○「カイジ 人生逆転ゲーム」 ★★★ (09.10.19/劇場)
STORY:ただ漠然と日々を過ごし燻り続けているフリーターの青年・伊藤カイジは、かつてのバイト仲間の借金を背負わされ、帝愛金融の遠藤
という美女の紹介で、一攫千金を狙ってギャンブル”限定ジャンケン”に挑む。そこで知り合った親切な男・船井とコンビを組んだカイジは楽勝で
突破できると思いきや、船井に裏切られ一転して絶体絶命の窮地に。しかし、ここからカイジのダメ人生からの逆転が始まろうとしていた…。
福本伸行の人気ギャンブルコミックを実写化。(ざわ…ざわ…)
例によって例の如くこの手の作品が成功した試しはないのだが。(ざわ…ざわ…)
何よりもあの特徴的なツラが表現されていないではないか!(ざわ…ざわ…)藤原竜也はツケ鼻とツケアゴを装備して演技するべきでは
なかったのではないか!(ざわ…ざわ…)いや、本当にやられたら女性客誰も観に行かなそうだけど。(ざわ…ざわ…)
まあざわざわは置いといて、理詰めで伏線をキッチリ張って物語っていく福本作品を短い時間で映像化するのは根本的に無理があるん
ではないかと全く期待せずに観に行ったのだが、これが意外に面白かったりするのだから世の中わからない。
確かに懇切丁寧に理を説く福本作品は面白いのだが、反面どうしても話が冗長になってしまうという欠点がありまして。
「アカギ」のアカギとワシズ様の闘牌なんざもう10年以上やってるからなあ。
それがこの映画、なんとあの限定ジャンケンを30分くらいで終わらせちまうわけですよ。
ルールを大幅簡略化して登場人物を減らして、あっという間に終わらせちまうわけですよ。
そりゃあコクとか旨味とかあったもんじゃないのだけれども、あまりのすっ飛ばしぶりになんか快感を覚えてしまったりして。
その後もテンポよく地下帝国強制労働(チンチロリンはなし)を経て、橋とEカードへ。
橋はかなり原作通り。でもあんな雨降ったら橋に高圧電流流れてるんだから感電しね?
Eカードもチンタラせずに底が浅い戦法でサックリ利根川を破って、会長とは戦わずに終わり。えー???
エンディングは3部沼編からいただきで、映画としてはなかなかにまとまっている。一般大衆向けにライトな仕上がりだが。
原作を読んでない人なら普通に楽しめるんではないかと。
濃ゆいファンだといろいろと許せないところがあるけれども。
とりあえず本筋とは何の関係もない限定ジャンケンのカードの柄をあんなだせえのに変えたスタッフは焼き土下座の刑。
カイジ役に藤原竜也。こんなかっこよくねーよ。
佐原役に松山ケンイチ。つーか「デスノ」コンビじゃん。
利根川役に香川照之。ミスキャスト。名優なんだから仕事選んで下さいよ。
遠藤は女性に変更(女っ気ないからなあ)で天海祐希。なかなかに儲け役。
会長役はベテランの佐藤慶だが、原作の狂気がまるで感じられず、ここが最大の問題点。会長が弾けてないと盛り上がらないぜよ。
○「カイジ2 人生逆転ゲーム」 ★★ (11.12.15/劇場)
STORY:帝愛グループとの命を賭けたギャンブルに勝利し大金を手にしたのもつかの間、またも借金で帝愛の地下施設に沈んだカイジ。
だが、借金を返済し自由を得るチャンスを掴み、一時的に地上に戻ってくる。リストラ中年・坂崎、かつての宿敵・利根川、死んだ仲間の娘・
石田裕美と共に、カイジは帝愛の裏カジノの一攫千金の悪魔のパチンコ台”沼”の攻略を狙うが、支配人・一条がその前に立ち塞がる…。
前作は、綿密な伏線を張る故にどうしても冗長になってしまうという原作の欠点を、カイジが思いつきでしか勝ってないような(そして
敵も浅はかに騙されるような)大胆な演出で解消し、非常にテンポの良い、マンガ原作ものとしては、まあ見れないこともない作品に
仕上がっていた。
褒めてるんだか貶してるんだかわからない書き方だが、6:4くらいで褒めてます。
そのスタッフ・キャストが再集結して送る第2弾。
原作では相変わらずやたら長かったチンチロリンを、開始早々なんと5分足らずで終わらせるという荒技を見せつけてくれ、嫌が応でも
期待は高まったのだが………そこからはどうしようもなく冗長な凡作に。
原作では、極悪パチンコ台”沼”にカイジと共に挑むのは、人生大逆転を狙う坂崎(心美タンは登場しません。)と金貸しの遠藤だったが、
遠藤を映画の前作のオチに使ってしまったため、代わりに前作のライバルだった利根川と前作で死んだ仲間の石田の娘を登場
させるオリジナルな展開は、やめとけ、という言葉しか出てこない。つーか、映画では利根川、焼き土下座しなかったんだっけ。
特に石田娘がミスリードにもなっておらず、ただいたずらに上映時間を延ばす元凶にしかなってないのがいただけない。
更に前作に登場した船井までもがまさかの再登場を果たしてしまうのだが、これまた間延びの原因。
つーか、山本太郎は今、人を騙す役とか受けない方がいいんじゃないかと。
今回のライバル・一条役の伊勢谷友介、利根川役の香川照之と無駄に力のこもった演技をしていて、非常に空回りしている感が強く、
観ていてつらい。
さらに”沼”がまるで魅力のない盤面なのが痛い。ある意味今回の主役の一角で出ずっぱりなんだから、もっとエフェクトとか派手でも
よかったのではないかと。
会長も不在で、寂しいことこの上ない。
流石に次の地雷ゲームは映像化しないよな?
○「カウボーイ&エイリアン」 ★★★ (11.11.10/劇場)
STORY:ゴールドラッシュの時代のアメリカ西部。男は荒野で目覚めた。腹には深い傷、左腕には見たこともない腕輪、そして記憶は、
ない。どうにか近くの町にたどり着いた男は、何か知っていそうな謎の女・エラと出会うが、賞金首のジェイク・ロネガンとして囚われてしまう。
その夜、謎の飛行物体が襲来し、家を燃やし人々を連れ去り始める。なす術無く逃げ惑う人々。その時、男の腕輪が突如輝きを放つ…。
カウボーイが駆ける西部劇の世界に突如襲い来るUFO軍団。と、謎の男の左腕が唸りを上げ光弾がUFOを貫く!
とまあボンクラな大きいお友だちが拍手喝采を叫ぶボンクラに格好いいシチュエーションなわけだが…。
見事に出オチ!
完全に出オチ!
dkwkするのはそこまでで後はすっかり消化試合ムードなのはどうしたことか。もっともっと話を盛り上げるのは容易だったろうに。
まるで工夫が足りない。
監督のジョン・ファブローはエイリアンに攫われて実験台にされちまえ。
主演は平和なインテリジェンスが感じられないダニエル・クレイヴ。
ハリソン・フォードが元気そうでよかった。
○「COWBOY BEBOP 天国の扉」 ★★★ (01.9/劇場)
STORY:近未来。宇宙船ビバップ号で賞金稼ぎをしているスパイク・ジェット・フェイ・エドの4人は火星で起きた爆弾&細菌テロの首謀者にかけ
られた賞金を狙って追跡を始める。そして浮かび上がったのはある製薬会社と、ヴィンセントという死んだはずの男。ヴィンセントを追いつめた
スパイクだが返り討ちに遭い重傷を負わされる。さらにフェイも捕らわれてしまうが、彼女はヴィンセントからその恐ろしい目的を聞かされる…。
傑作TVシリーズの劇場版。懐かしい面々に再び会えるのはうれしい限り。
が、…うーん、冗長だなあ。元々のTVシリーズが30分1話完結で切れのいい話ばかりだったので特にそう感じるのかも。
ノリは相変わらずだし声優は豪華だし(つーか新人だか練習生だかわからんレベルのを使ってないし)アクションも格好いいしドッグファイトもある
しなのだが…。
石橋蓮司がゲスト出演している冒頭5分間が一番よかった。「敵を欺くにはまず味方から」「欺いてどーすんだよ!」
○「鍵泥棒のメソッド」 ★★★★ (12.9.17/劇場)
STORY:冴えない役者志望の桜井は、銭湯で、羽振りの良さそうな男が転倒して意識不明で病院へ運ばれる現場に居合わせ、こっそりロッカーの
鍵を交換してしまう。男の服を着込み男の車に乗り、男の金で借金を返済して回る桜井だが、男の正体は伝説の殺し屋・コンドウで、危険な仕事を
依頼される羽目に。一方、記憶喪失になったコンドウは、桜井として彼のボロアパートで暮らし始め、偶然、結婚相手を探している香苗と出会う…。
「運命じゃない人」、「アフタースクール」と緻密に練り上げられたオリジナル脚本で鮮やかなどんでん返しを演出する新進気鋭の監督・
内田けんじの最新作。
若手最重要注目株の内田けんじと西川美和の最新作がほぼ同時に公開されるなんて、なんてぇ月だよ2012年9月。
前作「アフタースクール」は練りに練られた脚本で、クライマックスのどんでん返しで、最初からの台詞の意味が全て変わってしまうという
素晴らしい出来だったので、それ故に観る側としては、もう騙されんぞ、と目をギラつかせて挑まざるを得ず、それを想定してか、今作は
どんでん返しはそれほど鮮やかではない。ものの、伏線の張り方、回収の仕方はやはりお見事で、ニヤリと笑えて幸せでお腹いっぱいに
なれる秀作。
脚本や演出は当然のことながら、キャスティングもまた秀逸。
「アフタースクール」に続いて登板の堺雅人だが、どんな役をやっても小綺麗で善良なイメージがあった(いや「クヒオ大佐」とかもあったけど)の
だが、今作ではそのイメージを裏切るくらいにダメ人間な役で新境地。そのダメっぷりは同じダメ人間として感情移入しちまうよなあ。
その堺雅人が主人公かと思いきや、実は裏社会の伝説の男で優雅な暮らしをしていたのに銭湯で豪快に転倒して記憶を失いボロアパートで
冴えない役者志望の30代の男の役割を無意識に演じることになってしまう香川照之(30代?)が主人公だったりして。
まあこの人の演技力は言うことなしなので無問題だが、非常にチャーミングでニヤニヤ。
「るろ剣」とか「カイジ」とか出なければいいのに。
そして、ヒロインに広末涼子。全盛期の神がかったかわいさを知っているだけに、もう今のヒロスエは出がらしで見るに堪えないと思っていたの
だが………むはぁっ!かわええじゃないか!見事な配役と演出にシャッポを脱がざるを得ない。
事件に絡む裏社会の兄貴に荒川良々。いつもの淡々とした脱力演技ながら、しっかり凄みを漂わせていて目を見張るものがある。この役の
感じだったら水星C役とかいけんじゃね?
事件に絡む平凡そうな主婦と思いきや…に森口瑤子。やさぐれててたいへんよろしい。オチ要員。
つーわけで秀逸な脚本と演出と演技が絡み合った傑作なのだが、テンポが若干よろしくないので満点はつけず。惜しい。あと珍しく萌えられ
ない堺雅人だったので。
○「隠し剣 鬼の爪」 ★★★ (04.11.18/劇場)
STORY:幕末の山形・海坂藩。下級武士・片桐宗蔵は好いていた下女・きえが嫁ぎ先で虐待されていることを知り、彼女を救い出す。が、仲
睦まじい二人の暮らしは武士道と身分の差により引き裂かれてしまう。一方、かつて宗蔵と共に剣術を学んだ狭間弥一郎が謀反・投獄の果てに
脱獄し民家に立て籠もる。藩命を受けた宗蔵は彼を討ち取るべく刀を抜く。宗蔵は師匠より秘剣”隠し剣・鬼の爪”を伝授されていたのだ…。
監督・山田洋次、原作・藤沢周平ら「たそがれ清兵衛」のスタッフが再び送る時代劇大作でがんす。
主演は前作の真田広之&宮沢りえから永瀬正敏&松たか子に大幅スケールダウン。なんつーか全体的に前作の二番煎じ感が漂うため
評価もキャストの分だけ前作よりダウン。コメディパートも今ひとつ滑っている感じ。田中邦衛が普通にしゃべってるだけで笑えるのにな。
藩命で人を斬ることを命じられた(前作と同じ展開でがんす)宗蔵は師匠の元で奥義を授かるのだが、この師匠が準備運動でカエル跳びを
いきなり始めて「はじめの一歩」の青木を想像してしまったのだが、奥義もまさに青木のアレだった。
その辺を駆使したヤマ場の戦闘シーンはなかなかよかったのだが幕切れのあっけなさは前作を継承でがんす。
しかし実はそこでも秘奥義”隠し剣・鬼の爪”は披露されておらず…つーわけでもう一幕あるのだが、
………これってキスオブザドラ…ゲフンゲフン!
何故か前作に続いて観ていて猛烈な尿意に襲われてエンドロールを最後まで観れなかった(緒方拳が尿意で悶絶するシーンはめっちゃ
シンクロしてしまった)り、おちゃらけた感想を書いてしまったが、出来は悪くなく安心して観れるでがんす。
○「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」 ★★ (08.5.22/劇場)
STORY:時は戦国。野望に燃える山名は大国・早川を倒さんと、まず秋月を滅ぼしその財宝を狙う。だが、財宝と世継ぎの雪姫の行方は
知れなかった。山名の軍勢から逃げ出した金山掘りの武蔵と新八は偶然その財宝を発見するが、野武士に横取りされてしまう。財宝を山分け
するという条件で、武蔵たちは早川領へ逃げようとする野武士とその弟に同行する。だが、彼らこそ忠臣・真壁六郎太と雪姫の変装だった…。
黒澤明の名作をリメイクという、やめときゃいいのに企画。監督も出演も劣化しているのだからいい作品ができるわけもない。
一番劣化しているのはそんな企画を考えるプロデューサーだが。
監督は樋口真嗣。前作で株を大いに下げたが、今作では最低限の仕事をしてやや持ち直し。爆発の特撮が無駄にド派手なのに
笑った。
元々の作品に「スターウォーズ」が影響を受けているのは有名な話だが、今回のリメイクでは更に「スターウォーズ」の匂いを逆に取り
込んでいるなど野心的な試みをしているが、だったらもっとはっちゃけてもよかったのでは、と思う。脚本家はそれができうる中島かずき
だったたけに、残念。
最後もエモーションが弱い。あの流れだとくっつきそうなものだけど。あの終わり方にするならそこに至るシークエンスがもうちょっと欲しかった。
キャラ設定にも手が加えられていて、元ネタでは狂言回しみたいなものだった農民2人の内1人が主人公に変わっているのだが、彼と姫
のラブロマンスなんかが絡んでしまい元々の主役の侍の存在感が後半揺らいでしまうのは問題。
主人公に松本潤。悪くはない。相棒のもう1人の農民に宮川大輔。すべり気味っつーかもっとやってくれるもんかと思っていた。
不敵な侍に阿部寛。不完全燃焼。ヒロインに長沢まさみ。個人的にまるで萌えられなかったので映画自体の評価も高くならないのれす。
敵のダース・ベイダー的ポジションに椎名桔平。小悪党。
あと樋口作品の最大のお楽しみ(なのか)であるトミノ御大のカメオ出演が今回はなくて最高にガッカリ。お前には失望した。
EDを担当するは音楽業界の大物三人の異色コラボユニット・THE THREE。流石に布袋のギターと亀田誠治のアレンジはカッコ
イイ。あ、ボーカル?本編の出演と同じく、ない方がよかったな。
しかし曲と映画のプロモでメディアに露出した時の亀田誠治の芸能人オーラの無さは凄かった。裏方だから仕方ないけれど、どこのADが
画面に映り込んでるのかと思った。三谷幸喜を初めてTVで見た時のことを思い出した。
○「崖っぷちの男」 ★★★ (12.7.25/劇場)
STORY:ダイヤ王・デイヴィッドから30億のダイヤを盗んだ罪で投獄されていたニューヨーク市警の元警官・ニックは脱走し、高層ホテルの21階の
窓の外に現れる。一歩足を踏み外せば一巻の終わりという彼の姿に気づき街は騒然となる中、駆けつけた警官隊に対しニックは交渉人に女刑事・
リディアを指名するが、彼女は一ヶ月前に交渉に失敗し相手を自殺させ、自信を失っていた。周囲の耳目を一身に集めるニックの真意とは…。
なかなかに邦題がイカスB級サスペンス。
ダイヤ泥棒の汚名を着せられ圧倒的な権力に押し潰されようとしていた男の起死回生のカウンターアタックを描く。
彼が今にも落下してトマトのようにひしゃげそうになっている裏で密かに進行するミッション。迫り来るタイムリミットと落下の恐怖の中、彼は陽動を
やり遂げ、作戦を成功に導けるのか?
…なんか数ヶ月前にも、あくどい金持ちをやっつけるべく持たざる貧乏人たちがビルに忍び込む映画を観たような気がする…。
まあ大味だし主人公に華はないが、まずまず楽しめる、¥100レンタルとかにピッタリな作品。
骨と皮だけの風貌のくせに強欲な腐れ外道の金持ちジジイにパンチ一発だけではカタルシスを得られない。暴徒と化したNYの貧民たちに
ボコられてほしかった。
○「崖の上のポニョ」 ★★★★★ (08.8.26/劇場)
STORY:5歳の少年・宗介は崖の下の岩場で人面魚のポニョを助ける。互いに惹かれ合った二人(?)だが、ポニョは父親のフジモトによって
海に連れ戻されてしまう。妹たちの力を借りて脱走したポニョは、フジモトの溜めていた生命の水の力で人間の姿になり宗介の家に転がり込む。
が、その結果世界のバランスが崩壊し町は海に沈んでしまった。嵐の中出ていって帰ってこない母・リサを探しに宗介とポニョは旅立つが…。
宮崎駿4年ぶりの新作にして最後の作品となるか?
ここ数作、これで引退と言い続けてきたが、今作はいよいよそれが現実味を帯びてきた感じ。どうにもこうにも、整合性を放棄したかのよう
に話が混沌としているのである。耄碌して細かいつじつまを合わせられなくなったんじゃないかと勘ぐらずにはいられないのである。
つーわけで、今までの隅々まで作り込まれた美しき世界観と物語を期待するジブラー諸君には厳しい出来だったりするのだが、それはそれで
楽しめたりする剛腕演出と作画力(と財力)は健在。
つーわけでつーわけで、世間様では賛否両論なのだが、個人的には実にカオティックで大好き。”don’t think, feel”的な空気が、
どこか鈴木清順翁の映画のようなタナトスの香りを漂わせていて堪らない。子供向け映画だというのにねえ。
破綻しているくせに深読みする気になるといくらでもできるフラグがゴロゴロしているのは流石の年の功というか戦いの年季というか。
まあなんだかんだ言って結局宮崎映画の雰囲気が好きなのだということで。宮崎映画のおにゃのこが好きなのだということで。
今回のヒロインは完全にようぢょ。ハヤオのロリコン趣味もついにそこまで行き着いたか、という感じだが、まあ一途で純粋で無垢で
かわいらしい。(ハヤオがじゃなくてよ。)惚れた男のために世界を滅ぼしかける天然ファムファタル。しかし第2形態がインスマウス面で
こええ。
主人公の宗介少年は弱冠5歳ながら宮崎映画の主人公の魂を受け継ぐいい男。ハヤオにショタ魂がないのが実に惜しい。
相変わらず素人ばかりの声の出演だが、今回はまったくもって壊滅的。もう演技指導なんてどうでもいいのか。
結局の所、大人がああだこうだと騒ぎ立てるためにあるのではなく、子どもが瞳をキラキラさせて観るべき映画。童話だと思えば唐突で理不尽
な展開もありえるっしょ。
あ、本編終了後のスタッフロールの出し方にはかなり感動した。素晴らしい。
○「陰日向に咲く」 ★★★ (08.1.26/劇場)
STORY:父親とうまくいっていないシンヤはパチンコ中毒。浅草で母親の想い人の芸人を捜している寿子と出会った彼はその手伝いをすること
に。息子とうまくいっておらず人生に疲れていたエリート商社マン・リュウタロウはホラ吹きの老ホームレス・モーゼに憧れ出奔する。借金苦の
シンヤはオレオレ詐欺を働くが、相手の老婆の体調が悪化し気が気でない。そして東京に台風が直撃したその日、彼らに奇跡が舞い降りる…。
劇団ひとりのベストセラーを映画化。なれど原作未読。
なので、この物足りなさが原作起因なのか脚本起因なのかはわからない。まあ、前者ならそれを補って盛り上げようとしない脚本・監督の手腕が
問題だし、後者でも結局同様なわけだが。
複数の主人公たちがそれぞれに織りなすエピソードが最後にシュシュシュッと一つに収束するのがこの手の作品の醍醐味なのだが、そこが
何とも弱い。確かにジュピターさんの手紙にはまんまと泣かされてしまうのだが、そこ以外が食い足りないし、後味があまりよろしくない。
崖っぷちアイドルとその追っかけのエピソードなんて絡んですらこねえし。
岡田准一・宮崎あおいら俳優陣は悪くないだけに、うーん残念賞。
○「陽炎座」 ★★★★★ (01.7/劇場)
STORY:大正時代の東京。作家・松崎は偶然品子という女性と出会う。魅かれ合った二人は体を重ねるが、その後松崎は彼女が彼のパトロン・
玉脇の後妻だと知る。それでも、品子から意味深な文をもらった松崎は彼女の待つ金沢へと旅立つ。が、乗り込んだ列車には玉脇も乗り合わせ
ていた。彼は妻と若い愛人の心中を見物に行くのだと不敵に笑うのだった…。そしてたどり着いた金沢で松崎は次々と奇異に見舞われる…。
「ツィゴイネルワイゼン」に続いて鈴木清順監督が放つエロスとタナトスの夢物語。
やはりあらすじなど意味をなさず、話は齟齬を来しつつも滔々とかつ危うく流れ続け、見る者を夢のような曖昧な世界へと誘う。一度瞼を
閉じてしまうと、再び開けた時に物語が連続しているという保証はどこにもない歪曲した次元へと。
とか頑張って書いてみたのだが、よーするに話が難解で観念的な上に意識が朦朧としていたので細かい話は覚えていないということである。
しかし、それでも★5つなのだ。作品から滲み出る圧倒的な死の香りのなんと甘美なことか!
水面に浮かび上がる無数のほおずきと、陽炎座の無音の崩壊だけでもこの作品を見た甲斐があった。
主演は松田優作。イメージにそぐわない文士の役を危うく名演。憎々しい演技の中村嘉葎雄 、前作に引き続き登場の原田芳雄・大楠道代・
麿赤児が圧倒的な存在感を見せる。
○「火山高」 ★★★★ (03.1.16/劇場)
STORY:火山高では秘伝書”師備忘録”を巡り、教師・生徒が入り乱れて争いが続いていた。生徒NO.2のチャン・リャンは教頭と手を組み、
校長と生徒NO.1のハンニムを失脚させるが、肝心の”師備忘録”を見つけられず焦っていた。そんな中、あり余る力を制御できずに退学を繰り
返していたギョンヌが転校してくる。ただ平和に高校を卒業したい彼だったが、その力ゆえに否応なしに闘争に巻き込まれていってしまう。
どこからツッコミ入れていいのかわからない豪快なバカっぷりで、無駄にワイヤーとCGを使いまくったアクションともどもなかなかに
楽しめた。
長いとかダレるとか文句をつけ出せばキリがないけれど、心意気を買って及第点。ナイス大バカ!
登場人物全員が当たり前に空を飛ぶ様は「風雲ストームライダーズ」を見たときの衝撃を思い出した。結局みんな必殺技が衝撃波なのが単調
で残念。とはいえ爆発しまくりのラストバトルは熱い!
主人公ギョンスのすっとぼけた感じや女性陣の凛々しさ、”無情魔刀”チャン・リャン(日本でリメイクするならプロレスラーの高山キボンヌ)が
終始頭悪そうな顔して暴れるなど、無駄なプロフィール字幕付きで現れる登場人物たちは皆いい味出している。中でも後半現れる処刑
教師5人衆はえらくカッチョエエ。リーダーの魔方陣は日本でやるなら白竜。
濃ゆいキャラばかりなので、もっと掘り下げて続編なんか作ってほしいなあ、と。
日本向けに作られた元シャムシェイドの主題歌・BGMもなかなか好き。
○「華氏911」 ★★★★ (04.8.30/劇場)
STORY:ブッシュ大統領(04年8月現在)は阿呆ですよ。腹黒ですよ。911同時多発テロが起きたのをいいことに、恐怖感を煽って国民の権利
を奪おうとしてますよ。自分たちの利権のために全然関係のないイラクに侵略しましたよ。そこで実際に血を流すのは何も知らないアメリカ国民
たちですよ。
↑ということを情報コントロールされている、何も知らない、ブッシュは大統領なんだから偉いんだと思っているアメリカ国民に知らしめて、
ブッシュの再選を阻止せんとするプロパガンダ作品。
アメリカ国民よりもブッシュがアホなんじゃねえのかということやイラク戦争の状況を知っている我々から見ると確かに鼻につくところもあるが、それ
以上にやるせない現状に憤ったりげんなりさせてくれたりする作品。何にせよハッピーな気分で劇場を後にすることはないであろう。
こんなものを見せられてしまうと、アホの大将に追従せねばならない我が国を鑑みて絶望的な気持ちになってしまう。国民の自由を脅かす
法案が最近いろいろ出てきている辺り、他人事ではないのである。
罪もないイラクの民間人が爆撃で家を焼かれ家族を失いカメラに向かい泣き叫ぶ。アメリカのためと信じて疑わず息子をイラクに兵隊として送り
出し、その息子が戦死して初めて己れの信じていたものを揺さぶられ涙する老婦人の姿。
彼女たちは異口同音にこう嘆く。「神様は何故こんな仕打ちをするのか?神様は何故助けてくれないのか?」(両者の信じる”神”が別物
だというのがまた)
泣けるシーンなのだろうが、信仰心0のオイラはここでモーレツに冷めてしまった。そんな酷い目に遭ってまだそんなものにすがるのか。
(それともすがるもののないオイラの方が哀れなのか?)
○「片腕カンフーVS空飛ぶギロチン」 ★★★★ (04.2.7/DVD)
STORY:中国、清朝の時代。反政府運動の志士でカンフーの達人・片腕ドラゴンことティエンロンに弟子を殺された、超絶殺人兵器”空飛ぶ
ギロチン”の使い手・封神は復讐に立ち上がる。ムエタイの使い手ナイマン、インドのヨガ使いタラシンらを従えた封神に次第に追い詰められて
いくティエンロンだが、知謀の限りを尽くし反撃に転じる。そして、ついに二人の一騎打ちが始まった…。
タランティーノ先生の「キル・ビル」で大活躍したGOGO夕張の得物の元ネタ。かのタランティーノ先生が熱烈リスペクトするだけあって、
バイオレンスでワンダフルな怪作。
主人公は片腕のカンフー使い。片腕だがすげえ強い。その必殺パンチは劇中多くの猛者を屠る。しかし、強さの秘密はその知謀にもあるの
である。(後述)
対するは脅威の殺人兵器”空飛ぶギロチン”を操る盲目の老僧。一撃必殺の”空飛ぶギロチン”に加え、体術にも長ける。さらに爆弾を多数
所持。仕事のシメは大爆破。自分の家も大爆破。盲目なんで仇の顔がわからず、とりあえず片腕と聞くや片っ端から殺してしまうお茶目
さん。
彼の配下の外人部隊が多数出場する武術大会が前半の山場。
三節棍VS長槍!弁髪で相手の首を絞める弁髪術VSモンゴル相撲!下段蹴りの達人VS金剛拳!ジャワ拳法VS投げ縄使い!といった
男塾テイストな熱気溢れるバカファイトがてんこ盛り。
このナイスな天下一武道会も、片腕の蛇拳使いを仇と勘違いして首チョンパしてしまった封神さんの乱入で大混乱。主催者もギロチンの餌食
となり、最後は爆破でシメ!
(以下ネタバレ)
そして後半は封神&どー見ても中国人な愉快な外人部隊と片腕ドラゴンwith門下生との死闘が炸裂!つーか片腕ドラゴン、まともに闘って
も強いのに卑劣な策略で優位に立とうという主人公とは思えない行動を取ってくれます。
道場に乗り込んできた腕が伸びるヨガ使い(火は吹かない)を、伸びた腕を柱でへし折って必殺パンチで惨殺した後逃亡して体勢を立て直す
片腕ドラゴン。
次の標的はムエタイ使い。弟子が町中でタイっぽいラッパを吹いていると、音に誘われてムエタイ登場(笑)
まんまとおびき出されたムエタイは小屋の中で片腕ドラゴンと一騎打ち、と思いきや小屋を取り囲んだ弟子たちが小屋に火を放つ。なんと小屋
の床は鉄板で作られていたので裸足のムエタイはたまらない!逃げようとしても窓からは弟子たちが槍で突いてくるわ隙を見せれば片腕
ドラゴンにどつかれるわで結局無惨に鉄板焼きに。なんて気持ちの良くない勝ち方だ。
そしてようやく追いついてきた封神との最終決戦。
まずは道中仕掛けた地雷で軽いジャブ。竹林の中で闘いギロチンを刃こぼれさせて次は鶏小屋へ。盲目の封神は鳥の気配で攪乱され疲弊。
そして続いて片腕ドラゴンが誘い込んだのはトラップ満載の葬儀屋の中。うかつにギロチンを飛ばそうものなら家中に仕掛けられた手斧が
飛んできてささるわそれを鉄拳でねじ込まれるわと悲惨な痛めつけられ方をする封神さん。爆破もあまり効果を発揮せず、最後は必殺
パンチで屋根を突き破って吹き飛ばされて棺桶の中に叩き込まれてご臨終。哀れ。
卑劣な主人公とけったいな拳法家の博覧会状態でジャンプ…よりもチャンピオン的狂気に満ちた怪作。
○「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」 ★★★ (07.4.21/劇場)
STORY:”龍虎門”は孤児たちに正義と武術を学ばせる道場。そこで育った青年・タイガーは、チンピラとの諍いから闇の組織”羅刹門”と争う
ことに。そこで出会った敵の用心棒は生き別れた兄・ドラゴンだった。悪から足抜けし”龍虎門”に戻ろうとしたドラゴンだが、恩人を殺され、一方
”龍虎門”も”羅刹門”のボス・火雲邪神の襲撃で壊滅させられてしまう。兄弟と仲間のターボは修行で必殺技を会得し”羅刹門”に乗り込む…。
無敵の龍がいた。最強の虎がいた。
千葉繁の「北斗の拳」予告チックな魂を揺さぶる絶叫トレーラーが熱い香港のカンフー映画。
あくまで生身アクションがメインで、そこにワイヤーアクションやVFXで演出をつけている、「ハリウッドのエセアクションと一緒にすんなや
ゴルアッ!」的気概の作品。
しかし主演&アクション監督がドニー・イェン先生であるため、なんだか主役兄のドラゴンばかりが目立ちまくる感がありちとバランス悪め。
もう一人の仲間のヌンチャク使いのターボなんか影薄ー。
ともあれ、20代の青年という役どころを無理矢理ロン毛前髪で誤魔化して堂々と演じきるドニー先生の勇姿には苦笑しながらも拍手。
戦闘シーンは非常に格好良く、特にラスボスのおっさん体型の火雲邪神の凶悪な強さが印象に残る。
道場破りに来て奪った看板で青龍刀持った”龍虎門”の師父を打ちのめす初戦闘シーン(「ハイスクール奇面組」の五重塔で看板を
持ってく話を思い出して劇場で笑いを堪えてたのは世界でオイラ一人だけですかねそうですよね。)から、必殺技を修得したタイガーと
ターボの二人を唯一人で迎撃し、迎えるドラゴンとの頂上決戦と、実は主人公なんじゃねえの、という活躍っぷり。
でもタイガーの必殺技の名前が「ドラゴンドリル」なのは納得いかん。タイガーキックとかタイガーシュートとかタイガージェノサイドとかタイガー
アッパーカットとかシャドウバイキングタイガークローとかあるだろ。
つーわけでアクションシーンは素晴らしいが他のシーンがひたすら眠かったので地味な点数。
なんだか面白かったけれど物足りない、という印象が「カンフーハッスル」と被る。ラスボスの名前も同じだしな。
後日思い出して感想を書くも何も、劇場を出た瞬間に「結構面白かったけれど内容をまるで思い出せない」という状態になったのには参った。
あと、パンフにありがちな”各界著名人からのオススメコメント”のページがあるのだが、コメントを寄せているのが綾小路翔(氣志團團長)、
ZEEBRA(くそしてねろ)の二人と、江田島平八(男塾塾長)、剣桃太郎(男塾1号生筆頭)というのが、なんだか友達いない子みたいで
イタかった。
○「カナリア」 ★★★ (05.6.28/劇場)
STORY:無差別テロを決行したカルト宗教”ニルヴァーナ”が解体され、教団内にいた子供たちは施設での馴致を経て社会復帰していった。
しかしその中で一人反抗的だった少年・岩瀬光一は、引き離されてしまった妹を取り戻し母親を探すため大阪の施設を脱走する。旅の出だしで
光一は偶然、同年代の少女・新名由希を助ける。誰かの役に立ちたい、という由希は光一に勝手に同行し、二人は東京へと向かうが…。
あらすじを見てわかる通り、劇中のカルト宗教というのはオウムがモチーフなわけだが、別にオウムが何を思ってあんな事件をしでかしたのかとか
その後教団と信仰を失った彼らはどうなったのかとかいった話ではない。教団の話は本筋ではなく、迷える子羊たちが傷つき苦しみ藻掻き
ながらそれでも成長しつつ生きていくという普遍的なお話。
まあ普遍的=ありきたりとも言えてしまうわけだが。
実際作中で皆あまり成長もしないし一応ハッピーエンドと見せかけて未来は明るくなかったりもするわけだが、懸命に生きていく子供たち
にエールの一つでも送ってあげたくはなる映画。
所々吹き出しそうになる妙におかしな画があるのが印象的。レズカップルを淡々と見つめる二人とか、総白髪とか。
主人公のa boy & a girlの石田法嗣(柳楽優弥をもっとゴツゴツさせた感じ)と谷村美月(耳デカい)は拙いながらもなかなかの存在感で
将来に期待。
西島秀俊は相変わらず駄目人間を演じるのが上手い。
○「神様のパズル」 ★★★ (08.6.19/劇場)
STORY:寿司屋見習いでロッカーの綿貫基一は彼と対照的に優等生の双子の兄・喜一から海外旅行中の大学の授業の代返を頼まれる。が、
アクシデントで喜一は当分帰って来れなくなり、基一はさっぱり理解できない難解なゼミにまで出ることに。そこで天才少女・沙羅華と出会った
基一は、何故か彼女と宇宙創造の謎に迫ることに。人為的に宇宙を創造できるならば、神などいないことになる。果たして研究の行方は…。
角川ハルキ大先生が獄中で憂鬱な日々を送っていた中出会った、小松左京賞受賞のSF小説をプロデュース。
監督はクラッシャー・三池崇史だが、「ちゃんと作らないと殺す」と脅されたので至極まっとうな雇われ仕事ぶり。
かくして満を持して’08年初夏の邦画大作戦線(敵は「ザ・マジックアワー」と「築地魚河岸三代目」)に打って出たのだが………、
結果は、大★惨★敗。
そりゃそうだ、これはちょっと大衆向け娯楽作として全国拡大ロードショーする題材ではないもの。
それでは駄作なのかと問われれば、案外そうでもなかったりして。
宇宙創造の謎から神の存在の真偽に至る固〜い問題を実にわかりやすく噛み砕いて説明してくれて、理系が苦手な人にも安心設計。
だがしかし、どう考えても万人受けする内容ではなく、もう少し規模が小さい上映だったらこんなに叩かれたり東映が大赤字で被害を被った
り三池監督の株が下がったりハルキ先生がやっぱりおかしい人だとバレたりしなかったものを。まあ成功してもやっぱりおかしい人なのはバレ
バレだけどなあ。
ようやっと内容の話。
前述の通り、柔らかめの原作でさえなおカチカチの物理の話を更に噛み砕いた脚本はまずまず。(前半は、だけど。)
主人公を物理とはまるで縁遠い落ちこぼれ寿司屋ロッカーに設定し直したのはGJ。
しかし後半は脚本大幅息切れで雑な作りになってしまうのが惜しい。まあ三池&NAKA雅MURAコンビだから仕方がない(笑)
沙羅華の宇宙創造シミュレーションの辺りがバッサリとカットされてしまっているのが勿体ない。スケールダウン。
せっかく主人公をロッカーに設定変更したのに、前半で音楽とプログラムの話を端折っちまっているのでクライマックスの第九がまったくもって
唐突なのが勿体ない。つーか支離滅裂。でも何故かギター構えてるわマイクスタンドがあるわという力業の演出は流石すぎる。まあその
せいで一般の観客はドン引きで余計に作品が破綻してしまうわけだが。
主人公の双子を演じるは市原隼人。愛すべき落ちこぼれ君を好演。今年は飛躍の年だの。
ヒロインの天才少女に谷村美月。胸、でかいのね。
学生役を違和感なく演じているフットボールアワーの岩尾が笑える。小島よしおもひっそりと出演。
○「仮面ライダー555 パラダイス・ロスト」 ★★★★ (03.8.30/劇場)
STORY:遠くない未来。世界はオルフェノクによって支配されていた。わずかに生き残り、隠れ住む人間の中には、スマートブレイン社と戦う
人類解放軍も存在していた。その中心にいるのは園田真理や仮面ライダー・カイザこと草加雅人や、人間との共存を願うオルフェノク・木場勇治
らだった。しかし、彼らの信じていた救世主・仮面ライダー・ファイズはスマートブレイン社との死闘に敗れ、行方不明となっていた…。
ぶっちゃけアバレンジャーどころではなくTV版を途中の一話くらいしか見ていないので、ほとんど知らないに等しいのに見ることになってしまった
ファイズ劇場版。
こちらはTVとは地続きではない番外編的造り。(TVの最終話という説も)
なのでいきなり人類滅亡寸前、主人公生死不明という素晴らしい状況から話はスタート。同時上映のアバレンジャーとまるで正反対に、暗く、
重い展開。劇場に来ていたジャリどもの反応はストレートで、アバレん時はみんなシーンとして席に座ったままアクションに見入っていたのが、
こっちでは終始泣く騒ぐ出歩く始末。
しかし、大きいお友達にとってはものすごくいい出来の作品だったりして。
敵の一万人ライダー軍団(そんなにいねえじゃん)の前にズタボロにされ敗北するファイズ、追い詰められる人類、空飛ぶ新ライダー・
サイガ(変身するのは外人で、セリフは全て英語なのだが、字幕が一切入らないという演出はすごい)の脅威の戦闘力、たまらなくセンチな
仮面舞踏会…そして後半の怒濤の展開つるべ打ち!
CGを駆使した戦闘シーンも熱いし、TV版をよく知らない人でも十分に楽しめる秀作。ただ、まるで子供向けではなく(トラウマになりそうな
シーンもあるし)、同時上映のアバレと完全正反対なのはどうなのかのう。
あと、バックパックからジェット噴射して空から襲い来るライダー・サイガを見て即座に彼の勇姿を思い出してしまったオイラはクリムゾン・
スマッシュの刑ですか?…いや、火炎放射器は持ってなかったけれど。
ちなみに、序盤〜中盤の主な戦場となる人類解放軍のアジト=閉鎖されて久しい寂れた遊園地なのだが………ここってすごく見覚えがある
ような………つーか実家からちょっと行くと観覧車が見えるあの潰れた遊園地なような気が………。
○「鴨川ホルモー」 ★★ (09.4.27/劇場)
STORY:二浪して京都大に入った安倍は帰国子女の高村と共に「京大青龍会」の新歓コンパに出席。そこで同じく新入生の早良京子に一目
惚れした安倍は大木凡人に酷似した楠木ふみらと共に入部する。そして知る驚愕の事実。そこはオニを使役して戦う「ホルモー」のチームだった
のだ。特訓の後に安倍たちは他大学との対抗戦に出陣。仲間の芦屋の奮戦で戦いを優位に進めるが、高村のミスで敗北してしまい…。
鼻フェチで熱狂的さだまさしファンの冴えない大学生が神々の不思議な遊戯に巻き込まれて古都を舞台に繰り広げる恋あり笑いあり涙
あり戦いあり友情あり祟りありの痛快青春活劇。万城目学の小説を映画化。
元が面白いのでうまくやればちゃんと面白くなるはずだったのだが、監督のセンスが皆無で、原作からの取捨選択が間違いだらけで大事な
エッセンスがザクザク削られて悲しい結果に。原作が大好きなので非常に切ない。
栗山千明じゃ細すぎて大木凡人にゃ見えんだろとか原作であった伏線を無視してるから高村がチョンマゲになる意味ひいては「ホルモー」と
叫ぶことの恐怖がわかんないだろとかホルモーの試合に戦術性がなさすぎるとかホルモーが神事であることへの畏敬が込められてないとか
まさしへのリスペクトが足りないとか終盤のオリジナル展開がgdgdだとかせっかくEDがベボベなのに勿体ないとか、まっこと残念なことに
文句ばかり出てきて困る。
主役は山田孝之。同時期公開の「クローズZERO U」では勇ましい頼れる男役なのにこっちでは「電車男」に逆戻り。
ヒロインに栗山千明。すっかりカテゴリー女優だの。
○「花様年華」 ★★★ (01.10/劇場)
STORY:’62年、香港。同じ日に同じアパートに引っ越してきた二組の夫婦。新聞社に勤めるチャウとその隣人となった商社勤めのチャンは、
しばらくして、互いの配偶者同士が浮気していることに気づく。以来、会うことが多くなった二人も段々と魅かれ合っていくが、決して一線は越える
ことはなかった。そして、募る想いについに耐えきれなくなったチャウは香港から姿を消す…。
「恋する惑星」、「天使の涙」のウォン・カーウァイ監督最新作。
バカ映画好きのくせに恥ずかしながら、オイラはウォン・カーウァイのオサレな作品が好きだ。クリストファー・ドイルのグリグリ動くカメラが
好きだ。
しかし今回の舞台はネオンもポップサウンドもない香港1962年。夜の街ではしゃぐタケシ・カネシロもいない。(何故か「アンドロメディア」で
悪役をやっていた)クリストファー・ドイルのカメラも悪酔いしそうなグリグリ動きをしない。
あー、大人の映画ですな。ボク子どもだからよくわかんないや。
つーか、オイラにとってこの監督の作品の魅力といえば、クリストファー・ドイルが手持ちカメラできらびやかに映し出すネオンとおっしゃれー
なポップチューンと静かなモノローグなのだが、それが三つとも欠けてしまっているとなると…。
その分、ものすごく静かで落ち着いていてムードはあるのだが。最後の夜明け前の世界遺産の風景はそりゃもう美しいし。しかし、そんなものが
見たくて劇場に足を運んだ訳ではないので…。
中盤よく使用されて、トニーのタバコの煙と共に印象的だった音楽、微妙に聞き覚えがあると思ったら、清順師の「夢二」のメインテーマだ
そうで。。
○「カラスの親指」 ★★★★ (12.11.26/劇場)
STORY:頼りないテツと詐欺師コンビを組むタケは、借金で闇金の傀儡となり、罪もない母親を自殺に追い込み、自分の幼い娘も失うという忘れ
られぬ過去を背負っていた。その死なせてしまった女性の娘・まひろが生活に困りスリを働く現場に居合わせたタケは、アパートを追い出されると
いう彼女に住居を提供するが、何故か彼女の姉とその恋人まで転がり込んでくる。だが、その奇妙な共同生活は、残酷な形で終わりを迎える…。
道尾秀介作品、初の映画化。直木賞取って知る人ぞ知るから一般大衆にまで知名度を広げつつある新進気鋭の作家の初の映像化、という辺り、
先月の辻村深月と共通するようなそうでないような。
作品的には緻密に伏線を張っていって最後の最後に鮮やかにどんでん返してみせる辺り、傑作「アフタースクール」を彷彿とさせる。役者の
パブリックイメージをも逆手に取る辺りも似ている。
なので何を語ってもネタバレになりかねないのであまり語れないのが痛し痒しだが、本当に伏線が丁寧。二回観ると細かさに感動するはず。手紙
の筆跡とかね。
伏線を丁寧に仕込んでいるので上映時間が2時間40分もあるのが難点なれど、長さを感じさせない密度なのが偉い。やはりある程度厚みが
ある原作があるものをちゃんと映像化すると長めになってしまうのだな。
原作の大事な所はきちんと残し、煩雑になるところはカットし、改変して盛り上がるであろうところは大胆に変えてあって好感が持てる。
冒頭のツカミの詐欺の規模が大がかりになっていたり、メインの詐欺が狂言でなくなっていたりはいい改変だと思う。
貫太郎がデブじゃなかったりインポじゃなかったりは…まあいいか。
主人公の悲しい過去を背負った詐欺師に阿部寛。2012年は人情派の刑事から古代ローマ人に詐欺師と大活躍だの。
相方のポンコツ詐欺師にまさかの村上ショージ。ドゥーッ!このありえべからざるキャスティングがなかなかハマッてしまったのだから面白い。
ただ、最後のきりもみどんでん返しのところまで演技が変わらないのが素人俳優の悲しさで、それがなければ文句なしで満点だったのだが。
が、そこを抜きにしても大健闘と言える。
ヒロインに、石原さとみを差し置いて、ほとんど新人の能年玲奈。ほとんど新人でビジュアル優先なので演技力は推して知るべしだし、顔だけ
見ると石原さとみを差し置いてまでヒロイン張るほどかわいいわけではないのだが、太ももや役柄や太ももなど、総合的に見ると………
う〜ん、かわええ!個人的にクリティカルヒット。
ほとんど新人にヒロインの座を取られてしまった準ヒロインに石原さとみ。これまた謎のキャスティング。不思議ちゃんキャラがあんまり合ってない
のだが、まあかわええので許す。
その不思議ちゃんの恋人のこれまた不思議くんに、小柳友。ブラザートムの息子で元ワンオクのドラムなのか。何その経歴。
つーわけで予備知識を入れずに観るのが吉。騙されたと思って。詐欺だけに。(ドヤッ!)
○「借りぐらしのアリエッティ」 ★★★★ (10.9.13/劇場)
STORY:心臓の手術を控えた少年・翔は、療養のためかつて母が暮らした古い洋館を訪れたが、その庭で小人の少女を目撃する。
彼女の名はアリエッティ。館の地下で両親と、必要な物を人間から借りながらひっそりと暮らしていた。その晩、初めて館に”借り”に
出かけた彼女は翔に再び見つかってしまう。小人たちには人間に見られたらその家を出て行かなければならないという掟があった…。
スタジオジブリが送る非・宮崎駿監督作品。
宮崎駿の衰えぶりはここ数作を観れば顕著。ジブリとしては次世代の監督を育成するのが急務なわけで。
ああ、宮崎吾郎?なんだそれ喰えんのか?
つーわけでジブリが誇るいかがわしいプロデューサー鈴木によって担ぎ出されたのは、それまでアニメーターで演出などノータッチ
だった米林宏昌昭和48年生まれ(うわっ、タメやん…orz)。さて、新米監督の手腕やいかに?
結論から言うと、十分に及第点で楽しめた。アリエッティたち小人の”借りぐらし”の様子や長年掛けて作った様々なギミックや
小道具、美しい自然描写………って、作画のことばっかじゃん!
そりゃあ天下のジブリ様、金も人材も豊富なので作画の描き込みや枚数はバッチリで、流石のクオリティ。見てくれがしっかりして
いるし、素人声優たちも別段破綻なく頑張っているので何も考えずに観ている分には問題なく良作。
でもなあ、話が薄〜いのよね。小人の少女と人間の少年の心の交流もなんだか深くないし、クライマックスだというのに手に汗握る
ハラハラドキドキ作画力入りまくり動画動きまくり演出冴えまくりなアクションなんかも存在しないし、なんで日本の家の地下に外人
の小人がいてしかも日本語を理解するのかというのも疑問だし、ちと食い足りない。脚本は宮崎駿なんだけどね。
公開前のスチルで見た段階ではそんなにかわええとは思わなかったアリエッティだが、ちょこまか動き回ってなかなかにキュートだった。
しかし内面の掘り下げとかが全然足りないがために他のジブリのヒロインと比べるとどうしても印象は薄い。
中の人の志田未来はまずまず好演。まあ可もなく不可もなくというレベルだけど。
しかし、今や日本の若手女優の中で最もいじめられっ子が似合う志田未来嬢を起用しているんだからもっともっと酷い目に遭って
くれないと困るなあ。(まさに外道!)
人間の少年の翔も同じく描写不足で何がしたいのか今一つわからんキャラに。
アリエッティの父親は寡黙ながら勇敢で優しいパパさんですげえカッケー。それだけにクライマックスで活躍の場がなかったのは残念。
お茶目な母親は…あのキャラデザでよかったような気もするし、もっと萌えキャラ風でもよかったような気もするし…。
今後も試行錯誤しながら後継者を探していくのか、いっそ監督は外部から招聘して高クオリティな下請けに徹するのか、どの道が最善
なのかは新人さんたちの作る作品をもう何本か観ないと答えは出ないのだろうて。
○「感染列島」 ★ (09.1.20/劇場)
STORY:東京郊外で新型インフルエンザが流行、死者が多発する。感染は全国に拡大、問題のウィルスが発見されず死者数は増え続けて
いた。第一感染者を診察した若手医師・松岡も不眠不休で治療に当たっていた。彼の前にウィルス特定のためWHOから派遣された研究者
は、昔の恋人・栄子だった。抗生物質も効かずなお死者は増え続け、松岡たちは病原が謎の新型ウィルスではないかという疑問を抱くが…。
新型インフルエンザ大流行という最悪(最高?)なタイミングで公開されたウィルスパニック映画。
致死率60%、末期には大量に吐血し眼窩からも血を流し壮絶に事切れる謎のウィルス”BLAME”と人類(つーか日本人)との戦いを
描いているのでそりゃもうボコボコ人が死ぬ。感染者が増えるとどんなパニックが起きて都市機能が麻痺して国が死んでいくかという緻密な
シミュレーション映画としての要素は残念ながらまるでないのだが、死の街と化した東京各所のビジュアルはなかなかに薄ら寒くて壮観。
ほとんど出てこないけど。
そりゃまあヒロインがケツアゴで萎えるとか佐藤浩市の使い方が酷すぎるとかシマキューがゲホゲホいいながら東南アジアまで渡航してん
だから感染は国外にも広がってなくちゃ変だとかそもそもあんな状態で出国の時に止められないんかとか突然のゾンビ映画パートはいらん
だろとかツッコミどころはたくさんあるのだが、
とにかく泣かせ方が不愉快で腹が立った。
時期を同じくして公開されている「252 生存者あり」はTV局主体のパニック映画で人はボコボコ死ぬものの所詮一般大衆向けのお涙
頂戴のなんちゃって感動ムービーなところが似ていると思うのだが、「252」の泣かせ方が、”大ピンチだ→みんなで力を合わせて乗り
切ろう→よかった、生きてる!”というパターンなのに対して、こっちは”大ピンチだ→みんなで力を合わせて乗り切ろう→あー、でも死ん
じゃった。悲しいねえ切ないねえ”というパターンばかりで、どうせある程度ハッピーエンドで落ち着くのは見え見えなのに不必要に殺し
が多くて何とも反吐が出る。酸素吸入器が足りなくて…という後味が悪すぎるエピソードもなくても何も困らねえよな。
カンニング竹山・爆笑問題田中・ソフトバンクのCMの黒人など本業以外の人の演技がわりと達者だった。
○「監督失格」 ★★★ (11.12.19/劇場)
STORY:AV監督・平野勝之は、’96年、AV女優・林由美香と東京から北海道まで自転車で旅をするというドキュメンタリを撮影したが、
完成後、二人は別れた。その後、由美香を引きずり万事うまくいかなくなった平野は、原点に帰るべく再び由美香を撮影することを決意。
’05年6月28日、連絡が途絶えた彼女の部屋のドアを、平野は彼女の母親と共に開けた。その時、手持ちカメラは回ったままだった…。
とある映画兼AV監督の破壊と再生を赤裸々に綴ってしまうドキュメンタリー。
話の核にいるのは、AV女優の故・林由美香。遠い昔(多分前世紀)、1本だけ出演作を見たことがある。それを覚えているんだから
それなりに印象深いのかな。決して美人ではないが、個性的でかわいい顔立ちという印象。
実際、この作品で切り取られた彼女は、AV女優というエキセントリックな職業でありながら、ただ人並みの幸せを探し続ける、なんとも
かわいらしい女性だった。
監督であり主演でもある平野勝之と林由美香は公私ともにパートナーだった(不倫だけど)のだが、別れてしまった。
そのことを引きずったままの平野の彷徨を映し出す前半部もまあ面白いのだが。
ここで撮影されている「由美香」という映画は当時から観たかったのだが、結局未見。
そして、平野はおよそ10年ぶりに彼女を撮影しようとするが、撮影当日に彼女が姿を見せない。翌日も音信不通。
そんな不義理をする性格ではない、と異常を察した平野は、彼女の父親のような外見の母親と共に管理人から借りた合い鍵でマンション
のドアを開ける。
幸か不幸か、ドキュメンタリータッチの作品を得意とする監督だったため、ハンディカメラをその時も回し続けていた。(つっても母親の
前でハメ撮りするわけでもないだろうにねえ。)
そして、途中から床に置き忘れられたカメラが無情にも映し続けるのは、愛する人を不意に失った時に、人間はどれほど狼狽えるのか
という生々しすぎる、痛々しすぎる、姿。
あまりに唐突すぎる暴力的な衝撃の展開を経て、5年経って、ようやく平野監督は立ち直る。由美香の父親のような外見の母親と
共に、再生の道を歩み出す。
最後に平野監督は儀式のようなものをして、振り切る。踏み出す。傍目から見ればなんとも不格好で独りよがりな姿だし、本当に吹っ
切れたのかは定かではないなのだが、自分自身だけが納得できればそれでいいんだよな、と胸を打たれた。近所迷惑だけどね。
公開時話題を集めたのは、この作品のプロデューサーが庵野秀明だったということ。
「エヴァ」旧劇場版で煮詰まっていた折、「由美香」を観て癒されたことで知り合ったという。
その恩に報いるため、今回、煮え切らない監督の尻を叩いて作品を完成までこぎ着けたのだという。
なかなかイイハナシである。
しかし、これだけは、声を大にして叫ばねばならない。
他人の世話している暇があったら自分の映画をとっとと完成させやがれ!
どーせ2013年完結なんてしないんだろうけどな。
劇中、地味にスナップ写真の端々に写っていることがなおさらウザッたい。
これを読んでいる段階でもう手遅れなのだが、何も情報を仕入れず観た方が後半の超展開に腰を抜かせると思う。もう遅いけど。
○「カンフー・ハッスル」 ★★★★★ (05.1.1/劇場)
STORY:文化大革命前の混沌とした中国。冴えないチンピラのシンは、街を支配するギャング・斧頭会の名を騙り、貧乏長屋・”豚小屋砦”の
住人から金を脅し取ろうとしたが失敗、挙げ句、斧頭会と豚小屋砦は全面抗争に突入してしまう。豚小屋砦にはカンフーの達人が3人もおり、
斧頭会は敗走。激怒した組長は現役最強の殺し屋を差し向ける。殺し屋の奥義に絶体絶命の達人たち。しかしその時…。
「少林サッカー」から2年半、我らがチャウ・シンチーが満を持して放つフルパワーカンフーコメディ。
往年のカンフースターたちが次々と登場し秘技を繰り出し闘うアクションが主体で、コメディ風味は若干ダウン。アクションは話が進むに
つれどんどんエスカレートしていきCGの使い方も猛加速。「マッハ!」のガチさも勿論素晴らしいが、こちらの少年ジャンプテイスト全開の
マンガなアクションもめっちゃ楽しい。大家夫婦の合体必殺技や覚醒したシンの「マトレボ」な活躍っぷりや石破天驚拳な最終奥義と後半
は手に汗握りまくり!
つーわけで新年一発目から★5つなのだが、正直「少林サッカー」と比べてしまうと何とも食い足りないんだよなあ…。
○「キサラギ」 ★★★★ (07.7.31/劇場)
STORY:アイドル歌手・如月ミキが謎の焼身自殺を遂げてから1年後、オフ会で知り合った彼女の熱狂的ファンの5人の男がビルの一室で顔を
揃えた。一周忌にあたり彼女を偲ぶ、という名目で実際に顔を合わせるのは初めてだった。ぎこちない雰囲気ながら会は始まり、次第に場の
空気が和んできた時、一人がこう告げた。「如月ミキは自殺なんかじゃない、殺されたんだ」。そして、犯人はこの5人の中にいる…。
舞台は(何故か「立喰師列伝」っぽい回想シーンを除けば)一部屋の中だけ、登場人物は(何故か「立喰師列伝」っぽい回想シーンを
除けば)5人の男だけ、という舞台風のミステリコメディ。
なので、脚本がダメでも俳優がダメでも即駄作となってしまうシチュエーションなわけだが、これが見事に良作に仕上がっていてGJ!
まず肝心要の脚本が秀逸。伏線を綺麗に張って綺麗に回収しており好感が持てすぎる。
如月ミキの死の真相に男たちが少しずつ近づいていく一歩手前で、ヒントを観客にこれ見よがしにヒラヒラと見せつけてくれる演出手腕も
上手いなあ。終盤ややもどかしくなるけど。
監督は「シムソンズ」の人。やはりあれはフロックじゃなかったと確認できて安心。
そして俳優陣も熱演。
何でもこなすウルトラ・バイプレイヤーの香川照之に加え小器用なユースケ・サンタマリアと塚地武雅という布陣の段階でかなり安心なの
だが、更に、不安材料の若手二人−(役柄が)なんかかわいい小栗旬、うざい狂言回しの小出恵介も好演しており何ともいいことづくめ。
優れた脚本と演出と演技のハーモニーの末に解き明かされた事件の真相にはちょっとホロリとしてしまいましたよ。
それだけに、その後のアイドルの顔出しと宍戸錠の暗躍はちといただけない。
アイドルは本当に微妙な感じで、それならばいっそ山田花子とか光浦靖子とかまで落としちゃった方がオチとしては綺麗なんではないか
と。
宍戸錠については…うははは、ただのジョークということで。
間違っても宍戸錠主演でパート2とか作ってくれるなよ。
○「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」 ★★★★★ (03.11.23/劇場)
STORY:余命あと半年ながら悲壮感のない”ぶっさん”は、相も変わらず”バンビ”、”マスター”、”アニ”、”うっちー”とつるんで朝は草野球、昼
はビール、夜は怪盗団”木更津キャッツアイ”という毎日を送っていた。死んだはずの町の人気者ホームレス・オジーが復活したり、氣志團の
ライブの前座に指名されたり、そして韓国ギャル・ユッケに恋してしまったりと、ぶっさん最後の夏は刺激的に幕を開けるが…。
「木更津キャッツアイ」とは、’01年の放送時はさほど数字を上げられなかったものの、放送終了後口コミで徐々に噂が広まり、ビデオ・DVD化
後に人気爆発して今日に至るカルトと呼ばれてしまう類(らしい)のTVドラマである。
何をしてこのTVドラマをカルトと言わせしめているのかといえば、”主人公は哀川翔の大ファン”、”「キャッツアイ」、「シティーハンター」、「ミナミ
の帝王」…飛び交うマンガネタ”、”氣志團、加藤鷹、ピエール瀧、YOU…個性的なゲスト陣”といった、一般人が理解するにはちと濃すぎる
ネタをしかも高密度にちりばめた宮藤官九郎(愛称クドカン)の脚本であろう。
加えて、話の後半に仕掛けられたどんでん返しと、それ(物語の主筋の裏では何が起きていたか)を説明するために突如話が分岐点まで
巻き戻される”表・裏”という野球見立てのトリッキーな構成が斬新かつ愉快だった。
もちろん主人公たち5人組のスットコドッコイな汗と涙とその他諸々アレな汁混じりの青春ドラマも、スラプスティックかつリリカル時にリアルで好評
を博した。
そんな一部の人に熱狂的支持を受けたTVドラマの続編にして堂々の劇場版がこの作品である。
もう、のっけからヤクザの哀川翔とテキ屋の哀川翔がグラウンドでシノギを削る”哀川翔主演映画1,000作達成記念映画”「ヤクザ球団VS
テキヤ球団」が始まり、翔さん渾身の分身魔球を翔さんがお好み焼きのコテで打ち返す!という展開に大爆笑&テンション上がりまくり。
更にその直後に待ち受ける意表を突きすぎる豪華ゲストによる意表を突きすぎる茶番劇に早くも誇張抜きに抱腹絶倒!
とまあ、TV本編以上の悪ノリ&ハイテンションで送る今作は、笑いありアクションあり歌あり踊り(主に”やっさいもっさい”)あり友情あり涙あり
感動ありスペクタクルありとサービス満点の一大ジェットコースタームービーとなっており、TV版が好きだった人にとっては、まず間違い
なく大満足できるっつーか満腹しすぎて腹が痛くなること請け合いの大大大傑作である。
四の五の言わずに見るべし。そして後半の怒濤の展開に口を大きくアングリと開け!つーか誰が予想できるかあんな展開!!!
CGのどうしようもなく無駄な使い方といい、クドカン激しく三池崇史化。この調子だと「ゼブラーマン」はどんなすげえことになっちまうんだ?
主役クラスから端役に、翔さん・氣志團らゲスト陣までオリジナルキャストとスタッフが総結集してオリジナルなままのキャラを再熱演。薬師丸
ひろ子の熱演がヤヴァイ(笑)
ウッチャンや船越英一郎(笑)ら映画のゲスト陣も豪華。ヒロインはユンソナ………オイラ大嫌いなのだが…好演だったと言ってやろう。
とまあ、大大大絶賛で、今思い出しても噴き出してしまう今年一番クラスの当たり映画なのだが、弱点もちらほら。
一つは、TVドラマ全9話を見ていないと120%楽しめないという若干の敷居の高さと120分一本勝負ではない弱さ。
あとは、氣志團などに顕著に現れる時代性というか流行りものというか、そういうネタや役者の名前をギャグにしている(うはは、あの場面で
中尾彬をあんな役で使ったらそりゃあ爆笑だわ!とか)傾向があるので、何年も何十年も経ってからも普遍的に笑えるか、という疑問点。
そういった観点から考えると、数年後にはもっと下がった評価になっているかもしれないが、’03年晩秋のこの時には最高に楽しめたことを
ここに記録しておきたい。
○「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」 ★★★ (06.10.31/劇場)
STORY:癌で余命半年と宣告されるもしぶとく生きまくったぶっさんが逝って3年、木更津キャッツアイの面々は散り散りになっていた。ただ一人
木更津に残っていたバンビは、ある日、山手の空き地で空からぶっさんの声を聞く。メンバーを再結集し、声に従い空き地に野球場を作ると、
なんとぶっさんとオジーが黄泉がえり!ただしついでに奇妙な面々も現れ、一同はかつてのように大騒ぎをするが…。
TVドラマ〜映画「日本シリーズ」と続いた「木更津キャッツアイ」シリーズ堂々の完結編。
どうせまたぶっさん死ななくて、また続編作れるような終わり方なんじゃねえの?とか思っていたのだが、もう、ぐうの音も出ないほどに完結。
まさかここまでちゃんと終わらせてしまうとは…。出鱈目さが魅力のクドカン脚本だけに、ちと予想外で言葉を失う。
前作「日本シリーズ」がこれ以上はない!というくらい最高に楽しいお祭り映画だっただけに、その格差に戸惑ってしまったり。
映画を観てから数日間、思うように感想が書けず弱っていたのだが、結局↑これがすべてか。
映画の中くらい、現実の残酷な時の営みなんて忘れさせてほしかったっつーか。いつまでも変わらない青々しいキャッツでいてほしかったっ
つーか。彼らの成長をうまく受け入れられなかったっつーか。DVD見返すからいいけど。
翔さんと氣志團が出ないのもちといただけない。しかも氣志團の代わりがMCUってえのはどうよ?と思ったら意外に好演していてMCU株
大いに上がる。神無月はどうかと思うが。DVDが出る頃はもう世間から忘れられてるんじゃねえの?
♪永遠とか絶対とか言葉なんてもー 口にはしないよだって大人なんでしょう
でも絶対に時は僕らを刻み 永遠にしるす俺らの光り
ばいばい またね
○「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 EPISODE1」 ★★★★ (03.2/ビデオ)
STORY:警察もヤクザもかなわない岸和田最強の男カオルちゃん。昔、普通の小学生だったカオルちゃんは第二次性徴と共にみるみる成長
し、まるで不動明王のようになってしまった。心もすっかり逞しくなった彼は、中学卒業後、全国高校総番を目指して高校に入学、退学寸前まで
暴れまくる。そんなカオルちゃんが喫茶店でバイトする少女に恋をしてしまうが、彼女はシャブ中毒の父親のために体を売って金を作っていた。
主演は力!力!竹内力!で、一説には竹内力最高傑作の呼び声もあるこの作品(なにせ「カオルと書いてリキ!」だからねえ。)、見所は
15歳の高校生を堂々と演じる竹内力兄ィの勇姿。もう登場人物に「オッサンや」とツッコまれまくり!
とにかく力兄ィがよく動きまくる顔面芸で魅せまくってくれる。さらに痰大量に吐きまくり、終盤はツバとばしまくりヨダレたらしまくりと最早
顔面バイオレンスな大活躍で見ているこちらは笑いすぎて虫の息。
アクションも冴えまくりで、長ラン姿で殴る蹴る走る飛ぶ吼える撃つガン飛ばすと八面六臂の大暴れ。クライマックスのヤクザ事務所への殴りこみ
は爽快。はっきりいって、そのまま「真・三国無双3」に出て素手で呂布を瞬殺できます。
共演は田口トモロヲ。自称カオルちゃんのライバルのスネーク倉田役で、やはり学ラン着て15歳の高校生役を怪演。ナイスなヘタレぶりで、
「プロジェクトX」のナレーターとしてしか彼を知らない素人さんが見たら愕然とすること必至。まあ、知ってる人にとってはまったくもっていつもの
トモロヲさんだが。
話が意外にマトモなのと、女性陣が魅力薄なのが減点材料。
○「キス・オブ・ザ・ドラゴン」 ★★★ (03.6/DVD)
STORY:フランスで麻薬を扱っている中国マフィアの捜査のため、フランス警察に協力するべくパリに降り立ったリュウ。だが、捜査を進めて
いるリチャード警部こそが麻薬の仲介人で、リュウはマフィア殺しの罪を着せられ逃亡する羽目に。潜伏中に知り合った娼婦ジェシカが事件の
目撃者で、リチャードに娘を人質に取られ働かされていることを知ったリュウは、彼女と共に反撃を開始する…。
リュック・ベッソンが制作・脚本した作品でコピーが”「ニキータ」より強く、「レオン」より切ない”と、当然の如く「レオン」を引き合いに出して
いるのだが、当然の如く「レオン」を期待して見ると馬鹿を見るわけで、いい加減皆様だまされるのはよしましょう。
昨今のベッソン作品に共通することだが、ストーリーは適当で破綻しまくっていてどうしようもないのでただただアクションのみを楽しむ
べし。
とはいえ、今作は主演にジェット・リーを迎え、1時間半を全編カンフーカンフーまたカンフーだけで組み立ててあるので退屈せずに一気
に見てしまえる。見終わっても頭の中に何も残らないが。
ヒロインは老けたブリジット・フォンダ。ジェットと並ぶと彼女の方が背が高いのが笑える。
あ、あとラスボスは経絡秘孔をついて殺すので。
○「奇跡」 ★★★★ (11.7.7/劇場)
STORY:大迫航一は小学6年生。両親が離婚し、母親と共に祖父母のいる鹿児島に引っ越してきた。福岡に住む父と2つ下の弟・龍之介と
離れ離れの生活にも、毎日桜島の火山灰が積もるのにも、不満を隠せない。そんな時、九州新幹線が全線開通して上りのさくら号と下りの
つばめ号が初めてすれ違う瞬間を目撃すれば奇跡が起きて願いごとが叶う、という噂を聞き、それに賭けるため旅行の準備を始めるが…。
「誰も知らない」の是枝裕和監督作品。
九州新幹線が初めて上り線と下り線ですれ違う、歴史の中でたった一度しか巡り会えない奇跡の瞬間を目撃すれば願いごとが叶う。
バラバラになった家族を元通りにするために少年は、そんな根も葉もない噂を信じることにした。
ついでに、毎日火山灰の降り積もる鹿児島での暮らしにも辟易していたので、桜島が大爆発して人が住めなくなるので家族が合流する
という願いにした。なんでやねん。
大迫航一、小学6年生。母親と、その祖父母の家に転がり込んできた。
祖父は菓子職人だが、駅前商店街はすっかり廃れており、店も閑古鳥。
九州新幹線開通に便乗して何か新メニューを作って町おこしをしたいところだが。
祖母は暢気にフラダンス三昧。
いい加減な夫に愛想を尽かして離婚した母親は、まだ痛手から立ち直れていない。
父親が一人きりではかわいそうだからと父親と福岡で暮らすことを選んだ弟、大迫龍之介、小学4年生。
父親似らしく、かなり楽天家で女の子にもてる。でもしっかり者なところは似ていない。
兄弟それぞれが友だちを連れて、イチローのような野球選手を目指す者、学校の先生@長澤まさみと結婚したい者、ゆとり教育復活を
目論む者、ベイブレード世界一の野望をもつ者、仮面ライダーになりたい者…皆、様々な願いごとを持ち寄り、新幹線がすれ違う熊本を
目指す。
大人には基本的に内緒の旅のため旅費を捻出するのも大変。
結果的に、彼らは見事に歴史的瞬間に立ち会うことに成功するのだが、当然奇跡が起きて両親がよりを戻したり死者が蘇ったり軽羹が
桜色になったりはしない。するわけがない。
それでも彼らは昨日までの彼らではなくなった。
そう、その旅路そのものが奇跡のようなものだったのかもしれない。
というような話をドヤ!と自慢たらたらに描くのではなく、さりげなく優しく暖かく描写していて、観終わってささやかな幸福感を得られる
良作。
この世界の全ては奇跡でできてるんだよ! ← 恥ずかしいセリフ、禁止!!
子どもたちが実にのびのびと演じていて素敵だ。
主役の兄弟を演じるのは実際に兄弟の小学生漫才師・まえだまえだ。
家族思いの兄ちゃんとマイペースの弟を見事に好演。旅の夜に二人が寄り添うシーンが印象的。
弟の友だちの女優志願の女の子はなんと樹木希林の孫。つーことは内田ロケンロー裕也の孫にして本木雅弘の娘。
そんなにかわいくはないけれど、なんだかしっかりしてそうな子だった。
駄目な父親にオダギリジョー。息子の夢が仮面ライダーってのはこのキャスティングがあってこそなのかな?
くたびれた母親に大塚寧々。ずいぶんくたびれたなあ。
祖母に樹木希林。なんだかすげえ痩せた感じがして心配。
まえだまえだがもっとショタ受けのするかわゆい顔立ちだったら間違いなく2011年最高の映画だった。(まさに外道!)
○「キックアス」 ★★★★ (11.2.26/劇場)
STORY:デイヴはアメコミのヒーローに憧れる冴えない大学生。憧れが極まって通販で購入した派手なスウェットスーツに身を包み、
スーパーヒーロー・キックアスとして勝手にパトロールを開始するが、いきなりチンピラに刺され車に撥ねられ病院送りにされる。それでも
懲りずに活動を続けた結果、悪党と戦う動画が世間に広まり一躍人気者に。が、その影で活躍する真のスーパーヒーローがいた…。
2010年度映画秘宝ベスト1。
次の週にはTSU○AYA独占レンタル(国内配給がTSUT○YAの子会社)という状況だったがスクリーンで観たかったので強行軍。
スーパーヒーローに憧れるボンクラオタク大学生が本物のスーパーヒーローになるまでの物語。
まあ途中からずっと流されっぱなしだし最後までそんなに格好良くないのだけれど。ラストバトルでの登場もカッチョエエというよりは
笑っちまう感じだったし。「バトルランナー」を思い出した。でも空を飛ぶというのは冒頭の墜落して死ぬシーンの見事な対比に
なってるんだよね。
主人公を完全に食ってしまっているのがもう一組のスーパーヒーロー、ビッグダディとヒットガール。
ヒットガールは年端もいかぬ少女なのに、幼い時から父親であるビッグダディに洗脳もとい英才教育を受けた筋金入りの殺人
マシーン。
年端もいかぬ女の子だというのに悪党どもを刺し斬り突き撃ち蹴りバッタバッタと皆殺しにし、年端もいかぬ女の子だというのに
猥雑な捨て台詞を吐きまくる。そのパワフルな表情ときたら。
まったくもってグレイト!オイラも死ぬ時は脳梗塞とかじゃなくてヒットガールに蹴り+撃ち殺されたいものだ。
演じるはクロエ・グレース・モレッツ嬢。このままこの線で成長してほしい。
ちなみにビッグダディを演じるはニコラス・ケイジ。あまりはっちゃけないものの、抜群の存在感。
街中でのバトル(一方的にボコられていた)を携帯で撮影され、それがようつべに投稿されて時の人になるとか、ネット配信で公開処刑
されるとか、サイトのIPアドレスで家がわかっちゃうとか、今風なアイディアもアクセント。
音楽も実にいい使われ方をしていて、ドライブシーンや戦闘シーンなどシンクロ感が気持ちいい。サントラ欲しい。
諦めずに踏み出し続ければ夢は叶うと謡う、全てのボンクラどもに送るナイスなヒーロー映画。
○「KIDS」 ★★★ (08.2.19/劇場)
STORY:うらぶれた町で荒れた生活を送るタケオは、他人の傷を自分の体に移すことができる力を持つアサトと出会う。短気なタケオと優しい
アサト、まるで似ていない二人は何故か親しくなっていく。ケガをした子どもたちの傷を自分の体で引き受ける天使のようなアサトだが、彼には
かつて実の母親を刺したという秘密があった。傷ついていくアサトを見ていられないタケオは、その傷の移動先としてある男を紹介する…。
”せつなさの達人”乙一の短編の実写映画化。最近「失踪ホリデイ」、「きみにしか聞こえない」、「暗いところで待ち合わせ」と矢継ぎ早に実写化
されているが、こんな小品まで…。
原作は、そりゃもう大好きなのである。が、原作は年端もいかぬ少年たちのピュアな友情と成長の物語という所がいいのであって、初めて
劇場で不意打ちで予告編を見せられた時には主人公二人が普通に青年になっていて、そりゃもうガッカリだったのである。
ところが実際に本編を観てみれば、なかなかどうしてそんなに悪いものではなかったりして嬉しい誤算。
主演のピュアな青年・アサト役の小池徹平がハマリ役で、この寓話を成り立たせている。これはいいキャスティング。
普段のイメージよりはワイルドな役柄の玉木宏は可もなく不可もなく。
ヒロインは栗山千明。相変わらず現実から少しはみ出た存在感で、それが世界観に溶け込んでいる。口元に大きな傷があり、常にマスクで
隠しているという設定なのだが、傷が控えめなのがちと表現的に不満。原作では(黒乙一らしい)最高に後味の悪い消え方をしてくれるの
だが、流石にそこは変更されていて、儲け役。あ、個人的には傷の有無と関係なくマスクしていた方がかわいいかも(笑)
クライマックスの事故現場の俯瞰映像は受けを狙っているとしか思えん失笑ポイント。なんだこれ。
その後の流れがどうにも嘘臭くてねえ。イケメンが半裸で血まみれオレンジ★ロードで2人死にかかっているのに皆放置かよ。
原作の儚くも美しいショタ路線に思い入れのありすぎる人以外ならばまずはぼちぼち及第点かと。
しかしどうにも全体的にこぢんまりとしている感があるのは否めない。なんつーか、野暮ったいというか古くさいというか…。
○「キツツキと雨」 ★★★ (12.5.16/劇場)
STORY:岸克彦、職業木こり。もうすぐ妻の三回忌。定職に就かない一人息子が悩みの種。ある日、現場に向かう途中に見慣れぬ二人組を助けた
克彦は、映画の撮影隊だという彼らを成り行きでロケ地まで送っていく内に、成り行きでエキストラをすることになり、どんどん深みにはまっていく。
映画の監督は25歳の田辺幸一という覇気の全くない青年で、うまくいかない撮影に落ち込んでいたが、克彦との出会いで少しずつ変わっていく…。
主演・役所広司である。シリアスな役、泣ける役はもとより、時代劇からダイワハウチュまでこなしてしまう日本を代表する名優である。
だがまあしかし、まさか役所広司のゾンビ姿なんてものを見る日が来ようとは…。
「南極料理人」の沖田修一監督がまたもや送る、地味だけれどもすっとぼけていて、じんわり暖かくなれる小品。
無骨で実直な初老の木こり・克彦が出会ったのは、新進気鋭だが覇気がなくネガティブで押しが弱く経験不足の若手映画監督・幸一。
最近コミニュケがうまく取れない無職の息子と印象が被ったのか、克彦が親身に幸一に接していくことで、ゆとり教育の申し子っぽかった幸一に、
次第に活力が生まれてくる…。
ただ、撮っている映画があからさまに低予算なゾンビ映画というのがポイント。監督はじめスタッフ裏方がみんな真面目になればなるほど、熱く
なればなるほど、なんとも珍妙な絵面になってしまう。ゾンビに家族を殺された遺族の集まりの婦人会が「死ね−!」と連呼しながら竹槍を突き
続けるシーンとか実にシュール。
最初は部外者なのにノリノリな克彦にどん引きだった幸一が、いつの間にか立場が逆転するくらいに入れ込んでしまう風呂場のシーンなんか
は秀逸。
主演の役所広司はいつも通り萌えさえ感じてしまう安心の真面目かつおちゃっぴぃな演技。
もう一人の主人公のゆとり映画監督に小栗旬。どんどん成長していくのだが、それでも、有名ベテラン俳優に呼びつけられているのに両手を
ポケットに入れたままろくにおじぎもできない辺り、リアルでやだなあ、と思うのはオイラがおっさんだからか。
高良健吾や嶋田久作や山崎努ら脇役陣も、出番は少ないが、輝きを放つ。
しかし森下能幸はゾンビの役が似合う。思い出す限り、「ワイルドゼロ」と「東京ゾンビ」でもゾンビってたよな。氣志團の「キラキラ」のPVはちと違うか。
○「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」 ★★★ (05.6.2/劇場)
STORY:宇宙世紀0087、腐敗した地球連邦軍は、地球至上主義のエリート集団・ティターンズと、その対抗組織であるエウーゴとの内紛に
揺れていた。スペースコロニー・”グリーン・ノア”に住む少年カミーユ・ビダンは、かつて”赤い彗星”と呼ばれた英雄シャア・アズナブルとの
出逢いを経て、新たなガンダム・”ガンダムMark−U”を駆り、ティターンズとの戦いに身を投じていく…。
20年前のTVシリーズを、当時の監督であった富野由悠季が劇場三部作に再編成した第1弾。
今作ではカミーユとガンダムMKU・クワトロとの出会い〜両親との別れ〜大気圏突入、ジャブロー攻略〜アムロの登場までをわずか
90分に濃縮して一気に描いてしまう。
TV版の序盤はかなり覚えているつもりでいたのだが、観てみると記憶にないシーン多すぎで、結構新鮮な気持ちで観れてしまった(笑)
でも元々のを知らないで観にいった人には展開が早いわ人多すぎだわ専門用語ばっかだわでついていけないだろうなあ。
カクリコンとかライラとか出番5分くらいしかなく、カミーユ父の方が出番多かったり。アメリア〜!
しかしジャブロー脱出後はほぼ全て新作描き下ろしで、ギャプラン・アッシマーとMKU・百式の大空中戦は見応え十分。
つーか新作カットと20年前のてきとー作画とのギャップが予想以上に激しくて苦笑。
リファインはうれしいのだが、アムロ登場時の、
「何をする気だアムロ!?」
「下がってろシャア!」
のやり取りが説明臭いセリフにすげ変わっていたのはものすご〜く萎えた。
でも一番ショックだったのはハヤトの声が代わってたことだ。
つーわけで★★★なのだが、これは元々オイラが「Z」嫌いだからというのが大きい。暗いんですよスッキリしないんですよ主人公ウザいん
ですよ。
この先戦闘は激化するものの話はさらにグダグダになっていくわけで、そこをトミノさんがどう料理するのやら。
パンフには「20年前は嫌がらせで鬱な話作ってすまんかった。映画は娯楽だから楽しい作品にしてみるんでヨロシク(はあと)」という
ようなことが書いてあったので期待してみよう。
○「機動戦士ZガンダムU 恋人たち」 ★★★ (05.11.9/劇場)
STORY:宇宙世紀0087年。連邦内部の組織であるエゥーゴとティターンズの内乱は激化していた。一年戦争の英雄・アムロと合流した
カミーユは宇宙へ帰ろうとする中、フォウという少女と出会い、引かれ合う。が、彼女はティターンズの強化人間だった。戦いの中二人は分かり
合え、フォウは命を賭してカミーユを宇宙に帰す。宇宙で彼を待っていたのは新たな力・Zガンダムと襲い来る敵の新型MSだった…。
20年前のTVシリーズの総集編である新訳シリーズ三部作の真ん中。
ものすごい勢いで端折ってるのでTV版を知らない人には全くオススメできない。
まあ上手いこと話を編集してはいるが、TV版では盛り上がったシーンを非常にあっさりと演出しまっていてものすげえ肩すかし。
「アッシマーがぁっ!」とか「カミーユ…宇宙へ…」とか「ジェリド、守るって言ったろ…」とか、何この平坦ぶり???
つーか「歯ぁ食いしばれぇっ!そんな大人修正してやるっ!」とか「君を笑いに来た、そう言えば君の気が済むのだろう?」とか「人の好意
を無にする奴は一生苦しむぞ」とか「あの人には平和のインテリジェンスを感じないわ」とか「俺はカミーユを倒さない限り一歩も先に進め
ない男になっちまった。あいつは俺にとって壁なんだ!」とか名セリフは削除されまくりだわロベルトの存在自体が抹消されてるわ「銀色
ドレス」は掛からないわで肩すかされまくり。
パンフによると富野監督はこの第2部を恋愛映画として編集したとのことだが………これまた端折りすぎたせいで失敗してるなあ。カミーユと
フォウはともかく、これではベルトーチカはただの嫌な女じゃん。(TV版でも似たようなもんか。)
とまあ散々な出来なのに何故★3つも与えるのかといえば、やはり新作カットが多いのが嬉しいからで。
たっぷり追加された戦闘シーンが眼福もの。ハマーン専用ガザCにはちょっと感動。
とはいえ、TV版のアッシマーの強さやガブスレイにMKUがボコボコにされた時のハラハラ感やZガンダムの強さがまるで描かれてない
のはいかんともしがたい。
何かと話題になった声優変更。フォウはCM見てると違和感ないのだが、流石に本編を見るとオリジナルより包容力や母性が圧倒的に足り
ないなあと感じてしまう。
サラ役の池脇千鶴は関西人故にところどころイントネーションが微妙だが、総じてかわいい声なので許す。
さて誰も見たことのないラストへ突入するらしい第3部、どうなることやら。つーか第2部のも痛かったが、第3部のサブタイトルもこらまた痛いなあ。
○「機動戦士ZガンダムV 星の鼓動は愛」 ★★★ (06.3.8/劇場)
STORY:宇宙世紀0087年。連邦内部の組織であるエゥーゴとティターンズの内乱は、看過し得ぬ戦力を持つハマーン・カーン率いるジオン
残党の地球圏への帰還で混迷を極めていた。三者の陰謀が交錯する中、ティターンズのコロニーレーザーの発射を阻止すべくエウーゴと
ジオン残党は表向きは共同戦線を展開し、戦局は最終局面へ。数多の命が散り逝く中、カミーユは戦乱の元凶の一人、シロッコと対峙する…。
TVシリーズを映画三部作に再編集する「新訳・Zガンダム」最終章。
第二部が何とも盛り上がらなかったのだが、第三部を観てみれば、それは第二部が今回の前フリだったからということがわかる。つーわけで
前の章でフッた人間関係が怒濤の如く消化されていく目まぐるしい展開に加え、中盤以降は戦闘戦闘また戦闘で満腹感は味わえる。
しかしまあ「ダカールの日」、「永遠のフォウ」といった地上編をザックリとカットしてしまったのは驚いた。(第二章でのフォウの最後のシーン
で、「あれでどうやって助かるんだ!?」と思ったが、なるほど、助からなかったとは!)
でもまあ、入れてたら話がさらにややこしくなって映画として破綻しただろうけど。
それでも逆にレコアやサラの話をバッサリとカットして、よりカミーユやクワトロの物語とすることも可能だったのでは、とも思うが。(そうする
とやはりカミーユはエキセントリックなまま、元々と同じ最期を迎えることになっていくんだろうけど。)
まあともあれ、今まで同様もの凄い勢いで話はアレンジされつつ進んでいくのだが、この辺まで来ると(ラスト数話を除いて)TV版の記憶が
全くないことに気づき愕然。ボリノーク・サマーンが動いている所とかアポリーの戦死のシーンとか、ぜってぇ観た覚えないわ。つーわけで
アレンジ具合はよくわからんのだが、まあ最終的に収まるべき所に収まったので善哉。(でもシャアのダカール演説がないから、イケイケだった
ティターンズが急に弱体化した感じ。)
話がややこしくなるし登場人物の感情はこじれるしスパロボでゲロ強いしで個人的には歓迎したくなかったハマーンの登場だが、そのハイソ
な活躍ぶり(含キュベレイ)は素晴らしく、感服。榊原良子のクールな演技もグレイトだが、これで20歳はありえねえから、ハマーン様。
そして見所であるアクションシーンは、新作描き下ろしの嵐で100点の格好良さ。Zのビームサーベル手裏剣バリアがイカス!ラストの
まったり変形がイカス!でもオイラが愛してやまないスーパーガンダムの登場が1シーンだけなのが寂しい。
そしてそして最大の注目ポイントである、所謂「誰も見たことのないラストシーン」について。
元々の悲惨なアレが「健やかな終わり方」になるのは大歓迎だったのだが、いざ「健やかに」終わってみると………何とも違和感が(笑)
あんな幸せそうなのカミーユ似合わねえよ、みたいな(笑)
最後の最後にレツとキッカが出てきたのはちょっと切なかった。カツも小さいときはいい子だったのにねえ。
最後の最後にしかアムロの出番がなかったのはかなり切なかった。
TVCMを見た限りでは、ハマーンを始末してしまって(クワトロはその前にハマーンにやられて行方不明)カミーユは壊れないで、「ZZ」
なかったことにして「逆襲のシャア」直行エンディングも期待していたんだが。
十分に楽しめたが、名台詞改悪されまくりなのが気に入らず(賢しいだけのハゲが何をする!)結局三部作とも★3つで落ち着く。元々の作品
が好きじゃないことを再認識させられた。
○「希望の国」 ★★ (12.12.5/劇場)
STORY:20XX年、日本を再び大地震が襲い、かつての福島原発と同様に長島県の原発も停止し、放射能漏れが起こってしまう。酪農家の
小野家の庭が半径20kmの避難区域の境目となり、隣家は強制避難させられ、不安におののく小野家。小野泰彦は息子夫婦を自主避難させ、
自らは認知症の妻と牛たちと残ることを決意する。遠くに引っ越した息子・洋一とその妻・いずみは子どもを授かるが、被爆の恐怖に苛まれる…。
今や最も注目されているであろう奇才・園子温監督が、東日本大震災とその後の人災である福島第1原発の事故にいてもたってもいられず
撮り下ろした作品。
降って湧いた震災の傷跡と放射能の恐怖と向かい合う人々の姿を描く。
のだが。
まあダイレクトに福島原発の話とするには、それを受け入れられない、傷を癒せないでいる人たちがまだまだたくさんいて不可能なのはわかる
のだが、そこでフクシマを体験した近未来の長島県なんてファンタジーに置き換えてしまっているがためにいろいろ齟齬やら瑕疵やらが発生して
しまっている。
実際に被災地で入念に取材しているが故に、フクシマを体験しているのにまるで原発事故なんて初めてというような描写になっちまっていて、
違和感の嵐。二度もあんなまずい対応しないだろう、いくらなんでも。(政治家どもが優秀すぎて、絶対ありえない、と言い切れないのがやるせ
ねえ。)
その違和感で世界に浸っていけないのが大きい。それにこれから悪くなるかもしれないし、あるいはもっともっと悪くなるかもしれないので、
今安易に結論を出せない問題だし。やだやだ。
これを実際に避難している人に見せても勇気づけられない気がする。
主演は夏八木勲で、流石貫禄の演技。
その認知症の老妻に大谷直子。「ツィゴイネルワイゼン」で蒟蒻ちぎってた彼女もこんなに老いたのか…。
息子に村上淳。丸い顔が大嫌いだったが、いつの間にか頬がこけておった。
息子の嫁に監督の嫁。例によって例の如く。
○「CASSHERN」 ★ (04.5.3/劇場)
STORY:大亜細亜連邦共和国が繁栄する世界。しかし空も土も汚れ、テロや内乱は続き人々は疲れ切っていた。東博士が進めていた細胞
再生の研究中、謎の事故で新造人間が誕生し、軍の排除から逃れた彼ら数名はロボットの製造工場を得て人類への復讐を開始する。一方、
戦死した東博士の息子・鉄也は博士の手によって新造人間として復活し、強化スーツを纏い、迫るロボット軍団との戦いを開始する…。
”宇多田ヒカルの旦那”として世に知られる映像作家・紀里谷和明が、嫁の知名度を利用してマスコミから資金を得て作った監督第一作。
撮影・編集・脚本も担当。
これがヒットすれば肩書きは”宇多田ヒカルの旦那”から”あの「CASSHERN」の監督”へと変わることができるわけだが…。
感想。
駄目。
話長すぎ設定無駄すぎて駄目。半分にできるじゃん。
ビジュアル意味不明にキラキラしていて駄目。綺麗かもしれんが恐ろしいほど話と関係がない。
ロボット軍団や兵器群も動きが何があっても画一すぎて駄目すぎる。コーエーの無双シリーズの雑魚敵だってもうちょっと動くぜ?
カントクが伝えたいことはよーくわかった(親切に登場人物が皆セリフで言ってくれるからネ!)し、イデオンみてえなラストも否定しない
が、何故それを「新造人間キャシャーン」という原作でやるのか?元々のアニメに思い入れはないが、原作と原作ファンに対する冒涜で
ある。
それでも、アクションが格好良ければ、燃えられれば、文句は言わなかった。話とかテーマなんかを見たがる人じゃないんで。
と・こ・ろ・が、
駄目。
駄目駄目。
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ェェッ!
最大の見せ場は樋口真嗣絵コンテによるところのvsロボット軍団なのだが、編集が駄目×128すぎる。間とか溜めとかがないっつーか動き
の途中をカットさえしていてアクションの流れに説得力が皆無なので熱さの欠片もない。
お前編集すんなむしろ脚本も書くなつーか監督もやめろ。嫁のPVでも撮影してりゃいいんよ。
主役はともかく脇は無駄に豪華で皆無駄に熱演。唐沢寿明・宮迫・ミッチー・三橋達也あたりが印象深い。
あとヒロインの役者さんはどうもオイラは好きじゃない(顔も演技も)んでその点で更に世間よりも厳しい評価に。
まあ、結果的には世間様に”あの「CASSHERN」の監督”と思わせるだけの強いインパクトは与えたのではないかと。
これが第一作なわけだし、次はもうちょっとマシなものを作るかもだ。
オイラ的には’04年度最悪映画確定かと思われたのだが、秋にもう一本強力な対抗馬があるのを思い出した…。
○「逆境ナイン」 ★★★ (05.7.9/劇場)
STORY:全力学園野球部主将・不屈闘志は校長から弱小部故に廃部を言い渡される。逆境に立たされた不屈は廃部を防ぐべく甲子園出場を
宣言する。部員たちを持ち前の熱さでその気にさせ猛特訓を開始した不屈。だが、彼の前に次々と逆境が襲いかかる。しかし不屈は野球部
顧問・サカキバラゴウやマネージャー・月田明子らに励まされ苦難を乗り越え、ついに彼ら全力ナインは地区大会決勝に駒を進めるが…。
島本和彦の伝説的名作マンガを無謀キャプテンにも実写映画化。監督は先に「海猿」の実写映画を成功させた(らしい)羽住英一郎だが、
そんな柔な肩書きでこの企画を全うできるなんて誰が思うのやら。
結論から書いてしまうと、当然仏作って魂入れずなのだが、それでもまあ努力賞くらいはくれてもいいかな、という出来。(今までマンガ原作
ものはあまりにもどうしようもないものばかりだったから評価が甘くなってしまうのよね。「鉄人2(ryとか「キャシ(ryとか「デ(ryとか…。)
熱さと勢いが足りないのでそこが空回って生じる爆笑が得られないのだな。それでもまあ皆頑張ってはいたので。ただし、その頑張り度合い
が常識の範囲内なのでそれ以上のものは発生しない、と。
出演陣も健闘はしている。サカキバラゴウをギャグキャラにすんな!と憤りつつもココリコ田中は何気にスクリーン映えする役者だなあと
思ってみたり。
違ぁーう!ボクの月田マネージャーはこんなんじゃないやーい、うわーん!と憤りつつも堀北真希はなかなかにかわいかったり。それは
それ、これはこれ!
最強の敵である日の出商のキャプテン・高田は何故か全く別キャラになっているのだが演じているのは「VERSUS」のチビこと松本実で
味のある演技。
その他大勢である全力学園ナインの中では一部の人のショタレーダーに反応するであろう山下役の栩原楽人に注目。
あとキャッチャーが「少林サッカー」の”水渡り”に見えて大いに驚いたが別人だった。
しかし、ロケ地の都合上仕方ないとはいえ、舞台が三重県という設定は微妙だなあ。
○「キャピタリズム マネーは踊る」 ★★★★ (10.3.4/劇場)
STORY:’08年秋、リーマンショックでアメリカ経済は崩壊した。しかしそれ以前からアメリカの貧困層の生活は破綻していたのだ。ローンを
返済できず家を銀行に差し押さえられ丸裸で放り出される善良な人々。それは資本主義の名の下に法を曲げひたすらに私腹を肥やそうと
もくろむ一握りの富裕層によるものだった。ドキュメンタリー作家マイケル・ムーアが白日の下に暴き出す現代アメリカの歪んだ病巣…。
突撃!隣の極悪人!リポーターことマイケル・ムーア監督がアホのブッシュ、健康保険に続いて切り込むココがヘンだよ現代アメリカ!
のネタは、資本主義という大きなもの。わかりやすくいうと、わずか1%の富裕層が残り全てを食い物にしている、あまつさえそのために法
をねじ曲げさらに利益を搾り取ろうとしている、という現状についての話。
つーわけで相変わらず、面白くてタメになる!でもイヤ〜な気持ちになる作品。
まあサブプライムローンなんて騙されて手を出すのが悪いのだが、銀行が率先して騙しに来ているんだから学のない純朴なアメリカの農民
たちが引っかかっちまうのも仕方ないわなあ。
これが対岸の火事ならば笑っていられないこともないのだが、オラが国にも経済破綻の影響モロに来てるしなあ。
アメリカほど酷くないにせよ同じ資本主義の国、構図的には似ているしなあ。
国民を舐めきってやりたい放題→経済崩壊で国民の鉄槌が下され選挙で敗北→期待の新政権発足→でも期待はずれ気味…
という流れも似てるよなあ。
最後に憲法で数々の権利や自由が保障されている国として褒めていただいているのに、ただただ薄ら寒いばかり。
作中のインチキ吹き替えといいエンディングの歌といい、キリスト絡みのギャグはすげえ面白かった。
副題「マネーは踊る」はそこそこ悪くはないが、原題の副題「a Love Story」がこんなんになっちまったという点では納得がいかない。
○「キャビン」 ★★★★ (13.3.28/劇場)
STORY:アメリカ、5人の大学生がバカンスで、人里離れた湖畔の寂れたキャビンにやってくる。愚かな若者たちは地下室に隠されていた呪われし
封印を解いてしまい、蘇った邪悪な存在により一人また一人殺されていく。その様子を最先端の技術を用いて監視し、コントロールする謎の組織が
あった。だが、彼らの計画は若者たちの意外な行動で破綻し、生き残った若者たち2人は監視者の地下施設に足を踏み入れてしまうが…。
HPやチラシのアオリが、絶対予測できない展開云々とかで、まあ確かにこんなもん予測はできないだろうが、この映画の楽しさはそんなところ
じゃないと思うんだがなあ。
人里離れたいかにもな山小屋(キャビン)に遊びに来たいかにもな若者たち。ご丁寧にも、立ち寄ったいかにもなガソリンスタンドでいかにもな
気味悪いじいさんにいかにもな忠告をもらうというお約束付き。
いかにもな乱痴気騒ぎをし、いかにもな地下室を見つけてしまい、いかにもな触っちゃダメそうな呪いのアイテムをいじくって封印を解いて
しまい、いかにもな感じで個別行動した挙げ句、いかにも一人ずつ恐怖に満ちた死を与えられていく…。
とまあ、スプラッタホラーの基本中の基本ど真ん中を突っ走る展開なれど、これは裏で彼らを監視し、行動を誘導している謎の組織の仕業
だったりして、というのが新し………くもないか、仮想現実ものだったり「トゥルーマンショー」だったり、先駆者はたくさんいるなあ。
だがしかし、この謎の組織が、最新鋭の機器を使っているわスタッフわらわらいるわ世界中に支部があるわ、どうも非常に大規模な組織らしい。
なにやら世界的な大がかりな陰謀が進行しているようだが、各地で失敗が相次ぎ、最後の砦はここアメリカと、勤勉に仕事をやり遂げる日本だけ。
こっちのスタッフも賭け事やったり出歯亀やったりしながらも、一応真面目に働いてはいるようだが。
一応、一人死ぬ毎にあるギミックが動いて、そこから何となくは何をやっているのか薄々推測はできるのだが、その行為とハイテク(死語)機器
との取り合わせが何とも珍妙で、幻惑されてしまう。
そうこうしている間にも、多少のトラブルはあったものの、若者たちは無残に殺されていき、プロジェクトは成功、と思いきや…。
ここからの怒濤の展開がそりゃもう素晴らしいが、でもホラー映画じゃなくてパニック映画だよなあ。
どうやって捕まえたのかわからない古今東西のモンスターたちが暴れまくり軍隊を蹂躙し貪り喰らいまくる阿鼻叫喚のシーンは最高だが、
アナコンダ目立ちすぎ。半魚人ギャグは爆笑。あとヘルレイザーみたいなのとかバレリーナとかどんな殺しをやるのかは見たかった。
あと前後するけど日本のシーンも大爆笑。Jホラーあるあるって感じ。
人類最後の希望が何故かシガニー・ウィーバーで、「宇宙人ポール」といい、こんな役ばっかだな。
神々の黄昏なラストは大アリだと思うが、古のものなんていうから触手ウネウネの\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!な神様かと思ったのに、
少し残念。
○「ギャラクシー・クエスト」 ★★★★★ (03.1/ビデオ)
STORY:20年前に大ヒットし、今でも根強い人気を持つSFドラマシリーズ「ギャラクシー・クエスト」。宇宙船プロテクター号の主要メンバーを
演じた5人は、その人気故にかえって他の仕事がなく、冴えない暮らしを送っていた。そんな彼らを、TV放送を受信して本当に宇宙の英雄だと
思い込んでしまった善良なサーミアン星人が、助けを求めて5人の前にやって来る。仕事依頼と勘違いした彼らはのこのこついていくが…。
パッと見「スタートレック」のパロディに見えるし、実際そうなのだが、「スタトレ」を知らなくても問題なく見れる(知っていた方がいろいろと面白い
んだろうが)ので一つどうぞ。笑えます泣けますシビレます。ブラボー!「ネバーギブアップ!ネバーサレンダー!」。
まあ骨子は「サボテン・ブラザーズ」なわけだが、冴えない役者の主人公たちが勘違いから戦場に引っ張り出され、あたふたしていくうちに
失っていた大切なものを取り戻していくという「少林サッカー」にも通じるテーマ、そしてその描き方がお見事。
冒頭、コスプレに身を包んで作品のファンイベントに参加するオタクの皆さんの描写はまったくもって苦笑せざるをえないが、後半その無駄な
知識が生かされるという展開が泣かせてくれる。
「エイリアン」シリーズのシガニー・ウイーバーがボンクラな紅一点を演じていて、これがまたなかなかかわいいんですが…ゲゲェーッ!あれで
50歳だというのか!?
○「キューティーハニー」 ★★★ (04.6.14/劇場)
STORY:宇津木博士が謎の組織・パンサークローの怪人にさらわれた。警察が手も足も出ない中、颯爽と現れた謎の美少女戦士・
キューティーハニーが怪人を撃退した。彼女の正体は如月ハニー。父親・如月博士の作った無敵の「Iシステム」で生まれ変わったアンドロイド
なのだ。事件を追う敏腕警部・秋夏子と謎の新聞記者・早見青児と共に、ハニーはパンサークローに立ち向かうが…。
今年は、かつての人気アニメを実写でやっちゃおうイヤーなわけだが、その第2弾。
監督はかの庵野秀明で、この手の作品についてわかっていらっしゃる人なので、当然先行したアレのような噴飯ものにはならず普通に
楽しめたのだが、かといって別段すげえ面白いというわけでもなく。
かっこよさが足りないのだな。
実写で特殊効果となると、この監督の場合遙か昔に「帰ってきたウルトラマン」やら「愛国戦隊大日本」やら作っていたのでどーしても特撮
テイストが出てしまって、その昔ながらの泥臭さと、CGバリバリ使った”ハニメーション”とやらとの間に齟齬つーか違和感つーかが発生
してしまっているような。
あと、かっこよさ不足の原因として、主人公を演じる佐藤江梨子通称サトエリのマヌケ面も挙げられましょうぞ。
ぶっちゃけオイラはこの人かわいいと思えないんで。逆に言うとサトエリファンだともっと作品の評価も上がると思われ。
ハニーと共に悪と闘うモーレツ女警部に市川実日子。相変わらず奇天烈な顔立ちだが、相変わらず見ている内にかわいく思えてくる
不思議女優。しかも今回は鼻眼鏡っ娘だしチャイナ服着るしで言うこと無し。タヌキ面の主人公は無視してこっちメインで見てました。
もう一人の味方・謎の新聞記者役に村上淳。相変わらず顔丸いなあ。えー、おっさんじゃん。もっと若いのにやらせろよ。
対するパンサークローの面々では、珍しくテンション低い篠井英介はともかく、執事役の手塚とおる・武闘派の片桐はいり・いつものミッチー
が濃ゆい演技を披露。
特にミッチーはあんまりかっこよくないメイクをしていてもいつものミッチー節全開でイカス!やっぱミッチーは怪人ですよ。怪人出るのに一般
人やらせちゃダメだっつーの、宇多田のダンナ!(あれはあれで名演技だったが)
○「嫌われ松子の一生」 ★★★★ (06.5.30/劇場)
STORY:冴えない青年・笙は殺された叔母・松子の遺品整理をすることになる。生前に会ったこともなかった叔母は近所から”嫌われ松子”と
呼ばれていた。松子の昔の知人たちと出会った笙は彼女の一生を少しずつ知っていく…。昭和22年、福岡生まれの松子は父の愛情に飢える
少女時代を過ごし、長じて中学教師となったが、窃盗事件に巻き込まれ退職・家出。そして次々と駄目男に引っかかり転落人生を…。
傑作「下妻物語」の中島哲也監督の最新作。
が、「下妻」のノリを期待して観ると、あまりのヘヴィーさに押しつぶされるかもだ。
とにかく主人公・松子の人生は悲惨な限りの転落ぶりで居たたまれないことこの上ないのだが、それをコメディ風味のミュージカル仕立て
で明るく一気に見せきってしまうのがすげえ。胃がもたれるほどの満腹感。
そして奈落へ一直線のジェットコースター・ムービーを支える脇役陣のキャスティングが素晴らしい。次は誰が出るのかというドキワク感。
中谷美紀・香川照之・柄本明・ブスかわ市川姉妹のブスかわ妹(相変わらずブスかわ。)といった演技派俳優は無論よいし、ゴリ・クドカン・
カンニング竹山・劇団ひとり(キスシーン・ベッドシーンありで一番美味しいよな。)ら異色キャストも味のある演技を見せている。
ギャグは思ったより少な目なのだが、片平なぎさwith本田博太郎と光GENJIには爆笑。
観る人を選んでしまう濃厚ギトギトな一本だが、生きるということの意味を考えさせられたりするようなしないような。
○「桐島、部活やめるんだってよ」 ★★★★ (12.8.23/劇場)
STORY:バレー部のキャプテンで学校の人気者の桐島が突然部活を辞めるという。それどころか学校にも姿を見せず、電話もメールも反応が無く、
何も聞かされていなかった彼女の梨沙や親友の宏樹、バレー部の部員たちはショックを受け、苛立つ。その波紋は徐々に学校中に広がり、梨沙の
友人のかすみと実果や、宏樹に片思いする吹奏楽部の部長の沢島や、イケてない映画部の前田たちのなんでもない日常にも変化が訪れる…。
原作小説未見。映画観た後パラパラ読んだらどこにもゾンビのゾの字も「鉄男」のての字もないでやんの。
高校生には2種類の人間がいる。勝ち組と負け組である。(まんまやん。)
高校まで行くとそんなにいじめはなくなる(「おめぇの席ねぇから!」みたいな例外はあるけど)ものの、持たざる者はやはり肩身の狭い思いをし、
持てる者に道を譲らざるを得ないわけで。
つーわけで、高校の時負け組だった人間が観るとなにかしらビビッとくるものがあるのではないかと。
オイラも無論のこと負け組だった(威張ることじゃねぇから!)が、男子校なので女子に蔑みの眼差しで見られることもなかったし、ごく僅かな気の
合う仲間と毎日放課後部活と称してTRPGやってその後はゲーセンで「ストU」やってて、まずは楽しい高校時代ではあった。それでも
やはりクラスで幅を利かせている勝ち組に対するコンプレックスはないわけはなかった。
閑話休題。
そんな勝ち組の代表格、学校のトップスターとも言える桐島の不在により途端にグラつき始める勝ち組どものアイデンティティと脆弱な人間
関係、そして無関係のはずの負け組が見せる魂の一瞬の輝きを見事に切り取ったナイスな青春映画。
渦中の人物たる桐島くんは不在のまま、その周囲の人間たちだけで物語は進行。しかも事件の発端を様々な視点から繰り返すことによって事態が
見えてくるのが面白い。
主要人物それぞれに問題を抱えているが、やはり同じ負け組の映画部部長の前田くんにどうしても感情移入せざるを得ない。
だって読んでる映画誌が「映画秘宝」なんだもん。映画なんて興味がない名ばかり顧問の理解の無さに嘆きつつ、仲間たちとゾンビ映画の撮影を
決行してしまうそのボンクラ魂よ。でもまあ、顧問としては高校生なんだから血がドバドバ出たり人が食い殺されたりする映画はNG出さざるを得ない
よなあ。
そんな中二魂の持ち主の前田くんが映画館のリバイバル上映で出くわしたのは、中学時代は少しは会話を交わしたことがあるクラスの美少女
だったりしたもんだから、そりゃあ持たざる者なのに夢見ちゃうよなあ。だって、観にいった映画がよりにもよって「鉄男」だもん。チンポドリルだ
もん。そりゃあ舞い上がっちゃうよなあ。
しかし夢は叶わないから夢なのであって、非常に残酷に現実を突きつけられた彼とゾンビ軍団は、勝ち組軍団に対して一瞬の奇跡を起こして
しまう。
まああくまで一瞬の奇跡であって、その後は反省部屋行きなのだが、それでも勝ち組の代表格は果たして自分は本当に勝ち組なのか、この
ボンクラどもは本当に負け組なのか、と思いもよらぬ真実を突きつけられ、少し世界が変わってしまうのだった。
負け組代表選手の映画部部長に神木隆之介。子役時代があまりにも神すぎたために、今は下手くそな素人声優くらいのイメージしかない
のだが、年相応の役どころで冴えない少年役を好演。つーか頬擦りしたいくらいかわええ子ども時代から急激にただの人に成長したせいで、
なんだかもう20代半ばくらいの印象だったのだが、まだまだ10代だったのね。
つーか早く黒の組織はAPTX4869を飲ませるんだ!
彼がちょっとのぼせちゃったミントン部員で桐島の彼女の友だちであるヒロインに橋本愛。「Another」に続き’12年夏、2作目のヒロインで本格
ブレイク寸前。かわいいが、モデル型なので頭が長いなあ。
パッツン前髪のせいで、元AKBの顔面センターを彷彿とさせるが、あっちと比べてはいけない神々しさだなあ。
桐島の親友で野球部の幽霊部員役の東出昌大も長身で眉毛凛々しく印象的。
彼に部活に来いと誘う野球部の部長も別の意味で印象的。これまた負け組なれど光ってる。ドラフトの話最高や。
もう一人負け組で恋する吹奏楽部部長に大後寿々花。「セクシーボイスアンドロボ」の時はえらくかわいかった気がするんだが、なんかアゴが
ずいぶんがっしりしちまったなあ、という印象。
それ故に後輩の女の子がなんだかすげえかわいく思える。
主題歌を歌うは高橋優。初めて曲を聴いたが、メガネ男子でおとなしそうな外見と裏腹に、なかなか熱い歌を歌うではないの。
しかし、「SUPER8」といい「キツツキと雨」といい、青春ゾンビものって流行ってるの?
スタッフロールを見ていて、脚本の人の名前が聞いたことあるような、と思ってググッたら、幕之内一歩の中の人じゃあないですか。
○「キル・ビル Vol.1」 ★★★★★ (03.10.25/劇場)
STORY:ザ・ブライドはビルの率いる悪の組織の凄腕の殺し屋だったが、妊娠・結婚のため引退を決意する。だが、それを許さないビルと4人の
部下は結婚式場を急襲、参列者を皆殺しにする。奇跡的に一命を取り留めたザ・ブライドが昏睡状態から目覚めると、4年が経過していた。夫と
お腹の中の子供を奪われた彼女は復讐鬼と化す。沖縄で伝説の刀匠から名刀を譲り受けた彼女は、仇の一人・イシイの待つ東京へ向かう…。
ハリウッド有数の映画オタクとしてその名を轟かせる奇才クェンティン・タランティーノ先生が己の欲するままに映画を作ったらとんでもない
大バカバイオレンス作品ができあがってしまった!つーかできあがってないけどとりあえず前半部だけ公開してしまった!
チャンバラ!カンフー!黄色いトラックスーツ!ワイヤー・アクション!ジャパニメーション!ボンクラ中学生の妄想かいタランティーノ!
だが、それがいい!!!
話がどんどん長くなってしまって(そのせいで「バトロワU」にもゲスト出演できなくなった)3時間程度ではまとまらなくなってしまったために
急遽二部作となってしまったこの作品。前半部である今作の主な舞台は、日本。
日本オタクのタランティーノ先生が集めた濃ゆい俳優たちが集結。ザ・ブライドが刀匠を探して訪れた沖縄で登場するのは寿司屋のオヤジに
して正体は影の軍団の総統・服部半蔵=サニー千葉。中学生ライクな英語の発音が微笑ましい。そして彼の店の板前で何故か意味もなく
二人で喧嘩するのが大葉健二=宇宙刑事ギャバンまたはデンジブルーまたはバトルケニア!!!なんて素敵な人選なんだ!!!
そして東京で待ち受ける中ボス、とんでもない過去を何故かとんでもないバイオレンスなアニメで語ってしまう女組長オーレン・イシイに
ルーシー・リュー。…アニメの中ではわりかし美少女だったのに、わずか数年で騎馬民族みてえな顔になっちまうなんて…。ともあれ、ユマ・
サーマンとのヘボイ日本語の応酬はある意味聞き応え抜群(笑)
そのボディガードを勤める凶暴な女子高生に栗山千明。映画の中では恐ろしくキュートで驚いた。愛用武器はガンダムハンマー!!!
…ハリウッド・デビュー作なのにこんなイロモノで…(そっと涙を拭う)
そしてそして、イシイの配下の”クレイジー88”との死闘がまったくもって素晴らしい!
吹き飛ぶ手足生首!ドバドバ飛び散る鮮血!およそ1対90という戦力差を物ともせず、片っ端から雑魚を切り捨てるブルース・リーなトラック
スーツ着用の血まみれユマ・サーマンの美しさよ!「ブレインデッド」や「力王」ばりに血で赤く染まる画面!
200人斬りを詠った「あずみ」もこれくらいはやるべきだったし、北村監督ならできたと思うのだが…。
そして雪の日本庭園での女二人の静かなる最終決戦。BGMはド演歌!(鹿おどしの音がヘッポコなのが惜しい)
ううう、完結編まで半年近く待たねばならんのか…。
全編を貫くのはバイオレンス。鮮血はジェイソンもビックリなほどに飛び出し、死者がゴロゴロと転がる、毎号「映画秘宝」買ってるような人種に
とってはたまらねえ映画なのだが、果たして一般人に受ける映画なのか?やたらとメディアでの露出・プッシュが多くて心配。
○「キル・ビル Vol.2」 ★★★★ (04.4.24/劇場)
STORY:妊娠・結婚を機に殺し屋家業から足を洗おうとしたザ・ブライドは結婚式場でかつての仲間たちに襲撃され家族を皆殺しにされ自身も
重傷を負う。4年後、昏睡から目覚めた彼女は復讐を開始する。首尾良く2人を片づけ、残りは3人。首領にしてかつての愛人・ビルとその弟・
バド、そしてライバルのエル。手始めに落ちぶれたバドを狙うブライドだったが、バドの巧妙な罠に返り討ちに遭い、生き埋めにされてしまう…。
映画界のナチュラルボーンキラー、タランティーノ先生の怪作の完結編。
前作「Vol.1」は日本を主な舞台とし、任侠・チャンバラ・カンフーとタラ先生の思い入れエキス120%のむせ返る濃ゆさの、実に頭の
悪い作品(誉め言葉)だった。
その続編となる今作は舞台をアメリカ、さらに回想シーンでは中国へと移し、マカロニアクションやカンフーが炸裂するやはりバカカクション
映画(誉め言葉)となっているので一安心。
もっとも、話をまとめなければならないためドラマの部分もじっくりとあるので、その点では「Vol.1」よりテンション低めなのはいなめない。
まあ、明かされるザ・ブライドとビルの想いなんかは切なくて、「THE LOVE STORY」なんて副題も納得。
まあ、ドラマ部分を見たいわけじゃないんでその辺は置いといて(笑)、アクションは無国籍にハイテンション。
ザ・ブライドの、中国での極悪拳法家の元でのカンフー修行。刀の上に乗るなんてベタな演出がたまらねえ!
ザ・ブライドvsエル・ドライバーの嗚呼一軒家デスマッチ!
そしてザ・ブライドとビルの静かなる真剣勝負!そしてそして炸裂してしまう秘奥義!ひでぶっ!!!
この作品は当初は一本の作品として撮影されていたのだが、あまりにも長くなりすぎたために急遽前後編に分けることとなったという裏話
があるわけだが、これがもし当初の予定通りの一本こっきりに編集されていたらとんでもないジェットコースタームービーになったであろう
に、勿体なかったなあ。まあ、どうやっても3時間とかにはまとまらないのだが。
主演のユマ・サーマンは今回も血まみれ放題に加え極悪拳法家に罵詈雑言浴びせられまくりだわ生き埋めにされて砂も滴るいい女にされる
わ酷い目に遭わされまくりの大熱演。
脇を固める共演陣も好演。つーか今回は千葉ちゃんみたいなゲテモノがいないしね。
○「キングコング」 ★★★★★ (05.12.17/劇場)
STORY:1933年、ニューヨーク。映画監督のデナムは秘境スカル・アイランドの地図を入手し、そこで映画を撮影しようと強行軍で出発する。
ヒロインは街角で偶然出会った女優の卵のアン。脚本家のジャックも騙されて同行させられる。たどり着いた島は現代から切り離された魔境で、
今なお恐竜が生息していた。そこで原住民に捕らわれたアンは島の王者の生贄とされてしまう。現れた島の王は全長8mの巨大ゴリラだった…。
猿は嫌いである。顔も仕草も少し賢しげな所も皆嫌いである。子供の頃からパーマン2号ですら鬱陶しいと思っていた。
そこにこの映画である。デカい猿なんぞにぶっちゃけ興味はないのだが、監督がピーター・ジャクソンでは行かずにはいられまいて。恐竜
とか出るしな!(とてもいい大人の発言とは思えません)
キングコングである。そりゃあビッグネームであるが元の作品は未見である。オイラにとってのキングコングといえば、ゴジラと取っ組み合って
海に落ちたのと「怒りのメガトンパンチ」と「ビッグ・ヒット」の小ネタ。
まあそんな人間が観に行ったわけだが…面白かった!
CMで見るたびにウホッ!ぶりにうんざりしていたコングのことも、最後には、馬鹿だけど気は優しくて力持ちの憎めない愛すべき番長と
思えるようになったし。ウホッ!
見所は美女と野獣の悲恋っぷり…よりもオイラ的にはやはりスカル・アイランドでの怪獣チャンピオンまつりに尽きる。
どこのジュラシックパークよ?という恐竜大疾走やコングと肉食恐竜との大立ち回り(圧巻!)、轟々たる篝火に揺れる古代遺跡、更に
ラストの摩天楼でのSOS!スカイキャプテン!な空中大決戦は流石「ブレインデッド」の「LotR」のPJ!と拍手喝采。
無論スタッフが力を入れた上記のラブロマンスも思わずホロリな出来で、冬のNYの公園での番長とアンの逢瀬はロマンチックだった。
主演はナオミ・ワッツ。好きな女優さんなので番長が服を脱がしてウホウホいわなかったのが悔やまれる。「マルホランド・ドライブ」でも
「21グラム」でも脱いでたのにこんないかにもな映画では脱いでくれないなんて!(笑)
暴走映画監督にジャック・ブラック。これまた好きな俳優なので熱演が嬉しいが、時々前田健にそっくりになるので何時あややのモノマネ
をし出すかとドキドキ。
彼の、日本版作るとしたらぜってぇ伊藤淳史がやるだろう助手役はトム・ハンクスの息子なのね。親父に似て(検閲)な顔だぜ。
コングの動き担当は当然本田博太郎ウパーッ!「LotR」のゴラム役のアンディ・サーキス。最早世界一のキャプチャー俳優。
つーわけで大満足な出来なのだが、3時間は正直長い。全く飽きることはなかったのだが、膀胱が厳しい。序盤もっと切り詰められたのでは、
と思う。若い船員の話も思わせぶりながら尻切れだったんで端折れるし。
あと最後の真冬のNYで、道路もツルツルに凍ってる夜中だというのに、なおかつあんな高い建物の上まで登っているというのに、ヒロインが
あんな薄着で寒そうな素振りを見せないのに違和感。凍死しますよ?
そして谷底の蟲軍団と「LotR」のオークも真っ青の原住民軍団はちょっとトラウマもの。ひぃぃぃぃぃ…。
○「銀のエンゼル」 ★★★ (04.12.29/劇場)
STORY:北海道の片田舎でコンビニを営む北島昇一。だが実際に店を切り盛りしているのは妻の佐和子だった。ところが佐和子が交通事故で
長期入院してしまい、やむなく昇一が店に入ることに。その上、一人娘の由希が東京の大学に進学すると言いだす。ずっと家族の会話がなく、
昇一に心を閉ざす由希に、昇一は掛ける言葉がなく戸惑うばかりだった。そして雪が降り出したあろ日、由希は上京するべく家出してしまい…。
ミスターこと鈴井貴之の監督三作目。東京のスタッフ・有名な役者と仕事をして、北海道だけでなく全国的な評価を得んとする野心作。
主人公のコンビニオーナーに小日向文世。名バイプレイヤーの、これが初主演作だそうで。まあ情けない中年といういつもの役どころで
いつも通り安心して見られる演技を披露。
その妻に浅田美代子。…って、「新選組!」かよ!
謎多きバイト青年に西島秀俊。好演といえよう。正義に燃える駐在さんにシマキュー。相変わらずコメディ演技は反則気味。
そしてオーナーの娘に恋心を寄せる配送トラックの運転手に大泉洋。地っぽい三枚目演技が素晴らしい。きっちり決める所は決めるし、役者と
してもなかなか。しかし出るたびに劇場大爆笑で、本当に人気あるのね。
ヤスケン・シゲのNACKS組も怪キャラを怪演。
そしてオープニングとエンディングを飾るゴーイング・アンダー・グラウンドの曲が素晴らしい。
素晴らしすぎて、なんかすげえいい映画観た、と錯覚してしまい満足して劇場を出てしまうのだが、よく考えるとそんなにいい映画か?と首を
かしげてしまったり。
思わせぶりに出てきて、消化しきれないまま終わってしまうシノプシス多すぎ。
吹雪の中、主人公がネオンサインの蛍光灯を交換して男を見せる、というシークエンスがまるで他の重要な話と繋がっていないというのは
どうか?
うやむやのうちに大団円になっちまうが、でもまあ、ハートウォーミングな一本。
○「苦役列車」 ★★★ (12.7.17/劇場)
STORY:’86年東京。北町貫多、19歳。かつて一家が離散したため、中卒。日雇い労働者歴4年。給料は酒と風俗に消え、家賃は滞納。底辺の
生活を送りコンプレックスを抱え込んでいる彼は、職場で同い年の専門学校生・日下部と出会い、友だちになる。さらに、彼の仲介で古本屋の
アルバイトをしている憧れの康子とも友だちになることができ、灰色だった彼の生活は一気にバラ色に。しかし、幸福の絶頂は長くは続かなかった…。
西村賢太の芥川賞受賞作の私小説を映画化。原作未見で観賞。後から読んだ。
バブル景気に沸く東京の片隅で、景気のいい話とは無縁に底辺で這いずるコンプレックスの塊で駄目人間なのにプライドだけは人一倍高い
青年・貫多の物語。
父親が犯罪を犯したばっかりに高校にすら行けず、糊口を凌ぐために日雇い人夫に身を窶して4年。日当は酒代と風俗のための貯金と古本代に
消え、貯蓄はおろか家賃さえ滞納するその日暮らしの駄目人間ライフ。
とはいうものの、まず自分で汗水垂らして働いて自立してるんだから偉いではないか、と思う。
まあ時代が四半世紀違うとはいえ、30過ぎても働かず夜中までTV見てゲームやって昼まで寝て、親の愚かしい愛情にぶら下がって寄生して
平然と全くこれっぽちも悪びれずに暮らしているような人間の屑もいるわけで、そんなのと比べたら、いや比べるまでもなく立派ではないかと、
なんでそんなに自分を卑下するんだと、スクリーンに映る森山未來に問いかけずにはいられなかったのである。ああほんともう、ウチの弟死んでくれ
ないか。
とはいえ、貫多は最も低いではないにしても、かなり低いレベルのボンクラなのは確か。
底辺の生活を続けている言い訳をひたすら呟きながら(中卒なれど読書家なので無駄に理論武装している)、そこから這い出る努力をしようと
せず低きに流れるその駄目っぷりは、でもしかし、我々ボンクラには痛いほど分かってしまうのがねえ。なんと世の中には誘惑の多いことか。
そんな貫多に初めて訪れた人生の春。身を落としてからの初めての友人、憧れのマドンナとも友だちになれた。
演じているのが森山未來だけに、「モテキじゃ〜」という叫びが聞こえてきてしまう。
しかしその幸せも長くは続かず、ただただ己の狭量さ稚拙さによってそれらはポロポロと掌からこぼれ落ちてしまう。
後に残るのは深い深い喪失感。得られる前には知りようもなかった、深い深い喪失感。
タイトルに引っかけて、劇中では「線路は続くよどこまでも」の旋律が再三流れる。
人生はただただ突き進んでいく列車のようなもので、それは課せられた苦役のようなものなのかもしれない。
だからといって、途中下車してしまうには、美味しいものや気持ちいいことや楽しいことは世の中に充ち満ちている。全くよくできている。
そんな苦しみながら続く旅の中、貫多はただ流されていくだけの日々についに抵抗を試みて、物語は幕を閉じる。
監督は注目株の山下敦弘。今まで縁がなくて今回初観賞だが、なるほど、見事な力量。
どうしようもねえ原作(褒めてない)にはなかった希望を感じさせる終盤部分は大アリだと思う。
主演は森山未來。この間までモテキに突入していたのに今度はどん底人生に突入。そんな戯れ言はさておき、酒と風俗に溺れるコミュ力皆無
の駄目人間を熱演していて素晴らしい。
その友人の結構いいヤツに高良健吾。しかしバブル期の専門学校生ならもっと割がいいバイトがあるんではないのか?
原作にはいないオリジナルのヒロインに前田敦子。役どころはなかなかかわいい。まあいろいろ頑張っていて好感が持てる。顔以外は。骨格から
間違っていると思うんだ。
原作者は映画の出来を貶しているようだが、そりゃあ実際はもっと惨めだった自分の姿が、スクリーンではモテキ野郎になっていたら妬ましく
なるわなあ。
○「グッバイ・レーニン!」 ★★★ (04.5.3/劇場)
STORY:東ドイツ・ベルリンに住むアレックスの母・クリスティアーネは極度の社会主義者だったが病気で倒れ昏睡状態となる。8ヶ月後、奇跡
的に彼女は目を覚ましたが、ちょっとしたショックで心臓発作を起こすと医者に告げられる。ところが、彼女が眠っている間にベルリンの壁は崩壊
し、街はすっかり資本主義に染まってしまっていた。母を驚かせないためにアレックスは世の中何も変わっていないと嘘をつくが…。
ドイツ産のハートフル・コメディ。
ベルリンの壁崩壊前の東西ドイツについてちょっとは知ってないとつらいかも。まあ隣の半島の南北の国みたいな情勢だったと。(いや、東
ドイツは北のあの国より全然まともだったけれど。あんなバカみたいつーかバカそのものな独裁者がいたわけでもないし)
で、東西ドイツが統合された結果、資本主義が東に一気に流れ込み押し流し、暮らし向きがよくなったり仕事がなくなったり便利になったり
適応できなかったり…。
でで、死にかけのガチガチのコミュニストの母親をショック死させないために孝行息子のアレックスが古き良き暮らし(つーてもわずか8ヶ月前の
ことだが)を再現しようと家族や恋人や友人や隣人を巻き込み奮闘するお話。
資本主義の安くて良い品が大量に入り込んできたせいで以前売っていた品物がどこにもなくなっていたり、テレビを見たいというリクエストに
応えてニュース番組を自作したりという悪戦苦闘ぶりが微笑ましい。
が、そもそも病院で安静にさせておく方がいいのにわざわざ家に連れてきて困難な嘘をつき続けるというところが無理があるのでちょっと話
に乗りきれない。(でもこれは、母親のためではなく、本当は主人公が昔の暮らしが好きで回帰したかったから、という話なんだろうね)
ちょっとしたショックで死ぬ、と言われながら結局母ちゃんしぶといのも(笑)
でもいい親子だの。
あとヒロインがチャーミングだった。
○「グッモーエビアン!」 ★★★★ (13.2.5/劇場)
STORY:ハツキは中学3年生。元パンクバンドのギタリストでシングルマザーのアキと二人暮らし。アキのバンドでボーカルをやっていたアキの恋人の
ヤグが同居していたが、世界旅行に行くと言ったっきり音信不通。そのヤグが1年半ぶりに帰還し、昔のように面白おかしい日々が戻ってきたが、
思春期のハツキはずっと心のイライラモヤモヤが取れず、進路のことでも周囲と揉め、些細なことから親友のトモとケンカしてしまう。その翌日…。
原作未読。
御存知・大泉洋が出ているけど、麻生久美子はそのプラスを帳消しにするほどに好きじゃないし、話もあんま評価されてないしで、観にいかない
つもりでいたところ、一ヶ月遅れで地元で掛かり、さらに「カラスの親指」でオイラのハートを鷲掴みにしてヒートエンドしてくれちゃった能年玲奈
タンも出ていることを遅まきながら知り、じゃああんまり乗り気じゃないけど行くか、と劇場へ足を運んだ次第で。(長えよ。)
ところがギッチョン!!!
主役の中学生役の三吉彩花タンが、何これ、超絶にかわええんですけどぉ!?!?!?
完全に吉高由里子の上位互換で、その上成海璃子ばりの眼力も時々見せてくれて、もう眼福眼福。今年の最重要注目株だわさ。
もう、終始ほっぺを指でぷにぷにしてぇ、しか考えられなかったわい。
そして彼女の親友のかわい子ちゃん役に、能年玲奈タン。やはりかわええ。三吉彩花タンと比べると正直ソリッドでもビビッドでもなくぶっちゃけ
地味ですらあるのだが、安心感がある等身大のかわゆさというか何というか。
つーわけで、かわいいは正義!なのでそれだけで満足。観てよかった!
蛇足なれど付け加えれば、よういずみはいつも通りで問題なし。相変わらず歌もうまいが、まんま甲本ヒロトやねん…。ヤグカレー食べたい。
問題視していた麻生久美子はいい感じで枯れていて嫌いな鼻の下のラインやしゃくれ気味のアゴが目立たなくてよかった。
あと友情出演の土屋アンナがすげえよかった。小池栄子の使い方はもったいない。
話に関しては本当に蛇足となるので触れずに終わってしまう。
○「クヒオ大佐」 ★★★★ (09.11.24/劇場)
STORY:湾岸戦争が勃発した’91年、小さな弁当屋の女社長・永野しのぶは結婚詐欺に遭っている最中だった。騙している男の名は
ジェナサン・エリザベス・クヒオ。アメリカ空軍大佐を名乗る胡散臭い男。クヒオはさらに博物館職員の春・銀座の売れっ子ホステスの未知子にも
毒牙を伸ばす。しかし彼のバレバレな詐欺の手口はしのぶの柄の悪い弟にあっさり見破られてしまい、逆に恐喝される羽目に…。
「父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の双子の妹の夫のいとこ」と称する実在した結婚詐欺師・ジョナサン・エリザベス・
クヒオ大佐の事件の映画化。
まあ実際のクヒオ大佐は髪の毛も眉毛もパツキンでもっと「らしかった」ようだが、映画の彼は鼻だけは付け鼻で胡散臭い高さ(「カイジ」でも皆
付けて出演すればよかったのに。)の、どこからどー見ても日本人で、しかも手口も杜撰な、どーしてこんな男に騙されるのだ?という感じ
のヘッポコぶり。
それを今が旬で何をやっても映える堺雅人がユーモラスに演じればそれだけでそこそこ楽しいのだが、あんまりコメディタッチでもないし、
かといってサスペンスでもなければ実録ものだったりもしない微妙な作風なのがなんだかもったいない。ちょっぴり社会派なのも、うへえ。
ザルすぎる詐欺の手口をことごとくチンピラ@新井浩文に見透かされしどろもどろになるクヒオ大佐のやり取りが楽しかった。
奇人・クヒオ大佐を演じるは堺雅人。仕事選べよ、とツッコミたくなるが、妙にハマッているのは流石の芸達者ぶり。でもベッドシーンはあんま
似合わない。
騙し騙されのヒロイン陣にはあんまり魅力を感じなかったのが惜しい。満島ひかりってこんな生活の疲れが出まくったような顔だったっけ?
新井浩文は相変わらずの存在感の強さ。
アンジャッシュの児島一哉はウザイ役を公演。流石スベリ芸人。
終盤登場する髭もじゃ眼鏡の刑事がどこかで見た気がして気になって気になって鑑賞しながら身悶えしていたのだが、「南極料理人」に
全く同じ髭もじゃ眼鏡のままで出ていたことを思い出しものすげえスッキリした。
クレイジーケンバンドのエンディングテーマが清々しくて好印象。
○「首狩り農場 地獄の大豊作」 ★ (00.11/ビデオ)
STORY:見れ。
ジャケットだけ見るとかなりときめくものがあるが、こんなシーン存在しないので。
鎌や首吊り死体なんて出てきやしねえ!
とりあえず、主人公と強盗団との命懸けのカーチェイスのシーン(チェイスしてねえけどな!)で、何故か
脳天気なカントリーミュージックが流れるのだけは大爆笑請け合いだ!
その他のシーンは本ッッッッッッッッッッッ当にどうしようもねえけどな!
○「暗いところで待ち合わせ」 ★★★ (06.12.19/劇場)
STORY:事故で視力を失った後、唯一の肉親の父親も亡くしたミチルは、外界を恐れてほとんど家の中に籠もりきりの生活をしていた。すぐ近く
の駅で殺人事件があった日、その家に侵入者があった。彼はアキヒロ、中国人とのハーフで人付き合いの下手な青年。事件の容疑者として
追われる身だった彼は、ミチルに気づかれないよう居間の隅で息を潜めて暮らす。だが、やがてミチルは家の中の誰かの気配を感じ始め…。
白乙一の傑作を三池監督の「オーディション」、「ぼっけえ、きょうてえ」の脚本家、「AIKI」の監督である天願大介が映画化。
多少のアレンジはあるものの、驚くくらい原作に忠実で原作が大好きな身としては嬉しい限り。やっぱり良い原作を映画化するのに大幅な
アレンジは必要ないと思うのよね。
反面、盲目の少女(という歳でもないな。)の家に忍び込んだ青年が気づかれまいと息を殺すシーンなんかは、展開を知っているが故にいつ
バレるんだとハラハラできなかったのはもったいなかったかも。
ちなみに所々サスペンスを通り越してホラーチックな演出や音楽があったのがちょいチグハグ。
しかしまあ、いくら目が見えないとはいえ、家の中に何日も誰かいたら臭いとかで気づくよなあとかウンコはどうしてんだよとか思わざるを得ない
わけだが、その嘘臭さを極力抑えているのが俳優陣の演技力。
難役を見事に演じきった田中麗奈は素晴らしいの一言。個人的にすでに萌えのピークは過ぎてしまった女優さんだし今回は特に地味メーク
だしなのだが、湯上がりシーンは非常に綺麗であったことよ。
その相手役はチェン・ボーリン。こちらも健闘はしているのだが…。
ここにこの映画化の最大の問題点であるほぼ唯一の原作からの大きな改変があるわけで。
すなわち、原作では生粋の日本人だったアキヒロが映画では中国人ハーフになっているという点。
ここに監督が訴えたい大きなテーマがあって、どうしても変えたかった、という訳ではなさげなんだよなあ。
日本人じゃないから世間から疎外された、という風にした訳でもなく、ただ周囲に馴染めない社会不適応者だからというのは原作通りだし。
なので、偉い人が「最近”ほありゅー”とかいうのがブームらしいから台湾のイケメン出しときゃ女性客来んじゃねーの?」とか余計な
口出ししてきたんじゃないだろうかと邪推。まあ確かに題材も出演陣も地味なんだが。
だいたい中国人どもなんてゲーム機買い占めとかナマコ略奪とかネトゲでやりたい放題とか最近印象悪すぎ。
あまりに地味すぎるためか佐藤浩市がなんでこんな役?という役で出演。なんでこんな役?
アキヒロの同僚のチャラい青年のヘラヘラぶりを最近どこかで見たような、と気になったのだがスタッフロールを見て納得。獅子丸かよ!
原作に忠実が故に、原作と比べて気になる点(当たり前だがアキヒロの日本語がたどたどしい、和解してもカズエが不機嫌そうな演技、ラスト
がグダグダなど)が見えてしまい結果的には点伸びず。難しいね。
○「グラン・トリノ」 ★★★★ (09.5.25/劇場)
STORY:長年連れ添った妻を亡くした頑固老人のコワルスキー。教会への懺悔を拒み息子たちの誘いを断り独りで暮らす彼は、隣に越して
きたアジア系の一家に差別感を剥き出しにする。しかし、一家の息子・タオが悪友に唆されて愛車グラン・トリノを盗みにきたのを撃退したのが
きっかけで一家と親しくなっていく。タオに男の生き方を教える日々に幸せを覚えるコワルスキーだったが、タオが悪友たちにいじめを受け…。
クリント・イーストウッド翁の俳優業引退作品(自称)。監督も本人。
前作「チェンジリング」から間をおかず公開された、どっちかというと小品。
頑固老人と異民族の少年のふれ合い、そしてならず者との不毛な抗争とその落とし前の付け方、という話なのだが、なんつーか意図的にわかり
やすい隠喩が散りばめられていてこそばゆい。
イーストウッド翁演じる主人公の頑固ジジイは自分が正しいことを盲信し、日本車に乗る息子に不満で黒人黄色人が幅をきかせるようになった
世の中を苦々しく思っている。勿論ヘソピアスやヒップホップなんざもってのほかである。これすなわち古き良きアメリカ人の典型的な例なの
だろう。とはいえ、生粋のアメリカ人と言いつつポーランド系移民で、国の歴史の短さもモロ見えだったり。
Dr.マンハッタンが味方にいなかったベトナム戦争でアジア人を何人も殺してきたことにより神を信じられなくなった(童貞くせえ神父の言葉
など耳を貸そうとしない)彼が、年老いてアジア人たちと親しくなる運命の皮肉。しかも彼らの部族はそのベトナム戦争時にアメリカに味方した
せいで居場所がなくなりアメリカに移住してきたのだという。
子育てがうまくいかなかったせいで独り暮らしをしている彼は、隣家の聡明な姉弟と打ち解け、弟を鍛え直すことにより子育ての疑似再体験をし、
実の息子たちに教えてやれなかった”男とはこうあるべき”的な哲学を伝えることができる。しかも自身主演によるショートコント実演講座
つき。
かくして一人前の男としての道を歩み始めたタオ少年が、遠縁の、現代のダメな若者たちのカリチュアであろうチョイ悪グループに生意気だ
と根性焼きを喰らわされてしまう。
激怒したコワルスキーは彼らをぶちのめすが、それを根に持った連中の報復はタオの姉のスーにまで及んでしまう。
目には目を、歯には歯を。ヤツらは生きるに値しないが、タオの手を自分のように血で汚したくはない。際限なく繰り返される流血の連鎖を
断ち切るべく、余命僅かなコワルスキーが取った行動は…。
ユーモアを交えた物語はテンポよく進み、まあいろいろと暗示に満ち溢れた終局へとダレずに行き着く。明に暗に何かと計算された
構成で紛うことなき良作。「華氏911」や「ボラット」で取り上げられるような古き良きアメリカ人たちはこの明け透けな自国へのメッセージに
気がつくんだろうか。
しかし大傑作と褒め讃えきれないのは、コワルスキーの最後のアレが、彼にとっては最善なんだろうけど、観ている側にとってはどうにも
切ないというのが。何か他に冴えたやり方はなかったものか。その辺、「ミリオンダラー・ベイビー」とも相通じるかな。
もう一つ、タオの姉のスーが実にいい娘だっただけに、彼女への仕打ちがいただけなさすぎる。勘弁してくれ。
この作品の教訓は、デブでボウズでヒップホップ好きなガキは生きてても仕方がない、だな。
○「グリーン・デスティニー」 ★★★ (01.6/ビデオ)
STORY:19世紀、中国。伝説の名剣・”碧銘剣”を奉納しようと都に来た剣の達人・ムーパイとその女弟子シューリン。だが剣が宿敵碧眼狐と
その弟子に盗まれてしまう。弟子の正体は貴族の娘・イェンだった。家のための政略結婚と、かつて愛し合った砂漠の盗賊の首領への思いに
揺れ動く彼女は”碧銘剣”を持ったまま家を飛び出してしまう。追うムーパイとシューリン。そして運命は一行をすべての決着の場へと導く。
米・中共同製作ということで、香港映画とは一線を画した洗練さがお見事。「風雲ストームライダーズ」ほどCGに頼り切ってしまわずに、伝統芸
ワイヤーアクションを駆使した流れるような空中武闘は実に素晴らしい。
反面、香港映画のバタ臭い、こってりとした、ケレン味たっぷりの演出(誉め言葉)が失われてしまっているのが甚だ残念。
時代がかぶっているので、服装も髪型(弁髪)もまんま同じで、チョウ・ユンファ兄ィが「ワンチャイ」シリーズのウォン先生に見えて仕方なかった。
タイトルは、主人公の持つ名剣「碧銘剣」から。でも、それってむしろ「ブルー・デスティニー」になるのでは?つーかそれじゃガンダム。
○「クリムゾン・リバー」 ★★ (02.2/ビデオ)
STORY:「それは10年前のことであった。」「ダニー、グレッグ、生きてるか?」「あぁ、何とかな」「上から来るぞ、気を付けろ!」「こっちだ、
越前」「何だ、この階段は!?」「とにかく入ってみようぜ」「せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!!」「こうして越前康介は、クリムゾンを
手に入れた」
つーか、それは「デスクリムゾン」やねん。
STORY:フランスの田舎町ゲルノンで、山中から男性の惨殺死体が発見された。この猟奇殺人に敏腕警視ニーマンスが派遣される。一方、
別な片田舎の町で、20年前に死んだ少女の墓が荒らされ、小学校からその少女のデータが盗み出されるという事件が発生。マックス警部補が
捜査に当たる。マックスは容疑者の足取りを追い、ゲルノンにたどり着く。が、容疑者はすでに死体となっており、発見者はニーマンスだった…。
とまあ、スリラーっぽいムードを漂わせながら、ジャン・レノとヴァンサン・カッセル演じる二人の刑事が別々に追っていた二つの事件が次第
に一つに収縮していく前半は結構いい感じ。
ところが、終わってみれば???の嵐。ラスト近辺は謎っつーか矛盾の嵐。つーか、それらしき設定をバラまいただけで、事件の整合とか
考えてなかったんじゃねえか、こいつら。
以下ネタバレな疑問点。一応反転させておく。
優れた血だけを掛け合わせ、優れた子孫を残すための同族結婚の果てに、血統が弱って遺伝子異常が発生、それを回避するために産婦人
科で産まれた子供を村の子供とすり替える、って、それじゃ結局優秀じゃない血が混じってしまい、意味がなくなっちまうんじゃないの?
拷問とか手首切断とか目ん玉くり抜きって、意味あるんスか?第二の死体の義眼というのがレノさんへのヒントだとしても、他は?(←遺伝子
異常が目に集中しているので、大学への見せしめの意思表示という意味?)手首は一体?指紋調べろというヒント???胎児ポーズは?
双子の片方だけを交換したらいくらなんでも全然顔が似なくてすり替えたのバレバレじゃねえ?
指紋が一致したということは、レノさんを撃った(悲鳴が情けない)のはファニーではなくジュディットの方なわけだが、そうすると殺さなかった
意味がわかりまへんな。
などなどなどなど。
実の所、サイコサスペンスと見せかけてオチはバカミスだ、という評判は聞いていたので、実は犯人は宇宙人だった、とか、最後にヴァンサン
が背中からバズーカを出して、レノさんは元気玉出して世界が滅びる(それってミステリー違いますねん。)とか、そんなオチかと思っていた
ら、何のことはない実は犯人は双子だったという程度のオチで落胆。
○「クリムゾン・リバー2」 ★ (04.6.18/劇場)
「バカ映画たちの挽歌」コーナー参照。
○「狂い咲きサンダーロード」 ★★ (01.12/ビデオ)
STORY:市民に愛される暴走族になるために抗争をやめ連合することを決定した暴走族の面々に腹を立てたジンは仲間と暴れまくるが、
連合の怒りを買い、捕らわれる。彼らを助けたのはOBのタケシだった。タケシの誘いで、右翼団体に身を寄せたジンだが、そこにも居着けず、
連合と右翼に闇討ちされて右手右足を切断されてしまう。何もかもを失ったジンは、裏ルートで重火器を手に入れ、復讐を開始する。
石井聰亙監督のロックな作品。はっきりと好き嫌いが分かれる作品だと思う。つーかオイラは嫌い。こんな会話が成立しない人間しか出て
こない話勘弁して。
しかし、ラストシーンばかりはめっぽうカッチョエエ。何に対しても狂犬の如き吠えっぷりでおそらくIQ一桁しかなく顔も声も気にくわない主人公
が、このシーンだけは輝いていた。あの漢の微笑みは素晴らしい。
右翼(いきなり「君が代」を歌いながら登場!)の男色隊長に小林稔待。
暴走族が嫌いな人、ただやみくもに体制にかみつけばいいという姿勢が気にくわない人、無鉄砲な若者に「歯ァ食いしばれ!そんな大人修正
してやる!」と殴られそうな人、右翼の人には特にオススメできない。
○「クレイジーズ」 ★★★ (11.11.8/劇場)
STORY:アイオワ州の小さな平和な町オグデンマーシュで、突然住人の一人がショットガンを持って試合中の球場に乱入し、保安官
のデヴィッドに射殺される。それを皮切りに住民の狂ったような奇行が始まり、デヴィッドはその原因が町の外れの沼に墜落していた謎
の飛行機の積み荷にあると推測し、町を脱出しようとするが、軍に阻まれ、謎のウィルスに感染していないか検査を受けさせられる…。
制作総指揮にロメロ御大の名前があると思ったら、ロメロ監督作のリメイクだったのね。
つーわけでゾンビものの亜流。なれど、出てくる感染者はゾンビらしくない感情のある俊敏な人間。なので殺害方法も多彩なのは
評価したい。事故だけど首つりのギミックは面白かった。←不謹慎。
人を不安定にさせるウィルスといってもみんな凶暴になるばかりなのはちょっといただけない。「ハプニング」みたいに派手に自殺する
ヤツがいてもよかったのに。
終盤になると人間性がなくなり最近のゾンビ映画っぽくなるけれど、その頃には少し飽きちゃってるしねえ。
つーわけでちょっち冗長かも。ラス前の休憩所の戦闘なんて省いてもよかったんでないの。
主人公夫婦よりも保安官助手の方が終始頼もしくナイスガイだった。
○「クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの冒険」 ★★★ (04.4.24/DVD)
STORY:幼稚園の遠足で、群馬にできた巨大テーマーパーク・ヘンダーランドを訪ねたしんのすけは、立入禁止のサーカスの中で魔法人形の
トッペマと出会い、異次元の王国ヘンダーランドを滅ぼしたオカマ魔女のマカオとジョマが、続いてこの世界を狙っていることを知らされる。
怖がって戦おうとしないしんのすけだが、魔女の手先にひろしとみさえをさらわれ、ついに魔法のトランプを手に戦うことを決意する…。
劇場版クレしん第4弾にして本郷みつる監督最終作。とか書いているがぶっちゃけこのシリーズは「オトナ帝国の逆襲」しか見てないので比較
しての感想が書けないので短めに。
面白かった。子供が楽しめる映画でありながら大人も十分に楽しめる出来で。
アクション仮面・カンタムロボ・ぶりぶりざえもんの三大ヒーロー揃い踏みなんて燃える展開があったり、終盤のアクションは激しく動きまくり
だったりで素敵。
両親を助けるために一人だけで群馬まで乗り込むしんのすけの勇姿とか、ひろしの「今俺たちの息子が少しだけ大人になったところだ」
というセリフ(が、その前の戦いの必然性というのがない気がして…しんのすけが魔法のトランプで戦えばいいじゃん…ちょっと興ざめ)とか、印象
に残るいいシーンもある。
が、子供向けなので話がアバウトなのと、クライマックスがあっさりしていたのがちと弱いなあと。
トッペマを演じる渕崎ゆり子やオカマ魔女を演じる大塚芳忠と田中秀幸、その配下の雪だるま男ス・ノーマン・パを演じる古川登志夫と声優陣
は抜群に上手くて得した気分だったのだが、見た後劇場のチラシで「スチームボーイ」のキャストを見てブチ切れですよ。
○「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」 ★★★★ (02.4/VIDEO)
STORY:春日部で始まった「20世紀博」。大阪万博の再現を中心としたその懐かしい風景に大人たちは夢中になってしまう。そしてある日、
大人たちは一斉に「20世紀博」へと向かい、帰ってこなくなった。残されたしんのすけたち子供を襲う謎の組織。全ては、21世紀に絶望し、
世界を懐かしい、未来に希望があったあの頃へと戻そうとする秘密結社イエスタディ・ワンスモアの企みだったのだ!
「映画秘宝」誌で洋画邦画を押しのけて2001年度グランプリを達成してしまったりと、至る所で絶賛の嵐の劇場版第9弾。
「夢の21世紀」を実際に迎えてみればまるで明るい未来などではなかったがために、夢が溢れていた過去へと引きこもろうとする組織の
ボス・ケンとチャコ。
過去に逃避するも、未来を、夢を引き渡す対象、すなわち子供のために、現実へと回帰するひろし。
どんなものになるかはわからないけれども、これから手にする未来を守るために、何度も転んで、鼻血も噴き出して、ボロボロになりながら
も、それでも走るしんのすけ。
あー、これは泣けるなあ。細部まで作りこまれているし、ギャグもキレてるし、親子で鑑賞して泣いて笑って楽しむべき傑作。
ただ、オイラは、万博といえばつくば科学万博を思い出す世代だし、
大人になりたいから!と必死で陰謀を阻止するしんのすけにシンパシーを持てなくなっているくらいには大人になってしまったし、
子供もいないので、ひろしの
「俺の人生はつまらなくなんかない。最高だよ。あんたにも、分けてやりたいくらいだ」
というシーンで、ストーリー・演出の良さで泣けてしまうものの、実感として受け止めて泣けるわけでもなし、
と、作品が意図する客層からはみ出してしまっているがために、100%物語に浸りきれなかったところがあり。
故に★4つ。作品にではなく見る側に問題があったというわけで。
○「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」 ★★★★★ (04.11.6/DVD)
STORY:泉のほとりにたたずむ物憂げな美女の夢を一家揃って見た野原家。その日の午後、シロが庭に掘った穴の中から巻物を見つけた
しんのすけは戦国時代にタイムスリップしてしまう。偶然に小国・春日家の侍大将の井尻又兵衛の命を助けたしんのすけは彼に連れられてお城
へ行き、夢で見た美女=廉姫と再会する。さらにしんのすけを追って野原家全員がやって来るが、春日家は戦に巻き込まれようとしていた…。
クレしん劇場版第10弾にして原恵一監督の集大成的作品。
最初に最大の問題点を書いてしまうと、これって「クレヨンしんちゃん」である意味ってなくねえ?
そんなわけでシリーズのコアなファンからは一部不評の声もあるようなのだが、純粋に一作品として観るととんでもない傑作なのである。
今作では野原一家は狂言回し的なポジションで、主役と言えるのはゲストキャラの”青空侍”こと井尻又兵衛と、彼が仕える大名の美しき姫・廉
である。
互いに好き合いながら身分の違い故にそれを表に出すことすらできない二人の想いの行方を、手抜き無し子供だまし無しの緻密な
演出で見せる素晴らしい合戦シーンを絡めつつ、切なくも愛らしくほろ苦くも爽やかに描き切ってくれて、ラストシーンは涙ウルウルなので
ある。
心優しき朴訥漢・又兵衛と、凛とした廉姫を筆頭に殿様や家臣たちのキャラクターにも好感持てまくり。つーか廉姫が小林愛の熱演も
あり、ものすげえ可憐ナリ。まさかクレしんのキャラにこんなにも萌えようとは!
雨上がり決死隊の二人が声のゲスト出演しているが普通に上手い演技をしているので埋没していてどのキャラだかわからんのはどうよ?(笑)
活躍をだいぶ取られてしまったものの野原一家も当然活躍。
影の主役・ひろしも「しんのすけのいない世界に未練なんてあるか?」と相変わらずの名ゼリフで感涙。そしてボディーブレードがツボに
入ってしまい大爆笑。
又兵衛を撃ち抜いた弾丸はしんのすけが現れた時の狙撃兵が撃った弾なんだろうなあ。
○「クローサー」 ★★★★★ (03.4.9/劇場)
STORY:リンとクワンの姉妹は、世界中の監視カメラを自在にハッキングできる監視衛星を駆使して仕事をこなす殺し屋”電脳天使”。大会社の
社長・チョウの暗殺をその弟から依頼され、首尾よく成功した二人だったが、切れ者女性刑事・コンはその痕跡に気づき、彼女らを追い始める。
正義と悪に分かれて戦いながら、彼女たちはどこか魅かれ合っていく。一方、チョウの弟は真実を知る”電脳天使”を始末しようと企むが…。
オレ内’03年の期待度NO.1の作品、ようやく鑑賞。
セールスポイントはまずなんといっても、中国・香港・台湾の誇る三大美女スターの競演と、VFXを駆使した美しきアクション。
三人の中でもブッちぎりでかわええのはお転婆なクワンを演じるヴィッキー・チャオ。日本における大出世作・「少林サッカー」では驚愕のあばた
面メイクで登場し、やっと顔が綺麗になったと思ったら今度は火星人ヘッドというあまりにもアレな役どころだったが、今回は存分にそのプリティ
フェイスを見せてくれる。バスルームでの格闘シーンなんて萌えるじゃないですか!
つーか残りの二人はオレ的に美女のカテゴリーに入れるのはちょっと…(笑)
”電脳天使”を追い詰める敏腕刑事(いわば銭形のとっつぁん)・コン役に「食神」で猛烈な演技を披露したカレン・モク姐。美女ではないに
せよ、素晴らしくカッコエエ。
あともう一人は…ヒラメ?つーかこの人は顔やボディ云々の前に、「スティル・ブラック」や「風雲ストームライダーズ」での知能の低い演技があまり
にも嫌いだったので低評価。
アクション満載の話は、まるで香港版「チャーリーズ・エンジェル」か「キャッツアイ」かという感じだが、実は「女たちの挽歌」とでも呼ぶべき漢気
溢れる熱血巨編だったりする。
冒頭のヒラメの宙を舞う華麗な銃撃戦やカレン姐のエレベーター内での大立ち回り、その二人が激突するチェーンデスマッチ、さらに姉妹の命
懸けのカーチェイスなどアクションシーンは全て見ごたえがあるが、中でも圧巻なのはクライマックスの一大チャンバラ。
敵のアジトに乗り込んだヴィッキー&カレン姐の即席バティを迎え撃つのは、倉田”和製ドラゴン”保昭とベン・ラムという「東京極道賭博」
コンビ!つーか倉田先生、女の子相手に容赦のない強さで実に大人げない。
まあとにかく、このラストバトルが壮絶で、手に汗握りまくりです。必見!
ところで、ある年齢以上の人は、ナビスコのポテチの筒を左手にはめて、サイコガンごっこなんてついついやってしまいましたよね?そんで
もってそれが抜けなくなって焦ったり………。いや、その最終決戦を見てたらふとそんなことを思い出しまして。
ヴィッキーたんのホットパンツからスラリと伸びた美脚に萌え、壮絶血まみれアクションに燃え、という一本。これでストーリーがダレダレで
なければ文句なしだったのだけど…。
○「クローズ ZERO」 ★★★ (07.11.21/劇場)
STORY:”カラスの学校”こと不良の掃き溜め・鈴蘭高校。強さに自信のある不良たちが集まる故に、開校以来校内を統一した者はいなかった。
現在の最大勢力のボスは3年の芹沢多摩雄。そこに鈴蘭制覇を目指す男が転校してくる。彼の名は滝谷源治。偶然出会ったOBでチンピラの
片桐拳を軍師に勢力を広げる源治。そのカリスマに惹かれて次々と猛者が彼の傘下に入り、校内は二大勢力にまとめられようとしていた…。
大人気不良マンガの外伝的作品。監督は三池崇史。
原作者が映像化について首を縦に振らないため、原作開始の一年前という番外編チックな設定で実写映画化。まあそれ故に原作未見でも
観てみるかという気になったわけだが。
つーか今月(’07年11月)は壊滅的に観たい映画がなかったため無理矢理観た次第で、まるで期待なんぞしちゃいなかったのだが、
まあまあ面白かった。
だって始まって最初の画がエンケンのアップだったしな!
って、自身オリジナル企画で気合いを入れてたはずの「ジャンゴ」より全然面白かったってえのはどうなのよ三池監督?
中盤までは得意のえげつないギャグを織り交ぜて暴走気味だったのだが、だんだん小さくまとまっていって終わってしまった感じで惜しい。
アクションが派手なのがよかった。一対多数でもバッタバッタと薙ぎ倒すのが爽快。ヤンキー無双てな感じ。でもこうして感想を書こうとして、
このシーンのこの技が良かった、なんてのが全然思い浮かばないのが三池クオリティ。
ラストの土砂降りの中の二大軍団大激突シーンも格好良かったが、どちらも学ランなんで何がなんだかわからんて。加勢に来たあの連中も
よく敵味方の見分けがついたこと。
主人公役の小栗旬はまさに今が旬(寒っ!)だけあってイケイケオーラが出ている。そりゃあ劇場内が女子高生ばっかになるわ。
ライバル役の山田孝之もかつて電車男だったのが嘘のように活躍。でも小栗旬と並ぶとタッパの差が切ねえ。
しがないチンピラ役のやべきょうすけはしがなくてよろしい。影の主役。
その他大半のヤンキーどもは実に偏差値低そうな面構え(一応褒めてる)でよろしい。
史上最低映画「デビルマン」の主演の双子アイドルが雑魚ヤンキーを演じていて、身の丈に合っている感じで苦笑。改めてあの映画の
プロデューサーに禍多からんことを。
ヒロイン役に黒木メイサ。………イラネ。話が一番盛り上がるところで一曲歌わせてもらって台無しにしやがるしな。
○「クローズZERO U」 ★★★★ (09.4.13/劇場)
STORY:札付きの不良の集まる”カラスの学校”鈴蘭高校。史上初の校内制覇を目指した滝谷源治は最大勢力の長・芹沢多摩雄を倒すも最後
の難敵・リンダマンに完敗してしまう。苛立つ源治はかつて人死にまで出たために休戦協定が結ばれていた鳳仙学園ともめ事を起こしてしまい、
両校の全面戦争が再発する。鳴海大我の下、鉄の結束力を持つ”殺しの軍団”鳳仙に、まとまりのない鈴蘭は各個撃破されていくが…。
原作ブレイカーにしてやっつけ仕事の達人である三池崇史監督がサラリと撮り上げてしまった傑作ヤンキー映画「クローズZERO」
(同時期公開の自身入魂の企画だった「スキヤキウエスタン・ジャンゴ」は出来も収益もボロボロだったのに・笑)の続編。
矢張り三池っちには大人も子どもも楽しめる大作なんぞよりヤンキーものやヤクザものが明らかに合っているようで、実に明るく激しく
楽しくパワフリャアなマンガ映画に仕上がっている。
最終決戦の場は敵の学校、校庭での両軍団の顔合わせの後に敵ボスが「オレを倒したければ屋上まで上がってこい!」、各階に待ち
構える敵の幹部たちにそれぞれ因縁のある仲間たちが立ち向かう!「ここはオレに任せてお前は先に行け!」………って、何ですか
この王道バトルマンガ!単純明快で最高じゃないか!!!
前作の登場人物はほとんど続投。これって地味に凄いよな。密かに前作にも出ていた上地雄輔は売れっ子になって多忙なのか途中退場だ
けれども。
それだけに武装戦線が絡まないのと海老塚1年トリオのヘタレっぷりが悔やまれる。
源治@小栗旬の長い足から繰り出される飛び膝も多摩雄@山田孝之の豪快なプロレス技も健在。
お調子者の双子・三上兄弟@「デビルマソ」の主役コンビも実に偏差値の低そうなナイス演技をしている。こういう分相応な役やってれば
最低主演男優とか叩かれることもなかったのに。
前作に超チョイ役で出ていた鷲尾@波岡一喜は、前作のあの唐突な登場と退場は今作の伏線だったのか!と深読みしてしまいそうな
役柄で再登場。(三池っちがそんな深謀遠慮するわけないけど。)しかし今年は「少メリ」といい三枚目ばっかだの。
今回初登場の鳳仙組も原作再現のスキンヘッド+白系学ランで迫力。幹部格も鈴蘭同様実に偏差値低そうな面構えでナイスガイ。
そのリーダー・鳴海大我@金子ノブアキは、最初はその漢らしくない髪型が気に食わなかったものの、実にいいキャラ立ちをしていて観て
いてどんどん好感度アップ。猛者どもを束ねる鋼の強さと侠気を持ちながらもどこかとぼけたユーモアも併せ持つ好漢。最終決戦の
最中の食事休憩とか面白すぎ。でもやっぱりその髪型とヒゲは漢らしくないなあ。
その部下の一見おとなしい文系少年と見せかけて戦い始めると止まらなくなる残虐バーサーカーもインパクト強し。
そして、原作にも登場する美藤次男@三浦春馬も、ぶっちゃけ顔見せ程度でほとんど活躍しないけれど、作品世界に奥行きを出すという点
ではまずまずの存在感。
友情・努力・勝利の王道熱血バトルマンガを地で行きつつも三池監督ならではの極太ブラックユーモア(セメダインとか)も炸裂する
なかなかの傑作。前作とセットで観た方がより楽しめるかと。
音楽もギンギンにロケンローでご機嫌。今回は黒木メイサのしょぼい歌で盛り上がりに水を差されることはないのでご安心召されよ。
つーか一応前作に続いて登板しているほぼ唯一の女性キャラである黒木メイサの扱いの空気っぷりが凄まじい。流石三池監督。
○「クローバーフィールド HAKAISYA」 ★★★★ (08.4.11/劇場)
STORY:ニューヨークの、かつてセントラルパークと呼ばれていた場所で発見された映像記録。そこには”クローバーフィールド事件”に遭遇
した一市民体験が記録されていた。その日、友人・ロブの転勤のフェアウェルパーティで記録係を任されたハッドはカメラを回し続けていた。
突然の轟音と激しい揺れ。外に飛び出した一同の前に、遠くマンハッタン島から、自由の女神の頭部が無惨な姿で吹き飛ばされてきた…。
「ブレアウイッチ・プロジェクト」+「ゴジラ」的なFPS怪獣映画。(Sじゃないけど。)
終始一貫、映像はあるボンクラが持つハンディカムの画面を通して映される。あくまで一個人の視点でしか物語は映し出されない故に、
ニューヨークに突然降って湧いた災厄の正体ははっきりとわからず、我々観客も何が起こるかわからない恐怖のズンドコに叩き落とされて
しまう。
どうやら怪獣が暴れているようなのだが、カメラの端をよぎる体の一部が見えるばかりで、繰り返すこのチラリズムあの反動はまるで恋
だねってなもんですよ。いい加減ちゃんと見せなさいよコンチクショウ!ともどかしくなるのだが、はっきりと見せられてしまうとそれはそれで
なんだか…。
確信犯的に謎だらけなのとヤツの全身像があんまりカッチョエくないのと冒頭のシーンがちょい長いのと中盤怪獣ものから脱線してしまう
のと…まあ贅沢な注文は尽きないものの、十二分に楽しめるエンターテイメント作品。劇場の大画面で臨場感を味わうのが正しいかと。
そんなわけで最後まで”神の視点”が登場しないため、結局ヤツは何者なのかどこから来たのか何がしたかったのかニューヨークはどうなった
のか何もわからないまま話は終わってしまうのが、筋は通っているもののどうにもモヤモヤして仕方がない。
まあその情報の断片を元にネットで調べて補完する(リンク先激ネタバレ注意!)のが楽しいと言えなくもないけれど。
○「黒部の太陽」 ★★★★ (12.8.1/劇場)
STORY:昭和31年、戦後の高度成長を支える電力の確保のため、関西電力は社運を賭けて黒部に水力発電所を作ることを決定。困難極まる
工事の内、ダムに至るトンネルの掘削を請け負った熊谷組の下請け・岩岡組の社長・源三の息子・剛は自己中心的で傍若無人な父親に反発して
いたが、見合い相手の父親で関電の現場責任者の北岡と共にトンネル開通に尽力する。しかし掘削工事は難所に差し掛かって行き詰まり…。
石原裕次郎と三船敏郎という日本を代表する二大スターががっちり手を組んで製作した、実話を元にした男たちの熱き挑戦の物語。
裕さんの「こういった作品は映画館の大画面で見てほしい」という遺言によりソフト化されず、かといって例えば「恐怖 奇形人間」のようなカルト
映画のようにリバイバル上映もされず、長年幻の映画となっていたが、東日本大震災復興支援ということでチャリティ上映されることに。
「プロジェクトX」でも取り上げられたことがあるくらい難しい工事に挑んだ男たちの戦いの記録。
映画で取り上げられている工区は、そもそもダム自体の工事ではなく、遙か山奥のダムに資材や重機を運び込むための通路作りだったりして、
それだけで何年も掛け、人死にも出し、金に糸目を付けず最新技術を導入してやっと開通という案配で、事業の壮絶さを思いやってしまう。
それだけに、開通した時の名もなく貧しき工夫たちの爆発的な歓喜には結構シンクロせざるを得ない。昔の日本人は凄かったんだねえ。
併行して工事と関係ないところの人間ドラマも描かれるのだが、蛇足気味。白血病の下りなんて無駄に観る側のテンション下げるだけじゃん。
まあ実話ベースだから仕方ないんだろうけど。
関電社長のいい気違いぶりが印象的。
全長3時間16分。途中休憩あり。
○「K−20 怪人20面相・伝」 ★★ (09.1.20/劇場)
STORY:第二次大戦が起こらず華族が支配する日本の帝都に暗躍する変装の達人の怪盗・20面相。事件を追う名探偵・明智小五郎と軍警は
明智と柴田財閥の令嬢・葉子の婚約式の場に現れた20面相を捕らえるが、それは罠にはめられたサーカス団の青年・遠藤平吉だった。仲間に
助けられた平吉は本物の20面相を捕まえて無実を証明するため修行を始める。その最中、平吉は葉子が20面相に追われる現場を見つけ…。
予告編を見た段階で、つーかそもそも企画の段階ですげえやべえ臭いがプンプンしていたのだが、ポプラ社の少年探偵団シリーズを
貪り読んで育った人間としては礼儀として観ておかねばならぬと思い観賞。
まあ製作×主演がパクリばかりだけど最低限は楽しめた「パクリターナー」のコンビなので箸にも棒にも掛からぬものにはならんだろうとは
思ったけれども。
観賞後に遅まきながら知ったのだが、この作品の原作は江戸川乱歩のシリーズではなく、そこからインスパイアされた北村想の「怪人20
面相・伝」なのね。乱歩作品が原作ではないのならばあの終盤の謎解き・展開にブチ切れしても仕方がない。
しかし二次創作である原作に更になんちゃってSFな設定を付け加えた(しかもあまり意味がない)三次創作ですか、やれやれ。
物語は怪人20面相に騙され誤認逮捕された軽業師の平吉が身の潔白の証を立てるべく20面相を追ううちに彼の恐るべき野望に巻き込まれて
いくというもので、ウリは20面相の正体や野望についてのミステリー、平吉と20面相の軽業アクション対決、「ALWAYS 3丁目の夕日」
製作チームによる終戦後の町並みのCGといったところ。
上記3項目の内、後ろ2つはまあまあ。でも「ヒトラーの復活」や「海腹川背」さん(PSP版除く)ばりのラバーリングアクションは重力の制約
がありすぎで、作品世界自体荒唐無稽なのだからそんなもん無視した香港アクションでいいじゃんと思ってしまったり。
さて、問題は最初のミステリーパート。
20面相の正体は?なんつってもどー考えてもキャスト的に主人公=金城武か明智小五郎=仲村トオルのどっちかなのが見え見えなの
だが。
一応、最初に現れる時は鹿賀丈史の顔をしているのだが、そこはそれ変装の達人が素顔を晒すわけがないのでミスリードにもならんし。
結果としては、どちらかではなくどちらも正体でした、となるのだが、たいして驚くほどでもなし。
20面相が狙うお宝については、ビル建設中に誰も気づかんかったのかと。つーか「プレステージ」かい。
主人公を演じるは金城武。好きな俳優なのだが、日本語演技が相変わらず棒読みだったり活説悪かったりするのはいただけない。
ヒロインの伯爵令嬢に松たか子。その顔でどこをどうして伯爵令嬢だと?
ライバルの明智小五郎に仲村トオル。乱歩原作ではない別キャラだと思えばさほど腹が立たないが、雑魚臭がひどい。「少林少女」とかろく
なもんに出ないなあ。
小林少年役は本郷奏多。小林少年にしては少しトウが立ってるなあ。つーか耳でけえ。
主人公のバディに國村隼。樋口真嗣とか北村龍平とか、なんちゃってSF系にご縁があるようで。
子役の今井悠貴がなんか演技上手かった。あんまかわいくないけど。
つーわけでポプラ社の少年探偵団シリーズを貪り読んで育った人間は精神衛生上観ない方がいいですよ。
観る直前まで監督は「パクリターナー」の山崎貴だと思ってたのだが別の人だった。女性監督なのだが、道理で劇中の女性の描き方が
なんだか違和感があると思った。
○「劇場版 TIGER & BUNNY The Beginning」 ★★★★ (12.10.24/劇場)
STORY:大都市・シュテルンビルトでは超常能力を持つヒーローたちが犯罪者を捕まえる様子を生中継するHERO TVが大人気。企業に属する
ヒーローたちの一人・ワイルドタイガーこと鏑木虎鉄は落ち目の中年ヒーローで、”正義の壊し屋”というありがたくない異名持ち。親会社の経営不振で
移籍した彼は、同じ能力を持つ新人ヒーロー・バーナビー・ブルックスJr.とのコンビ結成を命じられるが、対極の性格の二人はまるでうまくいかず…。
大人気を博したTVアニメシリーズが映画化という最近やたらよく聞くパターン。しかも二部作構成というこれまた最近やたらよく聞くパターン。
今作は前編ということで、熱血無鉄砲人情派なおっさん主人公とクールで知的でドライなイケメン新人という水と油な二人の凸凹コンビ結成を
描く。
つーわけでTVシリーズ後半の、ツンから反動で180度裏返ってデレデレになったバニーの印象が残っているので、ツンツンなバニーがなんだか
新鮮。
26話のTVシリーズを前後編に再構成にするのか、某変身しない魔法少女アニメと違ってずいぶん駆け足な総集編になるな、と思ったら、ところ
がぎっちょん、虎鉄とバーナビーの出会いを描く冒頭2話は再構成され語られるも、後半は2話と3話の間にあったエピソードを完全新規で
語るという結構ゆったりした作り。
んでTVシリーズの話はもう終わりで、後編はTVシリーズの後の話を描く完全新作な模様。
つーわけで、未知の新たな凶悪NEXTの出現、他のヒーローの出番大幅増、と大盤振る舞いで拍手。
その代わり主人公コンビは仲良くならないのが痛し痒しだが。でもまあ、二人の距離を僅かながら縮める新たなエピソードが語られただけでよしと
するかね。
個人的にはドラゴンキッドことホァンちゃんの出番が激増したので大満足。
他のヒーローも出番が増えたが、折紙先輩は全くかっこいいところなし。TV版最終話のあの強さは何だったのか。
牛角さんは言わずもがな。
つーわけでTV版を見てない人にも入門編としてオススメできる一本。
TV版を最後まで見てからだとイボのいい人っぷりが腹立つ腹立つ。
○「劇場版 天元突破グレンラガン 螺厳篇」 ★★★★ (09.4.30/劇場)
STORY:シモンがロージェノムを倒し地上を人類の手に取り戻してから7年、人類の文化は急速に発展を遂げていた。ついにニアにプロポーズ
したシモン。だが、ニアが答えようとした瞬間、彼女は反螺旋族アンチ・スパイラルに取り込まれてしまう。人類の螺旋力の増大を危険視し、圧倒
的な力で殲滅に動き始めたアンチ・スパイラル。果たしてシモンたち大グレン団は人類の未来を守り、ニアを救い出すことができるのか…。
ガイナックス製作のTVアニメの再編集劇場版後編。
石橋を叩いて砕き道理を蹴飛ばし無理を押し通す強引すぎる熱い展開。バトルものの宿命である強さのインフレを逆手に取った限界
知らずの傍若無人なパワーアップの連発。荒唐無稽な展開を血沸き肉踊る熱情溢れるフィルムに昇華させる魂の作画と演出。燃える
漢、萌える美少女。そして全体を貫き通す漢の武器・ドリル。
’00年代を代表する、いや、ロボットアニメ史に残る、傑作ロボットアニメである。
で、あるのだが………で、あるのだが………………。
以下ネタバレ。
個人的には最終話の最後の10分がどうしても納得がいかないのである。
文字通り宇宙を股に掛けて繰り広げた冒険の果てに奪還した花嫁が消えてしまうという展開を許容できないのである。
果てなき闘争の末についに勝ち得た平和な日々を最愛の女と共に過ごせないという展開を許容できないのである。
せっかくの大団円だというのに、馬鹿がつくくらい脳天気なハッピーエンドで終わらせればいいではないか。
全身全霊駆け抜いて戦い抜いて生き抜いたのは理解できる。悔いなどないのは理解できる。
理解はできるのだが、納得ができないのだ。
かくして、傑作であるとは思いつつ肯定しきれず、傑作であるが故に否定しきれず、どうにも歯がゆい想いを抱いて早1年半。
もうそろそろあのラストを受け入れたいと劇場へ足を運んでみる。
まあ、東京に遊びに行ったけどやることなかったからということもあるんだけど。
つーわけでようやっと本編の話。
TVアニメの後半である第3部・4部の総集編で、鬱展開だった3部は少なめ、怒濤の展開の4部がメインという構成。
大筋は当然変更なく、TV版と同じ所に収まって完結。心の片隅でニアが生き残るエンディングを期待はしたものの、矢張りそんな改変は
フェアじゃないもんなあ。なんとかゲリヲンじゃあるまいし。
しかしそこに行き着くまではいろいろ変更ありで、大きな点では大グレン団の死者が激減しているというのが。そりゃあ女房子どもを残して
戦死しなくてよかった、という人も約1名いるが、他は死ぬ場面が一番の見せ場だっただけに、かえって消化不良。確かにその代わりの活躍
の場はあったけれど。
でもでもだったらニアだって生き残らせてもいいじゃんとついゴネたくなってしまう。
そこ以外はさほど引っかかることもなく、そうなれば元が面白いので当然面白いに決まっている。
あとはただ元々特盛りだったのに更にスケールアップしてテラ盛りとなった宇宙存亡の大決戦に再びシビレるのみ。
キタンの特攻、カミナとの再会、ヴィラルの幻想あたりに再びホロリ。
いいところで流れてくる「空色デイズ」もEDも名曲。しょこたんはネ申。
TV版を見た人も見ていない人もぜひ観てほしいロボットアニメの金字塔。漢とは、スーパーロボットとは、かくあるべし。
しかしやっぱりヨーコもヒロインの割には報われない立ち位置だよなあ。これではただの乳揺れ要員ではないか。
○「劇場版テンペスト 3D」 ★★ (12.2.16/劇場)
STORY:幕末、琉球。現在の第二尚氏王朝に簒奪された前王朝の末裔の天才少女・真鶴は、第一尚氏王朝復興という父の妄執を叶えるべく、
女性には政治の道が閉ざされていたため、宦官と偽り、孫寧温と名乗り首里城の役人試験に合格する。同期の朝薫と共に王国に降りかかる難題
を解決していく寧温だったが、王姉でありノロ(シャーマン)である悪女・聞得大君に生き別れの兄を人質に取られ、正体を知られてしまう…。
暴走作家・池上永一の小説を連続ドラマ化したものの総集編。それだけでは弱いと思ったのか意味もなく3D化。全く無駄。
この作者の作品は暴走しまくっていて大好きなのだが、この原作はあまり暴走しておらず物足りない出来。つーわけで期待せずに半ば義務感
に突き動かされて観賞。加えて連続10回のTVドラマを2時間半ほどに無理矢理まとめているわけで、面白くなるはずもなく。
しかし蓋を開けてみれば構成はなかなかお見事でうまくまとめられていた。特に、いいかげんダレてくる原作後半をバッサリ割愛したのは
大英断だと思う。
原作ではラス前までどういう訳か誰にも気づかれなかった主人公の秘密を割と早い段階である重要人物が知ってしまうという変更も、
結果として物語を貫く忍ぶ恋が強調されて、いいんではないかい。
とはいえ、そもそも原作がそれほど面白くない上にミスキャストしかいないという惨状なのでどうにもオススメはできない。
主人公の女を捨てて宦官と偽って政に邁進する麒麟児・孫寧温に仲間由紀恵。
仲間由紀恵はむしろ大好物なのだが、残念ながらミスキャストと言わざるを得ない。原作の不思議な色香を漂わせる美少年というイメージが
全く沸かない。もう少し若くてボーイッシュな子でやるべきだったよ。………菊池真とか?(アホの子なので残念ながら無理。)
まあ沖縄の話なので地元枠なんだろうけども、もう少し何とかならんかったのか。
そのライバルの池上作品恒例のモーレツ女傑の聞得大君に高岡早紀。
思ったよりは頑張っていたけれど全然モーレツぶりが足りませぬ。原作の中盤以降の没落人生がカットされたのも痛い。そのせいで原作では
感動的ですらあった大往生シーンもポカーンな感じに。
せめて別な役で出ていたかたせ梨乃にでもやらせていれば…。
以下、劣化版北野武みてえな演技の奥田英二、琉球国王が男闘呼組ってどうよ?など、ほとんどのキャストが討ち死にの無残な状況の
中、ただ一人、大陸の変態宦官を変態的に演じたGACKTだけが輝きすぎていたが、ファンはあの変態っぷりをどう受け止めているのか
心配でならない。
髭が全く似合わない最後の琉球国王に染谷健太、出番をばっさりカットされた女官役で二階堂ふみと「ヒミズ」コンビが出ていてニヤリ。あ、
でんでんも出てた。つーか二階堂ふみに主役やらせりゃよかったのに。
原作では怒濤のトラブルメーカーぶりに萌えざるを得なかった真美那が存在そのものをカットされていて残念無念。
あと八千草薫を無駄遣いするのはお願いだからやめてくれ。
原作でも盛り上がらなかったラストだが、映画版では息子の目の前で愛人と乳繰り合う母親という最悪な構図で幕引きで、実にいただけ
ない。
○「劇場版 とある魔術の禁書目録 エンデュミオンの奇跡」 ★★★★ (13.4.17/劇場)
STORY:学園都市にそびえ立つ宇宙エレベーター・エンデュミオン。その完成式典を目前に控えたある日、上条当麻とインデックスはストリート
ライブをしている鳴護アリサと出会い、その歌声のファンになる。エンデュミオン開通キャンペーンのイメージソングにアリサの歌が選ばれ喜ぶ3人。
だが、アリサを魔術サイドのステイルたちが強襲。しかもアリサを守るために科学サイドの特殊部隊も現れる。困惑しながらも立ち向かう当麻だが…。
大人気のラノベが原作で、アニメTVシリーズ2本+スピンオフのTVシリーズ1本(+1本放映中)も製作されている超人気シリーズがまんを
じして劇場進出。
時系列的にはアニメ「禁書目録U」の序盤終了の頃つーことで、いきなり黒子が車椅子に乗っていて、アニメの1期までしか見てないんで、
???と面食らった。
映画版=お祭り=オールスターファン大感謝祭つーことで、これでもかと言わんばかりのオールキャストで、これはファン冥利に尽きる。
佐天さんくらいは出るとは思っていたが、まさかアクセロリ…一方通行さんなんて大物まで出るとはミサカはミサカは思いませんでした。
三年前の軌道上での飛行機事故、雲を突き成層圏の彼方まで伸びる宇宙エレベータ(capsuleの曲を思い出してしまう)、謎の超時空歌姫、
彼女を巡って全面衝突する魔術サイドと科学サイド、陰で全ての糸を引く謎のようぢょ、と映画オリジナルの物語は展開し、派手に建設された宇宙
エレベータは派手に壊れて消え去る羽目に。
スピンアウトの「超電磁砲」と比べて本家の「禁書目録」がなんかイマイチな大きな要因の一つに、ヒロインのインなんとかさんがせっかく
かわいいのに、大食いするのと主人公に噛みつく以外出番がない、というのがあると思うのだが、今回はちょっとは見せ場あり。まあ「超電磁砲」
のヒロインの方が相変わらず目立っているけどなあ。
主人公が説教臭いのも、魅力でもあるかもしれないけれどもウザッたくもあるわけだが、今回も当然そげぶる。まあそんなにウザい説教では
なかったから鼻につかなかった。そして相変わらず容赦なく女だろうが全力でぶん殴っております。
オリジナルの黒幕は腹黒金満残酷軽薄ロリっ子で、またとんでもない特殊能力の持ち主。使い捨てるにはもったいないような気も。
事件の鍵を握る超時空シンデレラも結構いい歌を歌う。歌絡みのアニメに外れなし!………多分。
新キャラだけでなく既存のキャラたちもしっかり見せ場あり。第1位と第3位がチートなのはわかりきっていたが、ステイルって最初にそげぶされた
せいでなんか雑魚のイメージがあった(その後顔の皮剥がされたし)ので、強くてビックリ。まあ宇宙空間で普通に活動する人にはもっと驚いた
けど。
つーわけで、アニメの「禁書目録」がそんなに面白く思わず(「超電磁砲」は最高だったけど)、あまり期待せずに観にいったのだが、予想以上に
お腹いっぱいのお祭り娯楽大作だったので、満足。
○「劇場版 マクロスF 虚空歌姫〜イツワリノウタヒメ〜」 ★★★★ (09.11.27/劇場)
STORY:西暦2059年、移民可能な星を探し宇宙を旅するフロンティア船団は、近くを旅するギャラクシー船団から、”銀河の妖精”シェリル・
ノームを迎え入れる。そのライブ中に異生物・バジュラが船団を襲撃、パイロット志望の学生・早乙女アルトはガールフレンドのランカとシェリル
を守るため、成り行きで最新鋭戦闘機・VF−25メサイアに乗り込み戦うことに。それが、宇宙を駆ける三角関係の始まりだった…。
TVアニメシリーズ「マクロスF」の新作劇場版。
TV版のストーリーを再構築しており、初代マクロスのようにTV版=正史・映画版=それを元に後の世に作られた映画、という立ち位置
なのかな?
つーわけで、概ね元々の話を踏襲しながら随所に新エピソードを加え物語は進む………のだが、前後編の前編で原作25話中7話分
くらいしか語られないのはペース配分どうよ?と気になって仕方がない。
まあ確かにTV版も後半はダレダレだったし、劇場版後編はオリジナル成分が多くなるのかなと期待。
劇場版ということで豪華な作画は戦闘と”銀河の妖精”シェリルのライブシーンにぶち込まれていて見応えあり。
ちょうど新車のHDDに「娘たま」をぶち込んで聴き倒していたところだったので、ライブシーンはなかなか燃えた。でも演出エスカレートしすぎ。
クライマックスの戦闘も、前編で早くも投入してしまう「ライオン」をBGMにアルト機・オズマ機・ブレア機が揃い踏みなんて熱い展開。
ただ、やっぱりどうしても、2時間でまとめるにはいろいろ無理があるのですよ。
それを考えると「愛・おぼえていますか」ってすごいのかもだ。
シェリルはちゃんとした新曲をいっぱいもらえているというのにランカはイロモノCMソングばかりでかわいそす。まあペーペーの新人だし。
とりあえずミシェルは死ななそうでよかった。
そしてやっぱり菅野よう子はネ申!
○「劇場版 マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜」 ★★★ (11.2.27/劇場)
STORY:西暦2059年、移民可能な星を探し宇宙を旅するフロンティア船団は、謎の生命体バジュラの襲撃を受けていた。”銀河の
妖精”シェリル・ノームと共に船団の危機を救ったランカ・リーは”超時空シンデレラ”としてスターダムを駆け上がっていく。その二人から
想いを寄せられる早乙女アルトはバジュラとの戦いで負傷してしまう。さらにシェリルがスパイ容疑で逮捕され、死刑判決が下り…。
TVシリーズの再編集劇場版後編は何もかも完全新作にて登場。だからといって、前作から1年半近く待たせていいわけねー
だろーと。「エヴァ」の悪影響を受けすぎ。
つーわけで前編がTVシリーズ25話中の8話までしか進んでおらず、あと2時間ばかしでどうまとめるんだ?と思ったらストーリー
を一新するという大技に。これが結構問題なくまとまっている。まあTVシリーズは中盤以降ダレダレだったからねえ。
「星間飛行」のライブや敵の攻撃を受けて生身で宇宙空間に吸い出されてしまう主要キャラといったTV版への目配せも充実。
でもあそこではちゃんと「御存知ないのですか」と言ってほしかった。
ファイヤーボンバーのコスプレとかまさかのイサム・ダイソン参戦!(40越えてる)とかシリーズ作への目配せも相変わらず。
でもまあ、目指すべきゴール地点は一緒で、熾烈なラストバトルが繰り広げられるわけだが、そこで掛かるメドレーを一番の目当て
で観たわけで。メドレーは期待を裏切らず当然掛かったのだが、戦闘も含めてもっともっと長くてもよかったのに(持ち歌全曲やる
くらいに)と些か残念。まあそれはサントラでの”特盛り”に期待しちゃおうかと。
ミシェルが死なないので形見のスナイパーライフルでしかもライバルと合体攻撃!なんて見せ場がなくなってしまったのがねえ。
ダブルマクロスアタックもなかったし。
キャラクターの中でTV版より待遇がよかったのはなんとジェフリー・ワイルダー艦長。まあ今度の「スパロボ」にも参戦するので
あんまり地味でも困るでなあ。「スパロボLでも地味なのに出ずっぱりだったし。
グレイスも勝ち組。そのグレイスを蹴落としてキノコ大勝利!なんて思うわけないっしょ。
TV版ではまさかの二股エンドだったシェリルとランカのヒロイン争いも、今回は後付けの過去設定で勝敗が明白に。その代償と
してまさかの死亡エンドだったけど。(死んでません。)
つーわけで新主人公機が登場したり新曲が山ほどあったりシェリルの格好良さに磨きがかかったりミシェルもクラン小隊の娘も
死ななかったりといいことも多々あるけれど、どっちかというとTV版の方が好きかなあ。
○「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [前編]始まりの物語」 ★★★★ (12.10.10/劇場)
STORY:平凡な中学生・鹿目まどかのクラスにミステリアスな転校生・暁美ほむらが転校してきた。ほむらは初対面にも関わらず、まどかに意味深な
言葉を告げる。その日の放課後、まどかと親友の美樹さやかは謎の小動物・キュウベェを狩り立てるほむらと遭遇、さらにその場に、人心を乱す魔女
と戦う魔法少女だという巴マミも現れる。こうしてまどかの平凡なれどささやかな幸せに充ち満ちた日々は終わりを告げるのであった…。
2011年最強のTVアニメの劇場版。TVシリーズを前後編に分けて総集編として公開した後、新作が作成される予定。
つーわけで総集編前編は全12話中8話までを再構成。
………TVアニメがOPEDを抜いて本編1話20分だとして、20分×8話=160分。
で、今作の上映時間がおよそ140分…。って、ほとんどカットしてないじゃん!!!
つーわけで、基本的にTV版を順番に流しているだけ、という総集編のある意味正しい形。おさらいするために直前にTV版を見返したりしなくて
よかった。
一応、魔法少女の変身シーンや魔女の結界内部なんかは新作だし、どのシーンも劇場版用にクオリティを上げているらしいんだが、よく考えると
本放送の時期に一回見ただけ(派生したMADは何本も腐るほど見てるけど)なので、どこがどう変わったなんてほとんどわからなかった。
冒頭のまどかの夢のシーンがないのとマミさんの願い事のシーンがないのと杏子の食べてるもののバリエーションが豊富になったことくらいしか
気づけなかった。
でもまあしかし、元々の作品としてのクオリティが高いので問題なく楽しめた。ちょっと肩すかしだったけど。
なにより、杏子がかわいいので全て許される!食うかい?
しかしまあ、結末を知ってから見返すと、マミさんの言動がいちいち道化ていてかわいそう。
OPはTV版に引き続きClariSが担当。いい曲だし、なによりまどかとほむほむが仲睦まじくほっぺたスリスリしているのが素晴らしいが、神曲
だった「コネクト」は流石に超えられなかった。
DAMの「コネクト」もそうだったけど、高みから見下ろす淫獣のシーンで終わるのは抜群の引きだなあ。
○「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [後編]永遠の物語」 ★★★★ (12.10.15/劇場)
STORY:キュウベェと契約して魔法少女になることにより、魂が体から抜き取られてソウルジェムに封じられ、それが濁りきった時、奇跡の対価として
恨みを撒き散らす魔女に成り果ててしまう。魔女と化したさやかを救うべく戦いを挑む杏子だったが、その想いは叶わず二人は爆炎の中に消える。
一人きりになっても最強の魔女に相対するほむらが、傷つき倒れ、絶望に染まりきろうとしたその時、ついにまどかは魔法少女になる決意をする…。
つーわけで前編の一週後に公開された後編。TV版の終盤4話を収録。20分×4=80分なのに劇場版は120分超と、なんか増えてるんです
けど。
が、しかし、観終わってみると、どこがどう増えたのやら。
とりあえずTV版冒頭のシーンが本来の場所に収まったのと、ほむらとキュウベェがなんか見たことない場所で会話しているのと、杏子が食べ
てるもののバリエーションが豊富になったのと、杏子の戦闘シーンがやたら痛々しくなったのくらいしか気づけなかった。杏子ばっかじゃ。
つーわけで怒濤の終盤戦。杏子のうまい棒食うかい?哀しくも激しく儚い涙無くしては見れない決戦、ほむほむの微笑ましくも壮絶な涙無く
しては見れない過去、そして現在のワンマンアーミーなテンション爆上がりで涙無くしては見れない大決戦、そしてそしてアルティメットまどか
の涙無くしては見れない降臨と、涙腺が乾く間もない超展開に次ぐ超展開で、改めて、すげえわこのアニメ。
最後に新作に続く新規シーンがあるかと思ったが、そんなことはなかったのは残念。
しかし後編も豆腐メンタルだったり円環の理だったりでやっぱりマミさんは残念だ。新作での活躍に期待。
つーかまどかとさやかが退場した後の話だから杏子の出番増えるじゃあないですか!!!
OPは前編と同じく「ルミナス」。
TV版のOPの神「コネクト」は挿入歌として2回も使われるのはどうなのよ、という気もするが、まあ演出としてアリだなあ。しかも2回目のは元々神曲
なのに更に神アレンジ。
つーわけで新作が待ち遠しすぎる。
○「ゲゲゲの鬼太郎」 ★★ (07.5.22/劇場)
STORY:健太少年が妖怪ポストに出した手紙を読み、助けに現れた鬼太郎。ねずみ男が妖怪を使って悪さをしていたのだ。そのねずみ男は
妖狐族の宝・妖怪石をそうとも知らず盗み出すが、その石は偶然にも健太の手に渡ってしまう。石を狙い健太とその姉・実花に妖狐族が襲い
かかるが、鬼太郎に敗れる。妖狐族は腹いせに鬼太郎が石を盗んだと告訴、妖怪裁判で鬼太郎は有罪・釜茹での刑を宣告されてしまう…。
いつまで続くのかマンガ原作の実写映画作品。今までの作品の出来は死屍累々だったが、今作も例に漏れず…。
「マンガ原作実写映画にうまいものなしってホントだなあ、おえっぷ」
何がまずいかというと、緊迫感がなさすぎ。アクション冴えなすぎ。鬼太郎の仲間働かなすぎ。
それでも見所はあるにはある。
まずなんといっても、原作通りの衣装の猫娘、エロすぎ!!!つーかこれが見所の大部分だな(笑)
他にも女性陣は女子高生役の井上真央やコスプレ小雪など、室井滋以外は皆いい感じ。
話の前半は大泉洋、後半は中村獅童と西田敏行の卑怯くさい怪演(とヘンな顔)でさほど退屈せずに見れることは見れる。
主演のウエンツ瑛士は最初から鬼太郎とは似ても似つかない別物だと思って見たので腹も立たず。むしろまんま素な感じのキャラで好演
していた方。
問題のエロ猫娘は何故に田中麗奈なのか甚だ疑問。何故にこんな中身のないお色気キャラに若手女優では名うての演技派の田中麗奈を
起用するのかと。
ま、製作陣に田中麗奈の熱烈ファンがいてコスプレさせたかったという公私混同な理由なんだろうけど。
監督の本木克英は「踊る大捜査線」や「UDON」を手がけた、当たり障りのない作品を作ることに関しては腕利きの………と思ったら、それは
本広克行じゃん!ずっとごっちゃになってた!
○「ゲド戦記」 ★★★ (06.8.30/劇場)
STORY:父王を刺して逃走してきた王子・アレンは、世界を包みつつある異変の原因を探るべく旅に出た大賢人・ハイタカ(ゲド)に危機を
救われ、彼と同行することになる。港湾都市・ホートタウンの外れに住むハイタカの旧知の女性・テナーの家にしばし滞在することにした二人は、
そこで人間嫌いの少女・テルーと出会う。一方、町はずれの城に住む魔法使い・クモは仇敵のハイタカが現れたことを知り、復讐を企てる…。
宮崎駿の息子の監督デビュー作。
まあ今まで映画にもアニメにもノータッチだった、父親のコネで三鷹の森ジブリ美術館の館長やってる二代目が、いきなり長編アニメ
映画のメガホンを取って、しかも題材が世界三大ファンタジーの一つとされる「ゲド戦記」、というわけなので、奇跡が10回くらい起こら
なければ出来が良くなるわけがなく…。
つーわけで世間様的には酷評の嵐なのもむべなるかな。
で、違う意味で期待をして(まさに外道!)観に行った(しかもタダ券で。まさに外道!)のだが、
………いや、そんなに酷評されるほど酷い出来ではないんでない?
そりゃあ確かに問題大アリの出来である。世界観や登場人物についての説明がこれでもかとばかりにスッポリ抜け落ちているし、話もグズ
グズグダグダ、作画も金は掛かっているがどうも魂が入っていない。
が、そんな程度の出来の映画ならそこいら中にゴロゴロしているではないか。
とまあ柄にもなく擁護してみたが、いつもの高水準のジブリ映画だと思って観に行った人はそりゃあ腹を立てるだろうし、原作未読でも、
「たぶん原作はこんなんじゃないんだろうなあ」というのがわかってしまう出来なので原作ファンが激怒するのも大いにわかるけどなあ。
毎度おなじみ非声優のキャスト陣はそんなに文句はなかったが、香川照之は浮いてた気がする。
まあボロクソ言われようと興行的にはボチボチ成功しているようだから、ジブリのびんわんぷろでゅーさーはニヘラニヘラしてんじゃないの?
(まさに外道!)
○「拳神」 ★★ (03.3/DVD)
STORY:2050年、香港。父の生み出した”神拳道”の使い手・クァンは二十歳の誕生日に、父親の形見だという、人間の潜在能力を極限まで
引き出すパワーグローブをもらう。だがそこにパワーグローブの力で世界征服を企むジン21の部下・フォンロイが乱入、クァンの母親を殺し、姉・
ベルをさらう。クァンはベルの恋人・ティロン、ジン21の宿敵・ダーク刑事と共にフォンロイを追うが、実はフォンロイの正体は…。
「鉄拳」の映画化を狙って製作されたものの、版権を取得できずに急遽別物となったという楽しいいわくつきの作品。なので、主人公のクァン
とティロンのビジュアルがまんま仁と花郎。雷神拳もフラミンゴキックを使わないけれど。
それよりも往年のジャッキー映画ファンとしての見所は、サモ・ハン・キン・ポーとユン・ピョウの共演あたりにあったり。なので、サモハンの
吹替が水島裕じゃないのは納得いかねえ!ジャッキーは20年前から変わらず石丸博也だというのに。
ストーリーは「鉄拳」とはまるで関係ない、まんま「ブレードランナー」なビジュアルの近未来都市・香港を舞台にしたまんま「風雲ストーム
ライダーズ」なアクションもので、特筆すべきこともない普通のヘボさ。
ウリのアクションは、「風雲ストームライダーズ」よりは体使っている感じだが、バリバリCG全開であることに変わりはなく、それなりに格好いいもの
の、血沸き肉踊る興奮はあまり得られない。
ラスボスのベガっつーかバイソン将軍っつーか加藤保憲のバッタモンみたいな男がすげえ貧相で威圧感ないのがダメダメ。あ、この人、
傑作「ザ・ミッション 非常の掟」で主人公チームのスナイパーやってた人ではないか。幻滅。
サモ・ハンの若い頃の役を美形イーキン・チェンがやっていて、誰と会っても(宿敵にさえも)「太ったな」と馬鹿にされるのは面白かった。
○「恋の罪」 ★★★★ (12.2.13/劇場)
STORY:女刑事・和子は不倫相手との情交中に事件発生の呼び出しを受ける。現場は渋谷区円山町、ラブホテル街の片隅の廃屋。女性の
死体がバラバラにされた上にマネキンと結合された状態で発見されたのだ。周囲にはピンクの塗料。壁には赤い「城」の文字。−そのしばらく
前。人気小説家の貞淑な妻・いずみは、些細なきっかけから夫以外の男とのセックスにのめり込んでいく中、円山町で一人の売春婦と出会う…。
「愛のむきだし」、「冷たい熱帯魚」と今日本で一番勢いのある監督であろう園子温監督作品。
「冷たい熱帯魚」と同じく実際にあった事件からインスパイアされたサスペンス。
「冷たい熱帯魚」が男性視点の作品ならこちらは女性視点といったところか。どちらにしても無闇に無意味にエロエロ。
愛する者以外とのセックスを通じて出会った二人の女性の数奇な運命を、これまた泥沼の不倫に溺れる女刑事が追いかけるという構造
なのだが、正直女刑事いなくてもいいような役どころ。オチ要員?
まあ当然園監督作品なのでエログロ満点インパクト抜群なわけで、自宅で全裸で鏡に向かって試食の口上の練習をするいずみとか夢に
出そうなけったいな場面が多いのだが、中でもいずみを破滅へと導く昼は大学助教授・夜は売春婦の美津子の母親のクソババアが実に
クソババアで素晴らしすぎる。この怪演だけで十二分に収穫はあった。
ただ、ラストがゲージュツ作品の如く反吐が出るほど青臭いのはどうしたことか。嫌いではないけれども、何を今更感が。
事件現場の円山町の廃屋って過去作「うつしみ」でも使ってたよね、と懐かしくなった。
主演でヘアヌードまでばっちり見せてくれる不倫の泥沼にどっぷり浸かった女刑事に水野美紀。体は張っているが前述の通り消化不良。
不倫相手が見るからに冴えないアンジャッシュの児島ってぇのもトホホ。
実質主役の主婦・いずみ役は監督と婚約した神楽坂恵。ものすごい美乳の持ち主だが、顔が地味すぎる。
彼女と深く関わる売春婦・美津子役に富樫真。対照的にぺったんこの胸にガリガリの体の持ち主。対照的に眼力が素晴らしい。
その母親で、美津子を下品下品と罵る下品なクソババアに大方斐沙子。グレイトすぎる。
強烈でブチ切れている女性陣に対して、津田寛治を筆頭とした男性陣は心から狂えてない感じ。
カメオ出演の園子温自身はやたら目立っていたが。
○「恋の門」 ★★★★★ (04.10.28/劇場)
STORY:石で漫画を描く自称・漫画芸術家の蒼木門とコスプレイヤーにして売れっ子同人作家の証恋乃は運命的な出会いをし恋に落ちる。
童貞卒業を目指す門は恋乃と一泊旅行に行くために漫画バーでバイトを始める。バーのマスター・毬藻田はかつて売れっ子漫画家だったが、
ある理由で筆を折っていた。紆余曲折を経て奇妙な三角関係に陥った三人は恋の主導権を賭けて漫画賞にそれぞれの作品を応募するが…。
羽生生純のマンガの実写映画化。初監督を務めるは売れっ子演出家・松尾スズキ。原作未読。
結論から書いてしまうと5点満点なわけだが、それはオイラがオタクなので同人やらコミケやらといった小ネタの乱舞にニヤニヤできたから
であって、松田龍平や酒井若菜目当てで見に来た一般ピーポーはドン引きしそうな作品である。
逆に書くとオススメ層はオタクで同人活動やっててラブコメに抵抗がなくて松尾−クドカン系のコメディが好きな人ということになるか。
つーか夫婦で同人やってるようなヤツぁ特に見とけ!
オタクネタについてはオイラも最前線からはとうに退いてしまっているんで検証はできないけれど、コミケネタを見る限りはちょっとズレている気が
するが。
主演は松田龍平。「陽炎座」の時なんかの父親に似てきた気がするが、今までにないエキセントリックな役どころで芸域を大幅に広げて
いる。
つーかこの人、ちょっと前までウチの店で働いていた女の子とそっくりなんですよ(知るか!)引きつったような笑顔なんか瓜二つで劇場で
一人笑ってますた。
ヒロインに酒井”モー子”若菜。「木更津キャッツ」や「マンハッタン・ラブストーリー」よりはマシなれど相変わらずアホの役。
だが、今回はものすげーかわええ!むはぁっ!!!
やたらめったらキスシーンが多くお疲れさま。松田龍平と四六時中ブチュブチュ、松尾スズキともブチュブチュ。つーか自分がブチュブチュ
したくてこの映画撮ったんじゃないのか松尾スズキ。
カメオを含む脇役陣がまた豪華。人脈総動員てな感じ。
大人計画関係からは村の上の竜と書いてバイト君ですや平岩紙(こっちもこんなにかわいかったっけ?)や皆川猿時が登場。つーか水木
一郎ばりのアニソンの帝王を皆川猿時が演じているわけだが、ほとんど港カヲルじゃん!(笑)
さらに三池崇史(登場した瞬間、劇場内でオイラだけ爆笑)やら塚本晋也やら尾美”イボリー”としのりやら忌野清志郎やらが怪演につぐ
怪演。
小日向文世の役に抱腹絶倒。平泉成と大竹しのぶは大変なことに!つーかあまりにアレすぎてコスモのコスプレだと言われるまで気づか
なんだ。
あその他マンガ家さんなんかも同人作家役で大挙して登場。スタッフロール見てのけぞった。
あ、またアンノさん出てましたよ。しかも夫婦で。
○「交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい」 ★★★ (09.7.6/DVD)
STORY:人類が宇宙から来た謎の生命体・イマージュと交戦を始めて40年余。人民解放軍第303独立愚連隊に配属されたレントンは幼生体
から一緒のKLF・ニルヴァーシュを駆り、初陣で軍の重要機密である少女・エウレカを助ける。彼女こそレントンが8年前に引き離された最愛の
女性だった。再会を喜ぶ二人。しかしエウレカもホランド率いる愚連隊もあまりにも重い秘密を隠し持っており、レントンは運命に翻弄される…。
’05年放映のTVアニメ「エウレカセブン」が何故か今頃になって新作映画化。
TV版の総集編や番外編ではなく完全新作ストーリーで、登場人物や世界の設定も一新。
つーか完全に別物の設定で驚愕ものなのだが、何故そうなったかの断片は劇中でチラリと垣間見ることができる。(TVアニメの最終回
から乖離したパラレルワールドの話なのね。)
しかし「なんとかゲリオン」とか「Zなんとか」みたいについカッとなってバッドエンドで作っちまったんで後悔して作り直しの劇場版をやると
いうのならわからないでもない(虫がよすぎるけどなあ。)が、まあぼちぼちハッピーエンドで終わったこの作品をわざわざ焼き直す意味
があるのかと疑問だったのだが、実際見てみればやっぱり蛇足っぽいなあ、と。(緑だったり透明だったりしないきれいなエウレカで終わり
たかったんかい?)
諸々設定を変えた物語や世界観を1本の映画で語り尽くすには駆け足にならざるを得ないし、路線変更でずいぶん割を食わされたキャラ
が多いのも納得いかん。
でもまあ世界が変わろうが立場が変わろうが彷徨と未夢じゃなくてレントンとエウレカはラブラブなのでいいんではないかい。
あとニルヴァーシュ幼生体かわゆす。
○「高校大パニック」 ★★ (01.11/ビデオ)
STORY:時は’70年代、所は九州福岡。猛暑の中受験勉強に励む名門高校の三年生たち。しかし、模試の成績が悪かったのを数学教師に
罵られた生徒が自殺する。だが、そのことに罪悪感を感じない数学教師に切れた主人公は、ライフルを盗み出し彼を射殺てしまう。我に返った
彼を後目に大パニックに陥る教室。どうしていいかわからない彼は、ひとまず女子生徒らを人質に図書室に立てこもってしまう…。
ロッケンロールな映画監督・石井聰亙の作品。
「数学できんと、何が悪いとやー!」とライフル抱えてシャウトする主人公に期待は高まったものの、きっちりとした演出で、無用にバイオレンス
に走ることもなく、真面目に真摯に社会派に作ってあって………、優等生すぎて映画落ちこぼれの自分としてはいささか食い足りないところが
あった。
これが三池崇史監督だったら「バトロワ」どころじゃない死屍累々の戦慄の学園バイオレンス映画になったであろうに。
ところで、最後の主人公の叫び、あれは笑うところなんだよね?(笑)
浅野温子が若くてドッキリ。
○「幸福の鐘」 ★★★ (04.1.10/劇場)
STORY:五十嵐悟は工場に勤める平凡な中年男だったが、ある日出勤してみると工場が倒産・閉鎖されていた。途方に暮れた彼はあてどなく
歩き始める。二日後、彼は帰宅する。彼は笑顔で家族に語る。「工場が潰れて歩いていたらヤクザが死んで警察に捕まって火事で子供を
助けて表彰されて車にはねられて幽霊に頼みごとされて宝くじが当たって一億円を盗まれてサラリーマンが飛び降り自殺をして…」。
SABU監督の最新作。SABU作品と言えば個性派俳優たちが織りなす疾走感溢れる痛快作というイメージがあるのだが、今作は従来の
作風を変えた意欲作となっている。
まず、主人公が走らない。ただ歩く。とはいえ、抜群の疾走感を味わえたのは「弾丸ランナー」・「ポストマン・ブルース」の最初の2作だけで、
「アンラッキー・モンキー」以降は走りはするものの作品のテンポが悪くまるで爽快ではなかったりしたのだが…。
むしろ今作は贅肉を削ぎ落としたような作りで、走りはしないもののテンポは良い。そして最後に見せるカメラを振り切る全力疾走がうれしい
じゃあないですか。
さらに、キャストに所謂”SABU組”がほとんどいない。SABU作品と言えば主演は堤真一、大杉漣・田口トモロヲ・寺島進・堀部圭亮・
麿赤児らが脇を固めるのが定番だったが、今作では主演こそ常連・寺島”ラ王ジェット湯切り”進だが他はほとんど新顔で、新鮮なれどこれは
ちょっとファンとしては寂しいなあ。
とはいえ、最後のシーンになるまで一言も口を利かないゴリラーマンのようなポーカーフェイスの主人公は堤真一向きではなさそうで、確か
に寺島進は適役。
寡黙な彼は作中、様々な人と出会うのだが、深く交わり合うこともないために彼らもさほどセリフが多くない。これまた饒舌な登場人物たちが繰り
広げていた今までの作品とは一線を画していて新鮮。
黒いユーモアセンスは健在。しんみりと自省していた次の瞬間に一億円持って逃走する篠原涼子とか。
出演陣の中で印象深いのは、何と言っても鈴木清順翁。その矍鑠とした演技は素晴らしい。
生活に疲れたシングルマザーに篠原涼子。ぷりちー。
妻の浮気相手を殺して刑務所に入る男に板尾創路。って、「9ソウルズ」と同じ役柄じゃん!
○「荒野の七人」 ★★★ (01.12/TV)
STORY:メキシコのとある小さな村は、毎年野盗の略奪に遭っていた。疲弊し果てた村人たちは、腕利きのガンマンを雇って野盗と戦って
もらおうと考える。そして、彼らの必死の願いに応えて、義侠心のある7人のガンマンが集まった。彼らに指導され戦い方を覚えた村人たちは、
協力して一度は野盗を追い払うことに成功したが…。
あー、確かにこれはまんま「七人の侍」だなあ。薪割りしてるヤツまでいるのには笑ってしまった。
しかし、剣の腕は立つものの、盗賊団が火器を持つが故に大苦戦を強いられる本家と異なり、こちらはそもそも誰もがガンマン。なので、最後
の戦いに関してはだいぶオリジナルと違った。生き残る人数も含めて。
漢気あふれるガンマンたちの中でただ一人、金目当て(ほんとにボランティアだというのに、儲け話を隠していると勘違いして)で同行し、一度は
逃走するも最後の死闘に救援に現れ(るなり)、銃弾に倒れるハリーという男が印象に残った。
「大久保町の決闘」の保安官テストの元ネタも見られたので満足。
○「GOEMON」 ★★ (09.5.25/劇場)
STORY:世紀の大盗賊・石川五右衛門と猿飛佐助が手に入れた南蛮の箱。その箱を狙う石田三成は配下の霧隠才蔵に奪還を命じる。かつて
五右衛門と才蔵は織田信長に拾われ服部半蔵に忍者として鍛え上げられた親友同士だった。箱の謎を解いた五右衛門は豊臣秀吉が信長
暗殺の黒幕だと知り、怒りにまかせて秀吉を暗殺するが、それは影武者だった。追われる五右衛門はかつての想い人・茶々と再会するが…。
↑こうやってあらすじを書くと、まったくもって頭が悪い話だよなあ。歴史オタの中二の妄想かいな。
青臭い中二の妄想ダダ漏れgdgd映画「CASSHERN」で悪い意味で衝撃的な監督デビューを果たした宇多田ヒカルの旦那・紀里谷
和明が5年の歳月を経て宇多田ヒカルの元旦那と化して送る悪い意味で衝撃的な監督第2作。
キャスティングだ予告編だと、もう本編を観る前からすでにダメな臭いしか漂ってこず、こりゃあ「DRAGONBALL EVOLUTION」と
どっちが駄目だろうかと悪い意味で期待して観に行ったのだが………。
あれ?思ったよりずいぶんマシではないか?
CGを駆使したド派手なアクションシーンが多いこともあり、頭を使わない娯楽映画としてはなんとか成立しているレベル。
とはいえ、この程度だったら「戦国BASARA」シリーズや「戦国無双」シリーズのデモムービーでも見てればいいや、で済んでしまう。
この映画もオレif歴史を展開しているが、あちらさんたちの方がはっちゃけまくっているからなあ。
秀吉ガトリング程度ではなく前作の秀治戦艦レベルのイロモノが欲しかった。
ケレン味…つーか演出のメリハリが足りないアクションは、それ以上にCGがヘッポコすぎて失笑してしまう。
とまあアクションはギリギリ可だとして、ではストーリー面はどうかといえば、当然の如くお粗末。
厨二病丸出しなオレif歴史は苦笑しながら流すとして、前作同様話の展開の所々に理解できない頭の悪すぎる箇所があるのがなあ。
秀吉暗殺を企てる三成が才蔵に命じて秀吉を船のマストで絞首刑にすることに成功 → 三成もうお前に用はないと才蔵を銃撃し重傷を
負わせる → チェ・ホンマンが頑張って秀吉を吊していたロープを切断、瀕死の秀吉が三成の目の前に落ちてくる → 三成、瀕死の才蔵を
秀吉にこいつが実行犯です!と突き出す
って、暗殺しようとしてたのに何故にそのまま瀕死の秀吉を撃たない??????????
その他釜茹でのシークエンスにおける赤子の扱いとか、光秀の瞬殺っぷりとか、関ヶ原で服部半蔵しか部下のいない家康とか、詰めが甘いと
いうレベルではない。
悪い意味でしか期待できなかった役者陣だが、エロ洋介も大沢たかおもマンガ世界に割と違和感なく馴染んでいて意外にもボチボチ。
相変わらず広末涼子は褒める要素がない。
つーわけで総合的には無論ダメダメだが、前作からは娯楽映画としては随分進歩しているので今後も生暖かく見守っていく方針。ちょっとエド・
ウッドっぽい。
○「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」 ★★★★ (04.3.2/DVD)
STORY:2029年、人は脳でネット世界にダイレクトに繋がり、体もサイボーグ化が進んでいた。首相直属の組織・公安9課に属する草薙素子
少佐は、脳以外のほとんどが機械だった。ハッキングされて偽の記憶を植え付けられることさえ起こりうる時代、彼女は自分の心が、自我が、
本当に自分自身のものなのか、人知れず悩んでいた。そんな中、史上最強のハッカー・”人形使い”が現れ、9課は捜査を開始するが…。
原作・士郎正宗、監督・押井守で放つサイバーパンクSFアクションの傑作。海外にジャパニメーション(とOTAKU)の名を轟かせ、
「マトリックス」誕生に多大な影響をもたらす。
’95年作品でありながら、インターネット・CGへの先見性は当時からすればズバ抜けている。まだパソコン通信とかバーチャファイター2
とかの時代だったわけで。
おおむね士郎正宗の原作に沿ってはいるが少佐は別物のようなデザインでアレだ。まあそのアレな外観に見合ったハードな話に仕上がって
いる。しかしなんでこんな「ブレードランナー」のバッタモンみたいな舞台にしたのだ?まあ押井守らしいか。
押井守作品にしてはわかりやすい。
バトー・トグサら男性陣がシビれる格好良さ。
民族音楽めいたメインテーマはいただけない。海外受け狙い?
○「ゴーストライダー」 ★★★ (06.3.6/劇場)
STORY:バイクスタントマンのジョニーは、癌の父親の命を救うために悪魔・メフィストと契約を交わした。それから13年、ジョニーが最愛の
女性・ロクサーヌと再会した時、メフィストが再び姿を現した。魔界の反逆者・ブラックハートを倒す命令を受けたジョニーは悪を裁く燃える骸骨・
ゴーストライダーに変身させられ、夜の街をヘルバイクで疾走する。追われるブラックハートにロクサーヌを捕らわれてしまったジョニーは…。
最近流行のアメコミの実写映画化。
主人公は悪は絶対許さない闇の仕置人の、番長マインド溢れるダークヒーロー・ゴーストライダー。演じるのは何故かニコラス・ケイジと
いう大物。
当人が原作の大ファンで、たっての希望でのこのキャスティングのようだが、そのミスキャストっぷりが逆に魅力だったりして。
だって、主人公30歳という設定ですよ。ニコラス・ケイジのどこをどう見ても30歳には見えんてば、うはは!
しかも不自然に前髪あるし、うはははは!!
変身後の燃焼系骸骨・ゴーストライダーも、イカスバイク(タイヤが燃えているので走ると道路が燃える。超高速で走るためソニックブームで
周囲が壊滅する。垂直の壁も走ってしまう。)やイカス皮ジャンやイカス鎖といったイカス小道具に加え、義理と人情に厚くちょいオムツ
少な目な仕草が、我らの中学生マインドを心地よく刺激してくれるナイスヒーロー。
監督は「デアデビル」、「エレクトラ」の人なので細かいストーリー展開などあってなきが如し。だが、それがいい、なポップコーン・ムービー。
すげえ強いはずのボス敵が投石で大ダメージを受けるシーンで思わず爆笑してしまった。
兎にも角にもニコラス・ケイジの一挙一動が可笑しいので、SANKYOのCMが好きな人には特にオススメ。
ヒロイン役のエヴァ・メンデスの胸がデケェのもポイント高い。
○「ゴーストライダー2」 ★★★★ (13.2.18/劇場)
STORY:体の中に巣くう復讐の精霊・ゴーストライダーを制御できないジョニー・ブレイズは一人東欧に隠れ住み、苦悩の日々を送っていた。彼の元
を訪ねた型破りな僧侶・モローは、宿敵・ロアークが人間の女性・アンディアに産ませた子ども・ダニーを手に入れ更なる力を得ようとしていること、
それを阻止すればゴーストライダーを封印する方法を教える、と取引を申し出る。ジョニーはナディアとダニーの救出に成功するものの…。
6年ぶりのニコラス・ケイジ大ハッスルの「ゴーストライダー」の続編なのだが、なんかメディア露出とか少なくね?なんか…チープな感じしね?
蓋を開けてみればニコラス・ケイジがゴーストライダーを演ってること以外はほとんど前作と関係なしという体たらく。宿敵が名前まで違う完全な
別人になってるってどうよ?お前誰だよ!?
ツ○ヤではご丁寧に続編ゾクゾクなんつーコーナーで前作を大量再入荷してくれてるので、前作をチェックしてから劇場に足を運ぶと首を
傾げずにはいられないという親切設計。
前作はただでさえ何をやっても面白いニコラス・ケイジが大はしゃぎして演じていた微笑ましい作品だったのが、今作ではゴーストライダーに
変身することを極度に恐れ苦悩し悶々としていて、コレジャナイ感が。
まあ変身するとはっちゃけるんだけど。
今回はバイクだけでなく、重機や車にも火をド派手に吹かせてしまうゴーストオペレーターにゴーストドライバーぶりを発揮。
マーヴルヒーローなのにぜってぇアベンジャーズに呼ばれそうにない暴れっぷりを披露。でも「マヴカプ3」には呼ばれたのでなんかあからさま
に超必殺技っぽいのを披露。
中盤以降は不死身の強さで無双しまくったのだが、何故か緒戦だけはショットガンで吹っ飛ばされたのが納得いかない。
対するは宿敵・メフィスト…ではなくロアーク(だから誰なんだ!)と彼に力を与えられ、ショボい瞬間移動と触れた物全てを腐らせる能力を身に
つけたチンピラ。…でも何故か握ったハンドルだけは腐らず車を運転できる親切設計。
小便が火炎放射器だったり、仲間の破戒僧が魅力的だったり、いいところも多々あるが、その破戒僧が結局何者なのか説明されなかったり、
いろいろ荒削りすぎる微妙な作品。
やっぱり前作からの違和感が大きすぎるので、「ハルク」とかみたいに続編じゃなく仕切り直しにすればよかったのに、と。
最終的にゴーストライダー改めエンジェルライダーにクラスチェンジしたので続編に期待したいが…。
○「コードギアス 亡国のアキト 第1章 翼竜は舞い降りた」 ★★★★ (12.10.10/劇場)
STORY:日本が神聖ブリタニア帝国に滅ぼされ、植民地エリア11となって7年。黒のカリスマ・ゼロのレジスタンスが鎮圧された頃、ヨーロッパでも
ブリタニアとE.U.の戦いが続いていた。敵国人扱いされる日本人=イレブンを対等に扱おうとする若き女性司令官レイラ・マルカルの元、新型
ナイトメア・アレクサンダを駆るイレブン=元日本人、日向アキトの姿があった。戦場で荒れ狂う彼の瞳にはギアスの支配下の赤い輝きがあった…。
劇場版と言いつつ実質はOVA(もうVideoじゃないんだからODAなんだろうけど)という最近流行のパターン。
TVアニメシリーズ「コードギアス 反逆のルルーシュ」の第1期と第2期の間の時期のヨーロッパ戦線が舞台。
ヨーロッパは300年来の民主主義連合国家だが、自由惑星同盟の末期の如く腐りきっていて、ローエングラム王朝の如きブリタニアに
押され気味。
日本がブリタニアの奇襲を受け滅んで植民地となったため、ヨーロッパに住んでいた日本人は急に敵国人ということになり差別されることに。
宗主国のブリタニア人だけでなく敵国にも蔑まれるとは居たたまれない。
その中で日本人も同じ仲間だと主張するいいひと、レイラさん。そしてその下で働く謎の日本人・アキト。
レイラの意にそぐわない、イレブンの犠牲を前提とした作戦において、ナイトメア・アレクサンダを駆り戦うアキト。
この戦闘が最大の見せ場。
CG丸出しでうへえと思ったが、動く動く。インセクトモードで四つ足で這いずり攻撃をかわして接近し、通常モードでとどめを刺す無双っぷりが
熱い。
戦闘シーンはもう一つ後半にもあり、そちらはTV版初期のようなトリッキーな頭脳戦が楽しめて、やはり格好いい。
つーわけで一時間にも満たない上映時間だが、結構満足度は高い。かわいいおにゃのこも必要以上に出るしな。
何より、アキトに掛かっている様子の謎のギアス、そして、ルルーシュと同じようなギアスを使うアキトと同じ名字の謎の男の存在と、早く次が
観たいという気持ちにさせてくれる。
さらに、坂本真綾&菅野よう子の鉄板神コンビのEDの後の次回予告にスザク(どーでもいい)、CCなんかが出てきちゃった日には、ねえ!
○「珈琲時光」 ★★★★ (05.1.19/劇場)
STORY:東京で一人暮らしをしているフリーライターの陽子は、台湾生まれの戦前の音楽家・江文也について調べている。墓参りで帰省した
陽子に、台湾の彼の子供を身ごもったが、結婚するつもりはないことを告げられ、両親は戸惑う。陽子のことが好きな、神保町の古本屋の
店主・肇もその事実に驚くが、彼女にかけるうまい言葉が見つからない。それぞれがそれぞれの思いを胸に秘めたまま、夏は過ぎていき…。
日本が誇る映画監督・小津安二郎生誕100年記念製作の、オマージュ溢れる一本。
しかしそんな作品のメガホンを取るのが台湾の人だというのはどうなのよ日本映画界?
舞台は東京。だが、スクリーンに映し出される風景は東京と聞いて連想されるそれとはまるで異なるどこか懐かしく優しいものばかり。
都心を走る一両編成の路面電車、裏通りのシックな喫茶店、古書が積まれた匂い立つような古本屋…。
今の東京にもまだこんな所が残っていたのか、と驚きながらも和む。
そして、予告編でも使われていた、お茶の水駅近辺の電車が3系統立体交差する絶景。
(昔どこかでこの写真を見た記憶があった。たぶんこの本だと思う)
まあ意図的に”大都会・東京”的な絵は外されているわけで、度々出てくる秋葉原駅なんかもすっかり素敵な雰囲気の駅に見えて、とても
とても一歩外に出ればあんな街だなんて思えない感じ(笑)
そして登場人物たちも優しい人たちばかり。あまり優しすぎて何も口に出せず、あとからパンフ読んで、ああ、そうだったのか、と納得する
ような人たちばかりなのはちょっと困りもの。
「現代の東京の姿を描いた」映画だとかは口が裂けても言えないが、せせこましく生きる21世紀の人々にも忘れてほしくないあたたかさの
詰まった映画。
なんて書くと大傑作みたいなのだが、エンターテイメントとしてはちょっと問題。
確かに小津映画は何事もない日常を切り取った作品ばかり(と言えるほど観てないが)だが、これ、いくらなんでも何も起こらなさすぎだし、
何も解決しなさすぎ!!!
本来ならばその手の映画には厳しい点数を付けるのだが、これは雰囲気よすぎるのとオイラが東京もの大好きなのとで甘々な点数に。
オイラにとって東京というのはつまらん日常から逃避して向かう非日常の世界、憧れの世界なので、それをこんな風によさげに描かれて
しまうとうれしくて。
しかもお茶の水とか神保町とか馴染み深い場所ばっか出るし。
主演は一青窈。「もらい泣き」を速度落として再生すると平井堅になる一青窈。なにげにメジャーデビュー前に「真・三国無双2」のEDを
歌っている一青窈。
役者初挑戦だが、ナチュラルな演技を求められていることもあり好演と言える。髪型がすげえかわいい。
相手役にアサチュー。いつもいつも演技してないが今作はいつも以上に演技してない。この役はもっと普通の人が演じた方がよかったの
では?
主人公の両親役の小林稔侍と余貴美子もいい演技。
もう一人、役どころのある俳優では萩原聖人も出ているが、なんかエキストラみてえな存在感。見落とすところだった。
○「ゴールデンスランバー」 ★★★★ (10.2.8/劇場)
STORY:かつて偶然アイドルを強盗から助けたことで少し有名人の青柳雅春は、首相爆殺テロの犯人として何故か追われる羽目に。次々と
身に覚えのない証拠映像が見つかり、電話は盗聴され、用意周到に追い詰められていく青柳。そんな彼を助けようとかつての友人や何故か
指名手配中の通り魔が奮闘する。”習慣と信頼”を武器に、果たして青柳は巨大な敵を相手に己の無実を証明できるのか…。
原作・井坂幸太郎&監督・中村義洋のコンビも早3作目。別に最良の組み合わせでは全然ないのだけれども。
「アヒルと鴨とコインロッカー」の時のように原作を先に読んでいると、映像化の不出来さにムッとしてしまう。
「フィッシュストーリー」の時のように原作を未読だと、とりあえず原作の面白さによる作品力でそこそこ満足できてしまう。
今回のケースは、後者。
ただし、このパターンは、後々原作を読んで、やっぱり原作を台無しにする脚色だったと知って憤慨するわけだが。
さておき、原作作品群のヒットや過去作の積み重ねや他監督作品のヒットなどもあり、今回は予算も豊富だったようで、キャストも充実しているし
仙台でのロケも堂々としている(「アヒルと鴨〜」や「重力ピエロ」は郊外や人気のない所でのロケばっかだったような気がする)感があり、
そこそこ大作っぽくなっている。やっぱある程度金は必要なのかね。
”いいひと”だけど何か物足りない男が、板チョコを二つに分ける時に無造作に割れるようになるまでの話。
あるいは、ごく平凡で善良な一市民が国家規模の陰謀に巻き込まれ絶体絶命の危機に陥るも、それまでの彼の人生の軌跡が彼を助け、
やがて逆転のチャンスが訪れる、という物語。「人生のある時点で、ムダな才能が全部役立つ時が来る」という感じ。
そして迎えるのは玉虫色気味のラスト。伏線もあるので落としどころとしては的確なのだが、どうしても少しもどかしい。
(原作通りではあるものの、原作は冒頭に歴史的視点の記述があるのでそれが生きてくるのであって。)
ただ、登場人物の紹介とともに観客のミスリードを誘うのが目的と思われた映画冒頭がエンディングと綺麗にリンクした(原作にはない)
のはなかなかよかった。
俳優陣はなかなかに適材適所で、強烈な自己主張はせずに、皆うまく溶け込んでいる印象。
メインの堺雅人、竹内結子、劇団ひとり、濱田岳は好演。
チョイ役の永島敏行、石丸謙二郎、柄本明、伊東四朗、岩松了らもインパクトあり。
中でも笑顔でショットガンを撃ちまくる永島敏行はなかなかに怪演。憎々しい役だったので、あの悪ふざけが過ぎる末路も許してしまおう。
「フィッシュストーリー」では髭面が阪神の下柳そっくりだった渋川清彦は今回も髭はなくてもおいしい役。
しかしそれにつけても女性陣にどうにも華がないなあ。あれで人気アイドルかぁ?
しかし、各作品が独立していながら登場人物が少しずつリンクしているのが伊坂ワールドの魅力の一つだというのに、他の作品で違う役柄を
やっている俳優をキャスティングするのはちょっといただけないと思う。
まあ今回のキルオなんかは原作者からして濱田岳のアテガキと言ってるんで仕方ないけれども。
○「極道恐怖大劇場 牛頭」 ★★★★★ (03.7.19/DVD)
「バカ映画たちの挽歌」コーナー参照。
○「告白」 ★★★★ (10.6.7/劇場)
STORY:とある中学校の1年B組の学年末のHR。担任の女教師・森口は生徒たちに告白する。「愛美は事故で死んだのではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです」。一人娘を殺された森口は犯人の少年A・少年Bに恐ろしい復讐を仕掛け、学校を去った。そして
新学期。教室には何事もなかったかのように登校してきた少年Aの姿があった。そしてKYで熱血な新担任が事態は悪化させていく…。
映画化と聞いて原作を読んで(逆じゃないのが俗人よのう。)最初に思ったこと。「こんなエグいの映画にするの?」。
つーわけで愚かしいゆとり世代が愚かしい罪を犯し愚かしく裁かれ愚かしく足掻いて愚かしく滅んでいく実に後味の悪い物語で
ある。
しかし映画化するのは「下妻物語」の中島哲也監督。見事に厭な話を娯楽作品のオブラートにくるんでみせた。流石「嫌われ松子の
一生」を作った男。
基本的に原作に忠実な出来(美月の下村への恋心やそれ故の渡辺との亀裂というプロットがオミットされているのは意図的なのかね。)で、
オーバーアクション気味の演技(特に木村佳乃)やポップな音楽を多用し、本来暗いはずの物語を狂想曲チックに描いてみせる
手腕は実にお見事。まあそうでもしないとこの題材で全国拡大公開とかありえないからなあ。
その中で一人淡々と物語を紡ぐ主人公・森口を演じる松たか子の演技は出色。終盤の狂笑とかラストのあの一言とか、素晴らしい。
まあどんなに頑張っても厭な話なのはゆるぎないのだけれども。
○「ゴジラ×メカゴジラ」 ★★ (02.12/劇場)
STORY:’54年、東京はゴジラの襲撃を受け、多大な被害を被った。さらにその影響で生態系が崩れ、日本には巨大怪獣が出没し始めた。
それに対し政府は”対特殊生物自衛隊”を組織し、防衛に当たった。そして2003年、ゴジラの骨と遺伝子を基に作られた、最大の脅威・ゴジラ
用兵器・三式機龍が完成。操縦士には3年前のゴジラ襲撃の際に仲間を失った家城茜三尉が選ばれる。そして、三度ゴジラが姿を現した…。
低迷する平成ゴジラシリーズに喝を入れるべく、平成ガメラスタッフによって昨年放たれヒットした「GMK」を受けて作成されたゴジラ最新作。
一番の見所は、去年あれだけのものを見せつけられて、今年はどんなものを持ってくるか、という一点に尽きる。
結論から言うとまあなんとか及第点か、というレベル。もっと面白くかっこよくできるのにもったいない、という印象が強いが。
最大のウリとしていた愛称メカゴジラこと機龍とゴジラの”怪獣プロレス”は、メカゴジラはミサイル撃ちまくりビーム出しまくりで、組み付いてからの
アクションもいいところはあったが、動きなさすぎ重量感なさすぎ(あれだけの巨体が宙を舞うんだから、あんな程度の衝撃やゆれ方では済まん
だろう。)戦術なさすぎ(何故冒頭のメーサー砲の段階では急所を狙おうとしていたのに、本番ではそれをしないんよ?)と粗の方が目立って
しまった。緊急空中切り離しなんかもっともっともっともっともっとかっこよく見せられたと思うのだが。あと、バックパックを外して身軽になった
機龍、あそこはゴジラの放射能火炎をマトリックス避けしないとダメだろう!(笑)
その機龍さん、骨使って複製しているわ暴走するわ内蔵電源が切れて活動停止して、その上関東中を停電にして電力供給されるわ、なにやら
今更エヴァンゲっていて失笑。オチもダメダメ。
キャストは例によって豪華。ワンカットのみの出演に惜しげもなく有名俳優をぶち込んでいる。亀山パンチや「哲!この部屋」のあの人も
出てた。そして元ヂャイアンツの松井がやたらいい味を。いやあ、ホームランボールで戦闘機を撃墜するのかと思っちまったぜ。
○「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」 ★ (03.12.14/劇場)
STORY:2004年。43年前のモスラ襲来時に事件に深く関わっていた中條博士の前に、再びモスラと小美人が姿を見せ、ゴジラの骨から
作った機龍は自然の摂理に反すると警告する。中條の甥で機龍をこよなく愛する整備士の義人は小美人の言葉に悩む。その機龍は前年の
ゴジラとの死闘での破損もほぼ修復され、再起動間近だった。そしてそれに合わせるようにゴジラが再上陸。迎え撃つべくモスラも現れる…。
昨年の「ゴジラ×メカゴジラ」の続編。監督は引き続き手塚昌明。
前作は全体的にものすご〜く詰めが甘々だったが、ギリギリ及第点を上げてもいいレベルだったのだが、今回はどうしようもない。救えない。
誉めるところが見つからない。
話がペラペラである。中学生レベル。ゴジラのDNAを元に作った機龍について、小美人は「死者を休ませてあげて」とかぬかすが、死”者”
なのか?つーかなんでわざわざ自分の島が被害にあったわけでもないのにインファント島くんだりからご親切に忠告しに来てくれるわけ?その他
ツッコミ入れるとキリがない。伏線の張り方もヘボすぎ無理ありすぎ。
主人公は前作のパイロット・釈”おいきなさい”由美子から整備士・金子”ガオレッド”賢にバトンタッチ。前作の大きな長所の一つに、釈嬢の
奮戦があっただけに、この交代劇は甚だマイナス。
金子賢自体はなかなか頑張っていたように思える。つーか周りを固める吉岡美穂と虎牙光輝が地獄の炎に投げ込みたくなる壊滅的な演技
を披露してくれるため相対的にマシに見えるだけだが。
しかし怪獣映画なんで、肝心の戦闘が格好良ければ全ては許されるわけだが………。ダメダメ。
長回しせずカットをこまめに割っているためダイナミズムに欠ける上にそのカットがまるでつながっていないというのはどういう了見だ?
東京タワーや国会議事堂を派手に壊してのバトルだが、ただ壊しているだけで盛り上がりやしねえ。
今回一番楽しみにしていたのが、機龍の新兵器でドリルが登場!という話だったのだが(笑)、ドリル小せー!!!ガッカリだ。
そしてモスラ。つーかなんでこうもモスラを出したがるのか?蛾じゃん。幼虫にいたっては芋虫じゃん。気色悪い。幼虫の普段は青色の目
が、怒ると赤くなるのにはそりゃもう失笑させていただいた。
最近のゴジラシリーズでは、話の主筋とは別の楽しみとして、まったくもって無駄に豪華に多彩な芸能人がカメオ出演していて、そんなところ
に凝るんだったらもっと本編の内容をしっかり作れよとぶっちゃけすげえウザったかったのだ。
ところが今回は大英断で一切なしとなっている。本来ならば拍手ものであるが、今回に限っては本編が救いようがないダメさであるために、
せめてそれ以外の楽しみとして残してほしかった、と思い切り裏目に。
ゴジラ生誕50年を前に、今作で一区切りをつけて、節目から新たなるサーガを組み立てていくらしいが、とりあえずもうこいつは監督するな。
※金子賢じゃなくて金子昇だったでごわす。インファント島からモスラと小美人がやって来て忠告してくれたでごわす。
○「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総進撃」 ★★★ (01.12/劇場)
STORY:昭和29年、ゴジラ襲撃。戦争の傷跡もまだ癒されぬ日本はさらに深い傷を負った。それから50年以上が過ぎ、日本人は戦争の
恐ろしさもゴジラの脅威も忘れ、平和な日々を送っていた。しかし、ハワイ沖でゴジラらしきものの出現が確認され、同時に、新潟・鹿児島で
不気味な事件が起こり始める。そして、ついに復活し、日本上陸を果たしたゴジラ。迎え撃つのは、”護国三聖獣”モスラ・ギドラ・バラゴン!
続編を出せば出すほどファンが離れていく平成ゴジラシリーズ。その戦況を打破すべく東宝はなりふり構わず平成ガメラ三部作の金子修介を
監督に起用してきた!つーわけでいやが応にも期待は高まったわけだが…。
今回のゴジラはひたすら凶悪で鬼強。白目がコワイ!防衛軍の攻撃にビクともせず、束になってかかってくるモスラとキングギドラを蹴散らす姿は
圧巻。
対する防衛軍はボンクラばかりで役に立たないどころか最終決戦では足を引っ張る始末(味方を誤爆して「あ」、じゃねーだろ!!!)…。
ゴジラに立ち向かうのは”護国三聖獣”(陸のバラゴン、空のギドラはともかく、海がモスラってえのはちょっと無理が…。エビラとかゲソラとか適任
がいるのに・笑)。しかし、これまたゴジラに歯が立たないという絶望っぷり。じゃあどうやって勝つのかといえば…うーん、こんなヤツにやられる
の?
バトルはめら熱い。特にキングギドラ出現シーンは、鳥肌もの!!!
しかし、三流レポーター立花由里(新山千春)とその父防衛軍准将の泰三(宇崎竜童)の主人公親子のヘッポコ演技ぶりに萎え萎え。ウザ。豪華
ゲストの無駄なカメオ出演も鼻につく。チューヤンなんてあのシーンで出して誰が喜ぶ?
数年前アメリカに上陸した”GODZILLA”のネタが出てきたのには笑った。
○「ゴジラ FINAL WARS」 ★★★★ (04.12.4/劇場)
STORY:環境汚染が進み怪獣が出現するようになった時代、人類は優れた能力を持ったミュータントたちを中心に地球防衛軍を組織し怪獣と
戦っていた。北海道で太古の怪獣のミイラが発見されたのと前後して、世界各地で怪獣が一斉に暴れ出した。この未曾有の危機を影で操って
いたのはX星人だった。世界が終わりゆく中、防衛軍の残党は起死回生の策として南極に眠る破壊王・ゴジラを甦らせようとするが…。
ゴジラシリーズ50周年記念作にしてシリーズ最終作。ま、どーせ舌の根乾かぬ内にまた復活するんだろうが。
監督は北村龍平。「ALIVE」、「あずみ」、「スカイハイ」と、「オレはアクションだけの監督じゃなくてドラマもちゃんと撮れるんだぜ!」と証明
しようとして見事に失敗した作品が続く中での一本。怪獣ものなら人間ドラマはさしたるファクターじゃないし、これはバケる可能性も…と
期待と不安入り交じりながら鑑賞。
………これ、信者(去年のアレを絶賛するような人とか)が観たらブチ切れだろうなあ。
監督には明らかにこのシリーズに対するリスペクトが不足してるもん(しかしそのリスペクトの念とやらに縛られて毎年駄作が作られてきた
わけだが)
が、ボンクラ映画としてはまったくもって素晴らしい出来!「スカイキャプテン」同様、こうしたらイカスんじゃない?というネタを節操なく
ギュウギュウ詰めにしてあってもうお腹一杯。
前半の怪獣総進撃シーンが素晴らしい。ラドンが夜の摩天楼をソニックブームでなぎ倒し、アンギラスが上海を炎の海に変える。
か、かっこええ!
ところがゴジラが復活してからの怪獣同士の戦いはちょっとパッとせず。動きやすいように着ぐるみを改変してスリムなスタイルになった怪獣
たち、が、それをあまり活かしてないような戦いばかりで。
それでもクライマックスのモスラvsガイガン、そしてクソ格好悪いモンスターXのアッと驚く秘密は盛り上がること必至。
前作で「初めて東京タワーを壊した」とか「国会議事堂二度目の破壊」とか一部ファンの間では盛り上がったようだが、今回の破壊はそういう
次元ではないのでよろしく。(ただし、その大破壊のシーンを端折っているところが限りなく弱い)
そして怪獣映画と併行して人間たちのファイトも描かれるのが北村式。何の映画なのよこれ、省いてもいーんじゃない?くらいに皆戦いまくり。
ハロルド山田じゃなかった松岡昌宏vsケイン・コスギ、松岡vsX星人の親玉@北村一輝、ドン・フライvs新庄&魚谷佳苗の北村組…。
まあいつものアレだけどな。つーか冒頭まんまガン=カタで苦笑。
つーわけで作品はガン=カタを筆頭に「スターウォーズ(エピソード4)」やら「マトリックス」やら、どっかで見覚えのある描写のオンパレードで
そこが許せんという人の気持ちもわかるが、ボンクラ的には、「だが、それがいい」(笑)
ゴジラが光線吐くときにドラゴンボールとかよろしく光の粒子が渦を巻いて収束して、ズバーン!といったり、ミサイルが板野サーカスするあたり、
苦笑しながらも燃えるのは確か。
観終わって何も残らないかもしれないが痛快娯楽作ではありんす。ナイスボンクラ!GJ!
怪獣では個人的に大好きなガイガンの登場がうれしいが、ボディがスリムすぎて威圧感薄し。残念。
同じく好きなアンギラスは前半大活躍でうれしい限り。
ハリウッド版ゴジラとキングシーサーとヘドラは苦笑。
素晴らしくヘボヘボなデザインのモンスターX。ラスボスのくせにその素晴らしくぞんざいな名前は何よ、と思ったら………おおお!!!
でもミニラはやめてほしかった…。
キャストでは轟天号の無謀艦長で日本刀は手放さないマッスルな大佐を演じる格闘家ドン・フライが出色。旬でもないこんな微妙な格闘家
に何故オファーが?と発表時は首をひねったが、素晴らしい存在感で主役食いまくり。まあ役がエキセントリックというのもあるが。そして声が
玄田哲章の吹替というのもあるが。
そう、外人はいきなり皆吹き替えられてて最初戸惑ってしまった。が、本来怪獣映画は子供のものなんだからこれでいいのだ!
だからケイン・コスギのたどたどしい日本語も吹き替えてほしかった(笑)←森川智之かい?
デスラー総統っぽいイヴ雅刀を殺して親玉(名前ないのね)になるX星人に北村一輝。壊れていて大変よろしい。「マグロ食ってるようなヤツ
ぁダメなんだよ!」
いつ松岡と「ファイトォッ!」「いっぱぁつ!」と叫び出すかとヒヤヒヤなケインや船木誠勝らマッスル系俳優も頑張っている。
新庄・チビ・榊英雄・魚谷佳苗ら北村組も元気そうで何より。國村隼も入るのか?
恒例カメオは佐野史郎とか大槻教授とかアホ揃い。
つーわけでナイスなボンクラ映画なのだが、例によって冗長なのと例によってアクションがワンパターンなのとミニラはやめようぜ、なので
★1つ減点。
さて、こんな今までの歩みをブチ壊してしまった怪作の後に、どんな新作を持ってくるやら、楽しみだなあ。
○「殺しの烙印」 ★★★ (01.10/劇場)
STORY:ご飯の炊ける匂いフェチの日本殺し屋ランキングNo.3こと五郎。ある時は排水管から、ある時はアドバルーンにぶら下がって、黙々と
依頼をこなす。しかし、謎の美女に依頼された殺しをしくじり、組織から追われる身となってしまう。追いつめられて彼は、単身逆襲を開始する
が…。
鈴木清順監督の’67年作品。これを見た日活のお偉方が「会社の金でわけわからんもの作るな!」とブチ切れ、清順監督はクビに。
あー、こりゃまた。そりゃクビになりますわな。
ただでさえわけがわからない展開に加えて、鑑賞時は睡眠レスな上に酒まで入れてしまい、半分寝ていたがために、それはもうまったくわからん
内容だったが、とにかくすげえ作品だった。(感想になってないなあ。)
クソゲー帝王「デスクリムゾン」の凄まじさは実際にやってみないことにはわからないように、この作品もまずは見てみないことには。
炊飯器を抱いてうっとりとする宍戸錠がサイコー。
○「殺し屋イチ」 ★★★ (02.1/劇場)
STORY:歌舞伎町、”ヤクザマンション”に事務所を持つ安生組組長が姿を消した。安生の部下で、彼を愛するスーパーマゾ・垣原は、組を
上げての捜索を始める。しかし、安生はジジイと呼ばれる謎の男らによって殺されていた。ジジイの切り札は、刃物付きのカカト落としで相手を
切り刻む、泣き虫殺し屋・イチだった。次々と組員を狩っていくイチの凄惨な殺しっぷりに、素晴らしいサドに違いないと垣原は心躍らせるが…。
鬼才・山本英夫のマンガを”バイオレンスの奇人”三池崇史があろうことか映画化。
が、「漂流街」や「アンドロメディア」などとは比べ物にならないほどに、わりと忠実に映像化。
原作との最大の違いは、やはり、黒服の小男、顔中傷だらけで、スーツの下には亀甲縛りを欠かさないキング・オブ・マゾ垣原を、長身の
いい男で、わけがわからん派手な衣装をスタイリッシュに着こなすパツキンの浅野忠信が演じていること。
原作とは全く毛色が変わってしまったが、なんかアサチュウ、すげえうれしそうに演じているのでよしとしよう。
一方主役のイチを演じるのは初主演の大森南朋。…ハマッてる。そりゃもう実生活でもイチのようにいじめられてそうなくらいに。
脇を固めるのは塚本晋也SABU寺島進松尾スズキ菅田俊…濃い、濃すぎる。
いやあ、原作通りに痛い映画だとは覚悟していたが、やはり垣原のベロ切断や二郎・三郎の乳首切りシーンあたりはつらかった。あとは、イチの
素晴らしい安定(=向上心なく低いレベルで落ち着いていて、それ故に、停滞、マンネリ化、腐敗していく、という解釈で)っぷりが、
かつての知り合いだった安定人間のウジウジしたダメっぷりを彷彿とさせて、もうぶちギレですよ。
他にもエグイわりにあっさり話を流しすぎ、とかマイナス要素も多いのだが、「HANABI」や「BROTHER」などでの好演で、今や日本を代表
するバイプレイヤー(つーか、日本を代表する舎弟役)になりつつある寺島進がすげえひどい目に遭っていたり(「カラッとな」がなかったのは
残念!)、ジジイの筋肉が大爆笑ものだったりと、三池テイストは充満。その、全体を覆う哀しき滑稽さはよい。
原作未完のうちに脚本が書かれたため、原作とは異なる最後も、映画オリジナルの味を出す垣原・金子のおかげで、あまり違和感なく受け
入れられる。
○「今昔伝奇 座敷童 百物語」 ★★★ (03.11.26/ビデオ)
STORY:今は昔、江戸時代、相模の国のとある村。ある夏の夜、わけありの浪人が村はずれの寂れたお堂の中で夜露をしのいでいると、そこに
5人の村の若者たちがやってきた。手にした風呂敷には大量の蝋燭、百物語をしようというのだ。浪人も参加して百物語は始められたが、途中
浪人はあることに気づく。いつしか若者たちが6人になっていたのだ。妖怪の仕業と見た浪人は、誰が妖怪なのかを突き止めようとするが…。
「中国の鳥人」、「DEAD OR ALIVE2」などで(ごくごく一部に)知られる若手脚本家・NAKA雅MURAが気鋭の監督たちと組んで
送るネオ時代劇「今昔伝奇」シリーズの一編。監督は「カオルちゃん」、「人斬り銀次」の宮坂武志。
百物語の最中、いつの間にか増えている参加者。しかし見知らぬ者は一人もいない(ように思える)。当惑する中、その中の一人が何者かに
斬り殺される。一体犯人は誰なのか?という序盤からだんだん論点が変化していき、そして何故彼らは事件に巻き込まれたのか?という
驚愕の真相が明かされるなかなかに練られた緊迫のサスペンス。ほとんどが閉じこめられたお堂の中で、ほとんど7人の登場人物だけで話が
進むのに視聴者を全く飽きさせない監督の手腕はお見事。
6人の村人を演じるはほとんど無名の若手たち。一番有名で山口祥行(笑)彼らと共に事件に巻き込まれ探偵役を務めるのは似合わないことに
小沢仁志のアニィ。つーか怪談話よりもあなたの顔の方が怖い、相変わらず。
作品の前後に奥田瑛二が自身で監督も務めたプロローグとエピローグが挿入されているのだが………激しく邪魔。
○「コンスタンティン」 ★★★ (05.5.27/劇場)
STORY:ジョン・コンステンティンはエクソシスト。過去に自殺して蘇生した経験あり。実は神と悪魔は人間界を賭けの場と見ており、互いの均衡
を保つよう密約があったが、悪魔側がそのバランスを破ろうとしていることに気づいたコンスタンティンはその企てを阻むべく奔走する。何故
ならば、彼は肺ガンで余命1年。自殺した者は地獄へ落ちるため、悪魔を倒して神様の点数を稼ぎ、天国に行かせてもらおうと必死なのだ…。
キアヌ・リーブスが「マトリックス」に続いて黒のジャケットに身を包んで戦ってしまう一本。
「マトリックス」のネオと比べると格段にスットコドッコイなのがまあ魅力。つーかその二枚目半ぶりも世界観も今ひとつ目新しくないのが惜しい。
神と悪魔の思惑が複雑に絡み合う中、最終決戦に赴くコンスタンティン。雑魚を蹴散らすアクションはなかなか良かったが、目立つアクション
がここだけってぇのはどうよ?
ラスボスとの戦いのケリのつけ方も結構好きだが、サタンさんはどうしてあんなにコンスタンティンに萌え萌えなのだ?そこの説明が欲しい。
どこでも誉めてるように、大天使ガブリエルが中性的でなかなかよい。が、最終決戦でのあの貧相なシャツ姿は何?
どーせ作られるであろう続編はもっとアクション色強めでよろしく。
あと、タバコはかように体によろしくないのでこの映画を観た人は皆スパッとやめてください。
でもコンスタンチンくん言うたらオイラらの世代にとっては彼だよなあ。
○「コンテイジョン」 ★★★★ (11.12.1/劇場)
STORY:香港への出張からミネソタへ帰ったベス・エムホフは風邪に似た症状で体調不良を訴えていたが、数日後、容体が急変し死亡
した。香港・ロンドン・東京・シカゴでも同じく急死する人々が相次いだ。こうして世界中に新種の伝染病の感染、バンデミックが始まった。
進化を続けるウィルスを前にワクチン作成の目処は全く立たず、死者は日々増えていき、人々は次第に疑心暗鬼に陥っていく…。
スティーブン・ソダーバーグ監督によるパニックホラー。
人の生き死にに関わる映画なので、愛する肉親との突然の別れなんてネタでいくらでもベタなお涙頂戴映画に仕立て上げることは
容易だったはずなのに、なんともドライに、あくまで淡々と、事実を描いていくその無慈悲さは実に小気味いい。
コウモリと豚のインフルエンザが運命の出会いをしてしまい生まれた新しいウィルスはインフルエンザと同じ経路で感染し、数日で発症、
そうなるとほぼ死に至るという恐ろしい病。
感染を避けるための最良の手段は、他人と接触しないこと。
特効薬や奇跡なんて映画みたいなことはあるはずもなく(映画だけどなあ)、世界の人口は激減していき、人々の心も荒廃していく様を
粛々と描いていき、なんとも怖いなあ。
マッド・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ケイト・ウィンスレット、グゥイネス・パルトロウ、マリオン・コティヤール、ジュード・
ロウ、ら錚々たる面子がそんなに自己主張もせず、しかし熱演。
戦い半ばに病魔に倒れてしまうあの人や、公人と私人の狭間で葛藤した末の選択で手ひどいしっぺ返しを喰らったあの人が最後に
取った行動なんか、地味に感動したり。
しかし、まるで活躍もしないマリオン・コティヤールがクレジットの先頭ってどゆこと?
教訓:手はきちんとこまめに洗いましょう。
それとなくそういうアングルでカメラが動くのはあざとい。