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映画感想は行
○「VERSUS」 ★★★★★ (01.10/劇場)
STORY:陰気で薄暗く深い森の中。記憶のない男と女は組織の男たちに追われていた。が、彼らの前で次々と死体が蘇り襲いかかってくる。
死闘死闘また死闘。やがて現れる組織の首領。記憶のない男は彼と闘い、少しずつ思い出していく…。すべては数百年前の因縁がもたらした
運命の対決だったのだ。
すべての中坊魂を忘れない大きなお友達たちにこの映画を薦めよう。
拳銃マシンガンショットガン対戦車ライフルナイフワイヤーアクションVFX血糊血しぶき生首カンフー拳法マーシャルアーツそしてチャンバラ!
ありとあらゆるアクションを個性派揃いの出演陣がこれでもかとばかりにケレン味たっぷりに大熱演!
熱い!熱い!!熱い!!!
ハリウッドのヘタレアクションどころか、本場香港アクションまでも突き抜けてしまった至高なまでに破天荒自由奔放荒唐無稽出鱈目(誉め
言葉)のアクション巨編!
そりゃあもう欠点も山ほどある。
ヒロインは大根な上にブサイクだしストーリーまで中坊レベルだしヒロインは大根な上にブサイクだし役者はそろって大根だしヒロインは大根な上
にブサイクだしアクションオンリーで2時間は長いしヒロインは大根な上にブサイクだし主人公は元阪神の新庄だしヒロインは大根な上にブサイク
だし監督は大口ばっか叩くしヒロインは大根な上にブサイクだし…。
しかしそれを補って余りあるゾクゾク感がこの映画には詰まっている。
拳銃構えたゾンビ軍団を鼻歌混じりに大虐殺とか、最終決戦のかっこよすぎるブレードアクションとか。
○「ハード・ターゲット」 ★★★ (02.9/DVD)
STORY:父親を探してニューオリンズまでやって来たナターシャ。だが父親は街のならず者集団の人間狩りの餌食とされていた。そして彼女も
またならず者たちに襲われるが、通りすがりの腕の立つ無職男・チャンスに救われる。逃避行の中、チャンスは反撃に転じ、町外れの廃工場
にならず者たちを誘い込む。1VS20、果たして狩られるのはどちらか…。
ジョン”二丁拳銃&スローモーション&鳩”ウー監督、ジャン・クロード”回し蹴り”ヴァン・ダム主演。
ヴァン・ダムのアクションにはあまりいい印象を持ってなかったこともあり、前半は見ていてあまり気が乗らなかったのだが、終盤になっての鳩の
飛び交う工場での銃撃戦は滅茶苦茶熱かった。ラス前まで★、ラストバトル★★★★★くらいに。弾丸よりも速い跳び蹴りを打ち込んだ後の
二丁拳銃キャンセル回し蹴りキャンセル二丁拳銃キャンセル回し蹴り(無論スローモーション)には笑った。
○「バーバー」 ★★★ (02.8/劇場)
STORY:戦後間もないアメリカの小さな町。義兄の床屋を手伝うエドは、毎日の退屈な床屋ライフに倦んでいた。そこにたまたま舞い込んで
きた新事業への出資の話。彼は、妻ドリスとその上司デイヴの浮気をネタにデイヴから出資金を脅し取ろうと計画する。が、計画はデイヴに
バレ、もみ合いになってエドはデイヴを刺し殺してしまう。翌日、エドの前に現れた刑事は、なんとドリスを殺人容疑で逮捕したと告げる…。
「ファーゴ」などで知られるコーエン兄弟の最新作は米国の古き良き日を全編モノクロで綴ったシックな出で立ち。(←ビデオ化されたら
カラーになってやがんの。厳密にはモノクロ版とカラー版が同時発売されたが、メインがカラー版になった。)
三谷幸喜の「ラヂオの時間」のような、ささいなボタンの掛け違いで生じたアクシデントがどんどん雪だるま式に膨らんでいって、予期せぬ
事態が勃発するというタイプの作品。
平々凡々たる人生から抜け出そうと一歩足を踏み出した途端に立て続けに起こる思いもよらぬ出来事の嵐に翻弄されるるも、表向きは至って
無表情に黙々とタバコを吸い続ける(劇場を出て、自分の服にタバコの臭いが移ってないか思わず確かめてしまうほどに吸いまくり。)
主人公がとにかくシヴい。全編を包む優しいベートーヴェンのピアノソナタも綺麗。
見終わっていい映画だったと思えたように、最後の刻にいい人生だったとニイッと笑えるような人生を。
終盤がモノローグでやたら急ぎ足だったのがちょっと瑕疵。被害者の奥さんが恐ろしげな様子で真面目にUFOの話をするのに大受け。
○「ヴァイブレータ」 ★★★★ (04.5.14/劇場)
STORY:早川玲は心の中の自分の声が常時聞こえる気がして疲れ果てている過食症の31歳の独身女性。雪のホワイトデーの夜、立ち寄った
コンビニで、彼女は岡部希寿と出会い、強く惹かれる。誘いに乗った岡部の長距離トラックの中で、玲は彼と肌を重ねる。翌朝、一度はトラックを
降りた玲だったが、思い直して再度助手席に乗り込む。「道連れにして!」こうして二人の東京−新潟往復の二日間の旅が始まった…。
’03年度キネマ旬報邦画ベスト10第3位。
壊れかけた中年女と優しい年下の男のロードムービー。
もう少しで窓に鉄格子のはまった病院に入れられかねないほど壊れかけた女が優しい男との旅で癒される物語。
そう、旅はよい。
ありふれた日常から逃れることができる特別な時間。早朝の見知らぬ道路を走るトラックの軽快さよ。助手席で景色を眺める女の子供のような
胸の高まりがすごく共感できる。
そして女は旅の中で、粗にして野だが卑ではない男に癒される。彼女を苦しめていた心の声のノイズが聞こえなくなる。
しかし、女は男の誘いを断り、出会ったコンビニでトラックを降りる。互いに愛おしく想いながら別れる二人。
旅は終わるものだから。いつまでも現実から逃れられるものではないから。だから彼女は非日常に別れを告げ、居場所へと戻る。
彼女の顔は旅の前とは比べものにならないほど生気に満ちている。味気ない現実に戻っても、想い出は残っているから。
それでも、また日常に疲れ果て彼女は深く病むかもしれない。
そうしたら、また旅に出ればいい。素敵な出会いを探せばいい。
主演の寺島しのぶにばかり話題が集中しているが、その相手役の大森”イチ”南朋の演技が非常に素晴らしかった。多芸多才だの。
勿論寺島しのぶもヌードに濡れ場にゲロに野ションといきなり女優生命を賭けるような体当たりの全力演技で魅せてくれる、
…が、彼女の映画デビュー作といえば「シベ超2」なんで、その恥ずかしさと比べればナンボのものであろうかと(笑)
だから結局何なのよ?とバッサリ切ってしまえる話ではあるが、旅好き細胞を刺激されたし、二人の好演とナイスな音楽に甘々★4つ進呈。
願わくば我らの行く先にもこんな素敵な航海が待っていますように。
○「バウンスkoGALS」 ★★★ (01.11/ビデオ)
STORY:アメリカで自分探しをするため家出してきた少女リサは、ブルセラショップに下着や制服を売って所持金を増やそうと渋谷へ立ち寄る
が、いざこざに巻き込まれて逆に虎の子の三十万を奪われてしまう。偶然知り合ったコギャルのラクチャン・ジョンコと援助交際に励み、それなり
の金を稼ぐことができたものの、一行はコギャルのエンコーにセックスビジネスを食い荒らされて怒り心頭のヤクザに捕らわれてしまう…。
庵野秀明監督の(というよりは村上龍の小説)「ラブ&ポップ」もそうだったのだが、「援助交際」にまつわるグダグダが非常に気色悪く腹立たしく、
やな気分にさせてくれる。カラオケで一緒に歌って、ご飯一緒に食べて十万円とか、払う方ももらう方も小一時間問い詰めたくなってしまう。
まあ、やはり劇中で言っている通り、そんなのに金を出す大人の方がよりおかしいのだなと。
話自体はよくできていて、ラストもまあありきたりと言ってしまえるのだが、しっかり感動できる。一期一会とはよく言ったもので。
○「ハウルの動く城」 ★★★★★ (04.11.27/劇場)
STORY:近代ヨーロッパに似た世界。帽子屋の跡継ぎの地味な18歳の少女・ソフィーは、ある日、美青年の魔法使いと知り合うが、そのために
”荒れ地の魔女”に呪いを掛けられ90歳の老婆にされてしまう。呪いを解く方法を求めて街を出た彼女は、一晩の宿を求めて動く城に転がり
込む。その主こそが件の美青年・ハウルだった。行き場所のないソフィーは家政婦として城に居座り、住人たちとの奇妙な生活が始まるが…。
宮崎駿監督最新作。前作「千と千尋の神隠し」が、年端もいかぬ幼女を風俗に売り飛ばし触手プレイに汚物プレイと、本能の命ずるまま
に暴走した作品だったために「このロリコン野郎!」と非難(と喝采)が集中したため、
「イヤ、そンなことないッスよォ。ボク、ホントは、老女萌えなンスからァ」
と打ち出したUSO800見え見えの言い訳のための作品(笑)でもまあ結局婆さんコロコロ少女姿に戻るんでいつも通りなんで。
ネットで感想を調べてみたら肯定派否定派真っ二つに分かれているようで。否定派は宮崎作品にしてはヌルい!浅い!と大ブーイング。
オイラは宮崎作品の権威なんぞ別に何とも思ってないんで純粋にエンターテイメントとして楽しめたが。
確かに後半すげえガタガタだが馬鹿らしいほどハッピーエンドなんで良し!
ヒロインは90歳の少女・ソフィー。予告編以外はほとんど予備知識無しで観たんでずっとあのババア顔出ずくめならツラいなあ、と思っていた
のだが、蓋を開けてみれば監督の本能のままにコロコロ若返るので一安心。
が、少女顔がイマイチ無骨で萌え度に欠けるという意外な展開。しかしまあ話が進むにつれ段々かわいく思えてくるのも前作同様なので
一安心。
しかも最初はラナやシータ風のおさげ少女で、終盤は髪をバッサリ切ってナウシカ風になるという展開で二度美味しい。
だがしかし少女でも老女でも声が倍賞千恵子というのはいくらなんでも問題アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリーヴェデルチ!(さよならだ)
素直に島本須美にでも声を当てさせて作画の萌え度を微増させてたらあと4,5回は見に行ったのに(笑)
ソフィーが恋する美青年ハウルの声を当てるのが木村とかいうの。あまりに露骨な客寄せで反吐が出そうだったのだが、「2046」に引き続き
まあ好演と呼べる予想外の演技力で敢闘賞。
つーか最初に予告でこのキャラを観た時女だと思った。しかし声優:木村というテロップが出て愕然。
今回のマスコットキャラの火の悪魔・カルシファーに我修院達也、好演。「茶の味」といい存在自体がアニメっぽくなってきた。
ハウルの弟子の少年・マルクルに神木隆之介、好演。つーか弟としてオイラにくれ。つーか中の人かわいいんだけど。
そして隣国の王子役に大泉洋。いつ出るかいつ出るかと思っていたらあんな所で出てきてワロタ。つーかクレジット見たらチームNACKS
全員出てんじゃん!どこだか気になる!
その他例によって例の如く非声優でガチガチに固められているのだが何故かその中に大塚明夫がチョイ役で登場。その瞬間に声優素人
どもとの演技の次元の違いがはっきりと。もう一つの城が動くアニメでも阪修で似たようなこと思ったな。
○「幕末太陽傳」 ★★★★ (02.6/劇場)
STORY:時は文久2年、品川の遊郭街。肺病持ちの町人・左平次は海に近い品川を気に入り、無一文で旅籠・相模屋で芸者を上げての
どんちゃん騒ぎをやらかし、宿代を払うために住み込みで働くという名目で居着くことに成功する。行動派で頭も切れる左平次は、次々と問題
事を解決し、芸者たちの憧れの的になっていく。一方、相模屋には高杉晋作ら攘夷志士が出入りしており、異人館焼き討ちを計画していた。
’57年度作品を何故か地元の劇場で一夜限りのリバイバル上映。ネットで調べてみたところ、かなりの名作という評価だったので見に行ったの
だが、実際面白かった。
主人公の左平次を演じるフランキー堺がとにかく動く動く。おまけに弁も立ち、読みも鋭いスーパーマンぶりで、見ていて惚れ惚れする。
舞台となる相模屋の住人や客たちも個性的でエネルギッシュで見ていて飽きない。石原裕次郎演じる高杉晋作が♪三千世界の烏を殺し〜
と歌ったり、井上聞多や久坂玄瑞や来島又兵衛らが登場するなど、幕末マニアには嬉しい限り。
さて、いつも笑顔で飄々としている左平次だが、命に関わるであろう肺病を患っており、部屋に籠もると途端に険しい顔で薬の調合に励み、
ラスト近く、秋田弁のオヤジに、悪い咳をしていると指摘されれば豹変して暗い表情を見せる。
これは、監督の川島雄三がやはり難病持ちで、いつお迎えが来るかわからないという事実の投影なようで。そして監督の願いを受けるかの
ように左平次は最後まで疾走し続けていく。どこまでも生きてやろうというエナジーを持ちながら。グレイト!元気になれる一本。たいそうにぎやか
でよろしい。あ、くれぐれも「幕末純情伝」と間違わないように。
しかし、俳優陣がさすがに皆若い!自分にとってはファンファン大佐のイメージしかない岡田真澄の若い頃があんなハンサムだとは。
○「爆竜戦隊アバレンジャー DELUXE」 ★★★ (03.8.30/劇場)
STORY:夏休み。海水浴に来ていた”恐竜や”ご一行の前に、謎の少女が現れ、アバレンジャーに助けを求める。彼女こそ、ダイノアースの
伝説の王女・フリージアだった。遠い昔ダイノアースを滅ぼしかけ、氷の底に封印された二匹の凶悪な爆竜がエヴォリオンによって地球に転送
されてしまったのだ。移転のショックで壊れてしまった、伝説の爆竜を封印できると言われる剣・アバレイザーを直すため一同は奔走するが…。
ぶっちゃけTV版もそんなに見てないのだが、なかなかその阿呆なノリは気に入っていたアバレンジャーの劇場版。
とはいっても時間はたったの30分でTVとさして変わらず。なので全編見せ場また見せ場で最後までひた走ってしまうなかなかにご機嫌な作品と
なっている。楽しい夏休みをエンジョイするために闘うアバレンジャーの勇姿に刮目せよ。TV版のノリが好きな人なら見て損なし。
冒頭は海水浴のシーンなのだが、空がどんより曇っていてまるで夏という感じがしないのが切ねえ。つーかあからさまに寒そう。
あと、古川登志夫の悪役声なんて珍しいものが聞ける。
○「パコダテ人」 ★★★ (03.7.2/ビデオ)
STORY:函館に住む普通の女子高生・日野ひかるにある朝突然シッポが生えてしまった。ボーイフレンドにも打ち明けられず悩んでいたひかる
だったが、家族に励まされ、「シッポがあってもなくても私は私!」と思い切ってTVの生中継でカミングアウト。一躍時の人になった彼女だった
が、地元三流スポーツ紙の心ないデマで一転、大ピンチに。その頃、某所ではシッポの秘密を巡り、謎の男たちが密議を繰り広げていた…。
函館イルミナシオン映画祭から生まれた、オール函館ロケで送る北海道の芸能人多数出演のどさんこムービー。(つーても監督も主演も北海道
の人ではないわけだが)
なんつーか、北海道の人はあったかい人が多い、なんて感じの、一般大衆が抱いてそうなイメージを壊さないように作られた作品(他地区
の例としては尾道=清らか爽やか、大阪=パワフルでギトギト、沖縄=陽気に爽やか、会津若松=頑固偏屈狭量狷介閉鎖的保守的凡愚雑魚
以下略、などが挙げられる)で、可もなく不可もないハートウオーミングなファミリードラマ(PEッ!)に仕上がっている。
でもやっぱり函館はいい街だなあ。また行きたいなあ。(遠い目)
基本的に函館の風景とヒロインを愛でる作品なので中盤以降話が段々突拍子もなくなってきて、最後には自衛隊が出動したりしても目くじら
を立ててはいけません。
主人公日野ひかる後にピノピカルを演じるは宮崎あおい。確かに美少女なのだが、延々流れ続けるドコモのCMでいい加減見飽きてしまった。
その両親が徳井優と松田美由紀で、お互い愛称で呼び合うのがいい感じ。
地元三流スポーツ紙の編集長でいかにも佐野史郎がやりそうな役に個性派バイプレイヤー木下ほうか。つーか眼鏡と濃ゆい髪型のせいで
全然気づかんかった。冴えない記者に最近冴えない荻原聖人。
そして、もう一人の主人公、ひかると同じく突然シッポが生えて困惑するバツイチ子持ちの市役所員を好演しているのが、北海道では知らない人
がいない(らしい)地方限定のスーパースター・大泉洋。こっちでも「どうでしょうリターンズ」やっていることにものすげえ遅まきながら気がついて
ハマッております。よく見るとその同僚がイチ。本当にいろんなところに出てるなあ、ひっそりと。
○「パコと魔法の絵本」 ★★★ (08.10.6/劇場)
STORY:医者も患者も変人ばかりのとある病院。入院患者の一代で大会社を築き上げた頑固で偏屈な老人・大貫は皆の嫌われ者。ある日
彼は事故の後遺症で記憶が一日しか保たないパコという少女に出会う。彼女のために忘れられない思い出を作りたいと改心した大貫は病院中
を巻き込んでパコがいつも読んでいる絵本「ガマ王子対ザリガニ魔人」の劇を上演することに。しかし彼の寿命は尽きようとしていた…。
「下妻物語」、「嫌われ松子の一生」に続く中島哲也監督の第3作。
今回の見所は実写と絡み物語とも融合するCGの「ガマ王子対ザリガニ魔人」であろう。事実、八面六臂の大活躍で、親子連れなんかにも
十分訴求力はあるんではないかと。
物語もけっこう感動的でしっかりちゃっかり泣かせてくるのだが、個人的には「おくりびと」観た直後で涙腺が壊れていた後だったもんで、
本当に感動的だったのか今になってみると…どうだったのかしら。
相変わらず監督独自の色が出ていて(今回はやたらサイケだけど)完成度は高いのだけれど、ドタバタしすぎていて個人的には勢いに
あまりノれずにちと残念。いや、いつまでも「下妻物語」の影を追いかけててはいかんとは思うのだが。
全編出ずっぱりの時の阿部サダヲの使い方って難しいね。
○「パダヤッパ いつでも俺はマジだぜ!」 ★★★★ (01.3/劇場)
STORY:弱きを助け強きをくじく伊達男・パダヤッパが妹の結婚式のため故郷に帰ってきた。そこで彼は高慢な金持ちの美女・ニーランバリに
見初められるが、彼はその召使いの清楚なバスンダラに一目惚れしてしまう。なんとか気を引こうとするニーランバリの陰謀を打ち砕き、ついに
パダヤッパはバスンダラのハートを射止める。それから18年後、復讐鬼と化したニーランバリはパダヤッパの娘に狙いをつける…。
ご存じインドのスーパースターおやぢ・ラジニカーントが傑作「ムトゥ 踊るマハラジャ」の監督&音楽と再び手を組んだマサラ・ムービー。
相変わらずアクションあり恋あり涙あり家族愛ありサスペンスありそして全編に渡って歌あり踊りありのてんこもりムービー3時間。
今作の特徴は2部構成になっていること。
カッコイイ敬礼をする青年・パダヤッパ(どー見ても青年に見えないのだがその意気を買ってやって下さい)とガルウィング(ドアが上に
開く)のトヨタ・セラが愛車のタカビー女・ニーランバリと清楚で可憐で不幸というベタなヒロイン・バスンダラの三角関係の決着までが前半で、
後半はいきなり18年後に話が飛んで、カッコイイ敬礼をするオヤヂ・パダヤッパと、ふられたショックで18年間引きこもっていたが復讐の
ために復活したニーランバリとの対決が描かれる。
ニーランバリの蛇のような執念というのは脳天気なインド映画には珍しいような気がするが、他はどこを取ってもラジニ映画なので安心だ!
その中でもアクションはパワーアップ!”インドの西部警察”と呼ばれるカースタント・チームが参加したカーチェイスは、まったくもって無意味
に車が爆発炎上しまくって最高!肉弾アクションも、ラジニ老いてなお盛ん、という感じで頑張ってた。さらにCGまで使ってるぜ!
まあぶっちゃけ3時間は長いわけだが、そこはラジニ様のカッコイイ敬礼(当然風を切る効果音付き)とカッコイイ決めゼリフに免じて許して
やってくれ!
「俺には俺のやり方がある。誰にも邪魔はさせない!」
○「発狂する唇」 ★★★ (01.3/ビデオ)
「バカ映画たちの挽歌」コーナー参照。
○「初恋のきた道」 ★★★★ (01.6/ビデオ)
STORY:中国、河北。学校の先生をしていた父が死んで、”私”は久方ぶりに郷里に帰ってきた。年老いた母は、しきたりに従って、どうしても車
ではなく自分たちの手で父の遺体を運ぶと言う。遺体のある病院から家までの道、そこは若き日の両親が出会った思い出深い道だからなのだ。
数十年前、村に学校ができた。赴任してきた若い優しそうな教師に、若き日の母は恋してしまい、彼の気を引こうとけなげな努力を始めるが…。
チャン・ツィイーかわええ〜!!!終わり。
それだけに★4つの価値はある。それ以上でもそれ以下でもない。他に見るべき所はない。
そりゃ四季折々の風景は美しいが、そんなんは先生役の男のあまりのエロガッパ面の不愉快さで相殺されてしまう。
○「パッション」 ★★★ (04.6.1/劇場)
STORY:ナザレのイエスは弟子のユダに銀貨30枚で売られ、ユダヤ兵に捕らえられた。彼を邪教徒と弾劾するユダヤ司祭たちはローマ帝国
総督・ピラトに彼の死刑を要求する。ピラトは死刑に値しないと考えイエスに鞭打ちの刑を与え解放しようとするが、ユダヤ人たちはイエスを許そう
とせず、ついにイエスは磔の刑に処されることとなる。イエスは彼らの罪を許し甘んじて刑を受け入れ、十字架を背負わされ処刑場に向かう…。
passionは通常「情熱」と訳すが、この場合”受難”と訳す。イエス・キリストの身に降りかかる”受難”を描く映画。
監督は「ブレイブハート」、「パトリオット」と英雄作品撮りまくりのメル・ギブソン。
感想。メル・ギブソンは変態。
重度のサドあるいはマゾいずれかの性癖がある方にはお勧めする。
つーか延々2時間以上イエスさんが拷問され続けるだけの映画。
顔の形が変わるまで殴られ皮が裂け肉が破れ骨が剥き出しになるまで鞭打たれ唾を吐かれ頭には茨の冠が食い込み鮮血がほとばしり
最後には手足にブッ太い釘を打ち込まれ十字架の上で息絶えるという話。
そこいらのホラーよりも全然スプラッターしているのでホラー好きにもお勧め。
それ以外の人で敬虔なクリスチャン・スレーターではない人には全くお勧めしかねる。
オイラの宗教に対するスタンスは嫌悪以外の何者でもないので最初からスプラッター映画として見に行った(笑)
ので聖書の記述がどうだとかユダヤ人差別表現がどうだとか神の奇跡がどうだとかについては触れる気はない。
そういったマイナス方面の要素を差し引いてもあまりの異質さで記憶に残りそうな一本。まあオイラも重度のサドあるいはマゾいずれかの
性癖があるっつーこって。
メル・ギブソンのほとばしる熱いパトスが噴き出している。きっと彼は自分の作ったこの作品を見ながらオナニーしてます。迫害されている
イエスたんハァハァくらいの勢いで。
○「ハッピーフライト」 ★★★ (08.11.26/劇場)
STORY:ある日の羽田空港のホノルル行きの旅客機。機長昇進のフライトである副操縦士の鈴木、国際線のCAデビューの悦子、仕事を辞め
たがっているグランドスタッフの菜摘、かつては敏腕だった昼行灯のオペレーターの高橋、整備のことでケンカする整備士の中村と小泉、修学
旅行の高校生、飛行機恐怖症の新婚さん、動物保護団体、etc...数多の人々のそれぞれの想いを乗せながら飛行機は離陸するのだが…。
「スウィングガールズ」以来久方ぶりの矢口史靖監督の新作。
空港と飛行機を舞台としているものの、ハイジャックされるでもなければ謎の無人島に不時着するでもなく、ましてや飛行機の中に蛇が
バラまかれたり空港の中に人が住み着いたりするわけでもない、ごく平凡な日常を描いた作品。そりゃちょっとはハプニングもあるけれども。
よーするに、空港で働く人たちはこういう仕事をしているんですよ、という働くおじさん的作品で、その多種多様な仕事ぶりを追っている
だけで十二分に楽しい。
登場人物は相変わらず一癖も二癖もある個性派揃い。あまり出番はなくてもそのキャラのディテールとかは細かく設定されてるんだろうなあ、
というのが窺える。
でもなあ、「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」は高校生たちなんで多少の暴挙は多めに見られたけれど、給料もらってる社会人が
綾瀬はるかや平岩紙が演じるキャラのように実に不真面目に仕事をして周囲に迷惑をかけているのには正直イラッとせざるを得ない。
日頃迷惑を被っている側の人間としてはどうしてもなあ。
あと動物愛護団体にイライライラッ。
主人公格の登場人物はコ・パイの鈴木@田辺誠一と新人CAの悦子@綾瀬はるか。
前者は二枚目だけど詰めが甘く頼りにならない”いいひと”という田辺誠一らしい役で微笑ましい。
後者は楽天家なれどヘマ連発で流石に落ち込むが…という役で、こちらもぼちぼち似合った役どころ。
脇を固めるキャラではCAのお局様の寺島しのぶと職場のIT化についていけずすっかり昼行灯となるも有事には往年の有能さを取り戻す岸部
一徳あたりが儲け役。田畑智子も相変わらずブスかわいい。
「L change the world」で異彩を放っていた佐藤めぐみが出演していて、なかなかかわええなあと思っていたのだが、パンフ見たら
佐藤めぐみだと思っていたのは別人だった。確かにスタッフロールを見ると佐藤めぐみも出てたんだけど、どこに出てたかわからん…。orz
ちなみにかわええと思ったのは肘井美佳という方だった。要チェックや!
○「バトルシップ」 ★★★ (12.4.25/劇場)
STORY:ハワイから地球型惑星に向け交信の電波を送信して数年後、突如飛来した宇宙船がハワイ沖に着水。強力な電磁バリアでハワイは外界
から途絶されてしまう。軍事演習を行っていた米軍と自衛隊の艦艇で3隻の駆逐艦だけがバリア内に取り残されたが、宇宙船の圧倒的な攻撃力の
前に2隻が撃沈されてしまう。宇宙人は通信施設を占拠して母星から援軍を呼ぼうと画策。電波送信まで僅かな時間しか残されていなかった…。
ユニバーサル映画100周年記念作品で、「海戦ゲーム」によく似た同名のペンシルパズルがモチーフ。「海戦ゲーム」ならいろいろアレンジした
のを中学の時によく遊んだ。
トランスフォーマーなどの玩具メーカー、ハズブロが一枚噛んでいるだけあって、敵宇宙船のメカニックはまずまずかっこいい。
つーわけで戦闘シーンはまあ満足。敵の攻撃力は圧倒的なれど、防御力はさほどでもなく、地球側の兵器でも当たれば倒せるレベル。恒星
間航行できるほどの文明が作った宇宙船なのにね。
ただし電脳戦を封じられたり艦長以下士官が全滅して指揮系統が壊滅したりで当てるのが難しく、ラス前までは防戦一方。それ故に大逆転の
カタルシスはある。
宇宙人、環太平洋合同演習で各国の艦隊がうようよいるというたいへん間の悪い時に侵略に来てしまったと思いきや、やたら便利なバリアを
張ってくれて、艦隊はまるで参加できず指をくわえて見てるだけというトホホな展開。せめて砲撃を集中してバリアを破ろうと試みる描写とか挿入
しようよ。
かくして人類の希望はバリアの中に閉じ込められた米日の3隻の駆逐艦に託されるのであった。
ちょっと待て、くちくかん?英語で言うとdestroyerで全然バトルシップじゃないじゃんよ。
というツッコミへの返答はラス前まで焦らしに焦らしてくれる。
それ故に、そこに颯爽と姿を見せるバトルシップの勇姿には思わず身震いをし、彼女を操るべくどこからともなく現れる兵(つわもの)たちの
格好良さには感涙を禁じ得ない。それにしてもどこからともなくわらわらと現れすぎだが。
一方で、電波送信所では電波発信を少しでも遅らせるべく傷痍軍人の黒い人が健康な軍人たちが束になっても敵わなかった敵装甲服を
何故か痛快に殴り飛ばしてたりして、終わってみれば米軍サイコー!アメリカ万歳!こまけぇこたぁいいんだよ!ないつものハリウッド大作
だった。
しかし敵さんも太陽光に弱いのに何故そんな星を侵略しようとするのか。
つーわけで概ね楽しい映画ではあったが、どうにも主人公がいかすけない。
いろいろスペックは高いのだが精神的に残念でまっとうな軍人の兄に尻ぬぐいばかりさせて、一応激戦の中で成長はするものの、最大の恩人
である兄は戦死しているという報われなさ(兄が)。
そもそも中途入隊で問題児のくせに何故どうして尉官にまで昇進してやがんのか。気に喰わん。
浅野忠信は「マイティ・ソー」の時とは違い、副主人公クラスで大活躍。なのだが、他の日本人俳優と差し替えてもなんら困らないイメージ。
そもそもまともに演技している姿が違和感ありあり。
あとオチがまったくもって不要。
○「バトル・ロワイアル」 ★★ (00.12/劇場)
STORY:新世紀、東洋の某国が壊れた。ディスコミュニケーションに陥り子供たちに怯え出した大人たちは、権威を見せつけるために、無作為
に選ばれた中学3年の1クラスの子供たちに殺し合いをさせるという”BR法”を制定する。七原秋也たち城岩中3年B組がその年の該当クラス
だった。かつての担任・キタノに親友を殺され、友人たちが血を流し合う地獄絵図の中、秋也は信じる心を失わず、生き残る道を探すが…。
オイラは「バトロワ」の原作小説が恥ずかしながら大好きだ。反吐が出そうな設定でありながら実際読んでみると読後爽やかな青春小説足り
得ているところが好きだ。子供たちが殺し合うという不謹慎なテーマを不謹慎なブラックユーモアたっぷりに描いている寓話性が好きだ。
なので、そのブラックユーモアを削ぎ落として、変に時勢に合わせた設定にしてしまったこの映画版は、見る前からどうしようもないものに
しかならないことはわかっていた。見てみたら、案の定だった。よって、さほど失望もない。
まず2時間ぽっちであのブ厚い原作を映像化しようというのが間違っている。きょうび3時間の長尺だって珍しくないのだから、せめてあと
30分くらい追加してもっとキャラの掘り下げをやれば、原作を知らない人にもわかりやすく、原作ファンにも納得しやすくなったであろうに。
秋也の危機を杉村が救い、三村の捨て身の一撃で桐山が傷を負うという辺りは少年マンガっぽい熱血展開でよい。が、わざわざ近づいて
撃たれて死にかけたり、キタノとの闘いで存在感が薄い川田はかわいそう。
学芸会と揶揄されるのもやむなしなジャリどもの演技の中で、原作とは正反対のダウナーな主人公をセンシティブに演じた藤原竜也(誉め
すぎ)、アイドルとして明らかに一皮むけた可憐な前田亜季、キラークイーン柴咲コウ、ナイスおっさん山本太郎らは奮闘。
しかし字幕やらクラシックの使用やらみやむーやら、どうしてこうも今更エヴァンゲっているのか?
○「バトル・ロワイアル 特別篇」 ★★★ (01.4/劇場)
「バトル・ロワイアル」が阿呆な民主党の先生(故人)らの援護射撃などもあり大ヒットしたため、急遽追加カットを数カ所入れて、R指定のため
見れなかった当時の中学3年生たちの卒業に合わせて公開されたもの。
が、その追加シーンが実にいい。
相馬”セーラーデスサイズ”光子の過去のシーンが追加され(しかも諏訪太郎出演)、彼女の心理がだいぶわかるようになった。
そして、修学旅行前のクラス対抗のバスケ大会のシーンが素晴らしい。”ワイルド・ゼブン”・”ザ・サード・マン”に加え杉村や飯島の活躍、
そして何より一丸となって応援する女子らの姿から、このクラスが仲がよい、普通の中学3年生だったという様子が見え、それなのに殺し
合わなければならないという理不尽さ・怒り・悲しみがより伝わってくるようになった。さらに同シーンでの光子の描写がまた上手い。畜生、
BGMに「Air」とかまた使いやがって、泣けるじゃねえか。
というわけで★1つプラスに相当する5分程度の付け足し。
もしこれから「バトロワ」を見ようという人がいるのなら、悲しいかな市場に出回っている数は少ないが、こちらの特別篇を断固オススメする。こっち
選ばないと先生ナイフ投げちゃうからな。
○「バトル・ロワイアルU」 ★★★ (03.7.5/劇場)
STORY:七原秋也と中川典子が”バトル・ロワイアル”に生き残ってから3年、七原は、国際テロリストグループ・”ワイルド・セブン”のリーダーと
して大人たちに宣戦布告する。対して大人たちは”BR法”を改正し、七原を殺した者を勝者とする”BRU法”を施行する。その第1号に選ばれ
たのは、全国から不良や不登校児などを集めた鹿乃砦中3年B組42名だった。七原らの立て籠もる軍艦島へ向かわされた彼らの運命は…。
「世界は平等なんてウソです。人の命は平等なんかじゃありません!
今日はみなさんにちょっと戦争をしてもらいます!」
「マトリックス」ばりの黒々しい衣装に身を固めた教師RIKIがハイテンションな演技で高らかに告げる新生バトル・ロワイアル。
結論から言うと、前作は、原作があれだけよかっただけに期待してみたらあんな出来でガッカリしたわけだが、その”あんな出来”の作品の続編
ということで、元々たいして期待してなかったんでなかなか面白かったッス。
今作の前作との相違点は、まずは、原作が存在しないこと。
前作はあのブ厚い原作を2時間にまとめあげようという無謀な試みの結果、原作ファンには描写が足りないと不評で、原作未読者には人が
多すぎて全然わからんと不評と相成ったわけだが、今回は(一応公式ガイドブックやノベライズがあるが)条件は皆ほとんど一緒で、いきなり覚え
きれるはずのない見ず知らずの42人のサバイバルゲームを途方に暮れながらただただ追うばかり。
しかしそれでは面白くないだろうということで、主要キャラをその中の10人程度に絞って、あとは豪快に殺す!殺す!殺す!なにせ今回は
戦争だ!モーターボートが吹き飛ばされて一気に14人死亡!地雷原で一気に6人死亡!あまりの手際の良さに、RIKI先生に劇中で、
「先生残念です。みなさん死にざまに個性がありません!」とお叱りをいただいてしまうほど。
つーわけで新生徒の覚えるべき情報量は少ないわけだが、でも死なないと名前と出席番号が字幕で出てくれないのでやっぱり覚えられん。
同様に”ワイルド・セブン”の面々も誰が誰なんだか…。こっちは字幕も出ないし。2回見るように作られているなあ。
相違点その2、今回は級友同士殺し合わない。でもそれって最早「バトル・ロワイアル」とは呼べないよなあ。
敵は”ワイルド・セブン”で、向こうもまさかこっちが強制的に戦わされている中学生だとは想像もしてないので銃撃砲撃ブービートラップと容赦
なくデストロイにかかってくるので、必然的にクラスで団結して戦うことになり友情パワー炸裂。
さらに同じ出席番号同士の男女のタッグバトルとなっており、片方が死ぬか50m離れるともう片方の首輪が吹き飛ぶというシステムで、
相方が愚図だったり凡愚だったりビビッて大小便もらしちまうようなヤツだったりすると生存率が著しく落ちるために愛情パワーも炸裂。
(従って今回首輪の出番が多い上に爆薬がかなり多めなので血飛び散りまくり誘爆して大爆発しまくり!)
まあ、各種媒体を見るとキャストの一番上にいるのはシュウヤだし、最後まで互いに殺し合うという奈落な展開にはならないだろうというのは容易
に予想できるわけで、その通り中盤に両者すなわち子供たちがお互い仲間の命を奪い合ったというしこりを持ちつつ共闘して大人たちと
ドンパチを始め、そうなるとラスボスは今回の教師・RIKIなのか一体どうやって収集つけるのかとそういうところに目がいくのだが、
突如としてRIKIが暴走を始め物語はあらぬ方向へ!!!
結末とか物語のテーマはともかく、
RIKIのクライマックスでの勇姿は見とけ!!!!!
つーか三池監督じゃないんだからよお、深作息子よ…。あ、今回はあんまりエヴァっぽくないです。ケツがかゆくなるくらいの青臭さは健在
なれど。
主演は藤原竜也。変な服が硝煙にまみれようが返り血を浴びようが基本的に顔はいつも綺麗で、なんつーか…ヒロインみたいだ。
冗談で予想していたら本当に出てきたキタノ娘に前田愛。前作の川田級の活躍を期待していたが…。
生徒側の主役はわかりやすく男子1番。演じる忍成修吾はまず好演と言えるかと。その母親役でちょっと出演は「シベ超3」の三田佳子。
他にも1シーンの出演のみながら、ビートたけしと千葉真一が鮮烈なインパクトを。
でもまあ、結局全員竹内力の怪演に喰われちまったが。竹内力だけで★1つ分。
返す返すも登場人物が多すぎたり(なにせゲームの生き残りの名前さえ覚えきれねえ)主張に説得力がなくドラマが迷走したり序盤の
カメラのブレ方はあんまりだったりみやむーが出なかったりと不満も多いが、深作欣二の怒りと少年少女たちへの願いなんかは伝わって
くる。
改めて深作欣二監督に哀悼の意を。
「花とアリス」 ★★★★ (04.4.1/劇場)
STORY:ハナとアリスは大の親友。ハナの憧れの宮本の通う高校に進学した二人。ある日、彼が頭を強打して倒れ、居合わせたハナはとっさ
に彼が記憶喪失になったと信じ込ませ、自分をカノジョだと嘘をつく。ありもしない記憶を取り戻そうと苦闘する宮本と、デートを重ね幸せ一杯の
ハナ。やがて嘘がバレそうになったハナはアリスを巻き込み更なる大嘘をでっちあげが、それをきっかけにアリスと宮本が急接近してしまい…。
鈴木杏と徳井優じゃなかった蒼井優という美少女二人と彼女たちに象徴されるセーシュンジダイを愛でるための作品。
予告編を見ると無邪気で残酷なアリス(蒼井)に振り回される根暗で薄幸なハナ(鈴木)という構図に見えるが本編見たら全然違うんで驚いた。
作品としては冗長でとりとめなかったり美少女二人が取り合う男子高校生がまるで魅力なかったりカメオ出演が多くて鼻についたり情緒溢れる
大音量のBGM(監督が作曲)が押しつけがましかったり問題はあるが、リリカルですっとぼけた雰囲気がすごくいいので許しましょう。
アリスのもう1枚のハートのエースのエピソードが好き。
日頃血がドバドバ出て人がバタバタ死ぬ映画ばかり見ているのでたまにはこーいうのも。
ルー大柴なんて久しぶりに見たなあ。
○「花よりもなほ」 ★★★ (06.6.14/劇場)
STORY:元禄の世。父の仇討ちのため江戸にきた青木宗左衛門は、すっかり貧乏長屋の生活に馴染んでしまっていた。憎き仇の金沢十兵衛
は見つけたが、武芸が苦手な宗左衛門では返り討ちがオチ、しかも金沢は刀を捨て妻子と静かな生活を送っていた。美しい未亡人・おさえと
その子・進之助や個性豊かな長屋の面々との楽しい暮らしの中、宗左衛門は悩む。一方、長屋には決起を待つ赤穂浪士たちも潜んでいて…。
「誰もしらない」の是枝裕和監督が岡田准一を主演に送るハートフルコメディー時代劇。
が、ケレン味なく淡々とリアリティを追求する監督の芸風とコメディー時代劇というジャンルがどうにも噛み合わず。確かにつまらなくはない
のだけれどもどうにも盛り上がりを欠いたまま話は黙々と終わりまで進んでしまって物足りず。忠臣蔵と話がうまく絡まっているし、演出
次第でもっともっと面白くできたのに、と不満。
でもまあ、命を懸けて仇討ちなんて、そんな憎しみの連鎖を続けちゃあいかんよ、というあったかいメッセージは伝わって、和めるのは
太鼓判。
主演は岡田准一でなければいけない、という存在感がなく弱いのだが、相変わらず素晴らしい宮沢りえや個性的な脇役陣が強烈に輝く。
香川照之・古田新太・中村嘉葎夫・寺島進・國村隼・石橋蓮司(よい!)・田畑智子(相変わらずブスかわいい)といった名バイプレイヤー
のみならず、木村祐一や上島竜兵といった異色キャストも非常に馴染んでいてよい。子役もなかなか頑張っている。
つーわけで出演陣は出色なだけに演出の弱さが返す返すも惜しい。
○「ババアゾーン(他)」 ★★★ (04.4.6/劇場)
あまりに壮絶な絵柄とあまりに壮絶な展開のため、映画化不可能っつーか誰も映画化なんて考えもしなかった漫・F・画太郎のマンガ「地獄
甲子園」をあろうことか映画化してしまい、かつ一部の層から熱狂的に迎え入れられてしまった山口雄大監督が再び画太郎作品に挑んで
みたりするオムニバス短編集。
1,「ババアゾーン」 ★★
STORY:エロ本買蔵は小心者でエロ本を買えず悶々としていた。彼は偶然出会った謎の汚いババアから肝っ玉を大きくする薬をもらうが…。
のっけからあまりのチープさに苦笑してしまうこと請け合いで、ここでそれに馴染めないとずっとつらい思いをすることに。エロ本が全て
画太郎画伯の筆によるものなのがニヤリとしつつ萎える。
この原作って元々「アウターゾーン」のパクリだったのだろうが、今となってはわからんなあ。
2,「たのしい遠足」 ★★
STORY:遠足のバスが山中で遭難し、仲良し三人組・チャバネとパトラとつる子は生き残った担任と委員長と共に森の中をさまようが…。
ゲロ!ゲロ!ゲロ!血しぶき!と画太郎ワールド満喫。主人公トリオを演じるのは森三中ですげえ似合っている。
担任役は山口作品常連の増本庄一郎で胡散臭くて実に素晴らしい。つーか髪型がウチの会社の同僚にそっくりで一人で受けてしまった。
やべえ、今度会う時どんな顔しよう。
あと、爆裂チープな中で、やたらゾンビの動きだけがリアルなところに監督の魂を見た!
3,「ババアゾーン2」 ★★
STORY:エロ借リル蔵はエロ過ぎてエロ破産しそうで弱っていた。彼は偶然出会った謎の汚いババアから性欲がなくなる薬をもらうが…。
汚いババア再び。慢性発情期のエロ主人公を演じる津田寛治は、俳優生命を絶ちかねない熱演ぶりでファンには見せられまへん。
4,「ハデー・ヘンドリックス物語」 ★★★
STORY:人気ギタリストのハデヘンにはノッてくるとギターを破壊するという癖があった。赤字続きで食うに困った彼らは空き巣に入るが…。
ちょっと高橋名人似の、冴えないおっさんロッカー・ハデヘンが哀愁漂っていてよろしい。そしてX−GUN西尾が相変わらず癒し系な存在
感を。
5,「3年B組珍八先生」 ★★★★
STORY:放課後、3年B組の生徒たち数名が教室でエロ本鑑賞会を開いていた。しかし熱血教師・珍八に見つかってしまい…。
”教室で「たまんねー!」とエロ本を貪り読む生徒たち→珍八登場→攻防の末エロ本見つかる→珍八・愛と哀しみの鉄拳→職員室で
「たまんねー!」とエロ本を貪り読む教師たち”というシチュエーションで、顔だけ喜怒哀楽を変えてやってしまうというコピー使いまくりな
原作を忠実に実写化。
珍八を演じる遠藤憲一の名演技に尽きる!!こればっかりは館内も大爆笑であった。たまんねー!
山口雄大監督はインディーズ時代から短編を撮ってきた人であり(故に初長編「地獄甲子園」では中ダレが見られた)、一方画太郎作品も
勢いだけで押し倒す傾向があるので短編向きだったりする。よって、二者のこの形での出会いは幸福だったと言えよう。
この作品で画期的なのは、画太郎作品独特の手法を映像化することに成功したことである。画太郎作品の特徴、それすなわち、
コピー使いまくり。
あの、16ページの作品ならば10ページはコピーして使い回ししているんじゃないかという独自の技法を見事に取り入れているのである。
(ex.主人公高笑い「わはははははは!」→警官泣きながら銃を構える「動くな!動くと撃つぞ!」→主人公高笑い「わはははははは!」→警官
泣きながら銃を構える「動くな!動くと撃つぞ!」→主人公高笑い「わははははry)
つーわけで同じカットを5回くらい繰り返すことで原作のコピー使い回しを表現したこの手法、原作読んでない人にはさっぱり意味不明な上
に見ていてものすげえムカツクわけで。勿論、原作を読んで、何をやりたいか理解している人でも見ていてものすげえムカツきます!(笑)
○「ハプニング」 ★★★ (08.7.29/劇場)
STORY:ニューヨークで次々と人々が思い思いの方法で自殺を始めた。政府は細菌テロを警告、市民たちは避難を余儀なくされる。高校教師
エリオットも妻のアルマ、親友のジュリアンとその娘ジェスと共に避難するが、些細な疑念から溝が生じた夫婦仲は悪化するばかりだった。連絡が
途絶えた妻を探しに行くジュリアンと別れたエリオットたち3人に迫る死の現象。逃避行の中、エリオットは一つの仮説にたどり着くが…。
新作を発表する度に落ちぶれていく”Mr.どんでん返し”シャマラン監督最新作。つーか前作「レディ・イン・ザ・ウォーター」に至っては
とうとうどんでん返し自体を放棄してしまい、一体どこに行ってしまうのかとニヤニヤと生温かく見守ることに。
今作は初のR−15指定で、人がボッコボコ死にまくるナイススリラーに。そういや「シックスセンス」もドッキリ描写多かったよな。
謎の”風”によって次々と手近な方法で自殺していく人々。髪飾りで喉を突き、ビル工事現場から集団で飛び降り、車で巨木に突進し、
芝刈り機の前に横たわり、とカメラが捕らえた決定的瞬間のオンパレードで実に悪趣味。ガキンチョ兄弟の末路とかもなあ。
結局、”敵”の正体は、主人公が仮説を立てるものの、明快な答えは与えられないまま終わってしまうのだが、それもアリと思えるまずまずの
終わり方。…今回もどんでん返らないのね。それでもシャマラン風味は十分味わえた。
まあ、結局一番怖かったのは狂った婆さんだったということで。
恒例の監督自らのカメオ出演がない(声だけ出てたらしい)ので★1つマイナス。(笑)
○「パプリカ」 ★★★★ (06.12.30/劇場)
STORY:他人の見ている夢を共有できる画期的発明・DCミニ。他者の精神を破壊しかねない副作用をもった副作用を持ったその試作機が
盗まれた。制作者の時田と共に事件を追うクールなセラピスト・千葉敦子は、DCミニで患者の夢を治療する夢探偵・パプリカでもあった。彼女
たちは悪戦苦闘しながらついに事件の黒幕を突き止めるが、すでに悪夢の汚染は広まっており、ついに夢は現実をも浸食し始める…。
2006年は映画化3本、TVドラマ化1本と密かに筒井康隆イヤーだったのだが、その最後を飾る絢爛たるアニメ映画。
監督は「PERFECT BLUE」、「千年女優」などの代表作を持つ、現実と虚構の狭間を描くことに長けた今敏監督。
前作「東京ゴッドファーザーズ」も傑作だったし、そりゃあもう期待は膨らむばかりだったわけだが。
で、面白かったわけで。
面白かったのだけれど………なんだろうこの物足りなさは。劇中の言葉じゃないが、ひと味足りないというか…。
面白いであろうことは半ば確定的だったのだが、その面白さが予想の範疇を超えられなかったというか…。
悪夢の描写も夢ならではの大立ち回りのアクションシーンも、良かったし水準以上だったが、期待以上ではなかったのだな。
なまじ名匠だけに、既存の某かのアニメを突き抜ける斬新さまで求めてしまったのが我が敗因か。
最初のDCミニの説明で話に入り込みきれなかったり、キャラデザがしっくり来なかったり、どうにもぎくしゃく。…私的な不満ばかりだな。
面白かったのに不満ばっかりという妙な感想になってしまったけれどもこれが今の私の気持ちです惣一郎さん。
平沢進の格好いい音楽など褒める所も多々あるけれど、一番声を大にして褒めたいのは、
やはりアニメは声優のものである!!!
という点。
林原めぐみも大塚明夫も山寺宏一も素晴らしい。その中で江守徹が孤軍奮闘するが、この人は「東京GF」でも素晴らしかったからねえ。
演出とかではなく話題づくりで俳優に声を当てさせるプロデューサーどもの耳クソの詰まった耳の穴に大音量で聞かせてやりたい。
声ネタといえば、パプリカ以外で唯二人、悪夢の浸食に立ち向かったバーテンダーたち。彼らだけが何故あの世界の秩序のために戦えた
のかと少し疑問に思いながら観賞していたのだが、キャストロールを見て納得!
ところで大塚明夫と山寺宏一がメインキャストで人形がいっぱい出てくる夢と現実の物語、つーたらアレだよなあ。
○「はやぶさ HAYABUSA」 ★★★ (11.10.6/劇場)
STORY:水沢恵、27歳。死んだ兄の夢を受け継いで天文学を学んでいるが、博士号を取れずアルバイトの日々だったが、小惑星探査機・
はやぶさの説明会に参加したことが縁でそのプロジェクトに参加することになる。数々の困難に打ち勝ちながら完成、打ち上げ、小惑星到達と
ミッションをクリアしていくはやぶさとスタッフの熱意に触れ、彼女は半端な気持ちで天文学と向き合っていいのかどうか悩むが…。
2011年秋から2012年春にかけて上映される「はやぶさ」映画三兄弟の長男。
配給は20世紀フォックス、監督は日本二大やっつけ監督の片割れ・堤幸彦、主演は竹内結子。
つーわけでてきとーな仕事ぶりで名を馳せる堤監督なので正直期待はしていなかったのだが、まあ悪ノリを封印してかなり頑張った方
では。
つーかはやぶさとそれに関わった人々の物語なので、事実をふつーに描くだけで十二分に面白いわけで。
監督の功績というよりははやぶさとそのスタッフの功績だの。
出演陣も佐野史郎を筆頭に、実在の人物を踏まえてまずまずの演技を見せている。鶴見辰吾の「こんなこともあろうかと」もビシッと決まった。
それだけにかなり架空の主人公が悩むなんて本筋ははっきり言って邪魔。せっかくの眼鏡っ娘なのに竹内結子なのでそんなにかわいく
ないし。
それと比べると、チョイ役の市川美日子の眼鏡っ娘ときたら。相変わらずブスかわいいなあ。
○「はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH」 ★★★ (11.5.17/劇場)
STORY:はやぶさは2003年5月9日に打ち上げられた日本の小惑星探査機である。彼に課せられたミッションは、小惑星イトカワに着陸し、
その岩石を採取して地球に持ち帰ること。長い年月と幾多の困難を乗り越え、見事世界初の偉業を成し遂げ、オーストラリアの空に消えた
はやぶさの旅路を辿る…。
惑星探査機はやぶさについては日本男児ならば当然周知のことと思うが、知らないという人がいるならばwikiででも学ぶがよろしい。
そんな夢と浪漫を体現したはやぶさの軌跡が映画になったというんだから、そりゃあdkwkしながら劇場に足を運ばざるを得ない。
全編フルCGで描かれた1時間にも満たないドキュメンタリー。はやぶさの最期まで知っている身としては、最初からウルウル気味で
見守ってしまった。
素材が一級品なのでどう調理しても美味い料理ができるはずなのだが………あれ、これ半生じゃね?という出来でちょっとガッカリ。
シンプルにはやぶさと宇宙の映像だけで進行するのがもったいない。
はやぶさが任務遂行して帰還する影では次々と起こるアクシデントに知恵と機転で立ち向かう日本の技術者たちの姿があったのだが、
そこいらが完全にオミットされていてもったいない。
「奇跡が起きた」んじゃなくて、科学と夢と情熱と日本の頭脳が「奇跡を起こした」んだよコンチクショー!
とまあ、かようにナレーションがいたらない。視点がなんつーか、しっくりこない。声のトーンは悪くないのだが(ウルトラマンタロウの人←と
書くとジャッキー・チェンの声みたいだが、そうではなく東光太郎ね)。
そしてラストが急ぎすぎ。
本当はカプセルを投下した後太陽系をぶらりと散歩に行く予定だったのだが、満身創痍でここで旅を終えることになったんだよ、とか、
最後にJAXAの優しさで、振り返って地球の写真を撮ることになって、そこで初めて正面向いて地球を見れたんだよ、とか、写真を
撮ることだってすでにいっぱいいっぱいで、ほとんど撮影失敗したのに、最後の最後の1枚だけ地球が綺麗に写ったんだよ、とか、
泣けるエピソード満載だというのに。
まあオイラは観ていてコレを思い出してしまってセルフ涙目だったわけだが。
とまあ、いっぱい”もったいない”を書いてしまったのだが、この映画は元々プラネタリウム用に作成されたものを映画館用に仕立て直した
ものだったのだな。道理で短いし物足りないわけだ。
それでも、この映像を映画館で見せてくれたことについては感謝の念を抱かずにはいられない。
そして全世界待望の、はやぶさとJAXAの仕事人たちの物語も映画化が続々決定しているわけだが、監督が堤幸彦に本木克英…って、
ふざけるな!!!!!
○「はやぶさ 遙かなる帰還」 ★★★ (12.2.22/劇場)
STORY:2003年5月9日、イオンエンジン搭載の小惑星探査機はやぶさは内之浦宇宙空間観測所から宇宙へと打ち上げられ、小惑星イトカワ
への長い旅の一歩を踏み出した。はやぶさの目的は、小惑星イトカワに着陸し、宇宙創世の謎を秘めたイトカワの地表のサンプルを採取し、再び
地球へと戻ってくることである。この人類史上初の壮大な試みの裏では、人知れず数々の困難と戦い、挑み続けた男たちの熱き姿があった…。
「はやぶさ」三兄弟の次男。昨年公開された長男が派手に爆死した後なので気まずい劇場デビュー。
とはいえ、東映60周年記念作品とか冠が付いているだけに三兄弟の中では一番力が入っている。
まあ、素材が素材なので、淡々と事実を描写していくだけで十二分に感動できるはずなのに、何故にこうも余計な要素を入れてしまうのか
…。
長男の「はやぶさ HAYABUSA」は、架空の女主人公なんて誰も望んでいない要素を投入したために各方面から失笑を買い大失敗
した。
ぶっちゃけ、男たちの夢とロマンの物語なので、女性視点なんて邪魔なのである。とはいえメインに女性がゼロというのは興行的には苦しい
のはわかるのだが、無理にねじ込んで失敗しては元も子もないと思うわけで。
しかして今作でも、シングルマザーの記者で町工場を経営する年老いた父親が実ははやぶさの観測ポッドの試作品を作っていたなんつー
オリジナルの女性キャラが登場し、女性視点で作品を盛り下げてくれる。しかも夏川結衣というなんとも微妙なキャスティング。
まあそんなに出張らなかったから許そうかと思ったら、クライマックスのはやぶさが燃え尽きる感動のシーンでアップの泣き顔が挿入されると
いう台無し演出で噴飯。美しく尾を引いて、澄み切った星空をバックに、母なる地球の大気に還っていくという名シーンだというのに。
それ以外はエキセントリックでもスラプスティックでもドメスティックでもファンタスティックでもなく淡々としていて好印象だが、主人公の渡辺謙の
キャラがやや弱いか。序盤でもっと嫌みったらしくしていれば終盤の対立と和解がもっと盛り上がったと思うのだが。
見せ場の一つである「こんなこともあろうかと」のシーンは、現実にはそんな格好良くいかねーんだよ、とばかりに重いシーンに。
いやでも、「こんなこともあろうかと」と言うためにあんな装置を搭載していたわけであって。運用に反対する吉岡秀隆がいつもの吉岡秀隆の
演技なのでうざさ120%。こいつも大泉洋と同じでどんな役をやっても吉岡秀隆にしかならんのね。悪い意味で。
まあどちらかというと不満点の方が多いが、長男よりは出来がよかった。
○「ハリー・ポッターと賢者の石」 ★★★★ (01.12/劇場)
STORY:幼い頃に両親を亡くし、親戚の家で虐げられて育ったハリーの11歳の誕生日、ホグワーツ魔法学校から用務員のハグリッドが彼を
迎えにやってきた。実は、ハリーは魔法使いだったのだ。かつて悪の大魔法使い・ヴォルデモートを打ち破ったという経歴があるハリーは、魔法
界では超有名人、親友のロンやハーマイオニーらと楽しい学園生活を送っていたが、再び魔の手が忍び寄りつつあった…。
映画を見た段階では原作未読だったのだが、2時間半の長丁場も全編イベント満載で、飽きずに最後までスイスイ見られた。
そりゃあ確かに魔法界のサラブレットのハリーがちやほやされまくっていて、それをいいことに校則を破りまくっても結局大目に見てもらえるのが
ちょっとよくねえよなあとか思うが、作品中いたるところに少年時代のドキドキワクワクが溢れているのでやんちゃもオーケイということで。
とにかくハーマイオニー(努力)・ロン(友情)・ハリー(勝利)の仲良し三人組がかわいい。
特にハーマイオニー!すげえかわいい。くらくら〜。
これでハリーがもう少しかわええ男のコだったら…(笑)
ところで、”賢者の石”ゆうたら真っ先に連想するのは、「ゴッドサイダー」の法粛ですよネ?ネ?ネ?…ネ?(弱々しく)
○「ハリー・ポッターと秘密の部屋」 ★★★★ (02.11/劇場)
STORY:ホグワーツ魔法学校の2年生になったハリー。しかし怪しげな”しもべ妖精”ドビーの妨害に遭うなど、波乱含みの新学期となった。さら
に、生徒が石にされ、壁に不吉な文字が残される事件が連続。謎を追っていたハーマイオニーまでもが犠牲になり、容疑者としてハグリッドが
捕われ、さらにダンブルドアまで解任されてしまう。ハーマイオニーが残したヒントからハリーはついに秘密の部屋の入り口を探し当てるが…。
全世界をペテン魔法にかけた大ベストセラーファンタジーの映画化第2弾。
結論から言ってしまうと、原作を読んでいて前作映画が嫌いじゃなければ十二分に楽しめるはず。
逆に、原作未読で、映画だけしか見てない人には話が詰め込まれすぎているのでツライはず。2時間41分の大作なれど、それでも原作の大
ボリュームを消化しきれてないので、新キャラのジーニーやコリン、そしてロックハート大先生がまるでキャラ立ちできていないのが厳しい。犯人
探しも何もあったものではない。
しかし、主役3人組は相変わらずいい仕事をしている。主人公らしくなってきたハリー、コメディリリーフのロン、そしてそして、
ハーマイオニーたん萌え〜!
前作よりもちょっと(結構?)大人びた顔立ちに成長したハーマイオニーたん、静止呪文を使った時の凛々しさときたらもう!!!
今作が遺作となったダンブルドア役のリチャード・ハリスの死にそうな演技もある意味必見かも?ドビーはポスターなどで見るとなんとも腹
立つ面構えなのだが、実際に動くとなかなかに愛嬌があっていい感じ。
見所は前作よりも数が増えた魔法合戦とモンスター軍団。特に後者はなかなかキバッていて、中盤のクモの巣脱出作戦においては怒涛の
如きスパイダーなパニック!ラストのハリーと巨大ヘビとのタイマンも今時見ないような懐かしい感じのする戦いで、楽しめた。
さて、さらに原作の分量が増えていく次作以降、どうやって映画化していくのやら。3時間でも明らかに足りないぜ。前後編?
○「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 ★★★ (04.7.27/劇場)
STORY:ホグワーツ魔法学校3年生になったハリーの元に、彼の両親の親友でありながら、彼らをヴォルデモートに売った裏切り者シリウス・
ブラックがハリーの命を狙いアズカバン刑務所を脱獄したという報が入る。さらにシリウスを捕らえるためにアズカバンから吸魂鬼ディメンターの
一団が派遣されるが、彼らは何故かハリーの魂をも狙う。彼らに打ち勝つため、ハリーは新任のルーピン先生と新しい魔法の特訓をするが…。
1年半ぶりのシリーズ第3弾。今作は監督が、ホームシックで降板したクリス・コロンバスからアルフォンソ・キュアロンに交代。
そんなわけで登場人物の服装やら学校の地形やら何かとマイナーチェンジがあり、良くもあり悪くもあり。
今回はハリー君も思春期突入ということで、冒頭、真夜中に同居人たちの目を盗んで布団をかぶって一人自家発電にいそしむ姿には
大人になったなあ、と時の流れに目を潤ませること必至(でもない)。さらに両親を侮辱されて「マグルの分際で魔法使いに楯突く気か!」と
禁止されているはずの魔法を平然と行使したり家出したりと、青春まっただ中ですね。
ハーマイオニーもキチガイ教師とケンカして教室を飛び出したりアホのマルフォイの喉笛に杖を突きつけて震え上がらせた挙げ句顔面に
必殺の右ストレートをぶち込んで締める!泣かす!言わす!と、青春まっただ中ですね。
とまあ、今までとは違った芸風ながら相も変わらずドキドキワクワクの魔法生活で、長い原作を上手くまとめて2時間半を飽きさせずに
きっちり見せてくれる良作なのだが、まとまりすぎていてこれといって印象に残るところがないなあ。原作も読んでいるのでクライマックスの
どんでん返しにも驚かんし。
悪い点としては、やはりシリウスやルーピンたちの過去へのフォローがスッパリ削られていること。彼らのありし日の友情が語られることに
よって物語の深みはかなり増すであろうに。シリウスとハリーのラブラブぶりもこれでは不自然で、世のシリハリ同人腐女子はたぶん泣いて
ますよ。
あと、ディメンターは迫力不足。格好いいんだけれど、もっとおぞましくないと。
そんなこんなで面白かったけれど★3つ止まり。
なんだかんだいってハーマイオニーたんが成長しすぎてショックなのが最大の理由なんじゃねえのかこのペド野郎!
○「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」 ★★★★ (05.12.8/劇場)
STORY:4年生になったハリーは闇の帝王・ヴォルデモート復活の悪夢に悩まされていた。ホグワーツでは100年ぶりに魔法学校3校対抗戦が
開かれることになり、それぞれの学校から17歳以上の代表が一人ずつ選出されたが、何故かハリーも代表に選出されてしまう。そのことで親友
のロンとギクシャクしてしまったり、同級生のチョウのことが気になったり、慌ただしく過ごすハリーに試練の時と陥穽が迫りつつあった…。
監督代わってもキャストは代わらない「ハリポタ」第4作。つーか一年一作というわけには進んでないのでキャスト陣が成長しまくって違和感
が。
メインは魔法学校対抗戦で、ドラゴンとの大空中戦や水底深く横たわる神殿を守る守護者の群れとの戦いや朝帰りOKの嬉し恥ずかし
ダンスパーティなど長尺を忘れさせるイベントつるべ打ち。
そして最後に待ち受ける宿敵の復活と死闘と内容てんこ盛り。
が、内容盛りだくさん故に原作を端折りまくっているので、原作未読の人には話のつながりがピンと来ず、濃ゆいバタリアンポッタリアン
の皆様からはバッサリ豪快な端折りっぷりに非難囂々のようなのだが、オイラみたいに、原作は読んでるもののもう細かい所はすっかり
忘れちまったなあ、なんて半端なファンには丁度いい出来。
それでもシリウスの扱いはあんまりだと思うけど。ラストの対決があっさりし過ぎていると思うけど。なんでZガンダムよろしく死霊が集まってきた
んだかわからんと思うけど。
ハーマイオニーはすっかり成長して面長になって、どんどん肉喰ってるヤツらの顔になっちまってなあ…。
○「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」 ★★ (07.9.5/劇場)
STORY:闇の帝王・ヴォルデモートに立ち向かうべく集まった不死鳥の騎士団の仲間たちはハリーの身を案じ、秘密を語ろうとせず、ハリーは
孤独感にいらつく。闇の帝王の復活を認めようとしない魔法省はホグワーツへの締め付けを強化、管理教育の嵐が吹き荒れる。その中、ハリー
と有志たちは闇の軍勢に対抗するための呪文を学ぶ秘密クラブを結成する。しかし、闇の帝王の魔の手はすでにすぐそばに迫っていた…。
ハリポタシリーズ第5弾。
何を隠そう原作のこの巻が大嫌いである。
ハリーが反抗期に突入して二言目には「ブッコ!ブッコ!」とはとビームを出しそうな勢いで突っかかってばかりで、uzeeeeeeeeeんだよ!
しかも初恋が同時進行でチュッチュチュッチュして、uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeんだよ!
腹立つキャラによる腹立つ展開が続き、全体的に文章も回りくどく、最後の大規模な戦闘シーンも文章が(翻訳が?)そっち向きではない
のでダラダラして盛り上がらないといいところなしで、読み終えるのがたいへん苦行であった。
そんな難物原作の映像化なわけだが、原作のダラダラしたところは端折りに端折っているのでずいぶんマシな印象に。でもクィデッチとか
まで端折ってるけどな。
それでもムカつく展開は変えようがないのでやはり何もどうしてもムカつく。
最後の戦闘が盛り上がれば帳尻合うかな、と思えば、演出ヘボヘボで目も当てられず。そもそもヴォルデモートのデザインが格好悪すぎる
のが大問題。
ついでにスネ夫の回想シーンに出てきた学生時代のハリー父の姿が、ヒョロメガネで格好悪ぃー。どこの「ごはんですよ」だ?
新キャラのルーナが原作のイメージより多分に萌えキャラだったが、チョウ・チャンの扱いがあんまりだったり次の巻で一躍重要キャラになる
ジニーが影薄すぎだったりで差し引き0。
○「ハリー・ポッターと謎のプリンス」 ★★ (09.8.10/劇場)
STORY:ホグワーツ6年目、闇の勢力との決戦が近づく中、吹き荒れる恋の嵐。ハーマイオニーはモテ期に突入したロンに焼き餅を焼き、
ハリーはジニーのことが気になって仕方がない。ハリーとダンブルドアはヴォルデモートの不死の秘密を突き止める。彼奴は自分の魂を幾つにも
分割してアイテムに込めて世界各地に隠していたのだ。その内の一つを何とか手に入れた二人だが、傷ついたダンブルドアに魔の手が迫る…。
シリーズ6作目。いよいよラス前につき、物語も激動して原作は読み応えがあったのだが、映画は枝葉や伏線をごっそり削ぎ落として
なんともあっさりとした出来に。それでも2時間半はあるのだけれど。
原作が完結しないのに人気がある内にと映画が後を追い続けていたシリーズだが、原作がラス前に来て今まで張り巡らせていた伏線を回収
し始めるにあたって、そんな描写省いてたYO!という事態が多発して大いに歪む。
ハリーの思い人なんか前作まで完全に空気扱いだったもんなあ。
今回のクライマックスも大激動なのだが、展開を知っていたからなのか思っていたよりも盛り上がらなかったような。
楽しい学園生活の象徴たる大広間が蹂躙されて荒れ果ててしまうシーンは夢の終わり的なムードが出ていてなかなか感慨深かったが。
ハリーもロンもダンブルドアも怪しい薬を飲んでラリッてしまうのは芸能界薬物汚染への何かのメッセージなのだろうか。(ねーよ。)
○「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part.1」 ★★★ (10.11.27/劇場)
STORY:ハリー・ポッターと闇の帝王・ヴォルデモートとの決着の時はいよいよ迫っていた。最大の障害であったダンブルドア亡き今、
ヴォルデモート率いる闇の軍勢は攻勢を強め、魔法省も乗っ取られてしまう。ハリーとロン・ハーマイオニーは逃避行を続けながら
ヴォルデモートを唯一倒す方法である分霊箱を探していたが、手がかりが見つからず、三人の間にも次第に不協和音が流れ始め…。
「ハリー・ポッター」シリーズもついに完結編。少しでも儲けるために作品のクオリティを上げるために前後編の二部作構成。
というわけで単品の映画としての評価はしづらいのだけれども。
時間をたっぷり使えることで、原作のダイジェストだった近作と比べ、ジックリと話を展開できていて好感が持てる。
原作は読んだのだが本当に大筋以外は忘れてしまっていて、結構新鮮な気分で観ることができてしまった。
いい加減大人に成長してしまった主人公たちの中の人たちを見るにつけ、なんとか完結が間に合ったなあと妙な感慨が。
しかしそれにつけてもヴォルデモートの雑魚臭はいかんともしがたい。
あとしもべ妖精はチート。
○「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part.2」 ★★★ (11.8.18/劇場)
STORY:闇の帝王・ヴォルデモートの不死の秘密である分霊箱の全ての所在を突き止めたハリーたち3人は最終決戦の地となった懐かしき
ホグワーツへと向かう。ヴォルデモートもスネイプを殺し、その手に渡っていた最強の杖を手に入れる。ついに正面から光と闇の勢力は激突し、
多くの犠牲者を出す中、全てを悟ったハリーは死の秘宝を携えヴォルデモートの元に向かい、その手に掛かり死亡する…。
「ハリー・ポッター」シリーズ堂々の完結編。第1作が2001年公開なわけで、ジャスト10年での完結ですよ。
第1作で目くるめく魔法の世界にdkwkしていた10歳の少年少女はもう20歳になってるわけですよ。いやはや。オイラも20代だったのか…。
(遠い目)
俳優陣も逝去した人、捕まった人などを除けばほとんど続投で、10年近く一緒に走ってきたわけで、なかなか感慨深い。
ハーマイオニーは終盤すげえ格好良く育ったけど、ロンはちょっと腹がタプタプ気味だったなあ。
ネビルは本当はもっと小太りなのを想定していたんではないかと思うが、やたらヒョロヒョロだし、ドラコはイマイチ線が細いまま。ジニーは
ハリーより背が高くなっちゃったし、なかなか思うようにいかないもんですなあ。
ハリーの成長に合わせて物語も明るく楽しいだけでないドロドロと暗く苦しい物語へと変貌していって、ここ数作は正直あんま面白くなかったの
だが、最後はきっちりと大団円で、終わりよければすべてよろしい。
前編で前フリはほとんど終わっていたので、後編は怒濤の解決編。頭も使うが基本は大いなる流れのままに戦う戦う戦う。
派手な魔法が飛び交いモンスターが跋扈し、死体の山ができる最後の大花火。正直演出にキレがあるとは言い難く、つーかグダグダ気味で
さえあるのだが、まあ最後だし、大目に見ましょうか。でもフレッドの今際の際のセリフがカットされてたり、ハグリッドが出てくるなり捕まってたり、
見過ごせないシーンも多々。
最後の最後まで、ヴォルデモートから雑魚臭は消えなかったなあ。絵面が悪いのは言わずもがな、言動も何もかも”帝王”のオーラが感じられ
なかった。
逆に、スネイプは中の人の重厚な演技にも助けられて、本当にいいキャラだった。人気投票でも1位だったそうで。
純愛に殉じたその姿にはただただ畏敬の念を抱かずにはいられない。
でも回想の中のスネイプはどー見てもウォーリーにしか見えないハリー父より格好いいと思うのだが。
願わくば、ダニエル・ラドクリフがマーク・ハミルやクリストファー・リーヴのようにならないことを。
○「パリより愛をこめて」 ★★★ (10.5.24/劇場)
STORY:パリ駐在米国大使の秘書でチェスの達人・リースは秘密裏にCIAの捜査官見習いを勤めていた。そんな彼に、税関でもめている
敏腕捜査官・ワックスと合流し補佐すべし、と密命が下る。婚約者・キャロリンとのディナーを投げ出しワックスと合流したリースだが、超問題
児のワックスは、夕食に訪れた中華料理店でいきなり銃を抜き店員を皆殺しにしてしまう。リースの波乱の3日間はこうして幕を開けた…。
流石にいい加減プロデュース作品に「『レオン』の感動再び!」なんてウソアオリを付けられなくなったボンクラプロデューサーの
リュック・ベッソンが配下のボンクラ監督軍団に量産させている一山幾らのボンクラアクションの一本。
しかしまあ、アクションに特化してストーリーなんざ二の次という潔い姿勢を取っているため、さして退屈することもなく一気呵成に畳み
込んで後には何も残さずスッパリ終わってしまうので暇つぶしには適している。実に100円レンタル向けの作品。
理論派で暴力が苦手なエリートと口より先に手が出るっつーか弾が出て人が死ぬ野獣のような特別捜査官というバディが国際
テロリストに立ち向かうアクションムービーで、とにかく暴力担当のワックスはんがバイオレンス。
駆け引きやサスペンスなんざくそくらえ!とばかりにひたすら射殺。とりあえずビール、くらいのノリででとりあえず射殺。
これでそのアクションシーンの演出が冴えていればもっと面白かったのだが、どうにもこうにも凡百。そこいら辺が流石のベッソン
クオリティ。
主人公の頭でっかちのリース@ジョナサン・リース・マイヤーもバディのワックス@ジョン・トラボルタも憎めないキャラではあるものの、
掘り下げが足りずもったいない感じ。リースのエリートなんだが少し抜けているところとかもう少し強調した方がよかったのに。
クライマックスの高速道路でのカーチェイスで、ワックスの無茶な要望にもポーカーフェイスで応える運転手なんか実にいいキャラなの
に名前すら出てこないのはもったいないを通り越して馬鹿だろお前と言いたくなる。
暴力刑事ワックスをとらぼる太(こう書くとぷりごろ太みたいでかわい…くねえ!)がスキンヘッドで怪演。50過ぎでもアクションは
そこそここなすのだが、演出がパッとしないので散漫な印象。ミサイルランチャー構える姿はなかなかイカしてたけどな。
観てる間はそれなりに面白いけれども映画が終わった瞬間に内容を忘れるような中身のなさ。でもこの主演コンビで続編が作られたら
また観てもいいかな、というくらいには好き。
○「バレット・モンク」 ★★★ (04.1.21/劇場)
STORY:’43年チベットの寺院で、一人の僧侶が神の力を与える神秘の巻物の守護者に選ばれた。しかし、その力を手にせんするナチスの
将校ストラッカーに襲われ、僧は巻物を持ち逃走する。60年後、守護者の力で不老となった僧は後継者を求めてニューヨークにいた。そこで彼
はスリの若者・カーと出会い、彼に素質を見いだす。一方、老いたストラッカーは執念深く僧を追い続けており、彼を追い詰めようとしていた…。
チョウ・ユンファ&ジョン・ウーという特定の人種にとっては鼻血の吹き出すようなゴールデンコンビの久々となる最新作。
と思ったら、ジョン・ウーのポジションはプロデュースで、作品にはあまり携わってご様子で、香港ノワールの香りなどまるでしない、よくある
「東洋人出してアメリカでカンフーさせとけば受けるだろ」というハリウッド映画だったり。
つーかユンファの叔父貴にカンフーさせんなよ。
まあアクションは、主人公とヒロインも含めてなかなかに冴えていていい感じ。ただ、”弾丸坊主”なんて宣伝文句ほどは強くないようなのが
なあ。
予告とかメインビジュアルでユンファ叔父貴が必殺の二丁拳銃を構えた格好いい画が出回っているが、二丁拳銃使うのはほんの1シーン
だけという詐欺っぷり。
ストーリーはグズグズ。テンポが悪く、たった一日二日の話には思えない。21世紀の世の中だというのにナチスですかあ?とかなんで脳内を
覗くなんてハイテクマシーンの動力が水力なのよ!とかツッコミ入れるのには事欠かない。でもオチは好き。無理があるけれど。
ちなみに原題は「BULLETPROOF MONK」で「弾丸を防ぐ坊主」なんだが。
○「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」 ★★★★ (10.7.11/劇場)
STORY:結婚を2日後に控えたダグは、悪友のフィル・ステュと新婦の弟・アランと一緒に独身最後のバカ騒ぎのためにラスベガスへ。
翌朝、ホテルのスイートルームで酷い二日酔いで目を覚ましたフィル・ステュ・アランの3人を待っていたのは、ダグが行方不明で代わりに
赤ん坊と虎がいるという現状。痛む頭で数少ない手がかりからダグを探す3人の前に、次々とありえない新事実が明らかになっていく…。
全米大ヒットのコメディ映画。なのに有名俳優がいないなどの理由で日本公開が見送られそうになっていたところを署名運動で
逆転公開されたという経緯あり。(ゴールデングローブ賞を獲ったという後押しもあり。)
結婚しちゃったらちょっとできない独身最後のバカ騒ぎのためボンクラ4人がやってきたのは、不夜城・ラスベガス。
ふつーの青年ダグ(なにせ劇中ほとんど行方不明なので情報量が少ない)、義弟となるヒゲデブの変人・アラン、遊び人のフィル、
寝取られ歴のある恋人の尻に敷かれている真面目なフィルの4人、羽目を外したのはいいけれども、”史上最悪の二日酔い”と共に
目覚めてみればホテルのスイートルームは荒れ放題でニワトリやら赤ん坊やら虎やらがいる代わりに新郎のダグがいない。おまけに
ステュの前歯が1本抜けている。
完全に抜け落ちた記憶から数少ない手がかりを導き出して辿ってみれば、ダグのベンツが何故かパトカーに替わっていたりステュが
ストリッパーと結婚していたり警察でスタンガンの実験台にされたり取り戻したベンツのトランクから全裸の東洋人が飛び出してきて
フルボッコにされたり突如現れたマイク・タイソンにKOされたりと奇想天外な展開で爆笑必至。
バラバラになったジグソーがうまく組み合わさっていき迎えるエンディング(完成するのはエンドロールになってからだけど。)も
後味よろしくなかなか傑作。
メインの4人の中では一番真面目キャラながらだんだんはっちゃけていくステュがいい味を出している。中の人は役作りのために本当に
前歯を抜いたとか。
その寝取られ彼女のメガネっ娘だけが完全に貧乏くじでちょっとかわいそう。
○「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」 ★★★★ (11.7.20/劇場)
STORY:ラスベガスの悪夢の一夜から2年、タイで結婚式を挙げることになったステュの元にあのメンバーが揃ってしまう。前回の反省を踏まえ、
結婚式前夜の祝杯はビール1本で終了。のはずが、気がつけば翌朝、見知らぬホテルの一室、酷い二日酔い、そしてまたしても記憶がない!
さらにステュの顔にはタトゥーが彫られ、アランは丸刈りにされ、その上、新婦の弟・テディが指1本残して行方不明になってしまった…。
前作は無名キャスト・低予算ながら大ヒットを記録(なのに日本ではあわや劇場未公開)。晴れて続編の登場と相成った。
監督・キャストはすべて続投で、内容も確信犯で前作を踏襲。
日本では上記理由で公開が遅れたので、ほぼ1年後に続編公開。前作からのリフレインが多いので前作の内容を覚えていた方が
楽しめるのでケガの功名。
結婚式の直前に酷い二日酔いで男3人目が覚めてみれば、前夜の記憶が全くなく、室内は散乱していて、いるはずのない動物がいて、
いるはずの人物は行方不明。まさかの前作のシチュエーションの再現でニヤニヤ。当人たちはまさかの悪夢再来で真っ青なのが尚更
笑える。
勿論、朧気な記憶を辿っていくと次々と予測もつかない事実にぶち当たるわけだが、ここもアイツは裸で登場し、ステュは羽目をはずし
すぎ、探し人の身代金を払わねばならず、と繰り返しギャグが多い。無論前作よりいろいろ悪い意味でエスカレートしていて楽しめるが。
その調子で最後まで既視感は続き、あの人までまさかのカメオ出演再び(まあ予想はしていたが)だし、ステュは最後にぶっちゃけるし、と
いった感じ。まあしかし毎度毎度ステュは波瀾万丈だ。
つーわけで前作を復習してから観るのが吉。でも次回も同じだったら流石に飽きるかもだ。
ステュのタトゥーとかアランの丸刈りとかの理由が全然たいしたことがないのがちと残念。指切断の理由はしょーもなくて笑ったが。その後の指を
使った悪趣味なギャグも。
○「ハンナ」 ★★★ (11.11.8/劇場)
STORY:ハンナは16歳の少女。物心ついた時からフィンランドの雪原で父・エリックと二人だけで暮らし、日々サバイバル生活を送って
いた。外の世界に出たいとせがむハンナに、その時期が来たと悟ったエリックは、彼女に発信器のボタンを押させ、自分は小屋を去る。
現れた謎の集団に囚われたハンナはCIAの基地に運ばれるが、そこでマリッサという女性を殺害する。エリックの命令通りに…。
「ラブリー・ボーン」の超絶美少女、シアーシャ・ローナンたんが美少女殺人マシーンを演じると聞いちゃあ観ないわけにはいかない
だろうて。
が、が、が、なんで眉毛がないんだよう!
(正しくは生えてはいるんだけど色が薄くて無いように見える。)かわいさ半減だよコンチクショー。
生まれてからずっと(正しくは生まれる前から)戦闘マシーンとして鍛えられてきたハンナが齢16にして初めて任務で外の世界に
降り立ち出会う初めての体験の数々。ただし逃亡劇を演じながらだけど。
そんなミスマッチ感がウリの一つなんだろうけど、すたいりっしゅを気取ったアクションも、ケミカルブラザーズが担当するところの音楽
も、なんだかすべてがちぐはぐで、しっくりこない。
監督のジョー・ライトはこれまで「プライドと偏見」、「つぐない」、「路上のソリスト」と文芸寄りな作品ばかり撮ってきているのでさもありなん。
しかし、このテイストが馴染むようになってきたら面白いかもだ。今回は習作といった感じか。
眉毛が薄くても流石シアーシャ・ローナン、それでもなかなかかわいい。眉毛があったら★1つプラスだった。
彼女の対偶として描かれるCIAの敏腕年増エージェントのケイト・ブランシェットが今までのエレガントなイメージをかなぐり捨てて実に
ギトギトと怪演してインパクト強し。
○「ヴァン・ヘルシング」 ★★★ (04.10.21/劇場)
STORY:19世紀末。過去の記憶がないモンスターハンター、ヴァン・ヘルシングはバチカンの密命を受け、代々吸血鬼と戦い続けてきた一族
を助けるべくトランシルバニアに降り立った。ドラキュラ伯爵はフランケンシュタインの怪物を手に入れ、恐るべき野望を達成しようとしていた。
ヘルシングは一族の最後の一人・アナと共に伯爵とその僕のモンスター達に戦いを挑むが、伯爵の不死の謎を解き明かせず苦戦する…。
「ハムナプトラ」のスティーブン・ソマーズ監督が送るジェットコースター・ポップコーン・ムービー。
なにせドラキュラ・フランケンシュタインの怪物に狼男が総登場という豪華さ。「怪物くん」かい。さらにジキルとハイドまで登場って、ハイド
氏がまんま「リーグ・オブ・レジェンド」のパクリじゃんよ。
とにかくアクションまたアクションで延々見せ場が続くので退屈はしないが一本調子で疲れるし記憶には残らない。暇つぶしにはもって
こいだが。
予告を見る限りではもっとスタイリッシュに活躍しそうだった主人公のヘルシングさんがイマイチパッとしないのが大いにマイナス。記憶がない
とか過去からの因縁とか、キャラ設定がとってつけたような感じで機能してない。
ドラキュラ伯爵もイマイチ。変身後がまるでエレガントじゃないデザインなのがイヤ。ヘルシングさんまで獣人化してしまうクライマックスの怪獣
大決戦はもう勝手にやってろという感じで興ざめ。ラストにヒロイン殺すのもさして意味ない気がする。あれはラストに空に顔、という前世紀の
ギャグを決めるためのネタかい?
ヘルシング役にヒュー・ジャックマン。って、また記憶をなくした超戦士役ですか。
ヒロインのアナにケイト・ベッキンセール。って、それじゃ「アンダー・ワールド」じゃん!と思ったら最後は本当に吸血鬼vs狼男になって
閉口。
しかし狼男をウルフマンと訳すのはやめておくれでないかい。それじゃあキューブマンにしか勝ってないヘボ超人(自称”伝説超人”)
みたいじゃんよ。
○「ヒアアフター」 ★★★★ (11.3.5/劇場)
STORY:女性ジャーナリストのマリーはスマトラで大津波に飲まれ臨死体験をし、パリに戻ってきてもそれを忘れられないでいた。
ロンドンの少年・マーカスは交通事故で双子の兄を失い、もう一度彼の声を聞きたいと本物の霊能力者を探す。サンフランシスコに住む
ジョージは死者の声を聞くことができるが、その呪いにも似た力を嫌悪していた。数奇な運命は接点のなかった3人を結びつける…。
クリント・イーストウッド監督作品。コンスタントに作品を発表するの。
フランス・イギリス・アメリカ、住む国が違えば境遇も全く違う3人の主人公がやがて一つ処に集い、お互いにとって重要な出会いを
果たす。(のだが、なんと映画がそこで終わってしまうという不思議さよ!)
冒頭のスマトラ大津波は迫力。まあ身近にもっと凄い津波が起こってしまったしねえ。そのせいで公開打ち切りになってしまったそう
で、残念。
かいま見えるあっちの世界の描写はなんともぼかされてあっさりしているのが印象的。全然ホラー的に描かないのね。
そういうところも含め、つくづく妙な作品である。料理教室はやたらエロいし、地下鉄で爆弾テロなんて見せ場はろくすっぽ見せない
しジョージはディケンズオタクだし唐突に終わるし。
でも何故だか面白いという謎の作品。監督の力量かね。
○「ヒート・アフター・ダーク」 ★★★ (01.10/ビデオ)
STORY:ごく平凡な中年男・神崎は久しぶりに友人の後藤と酒を飲む。が、後藤は何か隠し事をしているようだった。神崎に問いつめられ後藤
はちょっとした諍いから台湾マフィア・李を殺してしまったと白状する。丸め込まれ死体を処理する手伝いをする羽目になった神崎は後藤と車で
山奥の廃村に向かう。が、トランクを開けると死体がない。李は生きていたのだ。応援を呼んで村を包囲した李。果たして神崎の運命は…。
「ダウン・トゥ・ヘル」で第1回インディーズ・ムービー・フェスティバルのグランプリを獲得した北村龍平監督のプロ第1作。50分の中編。
話のほとんどは山奥の廃村で繰り広げられる銃撃戦である。が、北村監督がこの後に撮ったアクション快作「VERSUS」ほどの派手さもケレン味
もなく、印象は薄い。ゾンビ出ないし。
主演は渡部篤郎、共演に鈴木一真と泉谷しげる。
○「HERO 英雄」 ★★★ (03.8.30/劇場)
STORY:紀元前200年、中国。後に大陸を統一し始皇帝と呼ばれることになる秦王は、戦争に明け暮れていた。ある日、彼の命を狙う三人の
剣客、長空・飛雪・残剣を討った無名という男が謁見を許される。刺客を恐れ、百歩以内に人を近づけない秦王だったが、無名はその功績で、
十歩まで近づくことを許される。無名は、請われるままにいかに三人を討ち果たしたかを語るが、秦王はそれが作り話だと看破する…。
今年のオイラ的夏期映画戦線最大の目玉。だって、メインのジェット・リーは言わずもがな、ドニー先生、チャン・ツィイーたん、トニー&
マギーの「花様年華」コンビと好みのキャスト勢揃いな上に、全編ワイヤー・アクションとCGを駆使して描く一大剣劇とあっては、これを
見ずして何を見るよオイ?というわけで。
で、感想としては、そーゆー期待をして見に行くとちょっとガッカリしてしまう作品だったり。しょぼーん。
色鮮やかな衣装に身を包み舞うように闘うスターたち、特にマギー・チェン&チャン・ツィイーの美しさは素晴らしく、そーゆーのを期待
する人にはオススメ。やっぱりチャン・イーモゥはチャン・ツィイーたんのかわいさを引き出すのが上手い気がする。(所々とんでもない顔もしてる
が)
メインの剣劇は、美しく空を飛びながら闘う「グリーン・デスティニー」的ファイトなので、あまり激しくない。むしろ耐性がないと爆笑しかね
ない。しょぼーん。
それよりも目と耳に刺激的なのは、けたたましく風を切り空を漆黒に染めんばかりに降り注ぐ弓矢の雨か。その数万本の矢を片っ端から
たたき落とすジェット・リー&マギー・チェンは格好良すぎる。あと、「三国無双」なトニー&マギーの討ち入りシーンもよかった。もちろん
ジェット・リーとドニー・イェンの雨中の達人対決はいわんや。バキばりの脳内格闘には苦笑したが。
しかし、映画の宣伝文句の「人はHEROになるために生まれてきた」ってえのはまるでズレてねえかい?
つーかそもそも「HERO」という邦題の段階で著しくハズしているわけだが。まんま「英雄」でいいじゃん。「銀河英雄伝説」が「銀河ヒーロー
伝説」とかだったらすげえヘボそうじゃん。
「父は、…父が言っていた。人類という種族には、人類が危機に陥った時、種族本能として決戦存在を出すと。アリが栄養によって兵隊アリや
働きアリに分化するように、ワニが水温によってオス、メスを分けるように。我ら人類も、危機が迫るその時に、本当にもうどうしようもないその時
に、人は自ら、一代限りの決戦存在を生むと。
ただの人間から現われて、人間を守る、人類の守護者。人類の敵のことごとくを滅ぼす、人類の最強、"ヒーロー"。
我らは、ただ単に"ヒーロー"と呼んでいる。他に適当で宗教的でない存在を、我らは知らぬからだ。
主義も主張もなく、別に特別な力を持つわけでもない。だが、間違いなく最強。間違いなく人類の命運を決める存在。善も悪もなく、ただ人類の
存続のために、己の意志と意図を全て無視して戦う絶対存在。人類で、ただ数人。世界で、ただ数人。一代につき数人だけが、種としての人類
の総意として出現する。決戦存在として。
それが、あまりにも強すぎるゆえに、人は、その存在を説明するのに、神秘的な力を使う。運命とか、神とか、死を告げる舞踏とかな」
−芝村舞−
いや、映画とは全然関係ないんですがね。
ところで、オイラ的には題名の「英雄」いうのは主人公たちよりもむしろ秦王のことを指していると思うのだがどうか?
○「ヒーローショー」 ★★★★ (10.6.15/劇場)
STORY:芸人養成所を卒業したフリーターの青年・ユウキは、元相方の剛志に誘われヒーローショーのバイトを始める。が、怪人役の
剛志とヒーロー役のノボル・勉の間が舞台上で殴り合いに。怪我を負わされた剛志は凶暴な友人の鬼丸兄弟と共にノボルらを脅し慰謝料
を請求。勉は悪友の元自衛官・勇気と反撃を開始。エスカレートしていく暴力の応酬に巻き込まれたユウキはただオロオロするばかり…。
M−1グランプリで優勝して返すとうそぶいて、山梨で貧しい生活を送っている母親に50万円出させて入った芸人養成学校を卒業した
もののそんなに楽にプロになれるわけもなく、バイトは無断欠勤した上に逆ギレして辞め(ダメ人間なのにこんなところだけ強気)、ボロ
アパートのちらかった部屋で妹ゲーにいそしむ青年・鈴木ユウキ。
お笑い芸人になる!とはいうものの才能もなく努力もせず、ただ日々を無為に過ごすモラトリアムな若者。
一番大事なものは?と問われ悩んだ挙げ句とりあえず「命」と答えるくらい何もない若者。
そんなのが主人公。おそらく、現代の若者像の投影としての、主人公。
もう一人の主人公と言えるのが、石川勇気。元自衛官。仲間にはレンジャー部隊にいたと言っているが、本当は炊事班。
年下過ぎる恋人といちゃつく母親のいる実家を出て、バツイチの彼女と住むための安アパートを借りたばかり。
夢は彼女と結婚して石垣島でレストランを開くこと。
しかし現実には金もなく調理師免許もなく、挙げ句彼女に6歳の息子がいることまで判明し、重苦しい現実に悩んでいる。
そんな二人の”ゆうき”はヒーローショーのバイト仲間のいざこざが原因で出会う。
女を巡ってヒーロー側と怪人側が喧嘩を始め、それがエスカレートしてただの殴り合いから凶器を手にしての本格抗争になってしまった
現場で。
途中から参戦した非当事者たち。ただただ吠えまくるVシネかぶれのDQNやそいつを罠にはめる策士に、待ち伏せの現場に何故か
彼女連れでやって来る空気の読めなすぎるバカ。
暴力がついに殺人まで行き着いてしまうにあたって、策士気取りも含めて、結局誰もろくすっぽ考えずに行動していたことがわかる。
それが現代の若者の縮図だとは思いたくない愚かっぷりにせせら笑うべきなのか嘆息すべきなのか。
覆水盆に返らず、迷走する彼らの前に待つのは夢も希望も大逆転もなく、ただ破滅のみ。
ただ一人どこまでも巻き込まれ続けただけだったユウキは、自分の命以外の大切なものを見つけ出し、物語は幕を閉じる。
まあ、それが一過性なものなのではないかと思ってしまうほど愚か者な主人公なので、ハッピーエンドであるとは言い難いけれども。
つーわけで、厭な映画。
若者の、若さ故の愚かさを切り取った作品であるが、そこに漂う夢も希望もない閉塞感が、一部の若者だけのものでなく、世の中
全体のものっぽいのが始末が悪い。
些細なことで人まで殺してしまう刹那的な若者たちの姿よりも、ただそれをヘラヘラと傍観している主人公の方がずっとずっと絶望的。
こいつらがこのまま大人になったらどうなっちまうんかねえ。
「この国はすっかり駄目になってしまいました」。前世紀の末、深作欣二はビートたけしにこう言わせた。
それから10年以上経ってみれば、この国はもっともっと駄目になっていて厭になる。
厭な映画だけど、印象的な映画。
吉本興業に金を出させて、「芸人養成所出たからって何にもならんぞ」という映画を作った井筒監督には拍手。
○「ビジターQ」 ★★★★ (04.9.5/DVD)
「バカ映画たちの挽歌」コーナー参照。
○「ピストルオペラ」 ★★★ (01.10/劇場)
STORY:”野良猫”(世界殺し屋ギルド日本支部ランキング3位)は、いつものように代理人・小夜子から受けた依頼を成功させたが、同じ獲物を
狙っていたランキング4位”生活指導の先生”の襲撃を受ける。足を悪くし引退した元殺し屋”チャンプのめ組”からギルドがおかしいと聞かされた
”野良猫”に小夜子がもたらした依頼は、ランキング1位”百眼”の始末だった。しかし先手を打って”百眼”の魔の手が”野良猫”に襲いくる!
鈴木清順翁の10年ぶりの新作。
当時リバイバルで見たばかりだった前作の「大正浪漫三部作」があまりにも素晴らしかったためにかなり期待して見に行ったのだが…。
とはいえ、やはり随所に度肝を抜くような美しい表現や奇っ怪な表現があって、とても70過ぎのじーさんが作っているとは思えない強烈な
作品だった。
車椅子を鬼速で走らせ、ジャージ姿で”野良猫”と渡り合う”生活指導の先生”とか、まったくもって意味不明な「世界恐怖博覧会」とか、
ジュリー演じるランキング2位”昼行灯の萬”は、出るなり死んでセリフすらなかったりとか…。
主演の江角が大根とかなんで宍戸錠じゃなくて平幹二郎なのだ!とか相変わらず疲れて眠くなるとか文句は山のように言えるが、ラストの
富士山の強烈さに沈黙。この美しさなら太宰治も文句は言えまいて。
しかし、殺し屋ギルドのランキング上位者、”宴会部長”、”夢遊病者”、”使い捨てカイロ”、”集金当番”、”モグラ教授”、”廃品回収奴”、”ゴミ
捨て大臣”、”三行広告の友人”とか、どーゆー殺し屋なんよ!?
○「ビッグ・ヒット」 ★★★★★ (01.6/ビデオ)
STORY:組織の殺し屋・メルは、腕は一流だが、性格は優柔不断。「誰からも嫌われたくない」ために別れ話を切り出せずに二股かけている上
に、両方から小遣いをせしめられている毎日。そんなわけで金欠の彼は仲間のシスコの誘いに乗って、ある富豪の娘の誘拐計画に参加する。
ところが富豪はボスの親友で、激怒したボスは犯人探しに躍起になる。あっさり裏切ったシスコにすべての罪を擦り付けられたメルの運命は…。
ハリウッドに渡ったジョン・ウーが製作総指揮を執り、同じ香港組のカーク・ウォンが監督したアクション快作。…あれ、制作にウェズやんの名前
が…。
主役の、腕は超一流だが性格はヘタレな”いいひと”にハマリ役マーク・ウォールバーグ。ライバルの、狡猾だがどこか憎めない男にルー・
ダイアモンド・フィリップス。
よくできたポップコーン・ムービーで、アクションは派手だしバカだし笑いながら楽しく見れて、見終わったら満足感は残るけれど記憶にはあまり
残らない類の作品かもしれないが、見ると元気になる一本。
冒頭の無意味に派手なアクションがイカス!間違った日本人描写がイカス!(なんで切腹するのにオペラを流すのだ!?)命を懸けた逃走劇
の最中だというのにレンタルビデオの延滞を気にする小心者の主人公がイカス!(しかも借りてるビデオは「キングコング2」というトホホ
ぶり!)悪趣味なレンタルビデオ屋がイカス!心ない延滞催促の電話がイカス!オレもあんな電話掛けてえ!
○「人斬り銀次」 ★★★★ (03.10.6/DVD)
STORY:2003年、一人の男がシャバに帰ってきた。曾根崎銀次79歳。特攻隊の生き残りの彼は50年前、裏切り者・黒田との死闘の果てに、
20人の愚連隊を惨殺した挙げ句警察に捕まったのだった。その黒田は今や内閣総理大臣を経て、政治界の黒幕となっていた。さまよう銀次の
前に現れ銃を向けたのは、かつて彼の前に立ちはだかった謎の男・土蜘蛛だった。50年の時を越え、男たちの魂は再び熱くぶつかり合う…。
冒頭、人斬り銀次の伝説として語られる出入りシーンがすごい。
演ずるは竹内力。日本刀を振りかざし、鬼の形相で群がる雑魚どもを斬って斬って切り捨てる!斬られたヤツらから吹き上がる鮮血で画面
は真っ赤、血しぶきでカメラのレンズも濡れるという座頭市も真っ青の残虐ファイトでつかみはOK!
そして50年後、刑務所から出てきたら竹内力は夏八木勲になっていましたよ。
つーわけで、基本的には主人公を演じるのは夏八木勲なのだが、襲い来る刺客との死闘の中、彼の気力が限界まで上がると、突如として
竹内力に変身するという豪血寺一族な演出に驚け!(これが三池監督ならモーフィングとかCGバリバリ使っただろうなあ)
対する謎の軍人・鬼蜘蛛はワイヤーアクションで宙を舞い二丁拳銃乱射しまくりでサブウェポンとして懐からショットガンという加藤保憲も
ビックリな超人ぶり。
話も重厚でなかなかに楽しめる佳作。まあ、結局あんたら何をしたかったんだ?というのがイマイチはっきりしないなど問題もあるが。
共演陣は石橋蓮司(おお、まともな役だ!)・麿赤児・古尾谷雅人(故人・これが遺作か?)などで実に渋い演技を。
監督は「カオルちゃん」の宮坂武志。この人の作品はアクションは素敵なのだが、話が真面目すぎるんだよなあ。
しかし、「カオルちゃん」を見た後(かつグループ魂の「竹内力」を聴いた後)だと、力兄ィが何をやってもどんな顔をしてもギャグに見えて
吹き出してしまうのが問題だ。
○「ヴィドック」 ★★★★ (02.2/劇場)
STORY:1830年パリ。フランスの英雄たる探偵・ヴィドックが死んだ。謎の犯罪者・鏡の仮面の男と闘い、敗れ、ガラス工場の燃えさかる大釜に
落とされたのだ。彼の伝記を書く予定だった作家・エチエンヌは、彼の死の真相、そして謎の鏡男の正体に迫るべく、事件を調査し始める。事の
起こりは2週間前。二人の富豪が人工的に発生させた雷に打たれて殺された。事件を追うヴィドックの前に立ち塞がった犯人は鏡男だった…。
ヴィドックと鏡男のバトルがすげえ、という情報を聞きつけ、ほとんど予備知識なしで見てみれば、中心人物ヴィドックが、モミアゲ爆発の
中年太りの強欲そうなおっさんで仰天。
つーか、この映画、異常なまでに、暑苦しいおっさん率が高い。奇面フラッシュとか余裕で撃てそう。
で、噂の鏡男、イカス!
戦闘時の移動はほとんど側転かバク転、テレポートまで使いこなし、あまつさえジョン・ウー真っ青のハトが出ますよ攻撃
を繰り出す見事なボスキャラぶり。ただ、ヴィドックとの変幻自在に宙を舞い繰り広げる死闘通称”おっさんマトリックス”は変幻
自在すぎて何をやってるのかようわからんという問題が。
そして、不思議な空の色、耽美で妖しげな売春宿、阿片窟、錬金術…デジカメ撮影でCGバリバリの独特な美しく、かつ小汚い世界がいい感じ。
ああ、ストーリー?そんなもん見る作品じゃないッスよ(笑)フラグ立てとか隠し部屋とか、RPGチック。
○「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(3D) ★★★ (12.5.28/劇場)
STORY:ピナ・バウシュ、舞踏家。ドイツに生まれる。ヴッパタール舞踏団を率い、ダンスと演劇を融合させた”タンツテアター”という唯一無二の
芸術空間を築き上げ、世界を席巻した。’09年、癌により急逝。この映画は、彼女と親交のあったヴィム・ヴェンダースが以前から企画したもので、
ピナの死により暗礁に乗り上げたものの、彼女の教えを受け継いだヴッパタール舞踏団の熱意と最新の3D技術によって完成したものである。
舞台、そして舞台を飛び出して野原で山で川で駅で公園で、至る所で繰り広げられる舞踏と関係者のインタビューで構成されたピナ・
バウシュの圧倒的な魂のかたち。
観ていて脳裏に浮かんだのは、「肉体言語」という言葉。実際、劇中でもインタビューで、自分たちの舞台を「身体言語」と表現していて、
ですよねー、と納得。
しかしまあ、本能の赴くままに遮二無二全力で無心に適当にアドリブで踊っているようにさえ見えるけど、ちゃんと計算された振り付けなんだよな。
「カフェ・ミュラー」とかあんな椅子だらけのステージで、ぶつからずに踊りまくっているわけだから。
確かにこれは芸術だわ。
しかし断片だけ見てもどんな舞台なんだかさっぱりわからなくて、全編通して見てみたくなる。
室内の舞台に水やら岩やら土やら持ち込むダイナミックさがすげえ。
そして、舞台では収まりきれないとばかりに外でまで展開されるその世界。電車の中のアレはちょっとコントみたいだったけど。
3D上映。それによって、舞台の奥行きを平面のスクリーンに再現することができ、雰囲気を引き立てている。全くでしゃばらずに作品の質を
向上させている珍しく良い使い方。
○「ヒミズ」 ★★★★ (12.1.19/劇場)
STORY:住田祐一、15歳。夢は、普通の大人になること。中学を卒業したら家業の貸しボート屋を継ぐことに決めている。彼の周りには彼を
ストーカーする同級生・茶沢景子や3.11震災で家も仕事も失った大人たちなど変人ばかり。普通に生きたい祐一だったが、母親が愛人と
駆け落ちし、アル中のろくでなしの父親に暴力をふるわれ、それすらも叶わない。父親の借金600万円を背負わされた祐一はついに…。
よりにもよって古谷実の鬱マンガを今一番イカレた映画監督(褒め言葉)園子温が実写映画化。
タイトルを見て、ああ、あの救われないマンガか、と思ったのだが、チラシのあらすじを読むと全然違うような気がして、勘違いかと劇場に
足を運んでみれば、冒頭の池の畔のボート屋と屋外の洗濯機を見るなり記憶が一気に蘇ってダウナーな気分に。
でもまあ、オチ以外ほとんど忘れていたので映画を観た後原作を読み返してみれば、映画版は主人公の追い込まれ方が原作の比では
なく半端なくて戦慄。
ただただ普通でいたいというごくごく平凡な望みすら叶わない最悪の両親の元に生まれついてしまった住田祐一(以下住田さん)。
本っっっ当に父親が屑でどうしようもない。
おまけに震災で世間の人心も乱れて、家も職も失った疲れ切った大人たちが周りに集まっていて、またこいつらが渡辺哲・吹越満・
神楽坂恵・諏訪太朗と「冷たい熱帯魚」チームなもんで観ている方が不安で不安で仕方なくなる。(当然でんでんも後から登場。)
さらに、普通でいたいのやたらハイテンションなストーカー同級生までまとわりついてくるという、全然普通じゃない状態で、同情を禁じ
得ないし、観ていて苦しくなる。
まあ、周りの普通じゃない人たちもそれぞれに深い業を背負っていてすげえ重いわけだが。
かくして、ついに住田さんは普通へと戻れない一線を越えてしまう。
悩み苦しんだその果てに、彼が選んだ道は…。
ここがギリギリで原作と異なっていて、正直ホッとした。
原作にはなくて映画にはあった、「過去の人」であるおっさんたち、引いては監督からから託された想いが、滅茶苦茶になってしまった
現代から未来へ託された願いが、そこには確かにあった。
だから、ありふれた言葉でも、手垢がつきまくった言葉でも、日頃から何気なく多用している薄っぺらい言葉でも、最後にあの言葉を
連呼せずにはいられなかったのだろう。あそこで掛けられる言葉は、月並みだけどアレしかないよなあ。
主人公の住田さんに染谷将太、電波なヒロインの茶沢さんに二階堂ふみ。
二人でヴェネツィア映画祭の新人賞を獲ったというのも納得な、体当たりな熱演。
二階堂ふみ、最初は宮崎あおいの劣化コピーなのかと思ったが、ただものじゃないかもだ。
原作では住田さんの同級生だった夜野は震災で何もかも失ったおっさんに変更されていて、演じるは渡辺哲。壊れてテンションが高い、
けれども大事な何かは決して忘れていないおっさんを大熱演。すげえ。
園監督の「冷たい熱帯魚」で強烈すぎるインパクトを残したでんでんはヤクザの親分。またも味のある演技。
他、光石研、窪塚洋介らも印象に残る配役。
もう一回観たいかと問われれば、なかなかにつらく苦しくエグい映画なので二の足を踏んでしまうが、なかなかに忘れ難い鮮烈すぎる
映画。
○「百色眼鏡」 ★★★ (03.3/DVD)
STORY:活動写真華やかなりし頃。天城は知人の刑事・駒形に、葛城楓という舞台女優の本名の調査を依頼される。偶然に楓と親しくなった
天城は、毎日昼食に招待される仲となる。本郷の邸宅に一人で暮らしているという楓だが、しかし深夜、天城が壁に開いた穴から屋敷の中を覗く
と、そこでは見知らぬ和服の女性が白いうなじを見せて座っている。困惑しながらも毎日覗き見をやめられないでいる天城であったが…。
椎名林檎のアレなタイトルの3rdアルバムのプレゼンとして作られた短編ドラマ。
大正浪漫な舞台設定が大好きで、服装や建物や雰囲気が心地よくてそれだけで満足。
物語はどちらかというと地味で、主要登場人物もわずかに4人のみとこじんまりとした作りなれど、30分という短さを感じさせないみっしりとした
見ごたえ。
どういう経緯で警察から仕事を持ち込まれるのかわからん(説明されない)主人公・天城を演じるは、ラーメンズの小林賢太郎。役者は本職
ではないわけだが、その微妙な素人くささがプラスに作用していて、ちょっととぼけた頼りなさそうな主人公像が際立つ。美味そうに飯を食うの
がよいなあ。しかし、黒の外套に丸眼鏡というその出で立ちはハリポタを思い出してしまう。つーかむしろ「トリック2」の「天罰が下るよー」の子を
思い出してしまう。…で、ラーメンズって何ですか?
その天城の調査対象の芸名・葛城楓嬢(すげえいい人で結婚してくれい!)に小雪。当時の流行風の髪型やお化粧に整えたその顔が
ココリコの田中に似ているとか一瞬でも思ってしまったら全て台無しなので注意。
その夜の顔に椎名林檎。無理があるとか言わんように。うなじで演技。
刑事・駒形にイチ。腹黒いエリート風の役を好演。つーか誠実そうな役からインチキ宗教に洗脳されてしまう役まで幅広いなあ。
ラストはいろいろな解釈ができるわけで。つーか何とも考えがまとまらないままにこれを書いているわけで。
○「ヒューゴの不思議な発明」(3D) ★★★ (12.3.7/劇場)
STORY:第一次大戦後のパリ。時計職人の父親を火事で失った少年・ヒューゴは、リヨン駅の時計台の中に隠れ住んでいた。警備員の目から
逃れ、駅の時計を直しながら、父親が博物館で見つけてきた壊れた謎の機械人形を少しずつ修理する毎日。ある日、彼は人形を動かす最後の
部品であるハート型の鍵を持つ少女・イザベルと出会う。そして、彼女の養父のジョルジュは人形について何か知っているようだったが…。
「タクシードライバー」、「レイジング・ブル」、「ギャング・オブ・ニューヨーク」の巨匠・マーティン・スコセッシがどういうわけか挑んだファミリー
向け3D映画。
とはいえ流石は巨匠、駅の裏側、時計台の中という立体的な空間を舞台にしていて、実に3Dが映える。今まで観た3D映画の中では一番
dkwkした。でも上映料金に¥300も上乗せする価値があるかというと甚だ疑問だが。
ファミリー向け映画だが、実在したSFXの始祖とも言われる映画監督、ジョルジュ・メリエスへのオマージュにもなっており、最新技術を使って
いるのはその功績に敬意を払ってなのかな、とも思ったり。
さて、冒頭から、時計台から見下ろす粉雪舞うパリの遠景−凱旋門を中心として放射状に伸びる通りのライトアップが非常に美しい−、
そして大きな駅の、雑多ながらも活気溢れる人々の営み、そして彼ら乗降客は決して知ることはない機械仕掛けの舞台裏の風景と、すげえ
心躍る情景が描写され否応なく期待は膨らんでしまうのだが、そこからの展開がどうにも辛気くさいのである。
なによりも主人公のヒューゴ少年が行き遅れたおばちゃんみたいな顔なのが残念無念なのである。もう少しショタかわいかったら★5つ
進呈するというのに、スコセッシめ!
相棒の機械人形も、こっちみんな、以外の感想は持てない素敵な風貌で、萎える。
駅で働く人々も顔とか性格とかイマイチ変人ばかり。
ヒロインは我らがクロレッツたんなのだが、今回は血にまみれないので魅力半減。(ヲイ)
物語の鍵を握る偏屈な老人も偏屈すぎるし顔はインチキくせえし(実在したモデルがそういう顔だから仕方ないけど。)、なんともテンションが
上がらないのである。
舞台が魅力的だし、劇中で再現される映画は結構そそられるので、なおのこともったいない。
ファミリー向けとしては子どもが目を輝かせるほど楽しくないし、大人向けとしてはギミックがあっさりしている。どこから見てもスーパーマン
じゃないハッスルするほど働かない子どもの夢にも出てこない大人が懐かしがることもないという感じ。だからといって駄目じゃないのだけどもねえ。
あと、ヒューゴ、不思議も何も、発明なんて一切しねーから!
○「ピラニア3D」 ★★★★ (11.9.18/劇場)
STORY:ビクトリア湖の湖底で地震が発生し、閉ざされていた地底湖との水路が開き、200万年もの間共食いをすることにより生き延びてきた
凶暴なピラニアが解き放たれた。保安官を母に持つ冴えない高校生のジェイクは幼なじみのケリーと成り行きでポルノ映画を撮影するクルーザー
に乗り込むが、座礁してしまったところをピラニアに襲われる。そして祭りで若者が浮かれる湖畔もピラニアの群れによって鮮血に染まっていた…。
どこからどう見ても20世紀のB級映画なのだが、何故か3Dという最先端の技術を得て現代に登場。
まあ3Dになって飛び出すのがピラニアに食い千切られたチンコとか目玉(視神経つき)とかゲロとか酒瓶とかろくでもないものばかり
だがなあ。
「アバター」のジェームズ・キャメロンが「これは3Dにすべきでない映画の見本」とブチ切れたらしいが、ざまあ。所詮3Dなんて下世話な
見せ物なのだよ。
そもそも飛び出さないけどこんな映画作ってた野郎にとやかく言われたくないっつーの。
つーわけで、観る前に期待していたもの、すなわち血しぶき、肉片、悲鳴、断末魔、そしておっぱい、は概ね詰め込まれているであろう、予想
も期待も裏切らない愛すべきボンクラ映画。
いや、期待値以上におっぱいが溢れていて楽園ムードだったし、そこから期待値以上にピラニアさんが暴れてくれて素晴らしい地獄絵図
と化してくれた。
ピラニアさんに喰い殺されるだけでなく、パニックで逃げ惑う大衆のせいで様々な悲惨な死に方も見られて、地獄絵図に花を添えている。
ワイヤーの下りとか最高!チェーンソーもカッケー!漢の武器だぜ!
あと、絡まって頭皮ごと剥ぎ取られたりピラニアさんに食い付かれてそこを足場に顔面も食い千切られたり、髪の毛長いとろくなことが
ないな。
オチもなかなかのお約束だが、なんともスピーディすぎて笑いが凍りついてしまった。
キャストはスティーブ・マックイーンの孫とかクリストファー・ロイドとかリチャード・ドレイファスとかイーライ・ロスとか訳の分からん方向に豪華。
DT主人公の彼女が結構かわいかった。
地元の映画館では字幕版しか上映してなかったのだが、なんだこの吹替版の豪華さは?
○「ヴィレッジ」 ★★★ (04.10.15/劇場)
STORY:19世紀末、アメリカの片田舎。森に囲まれたとある寒村に住む村民たちは家族のように仲良く、幸せな日々を送っていたが、森には
謎の怪物が住んでいて侵入者を襲うため、村は外界から隔絶していた。青年・ルシウスと盲目の美女・アイヴィーと知恵遅れの青年・ノアは親友
だったが、ルシウスとアイヴィーの仲を嫉妬したノアはルシウスを刺してしまう。薬を手に入れるため、アイヴィーは森に足を踏み入れるが…。
「シックス・センス」、「アンブレイカブル」、「サイン」に続く”Mr.どんでん返し”M・ナイト・シャマラン監督の第4作。
今回も例によってB級ホラーな設定で普遍の真理を語る。今回のテーマは愛とか無垢とか。
今回も当然どんでん返しは存在するが、転がる方向が今までと逆な感じでちょっと違和感。
前半のホラーな雰囲気は相変わらず。謎の化け物がチラッとだけ映るのはビクドキものだったのだが、モロ見えてしまうと…なんだってアレな
デザインだなあ、着ぐるみっぽいなあ、と思ったら本当に着ぐるみだったという罠。
ヒロインを演じた新人さんプライス・ダラス・ハワードがなかなかいい感じ。
○「ピンポン」 ★★★★ (02.8/劇場)
STORY:ペコは卓球で地球一になることを夢見る天真爛漫な高校一年。幼なじみの根暗なスマイルはそんな彼を昔からヒーロー視していた。
二人とも卓球の才能はもっていたが、ペコは性格的に、スマイルはそんな彼に気兼ねして努力をしないために、インターハイでライバルたちに
敗れてしまう。それを機に二人は、それぞれの理由で特訓を開始する。そして再びインターハイの時がやって来た…。
予告編だけ見るとなんだか「少林サッカー」的なスポーツバカCG大作を想像してしまいそうだが、実際はそうでもなく地に足が着いて
いて、そしてそこからはるか上空を目指す爽やか青春卓球浪漫だった。
ちょっと変わったカメラワークや粋な音楽の使い方など、かなり出来のいい爽やか青春映画。
5人の主要選手たちによる激しいラリーにCGは違和感なく組み込まれていて、それほどケレン味はないが、かなり熱い試合を見せてくれる。
とにかく、県下最強の男・ドラゴンの存在感が素晴らしい。面構え、セリフの一つ一つ、威圧感あふれる動き、どれを取っても実にイカス。
彼と覚醒したペコの対決シーン、ドラゴンの重量感ある(それでもバリバリ動き回る)体捌きと、対照的に文字通り宙を舞う軽やかなペコの
フットワークの見事さ、そして二人だけの”聖域”での会話、美ナリ。
他のライバル、アクマとチャイナの、努力をしても凡人は天才には勝てないという事実に打ちのめされる様も我らボンクラにとっては共感する
こと必至。
スマイルを演じる眼鏡青年ARATAに危うく萌えかけてしまいましたぜダンナ。つーかあれはクールと言わず根暗というのでは?
○「ザ・ファイター」 ★★★★ (11.6.7/劇場)
STORY:ディッキーはかつて世界王者を追い詰めた伝説のボクサーで、寂れた街の英雄的存在。その異父弟のミッキーもボクサーで、
兄をトレーナー、母をマネージャーにして試合を重ねていたが、戦績は芳しくなかった。過去の栄光にすがりドラッグに手を出し自堕落な
生活を続けるディッキーがついに逮捕されたのをきっかけに、ミッキーは家族と別れ、恋人のシャーリーンと共に自立の道を選ぶが…。
クリスチャン・ベールがオスカーに輝いた記念に観賞。
かつてはどーでもいい映画のために30kgも減量して、直後にバットマンを演るためにまた30kg増やしたという頭のおかしい伝説を
持っているわけだが、今回も役になりきるために歯を加工し頭髪を抜き、テッペンハゲで大熱演。エンドロールでモデルになった当人が
出てくるのだが、話し方とかそっくりで笑ってしまった。
つーわけで実話を元にした二人のボクサーの物語。天才肌だが享楽的で堕落した兄とクソマジメで損な性格の弟。母以下他の家族も
ろくでなし揃いで、手を切った弟はまっとうなスタッフの元で快進撃を続けるが、絶体絶命の危機を救ったのは決別したはずの兄の
アドバイスだった。
つーわけで兄弟の熱い絆はすげえわかるし、彼らを影から支える頼りない太ったお父ちゃんもイカスのである。が、母親と姉軍団が実に
本当にまことにまったくもってうざってえ。頭でなく子宮でものを考える連中はこれだから…。
家族のみならずヒロインにもその傾向があるのがまた困りもんで。ベールの助演男優賞は納得だが、母ちゃん役の助演女優賞は異議あり
まくり。こんなの絶対おかしいよ。
その辺がマイナスでなんだかモヤモヤ。ボクシングシーンはなかなか良かった。実年齢では年上のマーク・ウォールバーグが弟役を
演じるキャスティングの妙。
○「ファイナル・ファイター」 ★★ (01.10/TV)
STORY:第二次大戦が終結して故郷に戻ってきたジェット。しかし街では進駐してきた米軍兵が我が物顔で暴虐の限りを尽くしていた。兄貴分
のチョウの元で働きだしたジェットだが、米兵の悪逆非道ぶりについに怒りが爆発し、叩きのめしてしまう。そのことを恨みに思った米兵はジェット
のみならずその周囲の人間にまで危害を加え始める。そして、愛する者たちを奪われたジェットは復讐鬼と化す…。
我らがジェット・リーの初監督作品。
いつもは涼しい顔で悪党どもを完膚無きまでに蹴散らすジェット・リーだが、この作品では大苦戦する。ビデオのジャケ裏を見ると、海外から
それなりの肩書きを持つ武術家を呼んでいるようなので、遠慮したのか?
バーの中に作られた特設リングで争われたライバルとの一騎打ちは、「ぬん!」とばかりに窓の外に放り出されて明らかに敗北したのにも
関わらず、戻ってきて場外乱闘に持ち込みさらに凶器攻撃まで使い、うやむやのうちに引き分けという格好悪さ。
愛する者たちを殺されて臨んだ廃工場での最終決戦も、凶器を多数使用するも力及ばず、偶然スイッチが入った機械のクレーンに敵がブチ
当たって勝利というショボイ幕切れ。うーん。
○「フィッシュストーリー」 ★★★★ (09.7.15/劇場)
STORY:1975年、パンク黎明期の売れないバンド・逆鱗の最後の曲「FISH STORY」。その間奏には1分の無音部分があった。1982年、
その部分で女の悲鳴が聞こえるという噂が流れ、冴えない青年・雅史は真夜中の運転中独りでその曲を聴く羽目に。2009年、寝起きの悪い
女子高生・麻美はシージャックに巻き込まれる。2012年、巨大隕石の衝突であと数時間で地球が滅びるその時、あの曲を聴く青年がいた…。
伊坂幸太郎の原作作品を「アヒルと鴨のコインロッカー」に続いて中村義洋が映画化。
遠い昔(まあ30年前だけど)にある曲に込められた想いが巡り巡って現代、地球を救ってしまうなんて壮大なフィッシュストーリー(=ほら話)。
まあ実際は、どっちかというと「風が吹けば桶屋が儲かる」的な連鎖を楽しむピタゴラスイッチな物語。
ある曲によって4つの時代がガッチリ繋がっていく、というわけではないのがちと残念。どっちかっつーと「SIREN2」モードの高橋真唯の予言
がその後の運命を左右してしまったような気がする。
文庫化されてないので未読の原作では世界の危機は隕石衝突なんて大袈裟なものではなく、これは映画のみの演出。つーか原作者の
別の作品「終末のフール」へのオマージュのつもりかね。でもあの世界の素敵な人たちも助かってほしい。
’70年代の時代を先取りしすぎて売れなかったバンド「逆鱗」の面々はギラギラしていて印象的。でもドラマーが阪神の下柳に似ていて気に
なって仕方がなかった。
’80年代の主人公を演じるは濱田岳。最早冴えない青年を演じさせたら日本で一番くらいではないだろうか。
’00年代の主人公は多部未華子。NHK朝の連ドラのヒロイン役はなんだかすげえブサイクに感じるのだが、今作では実にかわええ。本来の
魅力が出ていて思わず多部部部員になっちまいそうになった。彼女を守り邪教集団と戦う正義の戦士(笑)に森山未来。
脇を固める俳優陣も、大森南朋を筆頭に石丸謙二郎、波岡一喜ら個性派揃いで楽しい。
○「風雲 ストームライダーズ」 ★★ (01.3/ビデオ)
STORY:強き者が正義の群雄割拠の時代。雄覇は予言に従い風と雲という二人の少年を養子にし、その武力をもって領土を広げていた。
しかし、雄覇は風と雲によって倒されるという予言には続きの部分を知った彼は、成長した風と雲を殺そうとする。重傷を負わされ、愛する者を
失いながらもかろうじて逃げ延びた二人は伝説の剣を手に入れ、雄覇に闘いを挑む。
キチガイに刃物、香港映画にCG。
VFXという最新技術を手に入れた香港映画界が作ってしまったこの映画は、いわば実写版ドラゴンボール。当たり前のように(歩く延長という
感じで)誰もが空を飛び、皆気弾を飛ばして闘い合うその様は絶句。
荒唐無稽というのはオイラにとっては誉め言葉以外の何者でもないのだが、この作品は加えてストーリーが支離滅裂すぎるのでちょっと
いただけない。全編CG使いまくりで闘いまた闘い、だったら万々歳だったのだろうが、なまじストーリー性を持たせた上にそれがどーしようもなく
破綻しているのは駄目すぎる。
そのCGも、いくらなんでもベッタリ頼りすぎ。やっぱり肉弾アクションもしっかりしなくちゃ燃えないぜ。
風と雲の美青年主人公ズを完全に食っちまっている敵役が千葉真一。イカス!
○「フェーズ6」 ★★ (10.4.26/劇場)
STORY:致死率100%の新型ウィルスが蔓延しほとんどの人類が死に絶えた世界。感染を免れた陽気だが粗暴なブライアンと、弟の
物静かで優しいダニー、ブライアンの彼女のボビーとダニーの級友のケイトの4人は、ウィルスが死滅するまで立て籠もろうと少年時代
の思い出のメキシコ湾の海岸を目指していた。しかし車を手に入れるためやむなく同行を許した感染者からボビーが感染してしまい…。
ゾンビの出ないゾンビ映画、そんな印象を持って観にいったのだが、まんまその通りだった。
「28日後」なんかが非常に近い。ゾンビだウィルスだをダシに人間の脆さ・醜さを描いたりなんかしちゃったり。
襲い来るゾンビが出ない上にほとんどの人間が死に絶えて登場人物も少ないんで、そりゃあ低予算で仕上がるわさ。
絶望的なラストも静かすぎて物足りない。
○「フォーエバー・フィーバー」 ★★★ (01.9/TV)
STORY:’77年のシンガポール。ブルース・リーに憧れる普通の青年・ホックは間違って入った劇場で「サタデー・ナイト・フィーバー」を見て、
その虜になってしまう。ダンス大会の出場目指して特訓を開始するホックの前に、上流階級のライバルの登場と嫌がらせ、素敵な恋の予感、弟の
カミング・アウトと両親の拒絶と様々な問題が山積みに。果たしてブルース・リーとジョン・トラボルタの助けの下、ホックは優勝できるのか?
シンガポール発の見ると元気になるボンクラ青年応援映画。
主人公が悩んでいると、「サタデー・ナイト・フィーバー」のスクリーンから主演のジョン・トラボル太が抜け出して励ましてくれるという展開が
笑えるのだが、そのトラボル太役がまるで似ていないのがさらに笑える。
さらにクライマックスのカンフーシーンでは主人公はブルース・リーを憑依させて大活躍!
○「フォーガットン」 ★ (05.6.15/劇場)
「バカ映画たちの挽歌」コーナー参照。
○「不思議惑星キン・ザ・ザ」 ★★★ (02.2/劇場)
STORY:モスクワに住む建築技師ウラジミールは、街角で出会った大学生ゲデバンと一緒に、ひょんなことから砂漠の惑星に瞬間移動して
しまう。そこで二人が出会ったのは、釣り鐘型の宇宙船に乗る二人の薄汚い強欲な中年男。ウラジミールの持っていたただのマッチがこの星
ではものすごい価値のある物だと知り、二人はそれで宇宙船の加速器を買って地球に戻ろうとするが、次々とトラブルに見舞われ…。
ク〜!
’86年ペレストロイカに沸くソ連で作成されたものの、「税金を使ってこんなしょーもないもの作るな!」と批評家たちにボロクソに貶されて
しまったこの映画は、ところが公開されてみると若い世代からカルト的人気を獲得し、ついには21世紀の日本で上映されてしまうほどになって
しまった。確かに、これは「お偉いさんにはそれがわからんのですよ!」となるわなあ。
とにかく、口で説明するのが難しい、ヘンテコな世界のヘンテコな人々がヘンテコな機械ともたらすヘンテコな物語。
登場人物も、強欲だったりボンクラだったり手癖が悪かったり林家こん平をさらに薄汚くしたような顔だったりとクセだらけで、この雰囲気は
実際に見てもらわんと伝えきれない。
ろくでもない人間ばかり出てくるので序盤は胸くそ悪くなるし、ちょっと尺が長いのだが、独創的な映像でなんとか飽きずに最後まで見られるし、
ラストはいい感じで、ちょっと感動する。
そして、この映画を見た者の宿命として、叫んでおこうではないか、ク〜!
○「武士道シックスティーン」 ★★★ (10.6.28/劇場)
STORY:剣道中学王者の磯山香織は、最後の大会で西荻早苗に敗れた自分が許せず、彼女を追って同じ高校に入学する。勝利至上
主義の香織に対して、勝ち負けに関係なく剣道を楽しみたいというお気楽な早苗。それが許せない香織は、自分に相応しい好敵手に
育てるべく嫌がる早苗をしごき上げる。だが、二人の奇妙な友情は、県大会で負傷した香織の代役の早苗が勝利したのを境に変化が…。
人気青春小説の映画化。原作未見。映画もスルーしそうだったが、評判がよかったのでチェックしてみた。
成海璃子と北野きいのダブル主演。
青春していてなかなかよかったのだが、剣道なので面を着けてしまうとせっかくの美少女フェイスが隠れてしまうのが難。
今風のJKの”柔”の早苗@北野きいと、愛読書は「五輪書」、休み時間は瞑想に鉄アレイという剣道バカの”剛”の香織@成海
璃子が、出会いを通じて成長し壁にぶつかりそれを乗り越えていく物語。
屈託なくニコニコしている早苗に対して、常にムッツリ仏頂面の香織が笑顔を見せるようになる物語。
つーわけでヒロイン二人の頑張り如何でだいぶ作品の出来が変わってくるわけだが、まあ普通の役どころの北野きいに対して、ミス・
ブシドーと呼びたくなる強烈キャラを演じた成海璃子は実に頑張っていて素敵っつーか、すげえ。試合中のドスの効いた掛け声と
眼力、恐っ!(それにビビリまくってヘロヘロな声を上げる北野きいがかわええ。)
脇役の娘らも含め、美少女映画としては上出来。道着姿はかわええのお。
作品としても破綻なくよくできているとは思うが、もう少し試合シーンが多かったらもっと盛り上がったかなあ、と。
あと巌流島対決がなあなあなのが残念。
○「伏 鉄砲娘の捕物帖」 ★★★ (12.12.10/劇場)
STORY:江戸時代。猟師の祖父を亡くした浜路は、唯一の肉親である道節を頼って江戸に出てくる。江戸では人の魂を喰らう半人半犬の妖怪・伏の
捕り物の話題で持ちきりだった。8匹いた伏も残りは2匹。道節は伏を狩って浪人暮らしから脱出しようと、腕のいい猟師である浜路を呼んだのだった。
浜路はミステリアスな美青年・信乃と出会い、互いに惹かれ合っていく。浜路と道節は見事7匹目の伏を討ち果たすが、最後の1匹の正体は…。
直木賞作家・桜庭一樹の原作をジブリ出身の宮地昌幸が映画化。
…なんかこう、せっかく劇場で掛かるTVシリーズの延長でない長編アニメーションなのに、ズバ抜けているものがない。作画も演出も設定も、
これは、というものがない。つまらなくはないのだけれど。
映画なんだからせめてもう少し作画のクオリティ上げようぜ。画面から漂うのは、ジブリ臭というよりは、天外魔境臭?
素人俳優をメインで使わなかったことは評価できる。当たり前の話なんだけどね。
○「不都合な真実」 ★★★ (07.4.26/劇場)
アル・ゴア−2000年のアメリカ合衆国大統領選挙で、アホのブッシュに疑惑の判定負けを喫し政治の舞台から去った男。
彼はその後、地球温暖化の危機を訴える講演を全米各地で行い始めた。次第に注目を集め始めたその講演は、今や世界各国で行われて
いる。
この映画は、その講演を再編集したドキュメンタリーである。
地球温暖化の最たる原因は二酸化炭素の排出過多である。どうすればそれを抑えられるのか、抑えなければ地球はどうなるのか、そして、
現在、既にどのようなことが起こっているのか…豊富な映像とアメリカンジョークを交えたゴアの講演は非常にわかりやすい。
とはいえ、その内容は我々日本人なら大抵は知ってはいるレベルのものである。(知っていると対策をしているは別問題。)それでも、現実
のヤバイ映像を見せつけられては、襟を正さずにはいられない。
問題は、この講演の元々の対象であるアホのブッシュに票を投じる無知で蒙昧なホワイトトラッシュ層はこの現実を知らない、もしくは
”不都合な真実”を知られては差し支えのある企業や団体に目を塞がれているという薄ら寒い事実である。くわばらくわばら。
二酸化炭素排出を極力減らそうという映画を車を往復4時間も走らせて観に行くという矛盾。
○「フライ、ダディ、フライ」 ★★★ (05.7.22/劇場)
STORY:平凡ながらも幸せな日々を送っていた会社員・鈴木一。が、最愛の一人娘が有名議員のドラ息子でボクシング高校全国大会連覇して
いる石原に殴られ入院させられてしまう。金でもみ消そうとする石原を娘のために殴り飛ばそうとする鈴木だが、間違って隣の高校に乱入した上
に、そこの生徒の朴舜臣にKOされてしまう。舜臣とその仲間たちの力を借りて石原を殴り飛ばすべく特訓を開始する鈴木だが…。
「GO」の金城一紀が脚本を書き下ろした青春ムービー。つーかまた在日とかネタを入れるし。
罪もない娘をボコった極悪不良をダメオヤジが一念発起して特訓を重ねて殴り倒す、というそんなに目新しくもない話で、それ以上でも
それ以下でもないところが弱いが普通に面白かった。さほどケレン味はないのだが地味に面白いと思ったら、監督は「油断大敵」の人
なのね、納得。
一応、主人公をしごく、心にブルース・リーを宿す高校生との疑似親子関係みたいなのも描かれるのだが、弱い。
主人公の平凡な中年に堤真一。あんまり平凡に見えないけど。特訓のシーン乙。つーか前に観た映画が「姑獲鳥の夏」なんで正反対な役
どころに苦笑。
彼を導くファイターに岡田”ぶっさん”准一。素直にカッコイイ。誘い受け。ファンは必見つーか書かんでも観るだろうが。
敵のチンピラにK1ファイター・須藤元気で、実に憎たらしく好演。
主人公の娘にニセなっちゃん。その友達が渋谷飛鳥なのだが痛い演技力。あれ?史上最悪のアレの中では輝いていたのに………他の
キャストの演技がそれよりも酷すぎたんだな、アレの場合は。
主人公が乗るバスの常連客&運転手が徳井優やら田口浩正やらハデヘンやら濃ゆい面子で、実に輝いていた。
○「BROTHER」 ★★★ (01.11/TV)
STORY:抗争で組長を殺され、日本に居場所を失ったヤクザ・山本は、単身ロサンゼルスへ向かう。が、数年ぶりに再会した弟・ケンはセコイ
ドラッグの密売人になっていた。日本の頃と変わらず理不尽に暴れまくった山本は、いつしか裏社会の顔となっていく。ケンの友人・デニーや
山本を追ってきた舎弟・加藤らを加え、山本の”ファミリー”は破竹の勢いで勢力を広げていくが、それ故に他の巨大組織に睨まれ始める…。
オイラは北野映画が苦手だが、この作品は好きだ。世間ではこの映画は北野作品の中では評価が高くないという事実と関連性があるのは
間違いないであろう。(と思ったのだが、世間では酷評された「Dolls」はオイラも同意見なのであった)
アメリカに降り立ったたけしが「ファッキンジャップくらいわかるよバカヤロウ」と暴れまくり、あっという間にシマを切り取り、組を形成してしまう様
は非常にテンポよく楽しく見れたのだが、寺島進が好演する舎弟が唐突に死んでしまう辺りから、話は加速的に暗く悲劇的に。
自分の死に場所を求めるのは構わんが、やたらめったら巻き添えにしちゃあかんがな。
あと、どこかで聞き覚えのあるようなありきたりな音楽は相変わらずいただけない。
○「Black & White/ブラック&ホワイト」 ★★ (12.4.25/劇場)
STORY:アグレッシブなFDRと真面目で慎重なタックはCIAの凄腕エージェント。性格が全く違う2人だが公私ともに息の合った名コンビだった。
しかしお互いローレンという魅力的な女性と知り合い、恋に落ちてしまう。紳士協定を結んだ2人だが、職権を濫用した妨害工作はエスカレートする
ばかり。一方、恋愛経験がほとんどないのに突然二股生活に突入してしまったローレンはどちらも選べず、どうすればいいか悪友に相談するが…。
予告編が面白かったので観てみたけれど、予告編に入っていた部分が面白い箇所のほとんどだったでござる。
もっと主人公コンビの足の引っ張り合いが大人げなく派手にエスカレートしていくかと思ったのだが…。
そもそも、二股掛けてどっちの男も良すぎて選べないなんてニヤニヤしているヒロインが不愉快。塩谷瞬に謝れ。でも冨永愛は「デビルマン」
に出てた呪いなので自業自得。
これでもうちょっとかわいい顔だったら、かわいいは正義の法則に従って、仕方ないなあと思えるのだが。なんだそのエラ。
いや、冨永愛のことじゃないですよ。いや、冨永愛も全くかわいくないけど。チョナンカンかと思った。
その他、タックの元妻もうだつが上がらないように見えたタックが実はCIAのエージェントで頼りになると知った途端に手の平を返してすり寄って
くるし、ヒロインの悪友も下品極まりないし、ロクな女性が出てこないのも減点材料。
いや、冨永愛のこ(ry
○「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」 ★★★ (09.11.24/劇場)
STORY:いじめに遭い高校を中退した後10年近くニートを続けていた通称”マ男”は、母の事故死を機に就職を決意。プログラムの資格を
取得するも中卒故に職が見つからない彼だったが、境遇に同情した黒井システムの社長採用される。希望に満ちあふれた入社初日。だが
そこで彼を待っていたのは無能で横暴な上司、くせ者の同僚、過酷なノルマ、定時退社は都市伝説、残業手当なしのブラック会社だった…。
2ちゃんねるのスレから書籍化された感動の実話(笑)がなんと映画化。
どんだけネタに飢えているのか映画界。
つーかPCの画面でスレを追うからまあ楽しい話だというのに、映像化しておもろいのかという根本的な疑問があるのだが、そこはそれ、
「キサラギ」、「シムソンズ」の佐藤祐市監督が如才なく娯楽作に仕上げているのでご安心を。まあ無難ともいうのだが。
でもまあ、最終的に艱難辛苦を乗り越えて主人公が人間的に成長して感動の終幕という無難な話なのだが、過酷な労働条件でこき
使う会社やそれがまかり通ってしまう世の中についての問題提起がないのはよろしくないよなあ。
ここまで酷くはないけれど、どこの会社も、そこで働く人々も、いろいろ問題を抱えてはいるわけだが、とりあえず高校は出とかないといかん
ともしがたいよ、ということだけは伝わる作品。
主人公の三国志ヲタの元ニートに小池徹平。頑張ってはいるけれど、話的にはもっともっさいのが主人公じゃないといろいろ成り立たない
気が。だって、てっぺークンならホストにでもなりゃーいーじゃなーい。
主人公の心の支え、謎の完璧超人に田辺誠一。相変わらず線の細いいいひと役ははまる。
無能なくせに横暴な上司に品川祐。これは当たり役。ウザ芸人の面目躍如。本当にうぜえ。
その腰巾着にして無能なガンオタに池田鉄洋。こちらも相変わらずのうざい役。つーか原作になかったガノタ属性があまり生かされて
いないっつーかいろいろガンダムネタの再現度が低くて腹が立つ。
○「プラネット・テラー in グラインドハウス」 ★★★★★ (07.10.2/劇場)
STORY:テキサス州の片田舎。軍基地から感染すると人間を凶暴なゾンビのように変えてしまう毒ガスが流出し町を汚染してしまう。ダンサーの
チェリーは感染者に右足を食いちぎられるが元恋人のエル・レイに助けられる。彼らは感染を免れた人たちと町からの脱出を計るが、ガス流出
の原因を作った軍の特殊部隊に捕らわれてしまう。チェリーは片足に義足替わりにマシンガンを装着し、生き延びるための戦いを始める…。
映画バカ・タランティーノが盟友(すなわち矢張りバカ)ロドリゲスと組んで、B級映画2本立てをオールナイトで上映していた往年の
”グラインドハウス”を再現した企画もの。
だがしかし日本の配給会社のお偉いさんにはそれがわからんのですよ!より儲かるので二分割した上にウソ予告まで削るという暴挙。
チェリーよ、こいつらこそ必殺の片足マシンガンで蜂の巣にしたれ!
で、本編の感想。タラやんと違ってグラインドハウスに思い入れの無かったロドやんが作ったのは、”オレの見たかったゾンビ映画”。
群れ集いて人間の脳味噌を貪り喰らうゾンビども(厳密にはゾンビじゃないんだけど。)に立ち向かうは謎の過去を持つ凄腕のナイスガイ!
ポケバイに乗ってもカッチョエエぜ!更に注射器常備の麻酔使いのヤングマザードクター!正義に燃える古株保安官!テキサス一の
バーベキュー職人!そしてそしてゾンビに片足を食いちぎられるも義足代わりにマシンガンを取り付けて戦う今年最高のファイティング・
ヒロイン!拳銃がゾンビの頭を吹き飛ばしナイフが首を切り落とす!ブルース・ウィリスは膨れ上がりタランティーノはドロドロに溶ける!片足
マシンガンはガンガンエスカレートしついには宙を舞いグレネードまで発射!爆発!爆発!また爆発!中学生魂炸裂の最高な映画だぜ!
二本立ての他方であるタラやんの「デス・プルーフ」がライフルで一撃必殺だとしたらこっちはショットガンで手数で勝負という感じ。こっちの方が
全編ひたすらテンションが高く好みなのだが、疲れるといえば疲れる。
「人生のある時点で、ムダな才能が全部役立つ時が来る」。けだし名言。
日本公開版ではカットされてしまったウソ予告の中で、ロドリゲスが作ったからかダニー・トレホ主演の「マチェーテ」だけは流されたが、実に
胡散臭くて素晴らしかった。他のも見たかった…。
○「プリンセス・トヨトミ」 ★★★ (11.6.15/劇場)
STORY:会計監査院のその手腕から”鬼”の異名を持つ松平は部下の鳥居とゲーンズブールと共に大阪に出張する。そこで一行は、
お好み焼き屋「太閤」の息子で、男の子なのにセーラー服で登校する真田大輔と幼なじみの橋場茶子と知り合う。社団法人OJOにきな臭さ
を感じた松平は調査を進めるが、そこに現れた「太閤」の店主に大阪城の地下に案内される。そこには国会議事堂が隠されていた…。
「鴨川ホルモー」(原作は傑作だが映画は駄作)、「鹿男あをによし」の万城目学の直木賞候補作を映画化。
名作ドラマ「鹿男あをによし」のスタッフが再集結。
短刀を直輸入に言えば、原作をうまくまとめ直しているし、無人と化した大阪の街、大阪城に大挙して詰め寄せる男たち、と小説よりも
実写映画にした方が映えるシーンも多かったので、原作<映画という珍しいパターンの作品。
キャラの性格つーか性別の変更や話の圧縮などがいい方向に向いている。
が、しかし、原作が持っている大きな弱点をそのまま引き継いでいるので映像化に当たってどれだけ頑張っても点数は低かったり。
今の時代に「守る」って言っても誰から守るのよ?とか、結局私情に流されて5億円の税金の無駄遣いを見逃すんかい!とか。
性同一性障害の問題とかも中途半端だし、荒唐無稽さが突き抜けてないんだよなあ。
父親から息子へ、大事なものが受け継がれる、という描写が美しく、おっさん向けの映画かもだ。
でも、息子が何人かいたら長男にしか継承されないんだよね?それなのに街が無人になるって、大阪は一人っ子ばっかなのかい。
原作では浅野だ宇喜多だ島だ長曽我部だと太閤ゆかりの名字が次々と出てきてニヤリとしたものだが、映画ではそこがバッサリとカット
されていて残念。そのくせオリジナルキャラを出して名字が全然関係ない漆原というのは浪漫がなさすぎ。
主要人物の、頼りないおっさんを綾瀬はるか演じるドジなおねいさんに、有能で美人な女性部下を岡田将生演じる有能で美形な部下に、
それぞれ変更したのはそんなに違和感なし。
綾瀬はるかはドジで天然なおねいさん役がなかなか似合うなあ。
今回、無人の大阪の街を走るシーンがあるのだが、まるでゲームやアニメのように乳が揺れる揺れる。
玉木宏がカメオ出演しているのだが、なんでこんなチョイ役で、と思ったら、綾瀬はるかと一緒に出ていた「鹿男あをによし」への
オマージュなのね。同様に大阪の剣道部の顧問の先生もカメオ出演。
事件の鍵を握る橋場(羽柴というわけね)茶子役の沢木ルカ嬢は、なかなかにオイラ好みの短髪美少女で将来に期待。ただ、ケツアゴ
気味なのが心配だ。
セーラー服男子のダイスケはんの人がかわいくないのは原作通りなので腹も立たない。
主演の堤真一や中井貴一は、適度に力の抜けた演技。手抜きというわけでもなく、作品の雰囲気にはマッチしてるかな。
○「フルタイム・キラー」 ★★ (04.3.4/劇場)
STORY:O(オー)は日本人ながら、香港黒社会NO.1の殺し屋であった。野望に燃える新人殺し屋トクはOを殺しその地位を狙っており、その
ためにOの家政婦チンに近づく。チンは影のあるOと陽気なトク、両者に好意を抱いていく。一方、インターポールの敏腕刑事リーはOの足取り
を執拗に追い続け、彼のそばに近づきつつあった。そしてついにO・トク・リー、三者入り乱れての死闘が開始される…。
主演に日本から反町隆史を迎えて送る香港映画。共演はアンディ・ラウ。
NO.1殺し屋とその地位を狙う野望に燃える新人との死闘という、スタ公vsバンデラスの「暗殺者」を思わせるプロット。
クールな殺し屋NO.1に反町、猛き若造にアンディ。
って、どー考えても逆だろそれ?
この段階で見る前からすでに不安要素満点なのだが、実際見てみると…。
冒頭の反町のヘボいモノローグとヘボい殺しの手腕に早くも予感的中で頭を抱える。アンディがド派手に暗殺をやってクライアントに「Oより
手際が悪い」と怒られるのだが、目糞鼻糞じゃん。
で、(たぶん)反町の中国語あるいは英語が到底映画には使えないレベルだったことにより事態は悪化の一途をたどる。
仕方がないのでアンディとヒロイン役のケリー・リンが日本語で反町と会話をするという設定に。香港映画だというのに。
なので重要なシーンだというのにアンディの日本語がヘボくて脱力してしまうという「キル・ビル」状態に。ヤッヂマイナー!
しかも香港人であるケリーの日本語の方が反町のより綺麗に聞こえるという追い打ちが。反町のセリフも含めて字幕付けて下さい。
とまあ、前半は席を立っちまおうかどうか悩むほどの出来だったが、後半は畳みかけるアクションでなんとか見られる出来。
しかしアンディ演じるトクはテンカン持ちという設定のため、泡噴く噴く。カニかい。
○「ブレイブストーリー」 ★★★ (06.7.11/劇場)
STORY:ワタルは普通の11歳の少年だったが、両親が突然離婚し、母親は心労で倒れてしまう。その時彼の脳裏によぎったのは謎の転校生・
ミツルの言葉。「あの扉の向こうに行けば運命を変えられる」。しかし失敗すれば二度と帰っては来れないという。勇気を出して飛び込んだワタル
がたどり着いたのは”幻界”。5つ集めれば望みが叶うという宝玉を求め、勇者見習い・ワタルの冒険の旅が幕を開けた…。
This is the pageant This is the huge dream This is the brave story
もう逢えないなんて 言わないで 君を讃えよう
宮部みゆきの原作をフジテレビのテレビ屋どもがアニメ映画化。
ずいぶん時間と金を掛けているようでクオリティは流石に高いのだが、いかんせん致命的に尺が短い。
脚本自体はしっかりしていて、運命を変えるために異世界に身を投じたワタルの旅の顛末をしっかり描いているのだが、ブ厚い原作をたった
2時間ぽっちに圧縮したためにペラペラな話に。
最初と最後をしっかり描いている分、中盤をバッサリとカットしているため、ワタルがさして苦労もしないまま仲間との友愛を深めないままトントン
拍子にラスボスまでたどり着いてしまっている感じでどうにも盛り上がらない。
三部作や前後編とまでは言わずとも、せめてあと1時間は欲しかったところ。勿体ない。
主人公ワタルの声を当てるは松たか子。声ばっかりは非常にかわいい。元々歌手としてもいい感じだったし。
概ねお笑い畑の人たちは好演していた。つーか大々的に声優に挑戦!とか煽っといて実際の所セリフは1つ2つだったりなんだが。
(だったら全員非声優で統一しちまえばいいのに中途半端に声優を使っているのがまた気にくわない。)
対して俳優かつ別に演技力があるわけでもないウエンツ瑛士と常盤貴子は痛い痛い。
それにしてもよういずみおおは上手いもんだなあ。
スタッフロールを見てたら「妖怪大戦争」に続いての大極宮の名前にのけぞる。どこに出てんだよと思って調べたところ京極夏彦は常盤
貴子の側近の白トラとのこと。芸人どもより全然デカい役じゃん!
まあショタ向け作品としてはオススメっつーことで。ミツルきゅんのツンデレっぷりときたら…。
○「ブレインデッド」 ★★★★★ (01.2/ビデオ)
STORY:マザコン青年ライオネルは雑貨屋の占い好きの娘・パキータと恋に落ちるが、嫉妬深い母親がそれを許すはずもない。ところが、
デート先の動物園までストーカーしていた彼女が、凶暴なラットモンキーに噛まれたことが原因で死んでしまった。が、ゾンビとして蘇生。母親
思いのライオネルはその事実を隠そうと必死だが、彼女に殺されてゾンビとなる者が増えていき、ついに…。
ジャンルとしては、ホラー。ものすごくスプラッター。「力王」以上に全編血と肉まみれで構成されている。
そして恐ろしいことに、めちゃくちゃ笑える。スプラッター描写を積み重ねていくことによって、見る者の恐怖感や嫌悪感の限界
を突き破ってしまうのだ。タガが外れてしまうと、あとはもうやりすぎ描写にただただ爆笑してしまうのみ。
スゴイよこの監督!最高!見ろ!見て笑え!のけぞれ!
話としては、マザコンの主人公ライオネルの母ちゃんがゾンビになってしまい、さらにその母ちゃんにかまれた人もゾンビになって…という至極
ありがちな話なのだが、皆どこか妙な登場人物たちとブラックな笑いの演出でグイグイと話は引っ張られていく。神父さんが何故かめちゃ
くちゃ強くて、墓場に現れたゾンビの前に颯爽と立ちはだかり、香港映画張りの蹴りでゾンビを分解してしまったり、変に面倒見のいい
主人公がとりあえずかくまったゾンビのために甲斐甲斐しく食事の支度をしたり、赤ちゃんゾンビをあやしに公園に散歩に行ったり…。
そして、主人公の家で行われていたパーティにゾンビが乱入して辺り一面大惨劇!という血で画面中真っ赤な後半はもう絶句。
この手のものが苦手な人はしばらく肉を食えなくなること請け合い。
それほど凄惨なのにも関わらず、めちゃくちゃ笑えるのである。ゾンビの暴れっぷりやられっぷりについてはもう挙げていけばキリがないくらい
ブチ切れていて感動。
「力王」以上に見ていて体力を消耗する作品なので、連続して見るのはつらいものがあるが、手元に置いておきたい1本。
ちなみに、たいていのレンタルビデオ屋さんに置いてあると思うが、ジャケットのセクシーな看護婦さんは本編には出てこないので注意。
しかしまあ、こんなもん撮ってた人が10年後には「ロード・オブ・ザ・リング」なんて超大作を撮っちまうんだからまったく。
○「プレステージ」 ★★★★ (07.6.26/劇場)
STORY:19世紀末、ロンドン。若き奇術師アンジャーとボーデンは共に修行する友人だった。だが、ボーデンのミスで縄抜けに失敗した
アンジャーの妻が事故死し、ボーデンの不誠実な態度にアンジャーは復讐を誓う。不毛な報復合戦を繰り広げながら有名になっていく二人。
タネのわからない瞬間移動をものにし、名声も幸せな家庭も手に入れたボーデンを憎むアンジャーは奇術のヒントを奪い、ある男を訪ねるが…。
♪芸のためなら女房も泣かす それがどうした 文句があるか
二人の天才マジシャンが己が人生と経験と魂を込めて奇想天外豪華絢爛な奇術合戦に挑むという映画で、しかもその二人を演じるのが、
片やウルヴァリン、ヴァン・ヘルシングのヒュー・ジャックマン、片やクラリック、バットマンのクリスチャン・ベールというんだから、そりゃもう
楽しみでないはずがあろうか?いや、ないっつーもんですよ。
ところが実際に観てみれば、現代のようにマジックが発達してなかった時代でトリックは原始的、そしてそれ以上に二人のいがみ合いも
なんとも原始的で苦笑。
あんたらいい大人なんだから途中で和解しなよ、とツッコまずにはいられない嫌がらせの応酬がある意味見所。
そして騙し合いの果てに文字通り命懸けのトリックで”教授”(芸名)を死刑台に送った”偉大なるダントン”(芸名)。ところがところが…というラスト
の二人の”瞬間移動”のトリックが物議を醸しているっつーか非難囂々なわけで。
片方はあまりにも単純すぎるトリックで、いくらなんでもそんな手垢のベタベタついたもん使わんだろうと思ってたんで、引っかかてしまう。
トホホ…。注意して観ていれば見え透いた伏線ばかりなんで簡単に気づくはず。
そしてもう一方はといえば………ぶははははは!(爆笑)
つーわけでミステリーとしては大いに緻密さに欠けるが、どうにも憎めない作品。好き。
劇場に貼られていたポスターで、Mr.マリック、プリンセス・テンコー、マギー司郎(笑)ら日本を代表するマジシャンたちが映画を推薦して
いたのだが、その中にトランプマンがいて、ものすご〜〜〜〜〜く久方ぶりにその白い顔を見て感動したので★+1。(ヲイ)
○「フレディVSジェイソン」 ★★★★ (03.10.24/劇場)
STORY:エルム街。不死身の殺人鬼フレディは、大人たちの徹底した情報封鎖により、子供たちにその存在を忘れられてしまっていた。力の
源である子供たちの恐怖心を失い消滅の危機にさらされた彼は、クリスタル・レイクの殺人鬼ジェイソンを騙し、殺人を起こさせ、それに乗じて力
を取り戻す。だが、ジェイソンは彼の想像以上に暴れ回り、彼の獲物までも殺しまくってしまう。二大怪人の間の対立は深まっていき、ついに…。
「エルム街の悪夢」シリーズの悪夢を自在に操るカギ爪の殺人鬼フレディ・クルーガーと、「13日の金曜日」シリーズのホッケーマスクの
不死身の巨人ジェイソン・ボービーズ、’80年代ホラーの二大巨頭の夢の対決を「チャイルド・プレイ チャッキーの花嫁」のロニー・
ユー監督が描く。
でもなあ………、今更フレディとジェイソン言われてもあんまり怖いという感じがしないんだよなあ。いい加減両シリーズとも長すぎだし、
かたっぽには「ジェイソンX」なんて怪作が出てしまったしなあ。
つーわけで怖い映画ではないが、前半は’80年代ホラーの世界にドップリと浸れる懐かしきテイストだし、後半は二大怪人のガチンコ対決
が熱いしと文脈を押さえたなかなかの秀作。見る前からある程度予想がついているであろうオチもキッチリきまっている。オッパイもいっぱい
見れるぜ!
両シリーズを未見でも十分楽しめるとは思うが、やはりある程度予習しておいた方が格段に楽しめる。
つーかオイラも「エルム街」は最初のヤツしか見てなかったりする。しかもありゃあ中学に入るかどうかくらいだったと思うから…15年以上前かよ。
片や「13金」に至っては「ジェイソンX」だけしか見てねえし。
でも、ジェイソンってスライディング攻撃が強かったよなあとかポルターガイストと戦ったよなあとかいう記憶があったのだが………コレだった。
○「プレデターズ」 ★★★ (10.7.26/劇場)
STORY:傭兵のロイスが目覚めた時、そこは空中だった。パラシュートでなんとか地上に降り立ったが、そこは見覚えのない密林。
そして同じように落ちてくる男たち。集まった彼らは兵士・ヤクザ・死刑囚・暗殺者など殺しのプロばかりだった。やがて彼らは知ることに
なる。彼らは狩りを楽しむために集められた標的だということを。そして狩猟者=プレデターたちとの絶望的な闘いが始まった…。
ロバート・ロドリゲス制作総指揮による「プレデター」の続編。
が、監督は別な人なのでいろいろ痛し痒し。まあ、元々こまけえこたぁいいんだよ映画だし。
俺より弱いけれど倒すにはちょっと歯ごたえがあるヤツに会いに行く、というよく考えるとアレな思惑で地球から殺しのエキスパート
を集めてきたプレデターさん。例によって例の如く姑息に姿を消して一人ずつ狩っていくものの、最終的に逆襲されてさあ大変の
巻。
殺しのプロ地球代表たちも話のお約束上活躍する前に退場してしまう人がいるし、活躍させたらさせたでプレデターさんたちが
弱く見えるしで、なかなかバランスが難しいのう。
プレデターさんも今回は3人パーティにつき中盤以降は1体ずつやられていってしまう。物語の盛り上がりとしてはアリだけど、絶対的な
強さが薄れてしまうのは問題。ジャパニーズヤクザ、カッケェ!
なんつーか、もうちょっとはっちゃけてもよかった気がする。少し消化不良。
ローレンス・フィッシュバーン演じるところの生き残り兵士が悪い意味ではっちゃけてたのは印象的。
主演はエイドリアン・ブロディ。エイドリアンvsプレデター。
「戦場のピアニスト」でアカデミー賞を獲った後は、「ヴィレッジ」、「キングコング」と………微妙なフィルモグラフィだの。
ロドやん作品なのでもれなくダニー・トレホもいるよ。
○「ブロークン・アロー」 ★★★ (02.8/TV)
STORY:米軍の最新鋭ステルス機のテストパイロット・ディーキンス少佐が突如ステルスに搭載された核弾頭2発を強奪、機体を破壊し逃亡
する。「ブロークン・アロー」(核兵器消失)の報を受け、ペンタゴンは激しく動揺する。一方、同乗していて九死に一生を得たヘイル大尉は、
偶然知り合った公園監視官のテリーと共に、ディーキンスから核を取り戻すために追跡を開始する。
ジョン・ウー監督のハリウッド進出2作目。ジョン・ウーにしては漢泣き要素が少なく、鳩も飛ばない(笑)と物足りなさはあるものの、ノンストップ
アクションで頭空っぽにして楽しめる娯楽作品。
主演はクリスチャン・スレイターだが、悪役ジョン・トラボル太に食われまくり。やはりトラボル太には悪党が似合う。最後は土手っ腹に核
ミサイルの直撃を受ける熱演。
○「PROMISE 無極」 ★★★ (06.2.26/劇場)
STORY:「全てを手に入れる代わりに真実の愛だけは手に入らない」運命の女神と取引をした傾城は美しく成長し王妃となっていた。その前に
現れるは冷酷な公爵・無歓。王と王妃を救わんとする誇り高き大将軍・光明は刺客に阻まれ、大事をその奴隷の昆崙に託す。が、身代わりで
大将軍の甲冑に身を包んだ昆崙は傾城を庇って王を殺してしまう。主君殺しの汚名を着せられた光明だが傾城との蜜月の日々を手に入れ…。
「グリーン・デスティニー」のアン・リー、「HERO」・「LOVERS」のチャン・イーモゥに続き中国映画界の巨匠であるチェン・カイコーまでもが
”なんちゃって武侠”ものに参戦。
結論から言ってしまうと、上記映画のどれよりもバカである。ブラボー!もう全編ツッコミきれないバカっぷりでたまらん!
アジア各国のスターが演じる主人公3人がいずれも変人超人揃いでイカス!
まず登場するのは真田広之演じる大将軍・光明。もうその「真・三國無双」みてえな鎧兜だけでお腹一杯。
彼がわずか3千の兵力で挑むのは2万の蛮族。その蛮族がまたツノ付いた帽子にホネ棍棒という絵に描いたような蛮族ぶりでさらに爆笑。
彼らの罠で柳生博野牛の群れが谷に放たれ、囮の奴隷集団はなすすべなくハリケーンミキサーの餌食となっていくのだが、その中でただ
一人、韓流四天王チャン・ドンゴン(男塾死天王でいうと卍丸・嘘)演じる昆崙だけは猛スピードで逃げ続ける。四つん這いでも牛より速く
走り、普通に走り出せば高速すぎて崖の側面を走り抜けてしまうという爆走トマランナーぶり。
彼の逃げ足に攪乱された蛮族どもに一気呵成に攻め掛かる光明軍。光明は自ら陣頭で大立ち回り。
彼の得物は金玉。2つの金玉をぶーらぶーらと振り回し蛮族どもを叩きのめす様は圧巻。お主こそ三国一の金玉
使いだ!
そして見事蛮族を撃ち破った光明は大喜びの兵に胴上げされるというのが微笑ましいっつーか声上げて笑ってしまった。
そんな2人に対抗するのは香港スターのニコラス・ツェー。日本でリメイクするなら演じるのはミッチーしか考えられない胡散臭い気障な
ハンサム公爵を怪演。彼が手にするは人差し指を立てた右手フィギュアが先端に付いた棒(最初に持ってたのはサムズアップ棒だった
はず。)でそれだけで笑えるのだが、それで闘ってしまったりもするのがお茶目。他にも扇子をブーメラン状に飛ばしたりトリッキーな戦術で
いろんな意味で楽しませてくれる。あと部下の人間椅子のシーンが最高にオモシロカッコイイぜ!
とまあオカシイ人たちのオカシなドラマ&闘いを十二分に堪能できるのだが、終盤失速するっるーか最後の戦いがこぢんまりしているのと、
肝心のヒロインのセシリア・チャンちゃんがそれほど美人だとは思えなかったので意外に評価は伸びず。
でも十分立派なバカ映画。凧揚げとか、ぶははははは!
○「プロメテウス」 ★★★ (12.8.29/劇場)
STORY:近未来、地球の各地で発掘された遺跡から共通の星図が確認された。それが指し示す星に人間の創造主がいるのでは、という仮説の
元、調査隊がウェイランド社製の宇宙船・プロメテウス号で旅立つ。冷凍睡眠の果てにたどり着いたその星で、一行は遺跡と異星人の死体の化石を
発見する。だが、そこには恐るべき生物兵器が眠っていた。さらに、アンドロイドのデイヴィッドが謎の指令により秘密裏に不審な行動を取り始め…。
「エイリアン」のリドリー・スコット監督によるSFアドベンチャー。
………あのー、なんでこのタイトルなんですかね?「エイリアン・ゼロ」とか「エイリアン・ビギニング」とか「エイリアン・ライジング」とかにすれば
いいんじゃないないですかねえ。
つーわけで、実は「エイリアン」のプリクエルな映画で、斬新さもゼロ。どこかで見たことがあるような映像ばかりだしどこかで聞いたことがある話。
それ故に極端に外したりはせず無難であるとは言える。
しかしいろいろ頭が悪い。なんで遙か宇宙まで繰り出そうという人類の代表とも言うべき科学者があんな馬鹿ばっかりなんだ?近未来になって
退化したのか?
エイリアン幼虫も一日で腹の中であんなに成長するんかい。つーかアンドロイドは何がしたかったのよ?
二部作の前編という噂もあるけど、後編は異星人の本拠地にカチコミかけるのかねえ。
「ペイチェック 消された記憶」 ★★★★ (04.3.26/劇場)
STORY:近未来。フリーの技師マイケルは企業に雇われシステムを開発し、完成すると機密保持のためその間の記憶を焼かれて失い、代わり
に高報酬を受け取っていた。友人の社長・ジミーに大プロジェクトへの参加を打診されたマイケルは超高額の報酬に引かれ3年間の記憶消去に
応じる。だが3年後、計画を成功させた彼が受け取ったのは大金ではなく、19個のガラクタの入った封筒だけだった…。
「ブレードランナー」、「マイノリティ・リポート」などの原作で知られるSF作家フィリップ・K・ディックの短編の映画化。
監督は我らが漢泣き映画の名手ジョン・ウー。………って、ジョン・ウーとSFって食い合わせものすげえ悪そうなんだが…。
しかしご安心を。映画はSF色薄めのいつものジョン・ウー作品に仕上がっております。まあ、主役が便・溢れっ苦ごときなので漢泣き映画と
しては物足りないのだが、クライマックスでジョン・ウー魂の権化が脈絡もなく颯爽と神々しく光臨するので笑顔で許してやって下さい。
自ら一生遊んで暮らせる大金をもらう権利を放棄して、その見返りにピンクのヘアスプレーやら銀行のマッチやらといったガラクタの入った封筒
だけをもらって途方に暮れているうちに、更に殺し屋とFBIから事情も飲み込めないままに追われる身となったマイケルが、失われた記憶と真実
に迫るというのが話の大筋。
で、窮地に陥ったマイケルを要所要所で助けるのが封筒の中のガラクタ。クリップやライターをあっと驚く使い方で役立ててピンチを脱して
いくという流れ。
でで、この流れというのが、非常にアドベンチャーゲーム的な感覚。昔風のコマンド総当たりのアドベンチャーね。
ピンチになった時に”アイテムを使う”という選択肢が現れて、そこで正しいアイテムを使えば先に進めて、失敗すると撃たれたり電車に撥ねられ
たりアゴケツが更に割れたりジェニファー・ロペスと結婚したりしてゲームオーバー、と。
そこでスチャッと正しいアイテムを正しい使用法で使ってサクサクと窮地を脱していくのが実に小気味いいが、反面全く使用アイテムを
間違えないのがご都合主義っぽくて萎えるかも。
頭が切れる上に超人的な戦闘能力を誇る主人公(笑)を助ける、これまた頭も度胸もよく、足手まといにならない戦うヒロイン(笑)に
ユマ・サーマン。「キル・ビル」に続きファイティング・ヒロインを好演。つーか凛々しくて最高です、姐さん!今回は黄色いトラックスーツと日本
刀は使わないものの、高性能アームロボットを超精密に操って銃を撃つわ棒術で叩きのめすわの大活躍。あとストームばりに嵐を呼ぶぜ!
SF映画としてはちょっとアレだが、ド派手なカーアクションありの銃撃戦ありの大爆発ありので娯楽作としては大満足の出来。
○「ベクシル 2077 日本鎖国」 ★★★ (07.9.5/劇場)
STORY:アンドロイド製造の国連倫理規定に反発した日本がハイテク鎖国を実施して10年、日本最大手の大和重工が世界中で謎の暗躍を
見せ始めた。米国は特殊部隊”SWORD”の日本潜入作戦を決行。監視の目をくぐり日本国内に潜入したSWORDだが、待ち伏せを受け壊滅
する。辛くも生き残った女戦士・ベクシルは謎の女性・マリアに匿われる。そしてベクシルが見た変貌を遂げた日本の姿は…。
「ピンポン」の監督にして「アップルシード」のプロデューサー・曽利文彦監督による3Dライブアニメ。
まあCGによるキャラクターの出来は非常に良い仕上がりでございます。
が、いかに似せようとも人形は人形。似せれば似せるほどニセモノであることがより強調されてしまう気がする。
どうせニセモノなら割り切ってセルアニメでやっちまえばいいんだよ。
というのも、人間以外のCGスペクタクルシーンは、普通に昨今の実写映画で見れるようなレベルで全然目新しさがないのである。
「マトリックス」、「ALWAYS 三丁目の夕日」、「マッドマックス」…。つーか最後の作品に至ってはCGですらねえし。
つーわけで、この時代にわざわざフルCGアニメでこれを作る意味がまるでわからんのである。
では、意義は置いといて作品の中身は?といえば………うーん、ありきたり。
以下、激しいネタバレ注意。
ハイテク鎖国(笑)した日本に潜入して、その空白の10年間でどんだけハイテク(笑)化が進んだか、と見せかけて、蓋を開けてみれば
「ALWAYS 三丁目の夕日」なレベルに戻っていて、しかも隔壁を隔てた街の外は「マトリックス」なメカ軍団と「マッドマックス」なバギー
が走る一面の荒野って、頭捻った内に入りませんがな。
でも、センチネルなメカ軍団に地ならしされて富士山すら無くなって日本全国真っ平らってぇのは爆笑した。
んで黒幕の言動のあまりにペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラなありきたりさに失笑。3周くらい回っていっそ斬新なのか?
ヒロインのベクシルがアメリカ人という割には日本人と変わらん外見だし誰も英語使わんから後半語られる日本民族の尊厳とかの話がピンと
来ないし、彼氏の隊長は全く活躍の機会のないいらない子だし、脚本の練りがまるで足りませぬ。
黒木メイサ・ハラショー・松雪泰子というどんだけ宣伝効果が期待できるのか微妙どころの声優起用はそんなに悪くはなかったが、当然
良くもない。
アクションはどこかで見たことあるようなのばかりだが、技術力を発揮していてまあ普通に楽しめるのが救い。
見ている時はそんなに苦痛を感じなかったのだが、感想書いてみたらなんか貶してばっかになってしまった(笑)
そんなに悪い出来ではないですぞ。説得力ないけど。
○「ベニスに死す」 ★★★ (12.5.7/劇場)
STORY:1911年夏、ドイツの高名な作曲家・アシェンバッハは静養のためイタリアはベニスのリド島を訪れる。滞在先のホテルで、美少年・タジオ
と出会った彼は、あまりの美貌に心を奪われてしまう。芸術とは努力して積み重ねてこそ光り輝くものだという持論を持つ彼はタジオの天然の美に心
を千々に乱す。その頃、街にはペストが広まりつつあった。観光客を失うことを恐れ街ぐるみで隠蔽するその事実を知ったアシェンバッハだが…。
ルキノ・ヴィスコンティの名高き耽美大作。40年の時を経てニュープリントで銀幕に蘇る。
(ベニスという呼び名は好きじゃないのでヴェネツィアで通すが)ヴェネツィア大好きっ子としては、そりゃあ観にいかねばなるまいて。
が、劇中のヴェネツィアはどんより曇っていて夏の太陽とアドリア海のギラギラ感がまるで感じられず、コレジャナイ感がひしひしと。
あと、40年前からすでに運河の水は汚いのね。生活排水だもんなあ。
身も蓋もない書き方をしてしまうと、鼻眼鏡に口髭が猪口才なおっさんが美少年に一目惚れして破滅というか自滅する話なのだが、確かに
問題の美少年は中性的で神がかってふつくしい。監督がヨーロッパ中を駆けずり回って探し当てたというのも頷ける。
しかも、主に着ているのが水兵服=せえらあ服というチートっぷり。当然下は長ズボンなのだが、これがスカートとまでは言わないが、半ズボン
だったりしたら、やばかった。
水着が古き良きダセエフォルムなのも痒い所に手が届かない。(もっこりは強調されていたがなあ。)
対照的におっさんは、老いて汚らしいものとして描写されており、だったらあんなセクハラやこんなセクハラでもかませよと思わないでもないの
だが、ただただ遠く近くじっと見つめるだけの忍ぶ恋。まあ奥ゆかしいと思わないでもないのだが、そんなので2時間以上引っ張るもんだから
なあ。
最終的に、おっさんは美少年にお近づきになるために、老いて汚らしい自分から脱却すべく床屋で若返り作戦を決行。その結果、コメディと
見紛う姿に化身し、我々を当惑の極みに導いてくれやがる。が、結局若く美しく健康的な少年に届かずにひっそりと孤独に死んでいき、そこで
初めて先ほどのコント紛いの格好の意味を我々は知ることになるわけで。いやでもそれにしたってあの白さはねーよ、と思うわけだが。
全編、主人公のおっさんのモデルとなったマーラーの楽曲が外連味たっぷりに大音量で響き渡るも、話自体はアクションもサスペンスもラブ
ロマンスもなくただただ淡々と時を刻むだけで、風景もヴェネツィアの美しさを十分に伝えられているかいうとそうでもなく(つーかむしろこれを
観たら逆に行きたくなくなるような。)、観る人を選びそうなゲージュツ作品。
○「ヘブン・アンド・アース」 ★★★ (04.2.25/劇場)
STORY:唐の時代の中国。遣唐使として武術を学んだ来栖旅人は、皇帝から帰国の許しを得るために西方に赴き罪人・李を討とうとする。だが
李は皇帝に献上する仏教の宝物を運ぶキャラバンの護衛役をしていた。その仕事を終えてから李と勝負することとなった来栖は護衛に加わる
が、宝物を狙って馬賊の安、さらに突厥軍が迫っていた。激闘の中、来栖と李の間には次第に友情が芽生えていくが…。
中国産の西方の砂漠を舞台とした一大武侠スペクタクル。予告を見ると中井貴一演じる遣唐使にして皇帝の刺客(なんでだ)、その名も
来栖銀河旅人(くるすたびと)が主役のように見えるのだが、映画を見てみるとあっとビックリ、その標的となる男・李の方が主役だったり
する。ヲイヲイ。
で、その主役の李は元軍人で、捕虜の女子供の死刑命令に逆らい追われる身となった漢。その人柄を慕って共にお尋ね者となった5人の部下
と共に坊主と財宝を積んだキャラバンを守り西方の無法地帯を行く。
キャラバンが皇帝への献上品を持っているために、彼らの安全のためにその護衛役の李を斬れない来栖は、連れの美少女・文珠と共に護衛に
加わるが、財宝を狙って襲い来る馬賊の冷徹なリーダー・安と彼の背後にいる突厥(トルコ系騎馬民族)軍との死のチェイスの中で、漢たち
は壮絶に討ち死にしていく。
過酷な旅路の果てに、一行は砂漠の砦に逃げ込むが、突厥の大軍はそばまで押し寄せてきていた。幾たびも共に死線を乗り越えてきた李と
来栖はすでに友となっていた。そんな二人にほのかな想いを寄せる文珠。彼らは生き残るために7人vs数百人の絶望的な戦いに臨む!
と書くとすげえ燃えそうな話なのだが、不完全燃焼だったり。
ウリのアクションが、カットが細切れすぎて全然格好良くないのだ。カメラもめまぐるしく動きすぎて見づらいことこの上なし。
さらにキャストに華がない。
主役の李に「鬼が来た!」のチアン・ウェン。その追っ手にして友となる来栖に「ミキプルーン」の中井貴一。
さらに彼らを追い詰める、戦場で胡弓なんかを優雅に弾き鳴らしちゃったりする残虐な馬賊の長のメイン3人がどうにもパッとしない。
これが例えば中井貴一が真田広之だったりしたらそれだけでかなり印象が違っていたかと。
と書くとすげえ見るところがない話っぽいのだが、目を見はる点が2つあり、作品の評価を底上げしている。
1つはヒロインのヴィッキー・チャオが相変わらずかわええ!!!
砂漠広がる西方での生活を送るということで、なんかやけに黒い少しエキゾチックな印象で日焼けしたヴィッキーたんも素敵だ!
「少林サッカー」、「クローサー」と今までの役が戦うヒロインだったので先入観を持っていたが、今回の役はなんとお嬢様だ!
まるで戦わないけれど別段足手まといでもなく、ぶっちゃけいなくてもまるで話の展開上困らないキャラ一行の中の癒し系、作品に彩りを与える
ぞ!何もしないヴィッキーたんも素敵だ!
ぶっちゃけ映画の序盤は眠くて仕方がなかったのだが、ヴィッキーたんの出番の所だけオイラの眼はランランとしてますた。
そしてもう1つの見所は………素でバカな所である。
狙って笑いを取っているのではなく、そんなつもりはないのに失笑してしまうバカっぷりが角川映画っぽい。
李の部下で最初に死ぬヤツの死にっぷりが、頭を左右に弓矢が貫通という20年前のマンガみてえな素敵ビシュアルだったり、宝物を隠す
金の箱が、開けても開けてもどんどん小さい箱が中に入っているというギャグ構造だったり、不意に笑かせてくれる。
そして極めつけはその宝物の正体。なんとそれは仏舎利(仏陀の遺骨)で、外気に触れた途端にオーラが周囲に満ち満ちて見ている方を
ポカーンとさせてくれる。
話のラストではその仏舎利のオーラがキン肉マンのフェイスフラッシュの如く奇跡を起こし、光に当たった突厥軍は全員謎の死を遂げ、
馬賊の親玉は殺したはずの坊主が突如生き返り抜き手一撃で屠られるという展開で、見ている方をポカーーーーーンとさせてくれる。
ありがたやありがたや。
とまあ、期待とはまるでかけ離れた映画だったが、ヴィッキーたんファンなら見とけ!
○「ペントハウス」 ★★★ (12.4.2/劇場)
STORY:マンハッタンにそびえる超高級マンション、”ザ・タワー”は敏腕マネージャーのジョシュら、貧しくも善良な働き者たちによって切り盛り
されていた。最上階のペントハウスに住むウォール街の大富豪・ショウが詐欺で捕まる。ショウを信頼していたジョシュはタワーの従業員の年金の
運営を彼に委ねていたが、騙し取られていたことが発覚。怒り心頭のジョシュと従業員たちは、ショウの隠し資産を強奪しようと計画を立てるが…。
なんか全然知らない映画だったけどなんかベン・スティーラーが主演なのでなんか観にいったらなんかエディ・マーフィが共演していてなんか
ビックリしたけれどなんか全然毒がないのが残念だった。
つーわけで20世紀を代表するコメディアン、エディーマーフィと21世紀を代表するかもしれないベン・スティーラーの共演なのに全然
騒がれていない悲しい作品。
制作が「オーシャンズ11」の人、監督が「ラッシュアワー」の人なんでだいたいそんな感じの作品。
ただ、隠し財産横取り作戦に従事するのがボンクラな善人ばかりでうまくいかないというのが新しいのかな。
それでも駄目は駄目なりに意外な特技があって土壇場でそれが意外な形で役に立つ、とかだったらもっと面白くなったのに。
完全勝利とはいかないラストもなんだかなあ。
普通に演技はこなしているのだが、とにかく毒がないベン・スティーラーというのは残念。ヴェネツィアに旅行に行ったのにゴンドラに乗ら
ないというくらい残念。
エディ・マーフィも華がない。
ティア・レオーニは歳くってごっつくなったなあ。
とても同じ人間とは思えない黒人メイドはインパクトがあった。ルームサービス頼んであんな強烈なのが入ってきたら多分泣いて命乞いするわ。
○「帆綱は唄う 海の純情」 ★★★ (01.10/劇場)(1956):印なし。単勝200倍。
STORY:八郎は捕鯨船の乗組員。誠実で優しく腕っ節も立ち、色男で歌もうまいスーパーマン。頑固船長の娘に想いを寄せているが、その
カリスマ性のおかげで次から次へと災難に巻き込まれてしまうが…とりあえずみんなで歌えば解決だ!
鈴木清順監督のデビュー2作目。’56年作品。
「歌謡映画」というんスか?登場人物が劇中で歌いまくって話を進める形式。これがインドになると、歌うだけでは飽きたらず、踊りまで加えて
しまうわけか。しかも百人単位で。
主役は春日八郎。ムトゥばりの万能主人公を演じる。とりあえず歌えば事件は解決。
冒頭のナレーションは、監督の実弟・鈴木健二(NHK紅白歌合戦で、「私に5分間だけ時間を下さい」と言った人。今の若いもんにはわからん
か。)をおそらくノーギャラで起用。
当時のほのぼのとした時代のほのぼのとしたコメディで、逆に新鮮に見れた。
芸者さんが着物を脱ぐと何故か柔道着で、酔っぱらいを巴投げでブン投げると、酔っぱらいはふすまを人の形にくり抜いて投げられてしまったり
という無茶なノリが懐かしい。
○「ボウリング・フォー・コロンバイン」 ★★★★ (03.9.1/DVD)
STORY:’99年4月20日、コロラド州リトルトンのコロンバイン高校で、2人の生徒が銃を乱射、13人を殺害した後、自殺するという事件が
起きた。何故このような衝撃的な事件が起きてしまったのか?映画監督・ドキュメンタリー作家のマイケル・ムーアは調査を開始する。そこに
浮かび上がってきたのは、病んだアメリカの実状だった…。
全世界で喝采を浴びた鬼才・マイケル・ムーアのドキュメンタリー映画。
豊富なデータと猛烈な行動力の下、明るみに晒されていく現実をユーモアたっぷりにまとめてある。
かの国がとうに壊れているなんてことは周知の事実であろうが、何故壊れているか、如何に壊れているかを知るのにはこの上ないテキスト。
まあ、ウチの国も相当にアレな現状なので、よその国の阿呆さ加減を嘲笑ってもられないんだが。
カナダに行きたくなる一本。
○「ホールドアップダウン」 ★★★ (05.11.8/劇場)
STORY:木俣と佐川の間抜けコンビは銀行強盗を成功させるが、車をレッカー移動されてしまい、やむなく奪った金を駅のロッカーに隠すも
その鍵を落としてしまう。その鍵を拾ったのはストリートミュージシャンの沢村だが、スピード狂の刑事・星野と悪徳刑事・木場の間抜けコンビの
乗った車にはねられ鍵を飲み込んでしまう。飛ばされて気絶した沢村を拾ったのは信心深いものの間抜けなトラック運転手・平松だった…。
V6を主演に迎えてのSABU監督の雇われ仕事PART2。
雇われ仕事だからか作風は特に新しい試みはせず、昔の自作の焼き直し的省エネ仕事。
つーわけで前半の、おかしな登場人物たちによる疾走感溢れる雪だるま式トラブルコメディは非常に楽しく観れる。
でもなあ、収拾着かないまま最後はオカルト展開で無理矢理終わりっつーパターンはもうウンザリなんですが。
前半★4つで後半★2つくらい。
まあ前半のカーチェイスとかも相当ヘボいが。
キャラ造形は非常に楽しい。
主演のV6が演じるのは、
・井ノ原:鉄道マニアの間抜けで小心者の強盗 = 情けなくて頼りない地顔と役柄がマッチしてる。
・三宅:6人の中では一番まともでクールだが面倒見のよさが仇に = いい役なのだが周りが濃すぎて目立たず。
・岡田:小汚いなりのストリートミュージシャン = 一番売れっ子だからか一人ずば抜けて出番が少なかった。
・長野:拳銃マニアの間抜けな悪徳刑事 = 仕込み拳銃ワロタ。
・坂本:小心者で間抜けだがハンドルを握ると性格が変わる刑事 アンジャッシュの片割れと顔似てね?
・森田:信心篤いがあまりにも間抜けでドジなチンピラトラック運転手 = 間抜けなチンピラというのが地顔にマッチ。
V6の顔と名前が一致しない人でも楽しく観れると思う。つーかオイラも長野と坂本はどっちがどっちだかわからないという事実に映画が
始まってから気がついた。
脇役も古田新太・堀部圭亮・バナナマンのキモい方・森本レオと豪華な上に使い方が上手い。一応ヒロインの香椎由宇もかわいい。
○「僕達急行 A列車で行こう」 ★★★ (12.3.28/劇場)
STORY:一流不動産会社・のぞみ地所に勤める小町圭と小さな下町の町工場・コダマ鉄工所の跡取り息子の小玉健太、鉄道マニアの二人は
偶然出会い意気投合する。二人の共通の悩みは女性とうまく付き合えないこと。九州に転勤になった小町は難物の社長相手の工場誘致に取り
組む。見合いが破談になり傷心の小玉が訪ねてきたので傷心電車旅行に付き合う小町。その旅先で二人は金持ちの鉄道マニアと知り合うが…。
えーと、森田芳光監督の遺作なのであんまり野暮ったいことは言いたくないのだが、
何だこりゃ?
とても21世紀の、というか、平成の映画の演出ではない気がする。現代人が秒刻みのスケジュールに追われている内にいつしか忘れて
しまったゆったりとした空気というか何というか…。どこか懐かしいような気もするが、その思いよりも違和感の方が強いので、やはり言わず
にはいられない。
何だこりゃ?
しかし、この作品がシリーズ化を視野に入れて作られたと後から聞いてちょっと納得。
「寅さん」のような、「釣りバカ」のような、馬鹿でもチョンでも誰が観ても楽しめる、誰からも愛される映画を目指していたんだなあ、と。
大抵のことは小器用にこなすけれども、どこか間が抜けていてお人好しな愛すべき主人公二人とか、その周りを取り巻く登場人物皆善人
とか、無駄に騒々しく違った意味で喜劇的な社長と太鼓持ちとか、確かに至るところからそういう雰囲気がにじみ出ている。
でもそれにしたってあの見合い相手のAV女優レベルの演技力とか看過できないところありすぎだが。
二人の主人公は両方とも鉄ちゃんで、しかも音に特化していながら、それぞれ全く違った趣向の持ち主だったりして、鉄ちゃんは深いなあ。
ちなみにオイラは軽度の時刻表鉄。
とにもかくにも演出が何だこりゃ?なんで評価がしづらいのだが、松ケンと瑛太の主人公コンビはなかなか好感が持てる感じ。
ピエール瀧はいい役だけど、すっかり役者さんが板に付いたのう。
笹野高史や伊武雅刀はいつも通り。
貫地谷しほりと松坂慶子は、それってどうなのよ?とツッコミを入れたくなる。
北千住(焼肉京城があるな)の駅にて松ケンが嬉しそうに「ココから世界のどこにだって行ける!」と宣言する。
オイラは田舎育ちなので必然的に移動手段は車に頼らざるを得ず、もっぱら電車は旅行の時に使うものなわけで、故に↑の言葉のワクワク感
は共感できるような気がするのだが、でも「世界のどこにだって」は言い過ぎじゃね?
まあ大衆向けなので毒にも薬にもならないが結構好きな映画。だが、最後にしつこいようだがもう一度言いたい。
何だこりゃ?
○「ぼくのエリ 200歳の少女」 ★★★ (10.10.14/劇場)
STORY:ストックホルムに住む12歳のいじめられっ子の少年・オスカーは、アパートの中庭で、隣に越してきた不思議なエリと出会う。
夜にしか現れないエリとの密会を楽しむオスカー。一方、時を同じくして、町では殺され血を抜かれる猟奇事件が連続して起こっていた。
エリに励まされいじめっ子を撃退したオスカーだが、エリが人の血を吸って200年生きているヴァンパイアだと知ってしまう…。
少年の初めてのキスは、おっさんの血の味がした…。
雪のそぼ降るスウェーデン発の血に染まった少年の初恋残酷物語。ホラーラブストーリー的な…なんだそりゃ。
しかしそれにしちゃあカップルの二人が今ひとつかわいくない。
主人公のオスカー少年はサラサラ金髪はよいのだが、髪型がよろしくない。パッツン前髪で耳を隠すロン毛で、途中から中川家の弟
の方に見えて仕方なかった。いじめっ子たちの方がかわいらしく見えるというのはいかがなものか。
エリもなんだか老け顔で(まあずいぶん長いこと生きてるし。)そんなにミステリアスな魅力を感じない。
初恋物語としては原作の題名にもなっているモールス(信号)がいいアクセントになっていてなかなか瑞々しくていい感じだが、ホラー描写
が所々けったいで変な感じ。つーか炎上しすぎ@病院。
従僕ゲット!エリしー大勝利!な終わり方も、いろいろ考えさせられて余韻が残る。前のおっさんも少年時代から尽くし続けてきたのか
なあ、とか。
しかしこの副題は実によろしくねえなあ。
だって大事なシーンだというのにボカシが入ってさっぱりわからなかったけれど、エリは去勢された元少年だってぇじゃないですか。
オスカー父の意味ありげなシーンはその伏線だったのね。
○「ポストマン・ブルース」 ★★★★ (01.4/ビデオ)
STORY:平凡な毎日に疲れ気味の郵便配達員・沢木は、ある日、旧友の野口と出会う。今はヤクザになって刺激的な生活を送っているという
彼に煽られ、沢木は酔って郵便物を自宅で開封してしまう。その中の手紙が縁で、沢木は重病で入院している身よりのない薄幸の美少女・
小夜子と、殺し屋ジョーと名乗る男と知り合う。一方、野口をマークしていた警察は、沢木を”運び屋”と勘違いしてしまい尾行を開始するが…。
疾走感あふれる快作「弾丸ランナー」のSABU監督の第2作。今回は二本の足から自転車にチェンジ。クライマックスでは三人の男が自転車
で疾走する。
まずなんといってもヒロインを演じる遠山景織子がかわいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あのいとはかなき透明感は生身の人間とは思えないほどである。か、可憐だ…。
そして”日本殺し屋選手権”優勝を狙う、殺し屋ジョーが素晴らしい。殺し屋なのにあの人情味は何なのだ。演ずるは大杉漣で、まさに真骨頂
の演技を見せてくれる。
他にも冴えないヤクザの堀部圭亮がいい。この人はコメディアンだと思っていたのだが、役者で、こんないい演技をするとは。
つーかとぼけた登場人物と冴えたキャスティングが絶妙で、主人公の堤真一も阿呆な刑事どもも、皆ピッタリハマッている。
間抜けな、しかし、愛すべきキャラたちが繰り広げる物語は、初々しい恋の話や人情話を黒いユーモアでくるんで展開していく。ちょっとした
勘違いがどんどん雪だるま式に大きくなってスピードを増して、ついにはものすごいスピードのまま笑いと涙を巻き込んでちょっぴり切ねえ
エンディングへとなだれ込む。悲しいがしかし、あれはハッピーエンディングなんだよなあ。
○「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」 ★★★★ (08.9.18/劇場)
STORY:エンジェルはロンドン警察の有能な警官だったが、妬まれて平和な片田舎・サンドフォードに左遷されてしまう。署長の息子でポリス
アクション映画オタクのボンクラ・ダニーとコンビを組み真面目に働くエンジェルだが、その生真面目さは空回るばかり。ところが村で連続殺人
が発生。だが、村人たちは不幸な事故が重なっただけだと取り合わない。独り捜査を進めるエンジェルはついに事件の黒幕を突き止めるが…。
ゾンビ映画愛に満ちたパロディ映画「ショーン・オブ・ザ・デッド」で一躍(一部の好き者だけに)脚光を浴びた監督エドガー・ライト&主演
サイモン・ペグのコンビが放つポリスアクション映画愛に満ち満ちた映画。
英国本国でも好評を博したのだが日本では「コメディは客が入らん」とビデオスルーされそうになり署名運動に発展、どうにか劇場公開に
こぎ着けたという話題作。
つーわけで過剰な期待を抱いて観に行ったわけなのだが、思ったよりバカアクション映画ではなくかっちり作ってあって、完成度は高い
のだが残念と言えば残念。
低予算を熱意でカバーするという気迫がムンムンと漂ってきていて(主役にスターのオーラがまるで感じられないところとか)、最初は
それが鼻につかないでもなかったのだが、時にコメディ、時にサスペンス、時にスプラッタと手を変え品を変えみっしりと展開される、観客
を喜ばせようとするおもてなしの心にいつしか気にならなくなった。まあ、詰め込みすぎのきらいはあるが。
そして明かされる黒幕の正体と事件の衝撃の真相を経て炸裂する友情のポリスアクションつるべ打ちは熱い。
凶悪な素顔を露わにして襲い来る村人たちにどこかで見たようなアクションで立ち向かう主人公の勇姿からは、いつの間にか、紛うことなき
スターのオーラが感じ取れたことであるよ。
○「ポテチ」 ★★★★ (12.6.12/劇場)
STORY:結婚詐欺に遭い、当てつけに自殺しようと男に留守電を残した若葉は、その電話を仕事中に聞いてしまった空き巣の奇妙な青年・今村に
自殺を止められ、それが縁で今村と同棲している。その今村の様子がどうもおかしい。彼と生年月日が一緒の、かつての甲子園のスターで今はプロ
野球選手だが不振のの尾崎が関係しているらしい。彼のために一肌脱いだ先輩空き巣の黒澤は彼らカップルと今村の母親を球場に招待するが…。
原作・伊坂幸太郎×監督・中村義洋×出演・濱田岳×音楽・斉藤和義の4度目のコラボ。(斉藤和義だけ3度目。)
勝手知ったる、という感じ。
震災からの復興を願い、できるだけ早く作られた、ということで、短編を原作に70分弱の小品に仕上げている。
いや、同じ短編(しかも実は「ポテチ」より短い)の「フィッシュストーリー」を膨らませて長編映画に仕立て上げたんだから、これももう少し手を
加えられたんじゃないか、とも思いはするんだけどね。
甲子園のスター、同じ生年月日、同じ産婦人科、血液型の不一致…大概の問題ならば自分なりに噛み砕いて消化できるであろう懐の深い青年・
今村が人生で初めてぶち当たったどうにもならない悩み。
彼を救ったのは同棲相手とコンソメ味としお味のポテチと遠くまで飛んでいったボールだった。
伊坂幸太郎ならではのおかしくも愛おしい風変わりな主人公・今村に濱田岳。その鉄板ぶりはもはや貫禄さえ。
つーか今村って「ラッシュライフ」にも出てたのか。ちゃんとそこのエピソードも盛り込んであって心憎い。
やはりちょっと変わったヒロイン・若葉に木村文乃。最初はちょっとどうかな?と思ってしまったのだが、観終えてみれば、いやあかわいいかわいい。
伊坂作品常連の人気脇役・黒澤に大森南朋。半分自主制作映画「ラッシュライフ」では堺雅人が演じてたのう。
ちょっと原作のイメージとそぐわない感じ(堺雅人の方がどちらかというとスマートで合ってるかなあ。)だが、そこはそれ、役者自身のパワーで、
らしく見せている。
別の短編の「サクリファイス」の話なんかも加えちゃっているのが心憎い。
今村の上司の中村親分はヒゲデブメガネの冴えないおっさんで、誰だコイツ?と思ったらクレジットを見れば監督本人で爆笑。
概ね原作に忠実なれど、「タッチ」のエピソードが削られているのは悲しい。権利問題で仕方ないんだろうけど。あと球場でも、客が入っていない、
明らかに立ち入り禁止っぽいゾーンに入っちまったら試合中断すんじゃね?と思ってしまったり。
でも概ね原作に忠実なので概ね良作。タイトルにもなっているポテチを食べるシーンは、原作を知っていたから観ていてジーンときた。
あと改変で主人公だけでなくもう一人まで救ってしまうラストのラストはすげえよかった。
○「ホビット 思いがけない冒険」 ★★★★ (13.1.7/劇場)
STORY:後の冥王・サウロンとの決戦から遡ること60年、ホビット庄で平和に暮らしていたビルボの前に旧知の魔法使い・ガンダルフと滅亡した
ドワーフの王国の王・トーリンと12人のドワーフが訪れ、王国再建の冒険へと誘う。持ち前の好奇心から冒険に参加したビルボだが、世界の秩序が
乱れ始めていたため、旅は苦難を極める。仇敵のオークに追われた一行は地下に迷い込み、そこでビルボはゴラムから指輪を手に入れる…。
「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚が「ロード・オブ・サ・リング」のキャスト・(すったもんだあったが)スタッフの手で映画化。しかも、またしても
三部作。
「ロード・オブ・ザ・リング」の前フリみたいな話で、世界の命運を賭けた大きな戦争が起こるわけでもなく、どー考えても前作ほど盛り上がら
ない、そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
パーティ編成がホビット魔法使いドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフドワーフそして
ドワーフとおかしなことになっとるし。
つーわけであまり気乗りせず観にいったわけだが、なにこれ、面白いじゃん!予想していた以上に冒険冒険また冒険でトロール、ネクロマンサー、
ゴブリン、オーク、岩の巨人、そしてゴラムと敵も強大、味方も勇敢。
白じゃないガンダルフだから地味かと思ったら派手に大暴れ。おまけに前作のキャラも顔見せ程度ながら続々登場で大満足、お腹いっぱいの
出来。
画面中ヒゲだらけで色気がまるでない点と前作を観てないとわかりづらい点が難点。何よりも続編まで一年待たねばならんのが問題!
○「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」 ★★★★ (07.7.8/劇場)
STORY:ボラットはカザフスタン国営テレビの人気アナウンサー。彼は国家の命を受けアメリカの文化を学ぶために、プロデューサーの
アザマートと共にニューヨークへ。文化の違いに戸惑いながら日程をこなすボラットは、ある日テレビ番組で見た女優パメラ・アンダーソンに一目
惚れしてしまい、彼女に会うために一路カリフォルニアへと向かう。が、道中アザマートと喧嘩別れしてしまい文無しとなってしまい…。
辺境・カザフスタンの非常識極まりないレポーター・ボラットが、降り立った異境の地・USAでその無知・無邪気さ故に巻き起こす
大騒動の数々を赤裸々に記録したドキュメンタリー。
ホテルで部屋まで案内される途中のエレベーターを部屋だと思い込みくつろぎ始めたり水洗便器の中の水で顔を洗ったり川で洗濯をしたり
ユダヤ人を悪魔の手先だと思い込んでたり、と滑稽なボラッドと彼に関わったばかりに振り回されっ放しの人々の姿には苦笑せざるを
得ない。
結果的にボラットにコケにされまくったアメリカの田舎の人々だが、これは日本でだって同じことになるだろうから、別に、アメリカの、わけも
わからんでアホのブッシュに票を投じるような人たちは間抜けですよ、という映画ではないと思う。でも終盤のシュウキョウのシーンにはドン
引きしたけど。
ひたすら下ネタとか障害者ネタとか、品性下劣な笑いが続くのでそーゆーのが駄目な人は観るべきではない。まあパッと見でどう見ても高尚
には見えんだろうけど。
とりあえずホテル内での全裸大喧嘩には受けた。プロデューサーがデブすぎてチンコが脂肪に埋まっているせいでほとんどモザイクが
掛からなかったところが特に。
で、実のところこの映画はフィクションで、ボラットはサシャ・バロン・コーエンなるイギリスの俳優の持ちキャラでカザフスタン人では全然
ないという、「Jackass」ばりにはた迷惑なドッキリ映画だったりするのだが、それって本編中に説明って一切なかったよね?それってどう
なのよ?
オイラはなんちゃってドキュメンタリーと知って観に行ったけれど、中には「カザフスタンってなんて無法地帯なんだ!」なんて信じてしまう善良
な方も出てきてしまうんじゃね?
○「ホワイトアウト」 ★★★ (03.1/TV)
STORY:日本一の貯水量を誇る奥遠和ダムがテロリストの一団に占拠された。山奥で雪に守られた天然の要塞に攻め込む術もない政府・警察
に対し、彼らは人質とダム決壊を脅しに、24時間の期限付きで50億円を要求する。ダム職員の富樫はただ一人難を逃れていたが、自分のミス
で死なせてしまった親友の婚約者も人質になっていることを知り、彼女や同僚たちを救うために単身テロリストたちに無謀な戦いを挑む。
織田裕二ウザ。
ここ数年張り切っている邦画大作の一本ではあるのだが、ツ○ヤに大量入荷するような邦画作品がものすごく面白いわけがなかろうて。
まあ、そこそこの娯楽作ではあるので、いろいろツッコミ入れながら寛大な心で見るのが正解かと。つーかツッコミきれないほどボケの量が…。
佐藤浩市があんな役で日本アカデミー賞助演男優賞なんて取っちまうのはアレだが、吹越満はグッド。いい人専門ですな。オレ内では「利家と
まつ」ですっかり評価を下げまくった松島菜々子(オレが利家なら毎週2、3回は無礼討ちにしてるわ。)が意外にかわいくてビックリドッキリ
だったり。(演技の話はおいといて。)