Live Report(2002 1/23 Live@オレンジカウンティーin弘前)

 小雪が漆黒の空を舞い踊る中、オレンジカウンティーへと入る。既にナラさんのリハは開始されていた。俺は無作法ではあったが周囲の人にあまりちゃんと挨拶をする間もなくそのままデジカメを手に、久しぶりに会う彼の姿を写真におさめようとそのシャッターを切った。

 リハ中、この真冬の中、「甘夏」があったかい光をかもし出していたのがとても印象的だった。この曲を12弦ギターの演奏で聴くのは初めてだけど、きれいだな、って思った。

 リハ終了後、久しぶりに少し話す。メールのやりとりは頻繁にあるけれど、おなじ空間で話をするのは約1年ぶり。けれど時間のギャップも違和感もそこにはなかった。挨拶を交わし、お互い軽口をたたきあう。なんとなくの俺の思いつきで外で撮影することに。何枚か写真を撮る。自然な状態であったり、彼の考えたシチュエーションであったり。無意識のうちに空に向けてシャッターを切る。真っ暗。「フラッシュ焚かなきゃ。」の言葉に、そういやそうだ、と照れ笑い。再度シャッターを切る。と、そこにはまるで宇宙が降ってきたような写真が。オッ!と思い彼に見せる。「宇宙みたいだね。」想いが同じでなんとなく嬉しい。さすがに寒くなってきたので中へ戻る。

 地下の控え室へ。聴かせたいなと思って持っていったCD(OZOMATLIの1STやケルトのコンピ『ケルティックカウントダウン』やなど)を聴いてもらいつつ、また少し話す。アフガニスタンのこと、最近聴いている音楽のこと。そして彼から、アフガニスタンからの難民についての絵本『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし』(つげ書房新社)を貸してもらった。日本政府がアフガニスタンからの難民を強制収容して、裁判官の違いで一緒に来たグループの内、半数は難民と認められたのに、もう半数は認められなかったという新聞等でも大きく報道されたことに一部関連した内容。そうこうしてるうちに今日のライブが始まったようなので二人で見に行く。

 今日のオレンジカウンティーはとてもアットホームな雰囲気に包まれていた。本日の対バンは二組。トップバッターのたんばりん。99年に一度ナラさんと対バンしているアコースティックデュオ。二番手は秋田のぶお。CDも何枚かリリースしてる実力派。もう一組、以前にも一度対バンしてるりーぽんが予定されていたけどメンバーの怪我により出演中止。 今日はどちらも自分自身が確立された音楽で、どんどん自然に耳に入ってくる、いい演奏。心がゆっくりあったまってくのを感じながらやっぱり俺は音楽が好きなんだなあと実感。

 たんばりんの奏でる音楽は二人の人格がにじみ出ているであろうあったかで全体的に柔らかな印象。派手ではないけれどじっくりしみてくる。
 秋田のぶおさんは普段はバンドとのライブが主のようだけど今回はアコギ一本でのロック。エフェクターを多用して多彩な空間を生み出す。印象的なギターフレーズが多かった。二組ともすごく好印象なライブだった。

 以上、終わり。、、、というわけにはいかないか。

 弘前での久々のナラライブ。♪か〜んた〜んにゆこう、か〜んたんに〜♪スローに始まった「かんたんにいこう」。自分の弱さを見せ付けられるような想い。何もかも気を張って生きていくことはない。難しく考えることも気負いすることもない。自分はこの世に一人しかいないんだから。いろんな想いや想い出が頭の中を駆け巡る。会場の反応もなかなかのもの。

 2曲目、「今の季節にぴったりの曲を歌います。」との前置きがあってから「甘夏」。会場の空気が明らかに変わったのを感じた。それは決して熱いものではなかった。もっとアップテンポの曲を続けたほうがいいのにと思いながら会場の一番後ろに移動。歌を聴くのに専念するためしばしカメラをしまう。

 3曲目「コノママ」いまやってるTalkin'Blues調ロック寄りのアレンジで聴くのは初めて。う〜ん、サビのメロかっこいい。唄はちょっと荒削りな感じだけれど、前のバージョンよりこっちの方が俺は好きだ。しだいに会場も少しずつ暖まっていく。

 4曲目、「grobal violence」本人いわくボッサ調のこの曲。歌詞を聞き取るのに専念してしまって曲まで頭が回らなかったけどラストのGrow up , we needのあたりはすごくかっこよかった。

 5曲目、「Wah Wah Wah」配線のトラブルで今日はループ無し。でもその分曲そのものがシンプルに伝わってきて良かったかもしれない。言葉が多くて聞き取りづらいのがちょっと気になったが、熱さを感じるいい演奏だった。

 6曲目「inoriuta」。静かな熱さ。バックの波の音の効果音と相まってすごく印象的な瞬間だった。

 7曲目「虫のうた」唄は少し力みすぎな感じもしたけれどいつもよりも力強さと勢いの増した演奏だった。その勢いのまま8曲目、ハープでのインプロからいつもよりもアップテンポな「真っ赤なゼリー」。確かにこの曲は熱くなれるし自分自身好きな曲の一つではあるけれど、東京ラブソング以降の新曲が増えてきている中、もういいんじゃないかな、とも正直思う。

 9曲目「東京ラブソング」。色々なことがあった2001年。♪この街にはラブソングが必要だ♪と歌うこの唄が、「何いってんの、もう世界中に愛はあふれてるよ」と世界中の人から言われるような世界になることを願いながら聴いていた。

 ラストの10曲目「宇宙のハーモニー」、、、のはずが配線トラブルまだ解決せず、その間に急遽、制作中の新曲「こたつ」。前半は、こたつに肩まで暖まって頭は入れずクールにしておく、でも心は温かく、というようなことが歌われている。悲しい感じのバラード。サビのコード展開はG♯−G−Cm(多分)。個人的にはすごい好きな曲調なので、どういう完成の道をたどるのかがすごい楽しみ。

 そして本当のラスト「宇宙のハーモニー」。エフェクターを駆使して延々ギターのループが続く。ラストは歌声(というよりシャウト)さえもループ。この空間すべてがループしているような錯覚に陥る。そのスペイシーな空間に身をまかせる。単純に気持ちいい空間。

 その空間を引きずったまま暖かな拍手の中この日のライブは終わった。

 1曲増えたためか青森への終電の時間まであと十数分。まあ乗り遅れたらうちに泊まってもらえばいいやと思っ、、、、、試験勉強の忙しさにかまけて掃除してない自分の部屋の汚さを思い出す。本気で焦る。それに明日も試験だしオレ。乗り遅れてはなら〜ん!と機材の片付け開始。会場と地下の控え室とを言葉どおり一人で上へ下への大騒ぎ。そんな慌しさのなかふとやわらかい気持ちになってることに気付く。宇宙のパワーがナラさんを介して降りてきたのか、それとも雪とともに振ってきたのか、オレはその力によって知らぬ間に心の拳をほどいていた。


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