赤の森
「どこだここは…?」
気が付けばあたり一面赤だった。
おそらく森であろうか。
木も草も花も飛び交う鳥も、土も雲も。
空すらも薄っすらと赤みがかっている。
夕焼けとも朝焼けとも言いがたい赤。
「赤いな…。」
どこまでも続く赤。
一歩一歩周囲を確かめるように歩き続ける。
「似合いの色だな。」
皮肉なものだ。
例え夢の中だとしても。
ふと視界の端に人影が入り込んだ気がした。
気のせいか?
いや。
静かにこちらを見つめている人。
深く静寂に満ちた赤き瞳。
全てを見透かされているのかとも思えてくる。
未来すらも。
「そうか…。」
ここはそうなのか。
その入り口でもあるのだろうか。
「だからお前がいるのだな。」
出迎えにでも来たのだろうか。
いや。
「そなはずがないな。」
それならば別にいるだろう。
自分であるはずが無い。
何を夢見ているのだろうか。
夢は所詮夢なのだ。
「わざわざご足労下さって悪いが−−−」
まだそちらへ行くわけには行かない。
やるべき事が残されている。
待っている人もいる。
まだだ。
まだまだだ。
踵を返し、逆方向へと歩いていく。
「この赤はいずれの未来か…。」
己の身から流す赤か。
己がもたらす赤か。
「己の赤で変えられる者ならば、いくらでも流してやるさ。」
己を呼ぶ声が聞こえてくる。
行かなければ。
「分かった分かった、そんなに急かすな。」
顔を上げた、その全方には木々の合間から光が差し込み始めている。
夢から覚める。
いるべき場所へと帰っていく。
「さらばだ…。」
再び訪れるその時は、赤では無くなっているのだろうか。
Fin.