「貴方へ」




あなたのいるところに花は咲きますか?


あなたのいるところに風は流れますか?


あなたのいるところに水は溢れていますか?


あなたのいるところに陽は射していますか?



「ジョミー!」



いつもはグランパと呼んでいるのに、その時は思わず名前で呼んでしまった。

目線の先には、自分よりもずっと幼い子供たち。

それらに囲まれ楽しそうに笑う、あなたの姿。



あなたの休憩時間に、どうしても顔が見たくて声が聞きたくて名前を呼んで欲しくて

あちらこちらと居そうな場所を探し回っていた。

手には四葉のクローバー。

探し回っていた時に立ち寄った植物園の片隅で見つけたもの。


ただあなたにあげたくなって。喜んでくれるであろうその笑顔が見たくて。


なのにやっと見つけた貴方は、自分ではなく、他の子供たちに向けられていて。

たまらずムッとしてしまう。

こっちを見て欲しくて、思わず名前で呼んでしまった。

だけど呼んだ自分にも驚いてしまって、俯いてしまった顔が熱くなってくるのが分かってくる。

どうしよう、怒られる?とちらっとあなたを見やると。


あなたはちょっとびっくりた顔でこちらを向いてくれた。

びっくりしていたのはほんの一瞬だけで、またいつもの笑顔で僕を見てくれる。



「どうしたの?トォニィ。」



嫉妬していた事なんてどこかへ吹っ飛んでしまう。

大好きな大好きな、笑顔。

温かく心が満たされていく。


好き。

大好き。


少しでも笑っていて欲しい。その笑顔を自分だけに向けて欲しい。

我侭だけれど、我侭で良い。


だって大好きなんだもの。



「あのね、植物園でこれ……






今ここにはあなたは居ません。


どこにも居ません。


もしかして、いつもみたいに名前を呼んであの笑顔でひょっこり僕の前に姿を現すかも。

なんて夢を何度見たことか。

幻想も何度描いたことか。


でもやっぱりあなたは居ないんですね。

その度に気付かされて、泣きたくなるけど、泣いてしまった時もあるけれど。

ここがこれがあなたの望んだ未来だから。

その未来で泣いてはいけない。

あなたがいない事に悲しんでは、きっといけない。

悲しんだりしたら、あなたは笑顔でなくなってしまうよね。



ここは、地球は緑に溢れています。

太陽も良く見えます。

まるであなたの髪の色のように思えて、この心にほんのり満ちる温かさも貴方のようで

見上げるたびに貴方の笑顔が過ります。

だけれど、あなたの本物の笑顔には敵いません。


あなたと一緒にここに立ちたかった。

あなたもそれを望んで止まなかった。


でもいません。

どこかにいるかもしれないけれど、どこにいるのか分かりません。





あなたのいるところに花は咲きますか?


あなたのいるところに風は流れますか?


あなたのいるところに水は溢れていますか?


あなたのいるところに陽は射していますか?


ここはどれも満ちています。



願わくば。

どこにいても、どこにもいなくて笑顔を絶やさずにいてください。

いつか寝付けぬ夜に、頼って行ってしまったあなたの部屋。

やっぱり笑顔で困った顔もせず、ベッドに迎え入れてくれて隣で眠りに就くまで話してくれた

四葉のクローバーの話。



これで願いが叶うというのなら。

いいえ。叶わなくても。

ただただ、貴方が笑顔でいてくれる事を願います。



あなたに捧げる四葉のクローバー。

今日も明日も明後日も、太陽の陽の元咲き誇っています。



Fin.


最終回を見終わった際に悶々していたものでした〜。