※火神の緑黒観察記な感じです
|
「おー黒子じゃん。おはよー」
朝練に向かう途中で後から来た降旗に声を掛けられた。挨拶を交わして並んで部室に歩き出す。
「黒子珍しいな、今日は布バッグ持ってるんだな」
課後は部活動に時間を費やしたいので、課題は昼休みや帰宅してからやっているけれど提出日が重なる場合も多々あるので学校で終わらないと家に持ち帰ることになる。
「辞書重いよなー」
降旗に課題の話題を振られた火神はふてくされた表情でぽつりと一言漏らした。
「終わらないとまずいぞー」
ぐだぐだ話している内に男子バスケ部の部室に辿りついた。ノックしてドアを開けると既に何人かいて準備をしていた。
朝練が終わって部室に戻り制服に着替え直していると、隣では先に着替え終わっていた黒子が鞄を開けて荷物整理をしていた。
「あれ、なんだお前荷物入るスペース十分あるじゃん」
「ここはいいんですよ。ここのスペース空けてないと気になって」
そういう癖もあるもんなのかと火神は首を傾げた。
「こんなに場所空けとくのがか」
そういうもんか。火神は自分のすっかすかな鞄と黒子の教科書やノートが綺麗に並んでいる鞄を見比べた。 常日頃から切羽詰まった生活してるよりはずっと良いのだろう。
「良いんじゃねーの。いっつも課題に追われてる火神も少しは見習えよ」
部活前に話した内容覚えていた降旗が少しは余裕を持てよと笑いながら指摘する。
「お前も辞書の一つや二つ持ち歩けよー」
痛いところを突かれて火神は押し黙る。全く持ってその通りなので反論出来やしない。
「あと何日かあるんだしなんとかしろよ、火神」
補修も課題追加も嫌だ。勉強自体したくないし何よりバスケをする時間が減るのが耐えがたい。
「お前・・・今日放課後空いってか?」
しばし考え込んだ黒子は鞄のポケットから携帯電話を取り出し、ぱかりと開いていじり出した。スケジュールでも確認しているのだろう。
「あまり長くなければ大丈夫だと思いますよ。・・・古典の課題ですね」
苦笑しながら携帯を閉じて火神を見上げた。
「シェイクで手を打ちましょう」
課題は到底火神一人ではこなせないと端から分かっていた黒子はあっさり了承した。やる気があるだけましだろう。
休み時間になると黒子は再び携帯を開いてメールを打ち始めた。相手は緑間だ。
「今日は火神君の課題に付き合いながら待ってます。っと」
いまいち慣れない手つきでメールを打ち終えて送信ボタンを押した。
放課後、約束通りマジバで火神の課題に付き合っていた。まずはバーガーを食べてからと主張する火神に量は制限するよう論した。お腹いっぱいに食べてしまったら勉強どころではなくなるのは明らかだった。
「火神君・・・課題まだまだっぽいですね」
黒子も今日のこの時間だけで火神が終わるとは思っていなかったので、ため息を突きつつ鞄から提出用のノートを取り出した。
「このノート見てなんとかして下さい」
書き写すだけでも火神には勉強になるだろう。このままではどうせ終わらない。
「ここからここまでですね」
「こんばんは、緑間君」
慌てて背後を降り仰いだ火神もしかめっ面になってきている。
「なんでお前がいんだよ」
緑間も不機嫌を隠すことなく眉をしかめて黒子の隣の席に座った。
「火神君、今日は緑間君と予め会う約束をしていたんですよ」
察した火神はそう言えばお前らそうだったなと顔を掻いている。
「待ち合わせの時間までなら構わないとは言ったがな」「それでノート貸してくれるってのか」
邪魔すんなってことねと、納得した様子で机の上を片付け始めた。黒子のノートもいそいそと鞄に閉まった。
「ノート忘れずに返して下さいね」
火神は財布だけ持って席を立った。
「火神君が戻ってきたら行きましょう」
緑間は自分の鞄を開けると中から熊のぬいぐるみを取り出し黒子に差し出した。
「今日はこれですか」
緑間は拒否せずに受け取った黒子に満足げに頷いた。
紙袋をぶら下げて戻ってきた火神は黒子が持っているぬいぐるみをげんなりと見下ろした。
「なんだとはなんだ。これは水瓶座のラッキーアイテムの熊のぬいぐるみなのだよ!」
火神は紙袋を机の上にがさりと置いて財布をしまいこんだ。紙袋の中はマジバーガーがこれでもかと言わんばかりに詰まっている。
「まぁ良いや。俺帰るわ。ノート借りてくな」
黒子も膝の上に抱えていた鞄を机の上に乗せて立ち上がった。チャックを開けてぬいぐるみを空いている透き間に潰れないよう配慮しながらしまい込む。
「ああ・・・」
それを見て火神は一人納得した様子で唸った。
「なんですか?」
黒子を促し先に立って緑間が歩きだした。二人を見送ると火神も紙袋と荷物を持って店外に出る。
「黒子ん家あっちじゃねーよなー」
てくてくと夜道を歩きながら先程の二人の様子に思考を巡らす。
緑間は黒子の飲んでいたシェイクのカップを黒子より先に手に取りゴミ箱に入れていた。さらに黒子の荷物の一つの布バックを当たり前のように自分の肩に緑間のバックと一緒に掛けてもいたし、並んで歩く際は緑間が道路側を歩いてもいた。
黒子は黒子でそれを当たり前のように受け入れていて一つも口出しをしていなかった。きっと日頃からああなのだろう。
「なんだよあのツンデレヤロー、ちゃんと黒子の彼氏やってんじゃん」
火神は同性カップルに偏見はなかったけれど、黒子の相手が緑間だというのにはいまいちしっくりこない部分もあった。
「しっかしわざわざ黒子のラッキーアイテムも持ってくんのかよ」
もう今日は学校も部活も終わって帰るばかりだ。あまり意味がないような気もするしそれに関しても黒子はなにも言わなかった。
それどころか、
「鞄の空きスペース、ラッキーアイテム入れるとこかよ」
これはきっと当たっている。
「よく出来たカップルだな・・・」
今日は金曜日で、明日明後日は久々に部活動がない連休だ。
黒子の多めの荷物の中にはお泊まりセットでも紛れ込んでいるんだろうなと勝手に想像して勝手に納得した火神は、次回は邪魔しないでやろうと心に決めてバーガーが詰まった紙袋を担ぎ直した。
|