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笠松さん家の妖精さん
「おい、起きろ!」
「んー…もう少し…」
「もう少しじゃねえ、起きろっつってんだろが!」
自分のベッドの枕の脇で、毛布を頭まですっぽりと被りもぞもぞしている。一向に起き上がる気配がないので、毛布から僅かばかりに覗かせている金髪の頭をべしりと叩いてやった。
「いたー!ひどいっス笠松さぁん」
「さっさと起きてこねぇお前が悪いんだろうが!」
痛む頭部を涙目で擦りながらやっと毛布の中から出てきたのは、自称ケータイの妖精。ケータイの妖精のくせして何故だか黄瀬が小人サイズになっただけの姿形をしている。
いつの間にか居着いていた。
「だいたい俺より遅く起きてくるとはなんだ!アラームセットしてんだろ毎日。アラーム鳴らさないでぐーすか寝てるってどんなポンコツだお前は」
「笠松先輩のセットする時間が早過ぎるんスよ!」
「早くねーよ!お前携帯なんだろ、仕事しろよ仕事を」
携帯の妖精で職業は執事だとか本人?は主張しているが本当にそうだとしたら、執事失格間違いなしだろう。
「アラーム以外は完ぺきっスよ!」
「アラーム以外はってなんだよ…」
ぶつぶつ文句を漏らしながら制服に着替えると通学用鞄とスポーツバックの中身を確認する。
冷蔵庫で冷やしているスポーツドリンクと、母が用意してくれているだろう昼食用の弁当を詰めれば問題ないようだ。
「うし、大丈夫だな」
「そんなことないっス、大事なものを忘れてるっスよ!」
「あ?なんだよ」
課題でも入れ忘れたのだろうか。もう一度見直すかと鞄のチャックに手を掛ける。
「違うっス。そこじゃないっスよ」
「じゃあなんだよ」
まぁ確かにアラーム以外は通常通り問題なく機能している。自分が忘れてしまっているだけで、なにか抜けているのかもしれない。そこを執事らしくチェックしていたのか。
「俺っスよ、俺」
「ああ…まぁ確かに」
なにかと思ったら携帯か。なければそりゃあ困るなと、鞄に突っ込もうかと手を伸ばす。
「もう!そうじゃなくてお早うのちゅうっスよ!」
伸ばした手で思わず再度頭を引っ叩いていた。俺は悪くない。
「なにするんスかー!」
「そりゃこっちの台詞だ!朝からなにくだらねーこと言ってんだお前は」
「くだらなくないっスよ。一日の始まりはお早うのちゅうから始まるんです」
「始まらねーよ、あほか」
ぎゃあぎゃあ喚いているのを無視してむんずと掴むと鞄のポケットに突っ込んだ。
「一日の始まりを告げるべき目覚ましをまともに動かせるようになってから言えよ」
スポーツバックも掴むと自室を出て階下のリビングへと向かった。
「えっじゃあアラーム起動してちゃんと笠松先輩起こせるようになったらちゅうしてくれるんスねー!」
ポケットから半身を出してこちらをキラキラと目を輝かせながら見上げてきた。
「アラーム鳴らなくてもセットした時間前にはは大抵起きてんだけど、俺」
「うう…じゃあお早うのちゅうじゃなくて、お目覚めのちゅうにするっす。ちゅうで先輩に爽やかな一日の始まりを告げますよ!」
「携帯にんな機能ねぇよ!」
「先輩のためだけの特別なオプション機能スよー」
いらない。そんなオプションいらないから。
どういうちゅうにしようかなーだのとほざいている黄瀬モドキの妖精をポケットの中に押し込んでやった。
そんな起こされ方はまっぴら御免だが、俺より早く起きたこともまともにアラームが鳴ったことも一度もないので実現したらちゅうは兎も角少しは褒めてやろうかと思う。
が、黄瀬だしちょっと残念なくらいが調度良いのかもしれない。実物大じゃないだけましだろう。
黄瀬の携帯にも妖精なるものがいるかもしれないが、まともに動いていてほしい。
というか、まともな執事ならば是非ともその仕事っぷりを見せつけてやって欲しいものだ。
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