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「よお」

 

 同じ曜日、同じ時間帯にまたあのストバスのコートのフェンスに寄っかかって待ち伏せてみた。通学路の途中らしく、予想が当たって前方から水戸部がこちらへと歩いてくるのが見えた。
 水戸部も青峰に気付いたようで、歩みを止める。相変わらずしゃべらないが、これが水戸部にとって普通の状態なのだと思えば気にならない。

「時間あんなら付き合えよ」

 嫌そうな顔はしない。困ったように首を傾げるだけ。一瞬、え、と戸惑いも見せたが頷いたから先に立って自宅へと歩きだした。

 

 水戸部は青峰とのセックスに対して消極的でも積極的でもないが逆らいもしない。同性を抱くことにも抵抗はないのか、ただ流されているだけなのだろうか。
 丁重に服を脱がし(と言っても殆ど青峰が自分で脱いでしまう)、自分も全て脱いで裸になると青峰の肩に手を掛けベッドに横たわらせる。 愛撫する手付きは流石にまだ慣れてはいないようで、たどたどしい。性器にもあまり力を込めるとこなくゆっくりと高めてくるし、繋がるために中を解す手付きにはもどかしくなってくる。

「もういいって」

 いい加減焦れてきて、青峰は手を着いて起き上がると水戸部に伸し掛かる。腰に跨り秘所に宛がってそのまま下ろしてゆく。
 先を差し込む寸ででそれを留めるよう水戸部が腰を支えてきた。何かと思えばゴムを装着するためのようだった。後始末が少々面倒になるだけだし、なくても気にしないのに。

「今度はいいだろ?」

 また中断されては溜まったもんじゃないので、いちよう確認をとると頷いたから、己の体内に埋め込んでいく。 
 何度経験しても多少の痛みは生じる。内臓を内部から押し上げる圧迫感もある。それに眉を顰めつつハッと一息つくと余計な力を抜いて一気に根元まで飲み込んだ。
 伏せていた顔を上げると調度目があった。心配そうにこちらを見ていたが、受け流して腰を動かした。

 

 青峰は抱かれている最中、あまり喘ぎ声を上げない。逆に誰かを抱くときは声を出すよう求めたりもするけれど、度が過ぎた喘ぎは煩くて萎えてしまいそうで好きではなかった。相手にもよるのだろうか。

 水戸部は喘がない。呼吸は乱れるし、汗も流れる。先走りが漏れてくるのもゴム越しだが、なんとなくわかるし次第により硬くなり膨らんでいくのだから快感を得ているのも存分に伝わってくる。
 青峰にも喘ぐよう促してはこない。たまに漏れる濡れた声に嬉しそうに目を細めて、絶頂に導くよう青峰自身を扱いてくる。耐えるとこなく水戸部の手中に精を吐き出して水戸部のモノも促すよう締め付けた。

「…っつ」

 かすかな呻き声が耳元で聞こえたのと同時に、ゴム越しに生温かい体液が放たれる。
 暫く呼吸を整えるためにそのままでいたが少し落ち着いてきたのを見計らって、腰を上げずるりと水戸部を引き抜くとゴロリとベッドに寝転がった。
 隣では水戸部がこちらに背を向けていそいそとゴムの始末をしている。背筋に沿って汗が流れている。鍛え上げられた傷一つない綺麗な背中だなとぼんやり眺めていたが、下着とズボンを装着して立ち上がるとそのまま歩いて部屋から出て行ってしまった。
 階下で水を使用する音がした。戻ってきた水戸部の手には濡れたタオルが握られていて、ベッドに腰掛けると寝転がったままの青峰の身体をそれで拭き始める。汗やら体液やらで汚れた身体を清めるためか。
 お湯で濡らしたらしいタオルは暖かく心地が良いので好きにさせる。

 このまま眠ってしまうかとウトウトしだした青峰に気付いて、足元に追いやられた毛布を肩まで引き上げた。母親が子供を寝かしつける際のような手付きで頭を撫でてくるのに、ああきっとこいつには弟か妹がいるんだろうなと思った。

 制服を着てそのまま静かに去ろうとする水戸部に、ふと思い出して声を掛けた。

「ケー番とアドレス教えろよ」

 嫌ならいいと呟きながら、断ることはないだろうなと眠りかけのぼんやりした脳で考えた。
 案の定、メモ帳らしき物に携帯の電話番号とメールアドレスを書き入れた紙を破って一枚枕元にそっと置いてくれた。

「俺のは今度会ったときにでも教えっから」

 連絡先を手に入れたことに満足したためか、よる頭が重くなってきた。眠い。聞くだけ聞いて自分のは今度別の機会になんて、不公平な気もするがそれで良いと、水戸部が頷いたのを確認したので瞼を下ろした。

 

 おやすみと聞こえた気がした。



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