火神さん家の執事さん


 ピピピピピと火神の枕元に置かれていた携帯電話が鳴りだす。セットした時間になったので起動したアラーム機能だ。

「火神君火神君!朝です。六時になりましたよ、起きてください火神君!」
んぁ?」
「六時です。起きないと朝練に遅刻してしまいますよ!」
「ああんが」

 ベッドの中で唸っている火神の顔のそばまでにじり寄り、ペチペチと頬を軽く叩くが火神は寝起きがどうにもイマイチな為、覚醒するまでには幾分時間が掛かる。

「火神君、ほら起きてください!」

 スヌーズ機能が発動しペチペチとしたものからベチベチに移行し始めた。

うぜぇよ」

 が、布団から片方だけ出した腕でしっしと虫でも払うかの如く追い払うような仕草をしだす。

「火神君!!」

 ギュウウウウ

「いってええええ!!」
「起きましたね」

 ガバリと文字通り飛び起きた火神に満足すると、いそいそと枕元の定位置に落ち着いた。

「おまっ抓るとかありえねぇだろ!」
「お早うございます火神君。今日は七月十三日火曜日、天気は一日快晴 ですが夕立があるかもしれませんのでご注意ください。」
「いや聞けよ。」
「本日の朝練は七時からです。もたもたしていると、朝食をとる時間がなく なりますよ。」

 淡々と本業の一つであるスケジュール等を告げていく。学校関連の事柄は自分で登録した覚えがさっぱりないのに、何故か入っている。本人?に言わせると、

『キセキを舐めないでください』

 で済まされてしまう。どういうシステムだだとか、アレコレ考えるだけ無駄な気がしてきて、何度か聞いたきりで聞き返すのをやめてしまった。もうそれはそう言うことなのだろう。もうそれで良い。

「火神君忘れ物はありませんか?確認したほうが身のためですよ」
「大丈夫だって」
「そんな事言って、先週しっかり数学の教科書忘れていったでしょう」

 そう、確かに忘れていった。口煩くカントクやキャプテンやらから勉強しろ課題はきっちり提出しろと言われていてその日も課題をこなすために、いつもはロッカーに突っ込んである教科書を渋々ながら持って帰ってきた。
 四苦八苦しながらなんとか課題を終えたものの、そのまま机の上に置きっぱなしで学校に来てしまったのだ。本末転倒だ。

「ぐっ降旗に借りたし問題ねぇよ」
「ちっとも良くありません。借りれない場合だってあるんですからね」
「そん時はそん時だ」
「さぼりは駄目ですよ。大体課題が余計に出されてしまいますからね」

 サイズ以外は黒子当人にそっくりだ。自分の所持する携帯の執事とかいうならば、もっとこうご主人様に従順であるべきではないのだろうかと日々思う。服装以外は全くもって執事な感じがしない。

 が、

「火神君、火神君ほらもう言ってる傍から忘れ物ですよ」
「あ?なんだよ」

 なんだかんだで鞄の中身を確認して今日は大丈夫と思った矢先。

「僕です」

 ちょこんとベッドの上に座ったまま、上目づかいで両腕をこちらに差し出していた。ちゃんと忘れずに持っていけと全身で訴えている。
 実際の黒子は頼みこんでもやってくれなさそうなポーズで見上げてきている姿は実に愛らしい。素直に愛らしいと思える。

「おう」

 ようは絆されているだけなのだろうか。



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