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「なんなのだよ、黒子。人のカバンをじっと見て。何か付いているか?」 これと指差したのは、端からちょっと頭を覗かせている白い物体。 「ああこれか。これは今日のラッキーアイテムの猫じゃらしだな」 ホームセンターのペット用品コーナーで確かに見掛けた覚えがある。色々な種類のが、お好きなのをどれでもどうぞと言わんばかりに容器に挿してあった。 「猫飼ってましたっけ?」 生き物ではあるが、何か違う気がする。因みにその内のいくつかは見たことがある。無論ラッキーアイテムとしてだが。 「抜かりのないよう、用意してあるのだよ」 当然だろうと言われても、生憎賛辞を送る気は起きてこなかった。自慢されても正直困る。 「ほら」 ほらと、目の前に差し出されても困る。どうしろというのか。 ゆらゆら、ゆらゆら。 思わず目が追ってしまう。催眠術にでも掛かったかのようだ。なんだか手がうずうずしてきたのは、気のせいだろうか。あ、と思ったときには無意識か反射的に手を出してしまっていた。 「気に入ったのなら、やるのだよ」 ふっと頭上で笑った気配に気が付いて、バッと顔を上げて猫じゃらしから手を離した。 「い、いいです!」 何をしているのだ、自分は。これではまるで、 「まるで猫のようだな」 いつものように理屈を並べての反論が出来なくて、うぅっと情けなくも唸りながら俯く。火照った顔は冷める気配がしない。 「だから、いりませんてば!」 別に猫を飼っているわけでもないのに、コレをどうしろと言うのか。緑間のように、おは朝占いのラッキーアイテムとして活用とろとでも。 「気にするな。まだ他にも猫じゃらしはあるのだよ」 がっくりと力が抜ける。 「それに勉強の合間にでもこうやって揺らしていれば、気休めや和みにもなるだろう」 黒子は握らされたそれを自分でもゆらしてみる。確かに何となく和んでくる気もする。じゃれたいとはまた違って。そもそも人間なのだから、何かにじゃれたくなる性分は早々沸いてこないだろうが。 「そんなものでも気休めになるのなら、安いものなのだよ」 ありがとうございますと、揺らすのを止めて黒子は自分のカバンに猫じゃらしを仕舞いこんだ。 「ほら何をしている。帰るぞ」 カバンを肩に掛けると一足先にロッカールームを出た緑間を追う。 「緑間君、僕やってることが猫みたいに見えましたか?」 何をやらせるつもりなのかと、隣で憤慨する黒子を見ながらこれは見っけ物だと顔がにやけてくるのを、抑えつけた。 「何ニヤ付いてるんです」 抑えていたのに、漏れてしまっていたようだ。 「口元が緩んでます」 きっと目前で猫じゃらしを揺らされて、何してるんですかと怒る顔もさぞかし愛らしいに違いない。 |