「幸」 

 

 名も知らぬ鳥が鳴いている。どこか寂しげなそのさえずりは、高き青空に響きわたる。

 カサカサと乾いた音を立てながら木枯らしに舞う木の葉達。鮮やかに色付いていた樹木が木の葉を落としながら痩せていく。

 

 

 冬がもうすぐそこまで来ている。

 

 

 カミューは自室でお茶を飲みながら窓の外を眺めていた。

 読書にいそしんでいたが、いまいちのめり込むことが出来ず投げ出してしまった。

 こんな風景を眺めていると寂しい気持ちになる。

 故郷を思い出すからだろうか。

 遠い昔に離れてしまった故郷グラスランド。

 記憶が薄いのは幼い頃に離れてしまったからか。

 緑に溢れていた大地。それだけは確かな事。                           

      

 コンコン。

 軽くノックする音が静かな部屋に響く。 

 「はい?」

 「カミュー、この書類目を通しおいてくれと軍師どのが。」

 入って来たのはマイクロトフだった。生真面目な彼はあまり休みをとらず、仕事にいそしんでいた。

 「ああ、わざわざありがとう。なぁ、来たついでだしお茶でも飲んでいかないか?」

 「そうだな、今日は仕事も特にないしたまには良いな。」

 たまにだぞと念を押すマイクロトフを横目に、棚からカップを取り出し紅茶を注ぎ彼の前に置いた。 

 「どうぞ。」

 「どうも。」  

 紅茶特有の香りが漂ってくる。気持ちが落ち着いてくる、良い香り。

 一口飲むとほっと一息をつく。アールグレイだ。 

 「美味い。カミューはお茶を入れるのが美味いな。」

 あまり自覚していなかったが、少々疲れが溜っていたようだ。

 一息ついたとたんどっと体が重くなったのが解った。

 自分の事なのになかなか気付かないなんて、ちょっと情けない。

 こんな状態ではいざとなった時に力が十分に発揮出来ないな。 

 「そう?それは良かった。」

 ティーポットを端の方に置き、今度はお茶菓子を出してくる。

 「少し疲れが溜ってるみたいだな。」

 図星。

 驚きとちょっと喜びを感じる。

 「よく解ったな。」

 「そりゃ解るさ。何年一緒にいると思ってるんだ?」

 苦笑しながら答える。

 「適度に休みを取らないと、体壊すよ?戦闘にも多少なりとも影響するだろうし。」

 「うむ・・・。注意する。」

 素直に反省するマイクロトフに、思わず笑ってしまう。

         

 
 「この時期ってさ、寂しい気分になるんだよね。憂鬱でなんか梅雨に逆戻りしたみたいでさ。」 

 窓越しに外を眺めながら呟くように話す。

 「でも・・・。」

 マイクロトフの方に向き直る。

 真っ直に彼を見つめて。

 

 

 穏やかな表情。                                             いつも女性達に向けるものとは違う、自分だけに向けられるもの。              嬉しい。 

 自分だけに気心を許してくれている。

 そんな感じがして。

 ならば自分もそうなのだろうかと考えてしまう。

 カミューにだけ。

 でも・・・それはそれで良いのかもしれない。

 恥ずかしい気もするが。

 お互いに気心を許し敢て、本音でぶつかれる。

 良き親友をもったな・・・。

 

 

 「お前とこうやっているとこの秋空みたいに晴れた気分になるよ。この時間がとても幸福で楽しい・・・。」

 「そうだな・・・。俺も疲れが無くなっていく感じがする。良いものだな、こうゆうのも。」

 マイクロトフもカミューの方に向き直ると、微笑み帰した。

 

 

 綺麗な笑顔。

 くったくれの無い、嘘じゃない本当の。

 自分にだけ向けられる。

 自分だけが見ることが出来る。

 嬉しい。

 きっと自分もそうなのだろうと思う。

 マイクロトフだけに、本来の姿を暴くことが出来る。

 なんて良い友をもったのだろう。

 一番の自慢だ。

 それにしても自分にだけ・・・か。

 これも独占欲の一つかな?

 

 

 「なぁマイクロトフ。俺はお前みたいな親友がいて幸せだよ。」

 「俺もカミューのような親友がいて幸せを感じるよ。」

 「ずっと・・・許される限りこのままの状態でいたい。」

 「ああ・・・離れてしまうような事が無い限り。」

 「出来れば離れたくないね。」

 「離れたくないな。、出来ることならば。」

 くすくすと笑い合う。

 

 窓の外の風景とは全く逆。

 心が春の日差しのように温かい。

 穏やかな時間。

 

 離れたくない。

 いつまでも共にいたい。

 生きてゆきたい。

 無理かもしれないけど。

 そう願わずにはいられない。

 お互いにお互いを必要としている。

 言葉でなんて表せない。

 表すのがもったいない。

 幸福を与えてくれる。

 

 

 そんなあなたと出会えて。

 私は幸せです。

                                                 
 Fin.


やっと書けた騎士さん達・・・。書くのにかなりの時間を要しました。