今日も僕は
やっぱり今日も山のような書類に囲まれて。
いつもとさして変わらない仕事。
疲れてもやらなきゃならない。面白くなくても、他にやりたいことがあってもやらなきゃならない。
どうして?
選んだのは僕だから?
なんで?
望んだのは僕だから?
解らないよ。
開けていた窓から風が入ってきて。
気が付くと机の上に置いていた、書類が宙を舞っていた。
キチンと重ねていたのに、バラバラになって床へと落ちてゆく。
ヒラヒラ、ヒラヒラ。
遊そばれちゃってるみたいだ。
疲れてるときに、これ以上余計な仕事増やさないでよ。
イライラ、イライラ。
頭の中がごちゃごちゃして訳わかんない。
なのに。
今日も風は僕の気持ちとは裏腹に流れている。
弄ばれてるみたいだ。
風が憎い。
憎たらしい。
閉めようと思って窓辺に近づいたら、抜けるような青空が僕の視界に入ってきた。
青くて蒼くて。
どこまでも青くて広い空。
僕もこんなふうに心が広くなれたら良いのに。
真っ青で迷いもなくどこまでも突き進めたら良いのに。
「失礼します。明日の遠征のことで・・・。」
そのまま窓辺でぼーっと空を眺めていたら、マイクロトフさんが部屋に入ってきた。
「なにか?」
振り向きもせずに、そっけなく答える。
随分気の抜けた返事に聞こえた。
「どうしたのですか?」
マイクロトフさんが僕の方へ近づいてくるのが、足音で解った。
「別に・・・。空が綺麗だなぁ、って・・・。」
「空ですか。」
その儘僕の隣に立つと、視線を窓の外へと向けた。
「確かに綺麗ですね。天気も良いですし。」
「うん・・・。」
「何か、悩みでもあるのですか?」
お疲れのようですし。
「さぁ・・・解らないよ。」
あり過ぎて、それすらももうよく解らないよ。
「ユーリ殿、今日は外に出られましたか?」
暫く何かを考えてたみたいだけど、一体何を言い出すのかと思えば。
「出てないよ。」
そんなこと聞かないと解らないの?
机の上見れば一目瞭然じゃないか。
出れるわけないよ。終わらないのにさ。
「もし良かったら、遠乗りにでも行きませんか?」
「は?」
何を突然。
「折角こんなに天気も良いと言うのに、部屋の中にいて仕事ばかりじゃ滅入ってしまいますよ。気分転換にもなりますし・・・。」
「はぁ・・・。」
まぁそりゃそうだろけど。
「嫌・・・ですか?」
「嫌じゃないけど・・・。これ、終わらないととてもじゃないけど行けないよ・・・。」
またシュウにお小言言われるし・・・。
「俺も手伝います。それにこの儘続けても能率が上がらないと思いますよ。ですから・・・嫌じゃないなら、行きましょう。」
結局、気が付くとマイクロトフさんの馬の上。別に一緒の馬に乗らなくても良いような気がするんだけど。
用意してもらったお弁当抱えて。
いつもなら僕が作ってるんだろうけど、そんな気力も起きなくて暫く料理をしてない。食欲もいまいちだし。
「あの・・・やっぱり嫌でしたか?」
「そんな事ないけど。どうして?」
そんなに嫌そうな顔してる風に見えたのかな。
「いえ、さっきからずっと黙ったままですし・・・。」
「空見てただけだよ。」
「そうですか。」
ほっと安心したように息を吐いたのが見てとれる。
「あの辺りで一息つきましょう。」
湖の辺の木陰に腰を下ろすとマイクロトフさんが早速お弁当を広げて昼食の支度を始めるのをぼんやりと見ていた。
「さぁ、食べましょう。」
「うん・・・。」
海苔が香ばしいおにぎりを一口。
「美味しい・・・」
ポツリと一言漏れていた。
「これもなかなかですよ。」
嬉しそうに小皿に取り分けてくれる。
そんな彼を見ていたらなんとなくだけど、食欲が沸いてきて片っ端から手を付けて言った。
「久しぶりだよ、何かを食べてこんなに美味しく感じたの。」
最後はデザートのムースだった。
空腹が満たされてとても気持ちが良くて草の上に寝転がった。
「それは良かった。」
嬉しそうに微笑んでくれた。
「空の下での食事はやはり一味違いますね。」
「うん・・・。」
お約束通り睡魔が襲ってくる。
「ユーリどの・・・。」
「ん〜?」
「また機会が合ったら来ましょう。」
最後の方は殆ど聞き取れなかった。
寝ぼけ眼で見た空は青くて広くて白い雲がゆっくりと流れていた。そんな空を見てると、僕の中の嫌な部分が酷く醜く思えてちょっと悲しかった。
きっと彼もこんな感じ。
純粋な青。
羨ましいな・・・。
・・・・・ねぇ・・・・・
羨ましい?
羨ましいよ。
本当に?
本当だよ
そうなりたい?
そうなのかな?
でも
なに?
無理だよ。
どうして?
こんなにも染まってしまっているんだから。
暗い、暗〜い2主君・・・。