「笑み」

 

 

 冬を感じさせる冷たい風が窓をカタカタと揺らしている。

 空は青空が広がっているが、寒いのは風が冷たいからだろう。

 

 本拠地の階段をのんびりとリーフは上っていた。

 肩からユーリに頼まれていた兵法書数冊と、グレミオから出かける際渡されたクッキーと紅茶を入れた袋を掛けていた。

 

『ユーリ君とナナミさんに渡してください。ココアを入れた特製クッキーと、この前交易所で手に入れたカナカン産の紅茶です。今年は豊作で、とても良質だそうですよ。心身の疲労を癒してくれると結構有名なんです。甘いものは疲れた時に良いですからね。・・・あまり無理をしないようにと伝えて下さい。』

 

 2人供とても甘い物が好きだしさぞかし喜ぶだろう。

 ココア入りクッキーもとても美味しかった。

 さすがグレミオと言ったところだろう。

 3階に上がったところで運良くナナミと出くわした。

「あ、リーフさん!来てたんですか〜。」

「やあ、元気そうだね。そうだ・・・。」

 いつもの笑顔で迎えてくれるナナミに、グレミオに渡されたクッキーを袋から取り出し渡した。

 グレミオはわざわざ別々の袋にしていた。

「これグレミオから、ユーリとナナミにって。ココア入りのクッキーだよ。」

「わ〜本当ですか!?ありがとうございますvv」

「ユーリはどこかな?頼まれてた本とか渡したいんだけど・・・。」

「部屋に居ますよ。本読んでました。」

「そう、ありがとう。」

 例を言うとナナミと別れ、教えられた通りにユーリの部屋へと向かった。

 彼の部屋は4階にナナミの部屋と共にある。

 2部屋しかないせいか、人気も無くとても静かだ。

 コンコンと軽く扉をノックする。

「ユーリ、僕だよ。入るよ。」

 返事が無いが、そう言うと部屋へと入った。

 ナナミからユーリが居ることは聞いていたからだ。

「ユーリ?」

 部屋に入っても一言もない彼の姿を探す。

「・・・・。」

 窓辺に置いてある机に突っ伏して彼は寝ていた。

 足音を立てずに近づくと、そっと顔を覗いた。

 安息に満ちている安らかな寝顔。起こすのが悪いような気がする。

 その下には本が広げられていた。

 どうやら読書の途中で寝てしまったらしい。

 思わず苦笑してしまう。

「・・・ん・・・?」

 気配に気付いたのか目を覚ましたようだ。

「悪いね、起こしてしまったみたいだ。」

 意識がまだハッキリとしていないようで、ゆっくりと瞬きをしている。

「・・・リーフさん?」

 目を擦る姿に可愛らしさを感じる。

「やぁ、久しぶりだね。頼まれていた本を持って持ってきたんだけど。」

「す、すみませんっ。寝てて気付かなくて・・・。」

 一気に覚醒したようで、慌てて起き上がる。

 

「良いよ。疲れてるんだろう?」

 少し離れたテーブルに座るとユーリはお茶の用意をし始めた。

 が、それを静止して代わりにリーフが入れる。

「たまには入れさせてよ。」

「でも・・・。」

「ああそうだ、グレミオから紅茶とクッキー渡されてたんだ。」

「グレミオさんから?」

 ついでだから、ということで早速紅茶を飲むことにした。

 クッキーも出して小皿に移し広げた。

 良い香りが部屋に漂う。

「うん・・・良い香りだね。」

「ほんとだ・・・。」

 クッキーの甘い香りと紅茶の香ばしい香りが程よく混ざり合う。

「心身の疲労に効くって言ってたよ。」

「そうですね・・・とても休まる感じがする。あ、このクッキーココア入りですね〜。」

 幸せそうな表情でクッキーをほうばっている。

「美味しい?」

「はい、とっても。」

 微笑みながら、リーフも一口口にする。

 何度食べても美味しいクッキーだ。

「あと、これ。兵法書。」

 思い出したように一番の目的のものを袋からごそごそと取り出す。

「わざわざすみません・・・。重いのに。」

「良いよ気にしないで。・・・そう言えばさっき読んでいたのも兵法書だったね。」

「はい、何時までもシュウさんやアップルさんに頼ってるばかりじゃまずいですからね。」

 軍主としてしっかりしなければならない。

 頼られなければいけないのに、その自分が頼ってばかりいるようでは話にならない。

 しっかりしなければ。

 そんな事が感じ取れる。

「そうだね、僕も軍師にばかり頼ってちゃいけないなって色々読んだなぁ。」

「えっ、そうなんですか!?」

「そうだよ。でもいくら読んでもいざその時になると、なんて勉強不足なんだろうって・・・。

いつも痛感させられてたよ。」

 あの頃の自分を思い出しながら話す。

 暇さえあれば戦略書なり兵法書なり読んでいた。

 でもいくら読んでも読み足りない。

 いつもそう感じていた。

「そうなんですよね・・・。力不足の自分が情けないです・・・。」

 しゅんと、悲しげな表情になる。

「でも君は精一杯やってるじゃないか・・・。あまり重く考えないで、少し気を楽にしてさ。そうしないと余計に疲れが溜ってしまう。」

「はい・・・。」

「いくらでも力になるから・・・。」

 安心させるかのように微笑み返す。

「ありがとう・・・ございます。」

 少し肩から力が抜けたようだった。

 良かった・・・。

「うん?紅茶が冷めちゃったね。入れ直すよ。」

 ティーポットに温かいお湯を注ぐ。

「甘い物とか食べて、時々休まないとね。」

 

 過去の自分もそうしていた。

 何もしないでお茶を飲みながら甘いお菓子を食べていた。

 甘い物が疲れを癒してくれるって、本当なんだな・・・。

 とか考えながら。

 

「そうですね。あ、今日は泊まっていくんですか?」

「うんそうしようと思ってるけど・・・。」

「良かった〜。」

「グレミオには言ってあるから暫くは居れるよ。」

「じゃあ話とか聞いてもらえます?」

「もちろん。」

 

 貸せる限りの力を貸そう。

 少しでもこの子が微笑んでいられるように。

 疲れを減らすように。

 

 −あなたの笑顔が見たいから。微笑んでいるあなたが好きだから−

 

 END.


 風加美瓜様のリクエストにより、リーフ君とユーリ君です。ありがとうございましたv