「流れ行くもの達」
流れ流されどこへゆくのか
風のように水のように雲のように星のように。
留まる事を知らぬかのように。
同盟軍本拠地の屋上。
今日は残暑もそれ程厳しくなく、秋を感じさせる涼しげな風が流れていて
心地良かった。
絶好の昼寝日和。昼食をレストランでユーリ達と済ませた後、即此処へ
来た。
ユーリは午後からは会議が入っているとの事。ルックでも誘ってこようか
とも思ったが結局一人で
来てしまった。
屋上の住人、フェザーに許しを貰い寄り掛かって昼寝を始める。彼の羽
毛と食後の満足感がより深き眠りへと誘い、夢の中へと落ちていった。
そして今現在。フェザーに起こされて、寝ぼけ眼で散歩かもしくは偵察
か。いずこへと飛び立って行く
彼を見送った。
飛び立って行った方角を眺めれば、既に陽が傾き始め遥か彼方を流れ
る雲を薄紫に染めている。
雲間からから漏れる沈む寸前の陽の光りは広大な地を照らし、涼しげな
風が湖や草木を揺らしている。
綺麗・・・だな、と純粋に思う。
そして自分はなんとちっぽけなのだろう・・・とも。
夜、空に煌く星はつぶてのようだが、星からは恐らく自分は見えてすらい
ないのだろう。
小さな小さな自分。
「よぉ。」
突然背後から声を掛けられる。人が近づいてきた気配にも気付かないと
は・・・。
まいったな。
「シーナ・・・。」
見慣れた顔。先の戦より共に戦い抜いてきた一人。身体的には成長して
いるのが目に見えて解るが、
中身はさっぱりだ。
レパントも大変だな。
「こんなとこにいたのか〜結構捜したぞ。」
どうせ昼寝でもしてたんだろうけどな。
「天気良かったからね。」
「絶好の昼寝日和ってか。あ〜あ、俺もこれば良かったかな。会議に出る
よりずっと増しだぜ。」
「さぼりはいけないよ?」
もしかしたら彼は一生このままなのかもしれない。それはそれで面白い
が、周りは大変だろう。そんな事が頭を過ぎっていく。
「人のこと言えんのかよ。」
「そんな事もあったかな〜。」
一昔前、自分が解放軍のリーダーに就いていた頃時々仕事をさぼって釣
りやら昼寝やらに興じていた事
をシーナは知っていた。と言うより、さぼり仲間の一人だったのだ。
「でもさすがに会議はさぼらなかったけど?」
「ちぇっ。」
舌打ちする姿に思わず苦笑してしまう。
そのまま暫く解放戦争の頃の思いで話に花を咲かせていた。
どうでも良いような事ばかりだったが。
「そう言えばさぁ・・・。」
シーナがふと何かを思い出したように呟いた。
「お前さ、高い所好きだよな。」
「は?」
「だからさ、お前よく城の屋根の上とか岡の上とかにいたじゃん。やっぱ
好きなんだろ、高い所。」
確かに言われてみれば人目を忍んで城の屋根の上に登っていた。
特にグレミオやマッシュに見つかるとぐちぐちと五月蠅いので、こっそり
と。
見知らぬふりをしていた人も何人かいたし、ビクトールやこのシーナに至
っては一緒になって登ってい
た。
「う〜ん・・・高い所が好きなんじゃなくて、そこから眺める景色が好きなん
だよ。」
「そりゃ高い所の方が眺めは良いしな。」
「それもあるけど、そういう所から眺める景色って凄く壮大じゃない?ずっ
と遠くの街や森や、それに
掛かる流れる雲の影とか。風も直接感じれるしさ。」
「うんうん。」
「そういうの見てると、ああ自分はなんてちっぽけなんだろうって思うん
だ。」
「そりゃそうだな。」
「だから・・・、時々そういう中に身を置いて己の身の小ささを・・・無力さを
感じるようにしているんだよ。」
どんなに自分が優れ強くあっても、右手に宿る紋章の威力が凄じくとも、
敵わないものがあることを。
‘絶対’では無いことを痛感し己の身に脳裏に叩き込むのだ。
そうする事によって紋章に呑まれないようにしている。
「そっか・・・。なぁリーフ。」
「なに?」
「またこの戦いが終わったらどっか行くんだろ。あの雲みたいにさ。」
「そうだね・・・。流れるがままに・・・かな。」
遥かなる地平線を行きかう雲のように。
風の流れにその身を委ね行き先も定まらず、逆らう事無くただ消えるそ
の時まで。
「俺もどっかにふらふら〜と行くんだろけど、そこでまたお前に会うのかも
な。」
「会うかもね。」
「しかもお馴染みの顔ぶれも揃ってたりしてさ。」
冗談なのに冗談に聞こえない。困ったものだ。
「ま、その時はその時だろ。」
「そうだな〜。」
「おい、そろそろ城の中に戻らないか?冷えてきたし。」
「そうしようか。」
もう暫く眺めていたい気もするけれど。
「そうだ、飯喰ったら俺の部屋に来いよ。良いワインあるんだよ。」
「それは是非とも。あ、食事の後じゃ無くて入浴の後じゃ駄目かい?」
そっちの方がゆっくり出来るだろうし。
「構わないぜ。」
こっちとしては寧ろその方が・・・。
「何か言った?」
「いや、別に〜。」
戻る前にもう一度、と見た空には一つ星が煌いていた。
毎日決まった時間に空に現れるその星は、自分達が立っている大地を
見下ろし流れるように周りながら捜して
いるのかもしれない。
自分もいつしか宿したその星を、再びその身に宿す選ばれし者達を。
そんなわけで、水乃さんの2500番のキリリクでシーナ坊に見えないシーナ坊でした(爆)リベンジしたいです。ところで夕焼けは雨上がりのが好きです。本当に綺麗ですよね。