「孤」

 

 

本拠地の裏手にあるデュナン湖の船着き場でぼーっと釣り糸を垂らしていた。

久々にここへ来たものの、お目当てのティルはグリンヒルへ出張していていなかった。

2、3日で帰ってくるとの事だったし、折角ここまで来たのだからと言うことでのんびと帰りを待つことにした。

図書館もあるし釣りも出来るし、3年前からの顔なじみも多数いるし。

暇を持て余すことはないだろう。

思考を巡らせていたところ、突然背後から声を掛けられる。

聞き覚えのあるその人物は・・・。

「よおっ来てたんだな!」

手を軽く振りながら早足で自分の方に向かってくる・。

「シーナ・・・。」

3年経っても相変わらずのようだ。

見た目は変わったのに中身はあまり成長した様子がない。

「隣座るぜ。」

「うん」

脇にずれ、座るスペースを空ける。

シーナは腰に下げていたキリンジをはずしすと、肩に掛け直してから空けられたスペースへ腰を下ろした。

「タイミングが悪かったな。ルーイの奴グリンヒルに出張中だからな〜。」

「そうなんだよね〜。まさか出張中とはね・・・。」

運が悪かったかな・・・。残念な気持ちが伺える微笑み。

「ま、しょうがないか。」

「ハイランドとの戦争も佳境に入ってきたしね。のんびりとはしてられないでしょ、ルーイも。」

「軍主が遊んでたら話になんねぇもんな〜」

ハイランドとの戦争も前皇王ルカ・ブライトを破ることによって、同盟軍が優位になったかと思われたが、その後を継いだ今の皇王ジョウイ・ブライトの軍略により、以前とさして変わらぬ状態に戻っている。

つい先日にはグリンヒルの解放をしている間に今度はマチルダ騎士団領を落とされてしまった。

1つ解決したかと思えば、また1つ新たな問題が増える。

「困ったもんだ。」

溜め息を付くシーナを横目に、ティルは自分がリーダーとして軍の先頭に立っていた頃のことを思い出していた。

 

 

山積みになった問題。

許されぬ妥協。

なすすべもなく己の目の前で消えてゆくはかなき幾千もの命。

自分の気持ちとは裏腹に、どんどん行ってしまう時の流れ。

止まることなど無く。

 

止まってしまったのは自分。

流れに逆らいあの頃と変わらぬ姿のまま。

後悔してないと言えば嘘になるけど。

 

−時々空しくなっちゃうよ。

    解らなくなっちゃうよ。−

 

 

「なに哀愁漂わせてるんだ?」

思考を巡らせていたためか、急に声を掛けられびっくりしてしまう。

波音と彼の声によって現実へと戻される。

「そんな風に見えた?」

「見えたよ。」

ふと、肩を並んで座って、今更ながらに気付く。

「ん?今度はなんだ?」

自分に向けられる視線に気付く。

「いや・・・。背、伸びたな〜って。」

「そりゃ3年も経てばなぁ。て言うか伸びなきゃやばいじゃん。」

笑いながら軽く返答してくる。

なに当たり前の事聞いてるんだろね、僕は。

成長期で伸びない方が可笑しい。

「あ〜あ、本当なら僕もその位になってたのかな〜。」

「そうだな・・・。」

紋章の力によって成長が止まってしまってしまったティルを見る。

あの頃は同じくらいの背丈だったのに、今じゃ自分の方が背丈も体格もずっと上回っている。

「あれ?歳一緒だったよな?」

「そうだよ」

「う〜ん、羨ましいようなそうでも無いような・・・」

「なにが?」

何を言い出すのかと思えば。

相変わらずいまいち掴みどころがないな、シーナは。

「中身は年喰っても、体は若いまんまじゃん?そしたらさぁ・・・。」

考えてる事が解ってしまい、呆れて溜め息を漏らす。

なんだかなぁ。

「もういいよ。言いたいこと解ったし・・・。」

「あ?解ったのか?」

「解るよ・・・。言わなくて結構。」

「ま、そうなんだよ。お前も男だしさ、そう思うとこだってあるだろ?」

「そう思える君が不思議だよ。」

レパントさんも大変だ、こりゃ。

「そうかぁ?だって年頃じゃん、やりたいさかりだしさぁ。・・・そういやお前やったことあるのか?」

そんな話聞いたことが無いような気がする。

「ないよ。」

予想通りである。

からかいたい衝動に駆られてしまう。

ティルの肩に腕を回すと自分の方に引き寄せる。

「なんなら俺が相手してやろうか?」

「遠慮しとくよ。」

「遠慮するなって。なんなら今夜辺り早速・・・。」

ティルはシーナの腕を払い立ち上がると、釣り竿を持って背を向けすたすたと歩き出す。

相手してらんないよ、まったく。

「ありゃ、怒らせちまったかな?」

ま、楽しかったしいっか。

それにお楽しみは後々まで取って置くもんだしな。

そんな事をのんびりとデュナンの空の下で考えるシーナだった。

 

 

相変わらずなんだから、シーナは。

釣り竿をヤムに帰すとさっさとティルは船着き場を後にする。

 

一時的な慰め程度にしかならないような肉体関係なんていらない。

持続しなければ、そんなもの意味をなさない。

でもそんなこと自分にとってはまず無理だから。

解っているから。

だから・・・。

 

「そんなものいらないんだよ、シーナ。」

 

Fin.

 


 以上、年取らない自分に空しさを感じると孤独感を感じている言うか、心のどこかで同じ境遇の人を求めてると思わ

 れるティル君でした。ぎゃふん。1800番を踏んで下さっ、た水乃さんのリクでシーナ×坊ちゃん

 で、書かせてもらいました。なんかあんましなってなくてすみませんです(汗)ちなみにこの後シー

 ナは夜這いに行ったと思われます(笑) 水乃さんリクどうもです。