「焦」

 

 

 ―早く大人になりたいよ。

もっと強くなりたいよ。

あの人に近づきたいよ、一歩でも。

焦ることは無いと回りの人達は言うけれど、焦らずにはいられない。

どんどん置いていかれてしまう。

そんな気がして。

 

 

あの瞳が気に食わない。

後ろから感じる、見守る様な妙に温かく感じるあの視線が。

何時も後ろでうっすらと微笑んでいる。

感じるたびにムッとしてしまう。

自分とは歳だってあんまり離れてはいないはず、見た目だってそんなに大差は無い(と思ってる)。

自分とは余りにも違い過ぎて。

やっぱり経験の差とかいうやつなのか?

悔しい。

イライラする。

ただの嫉妬かもしれない。

あの人が憧れる人。

 

いろんな感情がごちゃ混ぜになって自分の中を回っている。

考え事をする時なんかは何時もここに来ている。

図書館の裏。

人気がなく、静かで木々の間から漏れてくる木漏れ日が気持ち良い。

でもかえって、この静かさが自分の感情を煽ってしまっている様だ。

 

「こんな所にいたのかい。」

いきなり背後から声を掛けられてびっくりする。

振り向くとそこにはリーフが立っていた。

「探したよ。」

「何か・・・?」

「カスミが探してたんでね。ああ、でも急ぎじゃ無いみただったから。」

「そうですか。」

やっぱり今日もいつものあの顔。

「隣良い?」

「はぁ。」

何を言い出すのかと思ったが、断る理由も特に無い。

少し悲しそうな、困ったような顔で自分を見る。

「ねぇ、僕の事嫌い?」

・・・・。

「べ、別にそんな事は・・・。なんでですか?」

「時々、僕の事睨んでるだろ?」

だからさ、何かしたかなって。

「えっ!?」

「あ、気が付いて無かった?」

睨んでた?自分が?

もしかして無意識のうちに顔に出ていたのだろうか。

だとしたら・・・最悪だ・・・。

「・・・はい。」

沈黙の時が流れる。

暫く2人とも無言のままだった。

 

ざあっと風が木々を揺らす。

「カスミがさ、君が無理に背伸びしてる様に見えるって心配してたよ。」

沈黙を破ってリーフがしゃべり出した。

あまり今は出して欲しくない人なんだけど。

「・・・嫉妬とか、焦りとか感じた事ありますか?」

「そりゃああるよ。」

過去を振り替える様に空の遠くを見つめる。

「解放軍のリーダーになったばかりの頃が特にね。自分の力が無いがために、多くの人々の命が落ちた。悔しくて空しくてどうしようもなくて。強くならなきゃって、焦ってた・・・。」

強くならなければならない。

命が一つ失われるたびにどんどん大きくなってゆく焦り。

でもそれが逆に、成長の妨げになっていた。

言われるまで気付かなかった。

「そうなんですか・・・。」

ちょっと以外だった。

でも、自分と同じような焦りをこの人も感じた事があったんだ。

 

この子はもしかして自分に嫉妬してたのかな?

嫉妬からくる焦り。

そんなとこか。

それで顔に出てしまってたんだ。

 

ポンポン。

「焦ることは無い・・・。ゆっくりと成長すれば良い。」

子供扱いされてるみたいで嫌だ。

だけど。

ふと心の中に安心感にみいなものが広がっていくのがわかった。

この人には敵わない・・・。

「ゆっくりとじっくりと自分を見つめて、足りないものを見つけて。」

柔らかい笑み。

「そしたらそれを補うように努力すれば良い。」

「そうでしょうか・・・。」

「そうだよ。」

澄んだ瞳で真っ直に自分を見つめる。

深く綺麗な瞳だ。

歴史の移り変わりを見てきた瞳。

沢山の人々の思いを映して。

 

あの人が憧れる人。

自分がまだ知らない事を沢山経験していて。

無いものも沢山持っていて。

憧れるのも今なら何となく分かるような気がする。

いつか、自分もこんなふうになれたら。

こんな瞳を持つことが出来たなら。

追い付く事が出来るかもしれない。

 

嫉妬から尊敬と憧れに変わる感情。

新しい目標。

もっと強くなりたいのならば、早く大人になりたいのならば。

この瞳を目指すのが一番良いのかもしれない。

そんなに焦る必要もないのかもしれないが。

心が少し軽くなった。

そんな気がする。

 

 

END.


飛麟様のキリリクで坊ちゃん&サスケ君です。もしかしたら今までで、一番出来が悪いかもしれないです・・・。 駄目駄目で大変申し訳ないです〜(泣)