「綺麗」


 タイミングが悪かったみたいだ。

 

 ユーリに頼まれていた本を片手に、リーフは階段を降りていた。

 部屋を訪ねたが本人の姿は無く、探し歩いていた。

 運良く出会ったシーナに聞いたところ、先日からトゥーリバーの方に出掛けていると教えられた。

 「まいったな・・・。」

 誰かに渡してくれるよう頼めば良いのだろうが、ここのところ暫く会っていないので出来れば自分でそうしたかった。

 が、肝心の本人が居ないのではどうしようもない。

 「ルックのとこにでも行くかな。」

 溜め息混じりに呟く。

 グレミオには言ってあるので、ユーリが帰ってくるまで本拠地に滞在すればいい。

 しかし何もすることが無いので、ルックのところにでも行って話でもしようかと思った。

 「なんだ、来てたのか。リーフ。」

 突然後方から声を掛けられた。

 振り向くとそこには、解放軍時代からの顔なじみ、フリックがいた。

 「久しぶりだね、フリック。」

 「ユーリに会いに来たんだろ?でもあいつは・・・。」

 「さっきシーナに聞いたよ。」

 暇なんでルックのとこにでも行こうかと思ってね。と苦笑しながら話した。

 「だったら、俺じゃ駄目か?久々にさ。」

 「良いの?」

 「俺も調度暇だったんだ。」

 「じゃそうしよっかな。」

 ここじゃなんだからと言うことで、食堂に行くことになった。

 のんびりと、他愛ない話をしながら歩く。

 時々で会う、顔なじみに軽く声を掛けながら。

 

 

 昼下がりの食堂は、人がまばらで話をするには調度良かった。

 窓際の端の席に座り、紅茶を頼む。

 「ユーリは何日位で帰りそう?」

 「多分2、3日中には帰って来ると思うが。」

 大した事でもないし。

 「2、3日ね・・・。ま、それくらいなら良いか。」

 「泊まってくのか?」

 「そうさせてもらうよ。」

 程なく紅茶と序でに、お茶の時間だしと一緒に頼んだアップルパイが運ばれてくる。

 紅茶と林檎の甘い香りが混じり合い漂ってくる。

 「どう?戦況の方は。」

 紅茶に砂糖を入れながら訪ねる。

 「どうなんだろうな。ひとまずティントは何とかなったが・・・残すはグリンヒルの解放。とロックア ックスも問題だな。」

 問題はまだまだ山積みだよ。

 笑ってられる余裕があるじゃないか。例え苦笑だとしても。

 リーフはあえて口には出さなかった。

 「それでも少しづつは良くなってきているんでしょう?」

 「そうかぁ?」

 「後退してないならまだましじゃない。」

 「ここで後退なんてしてたまるかよ。」

 そりゃそうだ。

 正念場だ。

 後退は敗北へと繋がる。

 ここまで来て。

 そんな事にはさせない。

 何となくそんな事が少しまじめ顔になったフリックから感じ取れる。

 「力貸してくれるんだろ?」

 「出来る限りだけどね。ユーリに助言する位で。」

 「それで十分だよ。」

 フリックはぐいっと、少々冷めてしまった紅茶を一気に飲み干す。

 リーフの顔を改めて見る。

 あの頃から全く成長していない顔。

 でも・・・何かから解放されたような、リーダーだった時には無かったような。

 「良い顔するようになったな・・・。」

 「は?」

 突然話を全然違う方へと振られる。

 一体、急に何を言い出すのかと思えば。

 「強ばりが解けたな。」

 「そう?」

 「そうだよ。」

 自覚の無いリーフに思わず笑ってしまう。

 本当に綺麗な顔になったと思う。

 「そのままでいろよ・・・。」

 「前向きに善処するよ。」

 

 同じ顔なら、硬い表情より柔らかな方が良いに決まってる。

 その方が綺麗だ。

 元から綺麗なのだから。

 

 「さてと・・・。な、暇なんだろ?良かったら剣の相手してくれないか?」

 「良いけど。」

 「よし!行こう。」

 皿とカップを纏めてしまうと、席を立つ。

 壁に立て掛けて置いた剣と、棍をそれぞれ手にする。

 

 

 窓から差し込む、穏やかな昼下がりの太陽に照らされたその顔はやはり綺麗だった。

 その顔を眺めながら。

 もっと綺麗にと願わずにはいられなかった。

 

 END


  いやもう、なんと言うか・・・撃沈?という感じですな。全く纏まりが無い(泣)フリックさんは難しい!!と改めて思う今日この頃・・・。